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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第3章 アメリア、教育改革をする

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検定試験

 一般教養担当の学科の教師陣には、カリキュラムや試験問題、参考書等の作成を行ってもらいながら、同時に指導内容の見直しを。

 実技訓練担当の実技の教師陣は、セーバリア学園式魔力制御の訓練を。

 では、私はというと、学院長として全体を監督しつつ、今後の学院運営について王妃様やお父様と実務レベルでの擦り合わせを行っていた。

 王妃様、お父様に提案した、今回の学院改革の目玉。

 それは、単位認定試験の導入と、その成績の一般公開、そして一般教養検定試験の導入だ。

 簡単に言ってしまうと、生徒は在学中十分理解できたと思う科目について、単位認定試験を受ける。

 そして、その結果は全て学院の掲示板に貼り出される。

 誰々は今どのくらい単位を取っているとか、誰々は〇〇の試験で何点だったとか……。

 別にそれでどうこうということはない。

 極端な話、単位なんて一つも取らなくても、ちゃんと卒業はできる。

 基本的には、今まで通り。

 一般教養の授業自体は計画的に決められたカリキュラム通りに行われるけど、それは教師側の問題。

 生徒にしてみれば、今まで通りに授業を受けて、授業で分からないところがあれば、後で教師のところに聞きに行けばいい。

 今までと、何も変わらない。

 変わるのは、その生徒の一般教養のレベルが、目に見える形で周囲に示されてしまうところだ。

 魔法なら、実技訓練の時に使った魔法を見れば、あいつはこのくらいの実力だってひと目で分かる。

 お茶会やパーティーも、うまく主催すれば周囲の評価が上がるので、これも実力は一目瞭然。

 では、一般教養、いわゆる学力はどうか?

 これ、すごく分かりにくい……。

 知らなくても知ってるふりの上手い人もいるし、逆に非常に博識でもしゃべるのが下手で誤解される人もいる。

 要するに、この国には“学院卒”という看板以外に、個人の学力レベルを客観的に判断する尺度が何もないんだよね。

 で、その学院はというと、お金と魔力さえあれば、多少あれでも普通に卒業できちゃう……。

 所詮は、まだ14,15歳の子供だ。

 将来、仕事をするようになった時に困るなんて考えない。

 周囲の評価は魔力や社交で決まるのだから、学問など程々にやっておけばいいのだ……と。

 これが今の学院の現状だったりするんだよね。

 そんな現状に、国の上層部が疑問を持ち始めたきっかけ……。

 実は、原因は“幼少期の私のやらかし”だったりする……。

 セーバの街に行く前、私は一時(いっとき)お父様の書類仕事のお手伝いをしていた。

 お父様は私と一緒に仕事ができると嬉しそうで、アメリアがいるととても助かると、よく褒めてくれていた。

 でも、あれ、娘云々を抜きにしても、リップサービスとかでなく、本気で助かっていたらしい。

 特に、私が見せた前世式の書類のまとめ方や情報整理の仕方、私が指摘した書類不備の着眼点等は、王宮の文官達に大変な衝撃を与えたそうだ。

 そうこうしているうちに、私は王都を離れたわけだけど、そうしたら今度は急成長するセーバの街の噂が聞こえてきた……。

 セーバの街の学校で教育された平民達は、何処の街の貴族よりも商人よりも優秀だと……。

 事ここに至って、王宮上層部は、はっきりと自覚したそうだ。

 モーシェブニ魔法学院は、この国の最高学府として、全くその役目を果たしていない!……と。

 そこから始まった学院の大掃除。

 まずは、前学院長を始めとした利権狙いの無能な教師の一掃。

 タイミングの良いことに、これらの教育者としては問題のある教師の大半は、ザパド侯爵の後押しで送り込まれた者だったそうで、ザパド侯爵が引き篭もってしまった今、排除するのはそれ程難しくはなかったんだって。

 その後、主だった貴族に私の学院長就任を根回しし、そして今に至るらしい。

 そんな状況だから、これは単に学院の指導方針云々の話ではなくて、学院の改革を通してこの国の貴族の魔法以外の能力を底上げしたいという、書類仕事に忙殺される王国上層部の切実な願いなのだとか……。

