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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第3章 アメリア、教育改革をする

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個人面談

 コン、コン、コン


「どうぞ」


「失礼します」


 ここは魔法学院の学院長室。

 あの開校式の後、私が言った通りソフィアさんが学院長室にやって来た。

 これから、ザパド侯爵の娘、ソフィア嬢との個人面談、説教タイムだ……建前上はね。

 実のところ、このような場を早々に持つことができるとは考えていなかったから、今回の件はある意味ラッキーだったと言える。

 ソフィア嬢とは、タイミングを見て個人的に話す機会を持ちたいと思っていたんだよ。

 今後のザパド領についてね。

 レジーナの調査や周囲の噂を聞く限り、ソフィア嬢は非常に優秀だ。

 そして何より、平民に対する偏見がない。

 どうも私の情報を集める目的だったらしいけど、身分を隠して街で平民から私の話を聞いたりもしていたらしい。

 別に、私の悪口を広めたり、セーバの街の弱みを探したり、というわけではない。

 セーバの街がどのようなことをして、結果どのように街の人達の生活が変わったのか。

 皆がセーバの街とアメリア様を褒めるけど、一体どんなところが今までの貴族と違うのか。

 そういったことを、偉ぶるでもなく、不機嫌になるでもなく、自然な会話の流れの中で聞いて回っていたらしい。

 貴族令嬢がだよ!

 ザパド侯爵の娘だよ!?

 一般的な上級貴族の令嬢なんて、欲しい物があれば出入りの商人を屋敷に呼びつけるのが普通なんだよ。

 直接店に行くにしても、店の前まで馬車で乗り付けて、相手をするのは精々が店主だけで、それ以外の従業員となんて口も利かないんだから。

 学院が従者という名目で平民の子供を受け入れているのだって、一つには貴族としか接したことのない生徒に、平民との付き合い方を学ばせるという意味もあるんだからね。

 それを考えると、ソフィア嬢のしたことが、普通の貴族令嬢にとってどれだけのことか分かると思う。

 私がソフィア嬢の話を聞いたお店の人も、どこかのお嬢様のお忍びだとは思ったけど、特に話していて不快なことはなかったと言っていたしね。

 えっ? お前も上級貴族だろうって?

 いや、私、元バックパッカーですから。

 知らない街の屋台のおばさんと仲良くなるのも、値切り交渉も情報収集も、普通にできますよ。

 一応、公爵令嬢ですけどね。

 ともあれ、私や周囲が集めたソフィア嬢の情報から判断するに、ソフィア嬢には是非“ザパド侯爵”を継いでもらいたい!

 彼女となら、良い関係が作れると思うんだよ。

 なんだかんだで、ザパド領は心配だしね……。

 あっ、別にザパド侯爵はどうでもいいんだけど、そこに住んでいる人に罪は無いから。

 実際、この国唯一の陸路での交易ルートを、遊ばせておくのも勿体無い。

 船旅も魅力的だけど、やっぱり陸路での旅の方が色々楽しめるしね。

 私の壮大な野望のためにも、ソフィア嬢には頑張ってもらいたいところだ。

 学院在学中、ゆっくりと彼女を観察しつつ、折を見て今後のザパド領についての話し合いの機会を設けるつもりだった。

 私と個人的に仲が良いと思われると、ザパド侯爵の手前都合が悪いから、あくまでも教師と生徒として不自然に思われないかたちで、話し合いの機会を作ろうと思っていたのだ。

 表面上は不仲を装うという当初の計画は、学院初日に早々に頓挫してしまったけど、代わりに周囲の目を気にすることなく、堂々と個人的な話し合いをする機会ができた。

 これからの話し合いにもよるし、開校式でのソフィア嬢の発言が今後の後継問題にどう影響するかも分からないけど、いずれにしても何らかのバックアップは必要になるだろう。

 まずはどうして開校式という公の場で、あのような迂闊な発言をしたのか、その確認からだね。


「アメリア先生には謝罪のつもりが、逆にお手間を取らせる結果となってしまい、本当に申し訳ございません」


 そう言って謝ってくれるソフィア嬢には悪いけど、大切なのはこれからのことだ。

 もし、あのような迂闊な発言が彼女の今の実力なら、これからの彼女との付き合い方も考え直さないといけないからね。

 平民の価値を認めた上での街での行動なら評価できるけど、たんに貴族としての教育の足りていないお馬鹿さんなら、切り捨てることも考慮にいれる必要がある。

 統治者として考えると、無駄にプライドの高い頑固者も、善良でお馬鹿な領主も、周囲に迷惑をかけるという点ではどっちもどっちだからね。

 何の狙いも打算もなく、ただお父さんが失礼なことを言ってごめんなさいってことなら、教師と生徒としては付き合えるけど、領主としては付き合えない。

 その辺、どうなんだろう……。


「ソフィアさん、単刀直入に聞きます。

 どうしてあのような迂闊な発言をしたのですか?

 あの発言の意味を、あなたはどう理解していますか?」


 しっかりと真意を見定めようとする私の視線を受けて、彼女はゆっくりと話し出す。


「あの発言が、現ザパド侯爵に対する一方的な裏切りを意味し、それによって私が次期後継者から外される可能性があることは、自分でも理解しているつもりです……。

 でも! ザパド領には時間がありません!

 私がこの学院を卒業し、貴族としての地盤を固め、そして父より正式にザパド侯爵の名を引き継ぐまで……ザパド領は持ち堪えられません。

 たとえ強引な方法で父から領主の座を奪い取ることになっても、それ以前に父や私がザパド領を追われるかたちになっても、それでアメリア公爵様や王家の支援を受けられるのなら、黙ってザパド領が滅びるのを待つよりは余程よいと、そう判断しました」


 なんか、想像以上に思い詰めちゃってるね。

 さて、どうしたものか……。


メリークリスマスです。

今年は、特に予定はないと言っても同情されたりしなさそう。


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