合同チーム
セーバ領とザパド領の合同チーム。
実のところ、セーバ領は当然の流れとして不参加の予定だった。
というか、初めから参加チームの頭数に入っていなかった。
だって、セーバ領って、レオ君とレジーナの2人だけだからね。
つい最近まで王家の直轄地でただの空き地だったセーバ領には、貴族など誰も住んでいない。
だから、“領”とはいっても、扱いは王家の直轄地と同じで、学院の闘技大会にセーバ領が参加したことなど一度も無いのだ。
参加チームが5チームになったら、トーナメント表とかが面倒になるしね。
だから、今年も例年通り、闘技大会はセーバ領を除く4チームで行う予定だったんだけど……。
参加できるだけの人数がいて、しかも領主の娘がいるのに、ザパド領が欠場というのは色々と聞こえが悪い。
それに、理由はどうあれ、ソフィア嬢が私と付き合うことにザパド侯爵が何も言ってこないというなら、ここはソフィア嬢にはセーバの後ろ盾があると、周りに示すのもいいかもしれない。
「闘技大会への参加人数は15人以内となっていますから、別に少ない分には問題無いでしょう。
ソフィアさんとレオ君とレジーナの3人で、出てみるのはどうですか?」
「えっ? あの? それは……」
「そんなぁ〜〜〜!!!」
私の提案に戸惑うソフィア嬢の声に、サラ様の叫びが重なる。
「そんな、ずるいです!
それでは、私だけ仲間はずれじゃないですか!」
まぁ、そうなるかな……。
自称私の側近のサラ様だけど、王女様であるサラ様の所属は勿論王都なわけで……。
流石に、こちらのチームに入れる訳にはいかない。
今回は、まぁ、敵同士になっちゃうかな……。
「仕方がないだろう?
サラ様は王族で、元々セーバの街の所属って訳じゃないんだから」
と、そこでレオ君が余計な口を挟む。
黙っていればいいのに……。
「なッ、そんなことレオさんに言われなくても分かっています!
でも、納得いかないものは納得いかないんです!」
そして、やいのやいのと最近恒例の言い争いが始まる。
まぁ、レオ君に食って掛かることでガス抜きになるなら、別にいいけどね。
「分かりました!
今回、レオさんとは敵同士です。
手加減しませんから、覚悟してください!」
打倒レオ君と闘志を剥き出しにするサラ様と、そんなサラ様にうんざりした様子のレオ君。
ともあれ、サラ様も納得してくれたみたいだし、これで問題は無さそうだね。
「では、大会の運営の方には、私から話を通しておきます。
ソフィアさんは、出場申し込みの手続きをしておいてくださいね」
「えっ? 私がですか?」
「勿論です。ソフィアさんが大将ですからね」
「いや、それは!?
大将はレジーナ様の方が……」
「いえ、大将はソフィアさんです。
今度の大会では、ソフィアさんがセーバに加わるのではなく、ザパド領にセーバが協力する形にするのが大切で、個々の実力は関係ありません。
大体、レジーナは平民で、レオ君はただの男爵です。
ソフィアさんは侯爵なのですから、常識的に考えてソフィアさんが大将ですよ」
「うぅ〜〜、わかりました」
最近は周囲の貴族からずっと孤立していて、研究会では一番下っ端で一人だけ教えられる立場のソフィア嬢は、自分が侯爵で次期領主だという事を忘れてしまっているところがあるみたい。
謙虚なのは美徳だけど、自分の立場に無自覚なのは、為政者としては問題だ。
今度の大会では、チームリーダーとしてその存在を周囲にアピールしてもらわないとね。
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「殿下、お聞きになられましたか?」
「うん?」
「闘技大会のことですよ。
レジーナ嬢とレオナルド男爵が参加するっていう……」
「ん? あぁ、セーバの者がザパド領に加わるっていう話か……。
あの2領は仲が悪いはずなんだが、同じクラブで関係が改善されたのかもな……。
国内の領地同士の不仲が解消されるのは、王家としても喜ばしいことだし、合同チームという形ならセーバ領の人数にザパド領が合わせたという言い訳も立つ。
本来なら、たった3人での参加など何を考えているのかという話だが、初めて闘技大会に参加するセーバ領に配慮してということなら、試合内容は考慮されないだろう。
あくまで、参加することに意味があるのだからな」
「いや、そうではなくてですね……。
大会では僕も殿下とは敵同士ですから詳細は言えませんけど、ボストク領では今、レジーナ嬢とレオナルド男爵への対策で大わらわですよ。
……サラ王女殿下は何もおっしゃらないのですか?」
「いや、何か言ってはいたが……。
あいつの言うことは、どうも身贔屓が過ぎるというか、大袈裟でな……。
あまり情報としては役に立たん。
まぁ、レオナルド男爵はゴーレム討伐にも参加しているし、お前の言う通り剣の技量は高いのだろう。
だが、そんなものは接近させなければ何の問題も無い。
一対一ならともかく、集団戦で5倍の兵力差だぞ。
遠距離から魔法で集中砲火を仕掛ければ、それで終わりだ。
可哀想だが、勝負にもならないよ」
(常識的に考えれば、殿下のおっしゃることは間違ってはいない。あれは、実際に経験してみなければ分からないだろう……)
全く気にする様子のないライアン王太子殿下に、ユリウス伯爵は自分がボストクで体験した試合を思い出しながら、そう結論付けた。
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ありがとうございました。
いや、ブクマや評価はまだなんだよねという読者様。
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ともあれ、今後ともよろしくお願いいたします。




