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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第3章 アメリア、教育改革をする

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幕間 ~ディアナ視点~

(ディアナ視点)


 静寂。

 そして、歓声。

 ソフィア様の魔法に一瞬静まり返った観客は、我に返ると一斉に騒ぎ出す。


「すげぇ!! なんだ、あれ!? あんなでかいファイアボール、初めて見たぞ!!」


「あのような巨大な……。もしや、ザパド侯爵の娘の魔力量は王族以上か!?」


「えっ? えっ? や、やばい! どうしよう!?」


「わたし、ソフィア様に凄く失礼な態度とっちゃった……」


「だって、ザパド領はもう駄目だってみんな言うし、まさかソフィア様があんなに凄い魔力持ってるなんて知らなかったし……」


 私達が今いるのは、観客の中でも学院生が集まる一角。

 学院生の中には、ソフィア様に対してかなり失礼な態度をとっていた人もいるわけで……。

 死んだな……。

 まぁ、私には関係無いことだけど。

 ソフィア様への嫌がらせに参加していた連中は、怖いだろうなぁ……。

 今年は、ソフィア様が早々にアメリアちゃんの研究会に入ったことで、目立った嫌がらせは起きてなかったけど、それまではかなり酷かったからね。

 ソフィア様は元々平民にも親切だったから、私は好印象だったけど、貴族の中には自分たちと平民を同じに扱うソフィア様を嫌っている者も多かった。

 そして、寄親(よりおや)の貴族が嫌っていれば、平民の意見なんて関係ない。

 ザパド領の他の貴族からの支援も無いと分かると、貴族だけでなく、平民までもがソフィア様に対して失礼な態度を取り始めた。

 困ったものだ……。

 そんな人達は、今この試合を見せられて戦々恐々としている。

 飼い主がいないのをいいことに、散々いじめてきた子猫が、実は恐ろしい魔獣だった。

 飼い主など関係ない。

 今まで相手にされなかっただけで、その気になればいつでも相手を噛み殺す力があったのだ。

 それは、怖いだろう。

 実力行使は勿論、あれだけの魔法の使い手となると……。

 ザパド領など関係なく、彼女個人を欲しがる者も多いと思う。

 今では完全に立ち消えになっているライアン王太子殿下との婚約話だって、もしかしたら復活するかもしれない。

 あれだけの魔法を使える魔力量ならばって……。

 まぁ、それはないか……。

 多分だけど、あれはソフィア様の力じゃない。

 アメリアちゃんの力だ。

 そもそも、ソフィア様にそんなずば抜けた魔力があるなら、もっと早い時期に騒ぎになっているはず。

 少なくとも、昨年の闘技大会でのソフィア様は、あんな非常識な規模の魔法は使っていなかった。

 持って生まれた魔力は、成長したからってそんなに増えたりはしない。

 あれは、きっとアメリアちゃんの研究会で得た力だ。

 セーバの街の職人が、その魔力量からは考えられない仕事量をこなしてしまうのは、王都の職人の間でも有名だ。

 単なる技術だけではない。

 なにか、使える魔力量を増やす秘密があるのだろうと、うちの工房の職人達も噂していた。

 その技術が攻撃魔法にも応用できるのなら……。

 ソフィア様のさっきのファイアボールにも納得がいく。

 学院に通っている生徒は、皆ソフィア様が研究会でアメリアちゃんの指導を受けていることを知ってるから、ソフィア様個人よりも研究会の方に注目する生徒も増えるだろう……。

 これ以上入会希望者が増えてはかなわない。

 なんとしても次の認定試験をパスしなければ!!


「ねぇ、ディアナ。次の試合、始まるよ」


 決意を新たにする私に、アニーが話しかけてくる。

 いつの間にか、周囲の喧騒も落ち着いている。


「また難しい顔してぇ〜。

 どうせ、これ以上アメリア先生の研究会が注目されちゃったら入会できないとか、考えていたんでしょ?

 大丈夫だよ。

 みんながディアナみたいに分析できるわけじゃないから。

 魔法の規模は魔力量で決まる……これ常識。

 だから、さっきのソフィア様の魔法だって、殆どの生徒はソフィア様の魔力量が実はすごかったで納得するって。

 少なくとも、次の試験で合格者が続出して入会希望者が殺到、なんてことにはならないと思うよ」


 呑気な顔でそう(のたま)うアニーは、大商会の次期後継者。

 普段の言動はバカっぽく見えるけど、実は私よりずっと賢い。

 きっと、次の試験では合格を勝ち取ってしまうだろう。

 その動機が、“レジーナ様に叱られたい”ってのが微妙だけど……。

 私は気を取り直して、闘技場の舞台に目を向ける。

 第2試合は、王都チームVSユーグ領チーム。

 これは、順当に王都チームの勝ちだろう。

 ユーグ領は元々農業主体の領地で、あまり戦闘には向いていない。

 戦うのは農地を荒らす動物や弱い魔物ばかりで、大掛かりな戦闘はボストク領頼みらしい。

 代わりに、食糧生産に関しては、ボストク領の分も含めてユーグ領で面倒を見ているそうなので、これは持ちつ持たれつということなのだと思う。

 そんな訳で、ユーグ領での貴族の役割も、戦闘よりはむしろ、大規模な農地の開墾や豊穣魔法といった、平和的なものの方が多いらしい。

 王都防衛を主眼におく王都の貴族とは、求められる役割が違うのだ。

 まぁ、そういうのを抜きにしても、王都チームにはライアン王太子殿下とサラ王女殿下がいる。

 ライアン王太子殿下は、ディビッド公爵以外に並ぶ者のいない高魔力保持者だし、サラ王女殿下は巨人討伐の英雄の一人。

 初めから勝負になるはずがない……。


 そう考えていた私は、予想外の試合展開に、思わず目を見張ることになるのだった。



 

 

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