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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第3章 アメリア、教育改革をする

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旅の話

 私がザパド領に鉄道を引く目的。

 それは、一生旅して暮らしたいという前世からの私の夢を叶えるため!

 決してザパド領の救済のためでも王国の繁栄のためでもない。

 それどころか、セーバの街の発展のためですらない。

 全ては、私の個人的な夢の実現のためだ!

 思えばこの世界に転生して以来、私は自分の保身のためにずっと頑張ってきた。

 最初は言葉の問題で、次は魔力量の問題。

 身分的には高位貴族でありながら、ちょっと間違えれば、それが逆に命取りになるような状況……。

 そんな中で魔法の研究を重ね、セーバの街を発展させ、やっとここまでこれた。

 最近では、セーバの街は勿論、王宮や王都の街でも、私のことを侮蔑の目で見る人は殆どいない。

 当然打算あっての対応なんだろうけど、皆が私を対等に扱ってくれるし、王妃様や国王陛下もよくしてくれる。

 少なくとも、今の現状を維持する限り、魔力量を理由に突然爵位や領主の地位を取り上げられるとかはなさそうだ。

 この国の魔力至上主義を変えるのにはまだ時間がかかりそうだけど、既に種は()かれている。

 セーバの街やこの学院の教師、この研究会の出身者、少ない魔力で動く魔道具や一般教養検定の導入……。

 そういった人や物を通して、この国の価値観も少しは変わっていってくれると思う。

 そうなれば、将来魔力量を理由に私が迫害される可能性も低い。

 まずは、足元の安全は確保された。

 となれば、私の人生計画も次の段階に進むべき。

 折角の異世界!

 リアルRPG!

 旅人の血が騒ぐね!!

 ただ、ここで問題になるのが資金と移動手段。

 前世でも、インターネットを使って仕事をしながら旅を続けている人がいた。

 私のように、日本で貯めた貯金を切り崩しながらの旅人と違って、彼らは好きなだけ旅を続けることができるし、帰国後の社会復帰の心配も無い。

 私も何とかそんなライフスタイルを確立できないかと、そんな人達に憧れたりもしたものだ。

 で、私は考えた。

 この世界でそのライフスタイルを実現できないものかと……。

 身分としてはセーバの街の領主のままで、旅の資金はセーバの街やアメリア商会が稼ぎ出してくれる。

 私は旅を続けながら、必要に応じて仕事の指示を出すだけでいい。

 知らない街のカフェに座って、セーバからの報告書に目を通す。

 必要な指示を出し終えたら、次の街に移動だ。

 うん! ちょっと、かっこいいね。

 そんな夢(妄想)を実現するためには、いくつかの条件をクリアしなければならない。

 第一に、速い移動手段。

 何か大きな問題が起きた時にすぐにセーバの街に戻れる移動手段がないと、この計画は難しいと思う。

 何かあれば、すぐに日本に戻れる。その前提があるから、みな気軽に地球の裏側に単身赴任とかできたのだ。

 だから、同じように海外に仕事に行くにしても、船員や南極観測隊なんかになると、全然印象が変わってくる。

 船員は、一旦船が出港してしまえば、たとえ家族に何かあっても、船が次の港に着くまでは日本に帰ることはできない。

 南極観測隊は言うまでもない……。

 この世界では、他国はおろか他領から帰ってくるだけでも、通常は数週間から1ヶ月程度はかかってしまう。

 フェルディさんがレボル商会の仕事で倭国に行った時には、かなり急いで往復1年近くはかかったという。

 つまり、現状の交通手段だと、旅先でセーバの危機を知らされても、戻る頃には全てが終わっているということになる。

 これだと、流石に領主をしながら、というのは厳しいよね。

 まぁ、そういう難しいことを抜きにしても、やはり旅を自由に楽しむためには、もう少しお手軽な移動手段が欲しいところだ。

 RPGだって、マップが広がればワープポイントや速い移動手段は必要不可欠なわけで、一々一度通ったルートをモンスターを倒しながら何度も往復しなければいけないなんて、やってられるか!って感じだ。

 と、言うわけで、この世界を満喫するためには、セーバから倭国まで伸びる大陸横断鉄道は不可欠なわけ。

 で、第二。

 通信及び旅先での資金受け取り場所の確保。

 やはり、何かあった時に、すぐに連絡の取れる手段の確保は大切だ。

 前世でもインターネットや携帯の無かった時代、行き先未定の自由旅行者との連絡は大変だったらしい。

 旅人は旅先から日本に手紙を出せばいいから問題無い。

 (届いたのが帰国後とかはあったらしいけど……)

