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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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襲撃、その後

(ゲイズ視点)


『いたか!』

『こちらには、いません!!』

『えぇい! まだ遠くには行っていないはずだ、探せ!』


「………………。(チッ、何故こんなに早く王都軍が……)」


 ここは、王家直轄領。

 王都から徒歩で1日ほどの場所。

 もう少しでザパド領だ。

 目標の襲撃に失敗した俺は、一人包囲を突破し、何とかここまで逃げ延びて来た。

 無理な加速魔法の使い過ぎで、身体中が悲鳴をあげている。

 それでも、追手は完全に振り切った。

 ここまで、たったの2日。

 途中ほんの短い仮眠をとっただけで、ほぼ2日間走り続けたのだ。

 通常なら、馬を使って街道を進んでも、優に4日はかかる距離だ。

 伝令など、届く訳がない!

 何故こうも早く、王都からの追手が出ている??

 王家は、もう襲撃のことを知ってるのか?

 不可能だろう! ふつう!

 ……いや、現実に追手と思われる兵がこれだけいるのだ。

 列車襲撃の情報は、間違いなく王都に届いているのだろう……。

 現実を受け入れろ!

 考えられる可能性は2つ。

 一つは、王都に襲撃の件を知らせるために、一旦列車が王都に戻った可能性。

 忌々しいことに、あの非常識な列車を使えば、あそこから王都まで1日で戻れるはずだ。

 もう一つは、セーバの領都に到着してすぐに、魔鳥便を使って王都に知らせたかだが……。

 こちらはギリギリな気もするが、全く不可能とも言い切れないだろう。

 いずれにせよ、この国の貴族(アメリア)も王族も、こちらが思っていたよりもずっと優秀だったということだ。

 ザパド侯爵やクボーストの代官……ボダン伯爵の言動からこの国の貴族のレベルを計っていたが、どうも楽観し過ぎていたらしい。

 もっと、気を引き締めてかかる必要があるな。

 俺は、追手の兵を隠れてやり過ごし、ザパド領の領都ザパドへと向かった。


> 


(アメリア視点)


 あの列車襲撃の後、私達の応援に駆けつけてくれたアディさんと自警団の人達は、そのまま現場に残って逃亡した数名の賊の捜索を行った。

 同時に王都にも知らせて、王都側からも捜索を行った。

 迅速な対応が功を奏し、現場を逃げ出した数名の賊も捕まえることができた。

 ただ、一名を除いては……。

 それは、今回の襲撃のリーダーで、唯一今回の事件の首謀者との繋がりがあると思われる男。

 捕まえた犯人達を尋問して分かったのは、今回の事件の首謀者がとても用心深いということだけだ。

 捕まえた者は、リーダー格の3人を除いて全てが臨時雇い(アルバイト)で、雇い主の名前すら知らない。

 半数くらいは一応冒険者らしいが、冒険者ギルドを通しての依頼ではないから、結局何も分からない。

 なんか適当な理由を言われて雇われたらしいけど、雇い主に会ったわけでも契約書を交わしたわけでもないらしい。

 だいぶ高めの報酬の半額を前金でもらって、成功すれば倍額払うとか言われたらしい。

 依頼者は国を憂う身分ある方だからって、適当過ぎるでしょ!

 よくそんな怪しい依頼、引き受けたものだ。

 まぁ、そう考えるのは私が元日本人だからで、前世でも発展途上国ではこういうのも珍しくなかった。

 私も、夕食とその日の宿目当てに、その場で誘われて一日その家の仕事を手伝ったりしたし……。

 ヤバい話だと、国境で知らない人が声をかけてきて、「手間賃出すから国境の向こうで待ってる友人に、これ届けてくれないか? 入国税高いんだよね」ってやつ。

 親切心や小銭目当てでうっかり引き受けて、密輸の片棒を(かつ)がされちゃうパターン。

 前世でも、実際それで逮捕された旅行者の話とか、よく聞いたし……。

 そういう法整備とか教育とかの遅れたこの世界なら、ほいほい騙されちゃう人も多いのだろう。

 いや、襲撃自体は分かっていた訳だから、別に騙されたって訳でもないのか……。

 たとえ評判がどうであれ、“公爵”という肩書の人間を襲うことが、一体どういうことなのか、分かっていないだけで……。

 捕らえた犯人は皆ザパド領にいた者で、今現在、ザパド領内では、「魔力の少ないアメリア公爵は、貴族であって貴族ではない」みたいな主張がまかり通っているらしい。

 そういうのもあって、貴族でも襲うのが私なら問題無いみたいに、言いくるめられた馬鹿も多かったらしい。

 冗談じゃない!

 ダメに決まってるだろ!