 だから、国王陛下も王妃様も、勿論お父様も、全面的に協力の姿勢だ。


 そこで、私が提案したのが、“一般教養検定試験”の導入。

 試験内容は、学院で生徒が受ける単位認定試験と同じ。

 それを、試験のみ誰でも受けられるようにする。

 つまり、学院の生徒の立場で考えると、在学中にしっかり勉強して試験で高成績を収めて卒業してもいいし、在学中の成績が振るわなくても、卒業後に勉強して試験のみ受け直すことが可能ということ。

 そして、決定的なのが、この成績は一般公開され、誰でも自由に閲覧できるというところ。

 王宮は、検定試験の導入と同時に、王宮で働く全ての貴族、職員に、この検定試験の点数の提出を義務付けることを決定している。

 勿論、再来年度から学院を卒業する生徒にも、在学中の試験結果の提出が求められることになる。

 そうなれば、王宮以外の部所や領地の貴族、商会等も、人事においては検定試験の点数も考慮するようになるのは時間の問題だ。

 これによって、この国には魔力量以外に、個人の能力を測る客観的な物差しができることになる!

 実際のところ、仕事の中には魔力など全く必要としないものも多いのだ。

 今までは、魔力量以外に個人の能力を評価する基準がなかったけど、これからは違う。

 魔力が高い血筋の家はそれなりに裕福で、そういった家の子供ならしっかりとした教育を受けているはず。

 そんな漠然としたイメージで、魔力量の多い人間は他も優秀、みたいに判断されているけど、これからはそうはいかない。

 「検定試験の点数は?」って聞かれてしまえば、誤魔化しようがないからね。

 逆に、ただ魔力が低いだけで、それ以外は優秀という人達にとっては、この制度は大きなチャンスになる。

 魔力量や経済的な理由で、学院に通うことなどできない。

 魔力量が理由で、貴族家や大商会では相手にされない。

 でも、独学で文字を覚え、計算を覚え、その辺の貴族なんかよりも余程しっかりした学識を持つ。

 そういう人達にとって、この検定試験は自分の能力を示す絶好の機会となるだろう。

 さぁ、魔力至上主義の上に胡座(あぐら)をかいていた皆さん、これから大変なことが起こりますよ。

 この国の最低賃金は魔力量によって決められているからね。

 魔力の高い人間は、雇うのにお金がかかるのだ。

 今までは、魔力量と教育レベル、魔法以外の能力がごちゃ混ぜに判断されていたから、多少賃金は高くなっても、信用できる人間を雇いたいってことで、魔力の高い人間が優遇されていたけど……。

 でも、これからはそうはいかない。

 魔力量が少ないってことは、それだけ安く雇えるってこと。

 しかも、境遇に折れず努力して貴族並みの学識を身に付けてきたとなれば、その優秀さにも期待できる。

 魔法に関係ない仕事をさせるのなら、どちらが得かは明白だ。

 体裁を気にする貴族はともかく、実利を重んじる商人などは、今後、魔力よりも検定試験の点数の方を重視するようになるんじゃないかなぁ……。

 なんだかんだで魔法によって支えられている文明だし、まだまだ暴力(戦闘力)が幅を利かせる世界だから、これでいきなり下剋上みたいなことは起きないと思う。

 それに、これでは不味いと魔力の多い人間が真面目に勉強し出せば、結局は元通りだ。

 学力は努力次第で誰でも身に付けられるけど、魔力量は完全に持って生まれた才能だからね。

 死ぬ気で勉強すれば、誰でも東大は狙えるかもしれないけど、どんなに頑張っても身長150cmの人にダンクシュートは無理だ。

 まぁ、そういうこと。

 だから、これで魔力量に関わらず、皆が平等になるなんて大それたことは考えていない。

 それでも、私が庶民並みの魔力だからってだけで、一方的に馬鹿にされない程度には、この国の価値観も変わると思う。

 いずれにしても、名誉(建前)を重んじる貴族としては、平民よりも教養がない、なんて評判は看過できないよね。


 

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