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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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通信?? 〜カルロス国王視点〜

(カルロス国王視点)


 アメリアとサラが王都を離れ、ここ最近の忙しさからやっと解放された私は、そのまま椅子の背にだらしなく体重を預けた。


「どうした? (サラ)が帰ってしまったのが、そんなにショックか?」


 私の横で書類に目を通していた兄上が、私の方を呆れたような目で見ているが……。


「兄上とは違います。

 ほっとしているんですよ、私は。

 これでアメリアの件に関する情報操作も、一段落しましたからね」


 私は、逆に兄を睨み返してやった。

 元はと言えば、兄上のところの問題児が原因なのに……。

 今、この部屋にいるのは私と兄上の二人だけだ。

 少しくらい気を抜いてもバチは当たらないだろう。

 半年ほど前、ゴーレム討伐の褒賞として許可をもらっている王都への鉄道工事を開始すると、アメリアより知らせが届いた。

 アメリアがわざわざ直接、王都まで知らせに来たそうだ。


『……今度王都に作られる駅舎には、“通信施設”も作る予定なのですが、知らない人に説明しても、どうもうまく理解してもらえないようで……。

 王都の下見もありましたし、直接会って説明した方が分かりやすいかなぁ、と……』


 兄上と義姉上(アリッサ先輩)はアメリアの話を聞くと、その場でベラとのお茶会を決定したそうだ。


『……では、アメリア。

 その“通信施設”を使えば、セーバで書かれた手紙が一瞬で王都に届くというのですか?』


『えぇと、全く同じ手紙ではないのですが……。

 伝えたい文面をすぐに確認できるというか……』


 後から、私も兄上とベラに説明されたが、それは非常に理解に苦しむ内容だった。

 つまり、線路を介してセーバと王都の駅に設置した金属板が繋がっており、金魔法を使って遠く離れた相手側の金属板を変形させ、彫刻のように伝えたい文面を浮かび上がらせると……。

 そんなことが、本当に可能なのか?

 そもそも、そんな距離まで魔力を通すのに、一体どれほどの魔力量が必要になるか見当もつかない……。

 セーバの街には、それ程の魔力を持つ者がいるということか?

 こちらとあちらで、最低でも二人……。

 いや、アメリアがほんの僅かな魔力でとんでもない大魔法を生み出すのは、今に始まったことではない。

 アメリアができると言うのなら、本当にできるのだろう。

 問題は、そこではない。

 アメリアは、列車が開通すれば2日でセーバの街まで戻れるし、もし何かあってもすぐに連絡が取れるから、自分が王都の学院に通っている間も、特に代官等は必要ないと、そう主張していたらしい……。

 あの娘は、そんなことを心配していたのか……。

 確かに、そんな事を言っていた貴族もいたが、そんなものはこちらで抑え込むつもりだった。

「代官を立てるくらいなら学院には行かない」などと言い出されては、こちらが困るのだ。

 アメリアには、以前から問題になっている王都の学院の改革をやってもらわなければならないのだから……。

 (うるさ)い貴族達をどう抑えようかと、そんな事を考えているうちに、アメリアは問題を自分で勝手に解決してしまった。

 こちらの予想を超える、斜め上の方法でだ……。

 セーバの街まで2日だと!

 手紙なら一瞬!?

 世界が変わるぞ!!

 地方の町や村を治める貴族の中には、ずっと王都に居て、何年も自分の領地に戻っていないような者も多い。

 セーバの利権狙いの貴族が多いだけで、別にアメリアが学院に通うために数年領都を離れるくらい、大した問題ではないのだが……。

 些細な問題解決のためにあの娘が持ち出した“鉄道”、そして“通信”は、この世界の常識をひっくり返すくらいのとんでもない物だった。

 この情報を知れば、商業大国たる連邦も黙っていまい。

 扱いを誤れば、戦争にさえ発展しかねん……。

 一瞬、鉄道敷設を禁止しようかとも考えたが、それでアメリアが鉄道技術を倭国か連邦に売りでもしたら、目も当てられない。

 新しい優れた技術というものは、隠していてもいずれは勝手に広がってしまうものだ。

 なら、封じ込めるよりも、それをうまく利用することを考えるべきだろう。

 

 この半年の間、私はアメリア関連の貴族への根回しに腐心した。

 鉄道にケチがつかないように。

 他所の貴族が鉄道の利権に関わらないように。

 アメリアに反感を持つ貴族が出ないように。

 その甲斐(かい)あってか、王都の貴族達の間でのアメリアの評判は、かなり好転したと思う。

 (もっと)も、動いていたのは私だけではないようだったが……。

 ベラや兄上達だけではない。

 ボストク侯爵、ユーグ侯爵にドゴール将軍までが、いつの間にやらアメリアの味方になっている……。

 もはや、この国の主だった貴族の大半がアメリアの味方だ。

 もう、アメリアに面と向かって敵対しているのは、ザパド侯爵くらいだろう。

 そのザパド領も、目に見えて税収が落ち込んでいるし、かつてのような影響力は皆無に等しい。


 (本当に、アメリアは恐ろしいな……)


 あの娘に喧嘩を売ったのが、ザパド侯爵の敗因だ。

 自業自得とも言えるが、ともあれ、そろそろザパド侯爵もアメリアと和解して、自領の立て直しをして欲しいのだが……。

 仮にも我が国の三大侯爵家の一つだ。

 それが完全に潰れたとなれば、その影響は計り知れない。

 正直、あれだけの領地を全て王家の直轄地にして王家が管理するなど、どう考えても不可能だ。

 オーバーワーク過ぎる。

 セーバのような、元々誰も住んでいない空き地とは違うのだ。

 大小多くの町や村があり、国境にも接している。

 国境の街クボーストも、今はだいぶ廃れてしまっているそうだが、つい最近までは王都、ザパドに続く我が国の巨大商業都市だったのだ。

 これら全てをぽんと渡されて管理するなど、絶対に不可能だ。

 いや、アメリアなら可能か……?

 いや、いや、いや! これ以上あの娘に権力を握らせては手も付けられん!

 ここは、是が非でもザパド侯爵には頑張ってもらわねば!


 そんな事を考えていたところで、例の“通信”を使ってアメリアから知らせが届いた。

 アメリア達の帰りの列車が賊に襲われただと!?

 サラは!?……無事かぁ。

 30人ほどいた賊の大半は捕縛済みで、こちらの被害は軽微と……流石だな。

 と、こちらを安心させておいて、アメリアが特大の爆弾を落とした。

 襲撃者は皆ザパド領の者だと!?

 指揮していたのは、“連邦”の傭兵だと!?

 直接、ザパド侯爵や連邦が関わっている証拠は無いらしいが……。

 

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