 そもそも、あの列車には私の他にサラ様も乗っていたのだから、たとえ狙いが私でも、行為としては王族への襲撃だ。

 実際、サラ様にも攻撃仕掛けてるしね……。

 だから、彼らがたとえ無知であっても関係ない。

 取り調べが済めば、王都に送られて即処刑決定だ。

 で、問題は、リーダー格の3人。

 こちらは、本人や雇った冒険者やゴロツキ達の証言から、確信犯であることは間違いない。

 襲撃計画の意味も目的も、事の重大性も、全て承知の上で、この襲撃に参加している。

 ただし、依頼主だけは知らないと言う。

 ただ、自分達は傭兵ギルドの傭兵で、ギルドを通した依頼で仕事をしていただけだからと……。


 傭兵ギルドについては、サマンサが教えてくれた。

 驚いたことに、彼女も昔所属していたことがあるんだって!

 “傭兵ギルド”というのは、昔から連邦に根を張る政府公認の裏組織みたいなものらしい。

 なに、それ!?って感じだけど……。

 元々は、世界中で戦乱が絶えなかった時代にできた、傭兵達の互助組織だったらしい。

 マキャベリ先生の言を借りるまでもなく、本来金で動く“傭兵”というのは役に立たない。

 だって、利害で動く“傭兵”は、雇い主が不利になると必ず裏切るから。

 本当に戦ってもらいたい時に戦ってくれないのだから、役に立たないと言われても仕方がない。

 それでは、誰も傭兵を雇ってくれなくなってしまう……。

 そこで作られたのが、“傭兵ギルド”。

 傭兵ギルドは、要するに傭兵の人材派遣会社だ。

 傭兵ギルドは、依頼主の要望に合わせて傭兵に仕事を持ちかける。

 その仕事を受ける、受けないは、その傭兵の自由だ。

 ただし、一旦その仕事を引き受けたら、依頼者を裏切ることは絶対に許されない。

 勿論、合法非合法関係無くだ。

 非合法な仕事をしたくないのなら、初めからその仕事を受けなければいいだけの話。

 一旦受けたなら、依頼された仕事は必ずやり遂げる。

 もし裏切ったら……。

 その時は、傭兵ギルドの信用をかけた血の粛清が待っている。

 自分の命は勿論、一族郎党、友人にいたるまで、全て皆殺しらしい……。

 そして、傭兵ギルドは、顧客の守秘義務を徹底している。

 たとえ国家相手であろうと、決して顧客の情報は漏らさないそうだ。

 それから、もう一つ。

 傭兵ギルドには、ビャバール商業連邦の軍事力という側面もあるとか。

 ビャバール商業連邦は、元々複数の小国や大貴族、大商人等が、お互いの商業的利害の元に集まってできた、巨大複合企業(コングロマリット)のような存在らしい。

 その性質上、連邦所属の各国が自衛レベルの軍隊を持っているだけで、連邦としての軍というのは存在しない。

 また、連邦以外の国との国家規模の戦争になった場合、各々の加盟国の軍隊を一つにまとめる事も非常に難しい。

 そんな国なら、武力で簡単に征服できてしまうのでは?

 それに対する連邦の対抗手段が、傭兵ギルドなんだって。

 連邦全体で数千とも数万とも言われる傭兵ギルド登録の傭兵全てを連邦が雇えば、それは国家規模の軍隊だ。

 そういう理由もあって、傭兵ギルドは非合法な仕事を請負いながらも、その存在が公に認められているそうだ。

 ただ、それは、傭兵ギルドの傭兵には法の手が届かないってことではなくて、雇われた傭兵が仕事として犯罪を行えば、当然その傭兵も依頼主も刑罰を受けることになる。

 認められているのは、傭兵ギルドが犯罪の仲介をすることだけだから。

 なんか、スイス銀行みたい……とか思った。

 ちなみに、サマンサは元々この国の先代国王の依頼で、当時王太子だったお父様の護衛として傭兵ギルドから派遣されていたんだって。

 今は王家との契約も切れていて、傭兵ギルドも正式に脱退しているそうだ。

 この事を他者(わたし)に話す許可も、依頼主であるモーシェブニ魔法王家からもらっているので、特に問題はないらしい。

 傭兵ギルドに関しても、一般にはあまり知られていないけど、顧客となる権力者や富裕層の間では普通に知られているので、特に秘密というわけでもないんだって。


 で、話を戻すと、捕らえた襲撃者の3人というのが、その傭兵ギルドの傭兵らしい。

 その事自体は、本人達も認めていた。

 その意味するところは、自分達はたとえ知っていたとしても、絶対に依頼者に関する情報を漏らすことはないってこと。

 実際、彼らは既に何度も自害を試みているしね……。

 というわけで、結局分かったのは、襲撃者の大半がザパド領でふらふらしていた冒険者やゴロツキであること。

 リーダー格の3人が、傭兵ギルドの傭兵であること。

 これだけだ。

 傭兵ギルドに依頼できるくらいだから、それなりの身分と資金力のある奴が犯人なんだろうけど……。

 状況的にはザパド侯爵が怪しいけど、これだけではちょっと決めつけられないよねぇ……。


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