 問題は、住所不定の旅人に日本の家族や友人が手紙を出す場合。

 よく使われたのが、日本大使館や郵便局。

 日本の家族や友人は、相手がこれから向かう国に当たりを付けて、その国の日本大使館留め、主要都市の郵便局留めで手紙を出す。

 旅人はそこに立ち寄って、自分宛の手紙が届いていないか確認する。

 そんな感じだったらしい。

 う〜ん、現状だと、それすらも難しいんだよね。

 すぐに思いつくのは、商業ギルド留めで私宛の手紙を出してもらう方法だけど……。

 ただの報告書ならともかく、緊急を要する手紙だと魔鳥便でもタイムラグが大きいし、それが機密情報ともなるとたとえ商業ギルドとはいえ、手放しに信用はできない。

 商業ギルドって、そもそも商業連邦の下部組織だからね……。

 ここはやはり、セーバ独自の高速通信網を確保したいところだ。

 と、いうわけで、大陸横断鉄道。

 セーバにおける“鉄道”は、同時に通信施設でもある。

 そして、現状セーバ領だけでなく、王家直轄地やドワルグ辺境伯領においても、鉄道関係施設についてはセーバの街の治外法権が認められている。

 つまり、王都やドワルグの“駅”は、セーバの街の大使館も兼ねているということ。

 代わりに、王家やドワルグ辺境伯には通信施設の利用も認めているし、鉄道関係の保守管理は全てセーバの街で請け負っている。

 この条件を連邦や倭国でも通せれば、駅の通信施設を使って簡単にセーバの街と連絡を取り合えるし、旅先での旅費の受け取りも楽になる。

 そう、旅の資金の受け取り。

 これ、前世の旅でも意外と苦労したところなんだよね。

 たとえ貧乏旅行であっても、旅の日数が数カ月以上ともなれば、旅費はそれなりの金額になってくる。

 月10万円の予算で3ヶ月として、それでも30万円。

 これが1年なら、単純に120万円。

 日本より遥かに治安の悪い見知らぬ街で、そんな大金を持って歩くなんて、それこそ気が気じゃないよね。

 そんなわけで、昔はトラベラーズチェックとか、郵便局留めの外国郵便為替とかが利用されたみたいだけど、私は(もっぱ)らクレジットカードのキャッシングを利用していた。

 大手クレジット会社のカードなら、発展途上国でも大抵は利用できたし、現地通貨で引き出せるから両替の手間も省ける。

 本当に旅費を節約しようと思えば、どこで両替するかとか、為替レート云々とかにも(こだわ)るんだけど、私は利便性と安全性を考慮してあまり細かいところは気にしなかった。

 でも、これも盲点があって……。

 某発展途上国の首都で、いつものようにATMからカードで旅費を引き出そうとした時のこと……。

 なんと! カードが食べられた!

 まぁ、単純にATMに入れたカードが出てこなくなり、そのまま取り出せなくなったことがあったんだよね。

 えっ? サポートセンター?

 勿論、ATMに書かれているサポートセンターには連絡しましたよ。

 対応に、1週間かかるって言われたけど……。

 結局、その場でカード会社のサポートセンターに連絡して、飲み込まれたカードは紛失扱いにしてもらった。

 一応、予備のカードも持ってたから事なきを得たけど、その後しばらくはATMを利用する度にドキドキしたものだ……。

 まぁ、あれだけ文明が発展していた前世でもそんなトラブルはあったわけで、それがこの世界ともなると、問題は更に大変なことになる。

 ATMはおろか、銀行すら無い世界だからね。

 全ては現金決済!

 で、金貨って重いんだよ……。

 だから、個人の旅費程度ならともかく、大きな商会同士の取引なんかで大金が動く場合、この世界では魔石が利用される。

 この世界の魔力と金貨は固定相場で、金貨1枚が1000MPで取引される。

 だから、ピンポン玉くらいの大きめの魔石に目一杯魔力を詰めると、それだけで金貨100枚分くらいになるのだ。

 これなら大金を持ち歩いても、それほど肩が凝ることもなさそう。

 旅って、自分の荷物をずっと持ち歩くことになるから、ちょっとした重さの違いも馬鹿にできないんだよね。

 なら、問題無いでしょうって?

 いや、いや、いや、単純に怖いでしょう? 盗まれたり失くしたりしないかって……。

 旅先でそんな大金持ち歩いていたら、誰に目をつけられるか分かったものではないでしょう?

 手持ちの現金は最小限!

 これが基本だ。

 で、話を戻すと、大陸横断鉄道を引いて、各駅にアメリア商会用の通信施設を作れば、旅先で仕事もできるし、そこを利用して資金の調達も簡単だと思うんだよね。

 それに、何より……。


「大陸横断鉄道で倭国までって、浪漫がありませんか?」


 目をキラキラさせながら旅の想いを伝える私に……。

 何故か、皆が微笑ましいものを見る目を向けるのだった。



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