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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第3章 アメリア、教育改革をする

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闘技大会後の変化

 あの闘技大会から数ヶ月が過ぎた。

 私としては、決勝戦での王太子殿下とソフィアさんの睨み合いは別として、あとは無難な試合展開だと思っていたんだけど……。

 どうも周囲の感想は違ったらしい。

 例年であれば大した抵抗もできず敗退するユーグ領が、王族2人を擁する王都チームにまさかの大健闘。

 改めて戦術の重要性を目の当たりにしたことで、過去の戦争についても見直そうという動きが出てきている。

 これは、ユーグ領の参謀役だったアルフレッド君の、ただ過去の歴史を真似しただけ、というコメントが大きかったらしい。

 今までは、既に終わった事を学んで何の役に立つ?と文句を言っていた生徒たちの意識が、彼のコメントでだいぶ変わったって、歴史担当の教師が言っていた。

 これについては、お父様もとても喜んでいた。


身分(魔力量)だけの王宮の文官(バカ)どもは、過去は過去として何も学ぼうとしない。

 酷い者になると、我が国が百年前まで鎖国していたことも知らず、帝国にこちらの情報が漏れないよう、連邦との国境も閉ざしてはどうかなどと言ってくる。

 セーバの街が貿易で栄えているのを妬んでの発言だが、奴らは何も分かっていない!

 我が国が鎖国していた百年で、特に魔道具や商業といった新分野で、連邦や倭国と一体どれだけの差がついてしまったと思っているのか……。

 あぁ、アメリアのお陰で何とか持ち直してはいるよ。

 でも、もしそれがない状態で帝国と戦争になっていたら、最悪連邦と帝国の挟み撃ちに合っていた可能性もあったからね。

 本当にアメリアには感謝しているよ』


 そう言って褒めてくれたけど、確かにこの状況は危険だよね。

 魔力量が多い、魔石を独占している、勇者が建国した武闘派の国、他国に頼らずとも国内だけで全てを賄える……。

 そういう昔からのイメージや恵まれた環境が災いして、この国の人達はあまり他国に目を向けようとしない。

 ソルン帝国のことも、本気で危険視しているのは一部だけで、大半の貴族は攻めてきたら返り討ちにすればいいくらいの認識だ。

 この辺り、どうしても幕末の日本やアヘン戦争で負けた中国を思い浮かべてしまうんだよね。

 連邦との商取引についても、お金が無ければ魔石を掘ればいいって発想だしね。

 借金があるならもっとお札を刷ればいいっていう、日本だったら精々ちょっと知恵のついた小学生レベルの発想だ。

 この辺はこの時代の学問レベル的には仕方が無い面もあるけど、商業担当の文官からしてこのレベルだから、前世知識のある私には非常に危なっかしく見える。

 まぁ、そんな状況だから、あの試合を見て少しでも学問の必要性に目が向いた生徒がいただけでも、私としては非常に喜ばしいことだ。

 無理やりとはいえ、昨年までと比べると段違いに生徒が勉強する機会は増えているからね。

 これはいい流れかな。

 そういえば、別の流れもあった。

 なんでも、女生徒だけの剣術クラブができたとか……。

 うん、これは完全にサラ様の影響。

 これからの時代、女性貴族にも戦闘技術は必要と、何やら盛り上がっているんだって。

 ぶっちゃけサラ様のファンクラブなんだけど、活動自体は真面目なものらしいから、これもいい流れなんだろうね。

 この国はただでさえ他国と比べて人口が少ないんだから、いざという時に戦える人材が増えるのは良いことだと思う。

 今まで戦力にカウントしていなかった女性が全員戦列に加わると、それだけで戦力は2倍になるからね。

 日本でも男女平等参画社会とか言って女性の社会進出を推進していたけど、あれって女性の人権云々っていうのは建前で、本音は少子高齢化で減った日本の労働人口を増やすのが目的だと思う。

 剣術云々はともかく、魔法に関しては男性と女性の骨格や筋肉の違いとかは関係無いわけだし、女性も戦闘に備えるって発想は大切だと思うし……。

 初めはサラ様も是非入会をって煩かったらしいけど、サラ様は既に魔法魔道具研究会(ここ)の会長もしてるしね。

 どうしてもって言うなら魔法魔道具研究会(うち)にって言ったら、皆諦めたらしい。

 いや、最初はそれを希望した子もいたんだけど、試しにサラ様とレジーナによるソフィアさんへの格闘指導を見せたら、全員諦めたって……。

 まぁ、気持ちは分かる。

 そう、そのソフィアさんだけど、彼女へのいじめは完全にストップしたみたい。

 それどころか、今までは遠巻きにしていた他領の貴族が、しきりにアプローチを仕掛けてきているんだって。

 特に婚姻相手として……。

 彼女は相手にしていないらしいけどね。

 魔力の多い血と、セーバ(わたし)との繋がりが目当てなのは見え見えだしね。

 もうザパド領には先が無いから、自分の家に入ればいいとか……。

 女性のアメリア公爵とは結婚できないし、セーバ領には他に魔力量が釣り合う貴族はいないから、家の後ろ盾を考えれば自分のところに来るのが一番だ、とか……。

 大体そんな感じみたい。

 そういう馬鹿共は、ソフィア侯爵の代のザパド領を見て、自分の先見の無さに後悔することになるだろうけど……。

 ともあれ、魔法魔道具研究会への入会に続いて、闘技大会での活躍。

 これで、ソフィアさん個人に対する周囲の評価は、かなり上がったと思う。

 キルケ嬢を中心としたザパド領の貴族達は、依然として無視を決め込んでいるらしいけど……。

 次の単位認定試験の勉強を優先したいからって理由で闘技大会への参加を辞退したくせに、結局この前の試験の結果も全然変わらなかったしね。

 むしろ、他の生徒たちと比べても悪いくらい。

 つまり、あれは完全に言い訳ってことで、初めから闘技大会に出場する気も勉強する気も無かったってこと。

 開校式から今までのキルケ嬢の様子を見ていると、たんなるソフィアさんに対する対抗意識だけではないような……。

 ソフィアさん個人に対してというか……もうこの学院の生徒全員の目を気にしていないように見える。

 学院を卒業したら、本気で引きこもるつもりかも……。

 プライド高そうだし、我が道を行くって感じだからね。

 彼女の父親が代官を務めるクボーストは、連邦との国境にある街だから、できれば仲良くしておきたかったけど、今の感じだと仕方がない。

 幸い、彼女の父親はクボーストの“代官”であって、“領主”ではない。

 昔訪れたクボーストの街の印象と、キルケ嬢の言動を考えると、代官(トップ)()()えもやむを得ないかなって思う。

 これからのザパド領の調査結果次第だけど、こちらに実害が無いうちは、もうキルケ嬢のことは放置でいいかな……。

 それよりも今は、人材育成の方が大切だ。

 ソルン帝国のことも考えると、他領の事は関係無いとも言ってられないしね。


更新、楽しみにしていただいている皆様、

先週はスミマセンでした。

今週はちゃんと週2更新いけますので、

今後とも見捨てずお付き合いください。

m(_ _)m


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