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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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討伐準備、そして王都では…

 翌日、私達は実際に呪鉄とミスリルを使ってぬいぐるみサイズのゴーレムを作り、様々な実験を行っていた。

 呪鉄やミスリルの性質自体は鑑定魔法で確認できる。

 でも、では呪鉄を剣で切りつけた場合、どういった感触でどのように切れるのかといった事は、実際に体験してみないと感覚が(つか)めないからね。


「う〜ん、ミスリルの剣なら問題なく切れるけど、やっぱり鉄の剣じゃ厳しいかぁ……」


「いや、倶利伽羅(くりから)剣なら余裕で切れるぞ!」


 私のつぶやきにレオ君が反論する。


「でも、それは呪鉄に直接切りつけられたらの話です。

 ミスリルは魔法に対して強い耐性がありますから、魔力で作られた熱など一切通しません。

 レオさんの剣では、ミスリルゴーレムには傷一つつけられませんよ。

 その点、私の広域凍結魔法(コキュートス)は、冷気を直接魔法で作っているわけではありませんから、相手がミスリルでも関係ありません」


「ぐッ」


 冷たく言い放つサラ様を、悔しそうに睨むレオ君。


「でも、サラ様、ゴーレムというのは無機物の自分の身体を魔力で操っている魔物みたいですから、ふつうの生き物のように凍らせても意味がないかもしれませんよ」


「ッ! そんなぁ〜。

 おねえさまぁ……」


 私からの思わぬ反撃?に対して、(すが)るような目を向けてくるサラ様。

 レオ君はドヤ顔だ。

 別に、レオ君が勝ったわけじゃないんだけどねぇ……。

 どうもこの旅でお互いの距離がだいぶ縮まったせいか、以前はあった王女様、学園の先生といった遠慮がなくなってきているみたい。

 私に対してどちらが役に立つかと、事あるごとにアピールしてきている。

 まぁ、競い合うのは大切だから、別にいいけど……程々にしといてね。


 そんなこんなで無事実験、検証も済み、いよいよ明日は出発という段階で、その知らせは届いた。


「ゴーレムが、動き出しました!」


 組合職員から届けられた知らせに、その場の全員に緊張が走る。

 動き出してしまったものは仕方がない。

 できれば、動きを止めて完全に放置されている状態のゴーレムを、さくっと片付けたかったんだけど……。

 ともあれ、もう動き出してしまっている以上、慌てて向かっても意味がない。

 今までのゴーレムの行軍速度から考えて、問題なく進んでこれたとしても、ゴーレムがドワルグの街に辿り着くのには後数日はかかると思う。

 ここは、ゴーレムとの戦闘になることを前提に万全の準備を整えて、ゴーレムが森を抜けたところで迎え撃つのがベストかな。

 森の外なら邪魔な木も無いし、ゴーレムを襲う魔物もだいぶ少なくなっているはずだ。

 もしかしたら、王都からの援軍も間に合うかもしれないしね。

 そう、今回の、というか、ブリツィオさんから聞いた伝説の巨人復活に関するあれこれについては、今の差し迫った現状も含めて、ドワルグの公邸(ジーノ伯爵の屋敷)の魔鳥便を使って、サラ王女殿下と私の連名で王都に知らせてある。

 ジーノ伯爵は既に更迭してあるし、流石に今回は握りつぶされることもないと思う。

 今までは、ただの頑丈な石像の破壊が目標だったから、復活しないうちにと時間優先で話を進めたけど、もう既にゴーレムが動き出してしまった以上、わざわざ強い魔物が密集する大森林の深部にこちらから赴く意味はない。

 ゴーレムの位置と移動距離から考えて、どうせ今回の討伐が失敗すれば、ゴーレムはドワルグの街に到達してしまうのだから、どこで迎え撃っても同じ事だしね。

 私達は、作戦を石像の破壊からゴーレム討伐に切り替え、更に数日をゴーレム討伐のための訓練に費やした。



(カルロス国王視点)


 真夜中の王宮に、幾人もの足音が響き渡る。

 普段なら、警備兵の遠慮がちな足音が響くだけの王宮は今、一部蜂の巣をつついたような大騒ぎになっている。

 とある会議室に集まるのは、王都に住むこの国の重鎮達。

 勿論、ベラと、ディビッド兄上もいる。

 数刻前、アメリアとサラの連名で私の元に届けられた手紙には、公爵、王女の印章付きで“緊急、極秘”と書かれていた。

 可愛い娘と姪からの手紙ではない。

 目下王都を騒がす、噂の問題児2人からの手紙だ。

 ただの近況報告のはずがない!

 私は、恐る恐る中身を確認し、その内容に愕然とする。

 そこに書かれた内容は、扱いを誤れば王家の信用失墜にも繋がる歴史的事実。

 本来であれば王家の盟友ともいうべきドワルグに住む一族をただの平民として蔑ろにし、あまつさえ王家が率先して負うべき巨人の監視、復活の阻止といった義務を、その一族に押し付けている現状。

 モーシェブニ魔法王国が、巨人を倒した勇者が巨人復活を阻止するために起こした国であることを(うた)っている以上、その義務を今まで放棄していたとなれば、国の正統性すら疑われてしまうことになる。

 いや、それよりも差し迫った問題は、このミスリルゴーレムだ。

 この手紙が真実なら、大森林のミスリルゴーレムはいつ進軍を再開してもおかしくなくて、それがモーシェブニ山に到達したら、最悪巨人が復活して世界が滅ぶらしい。


 ハハハ。子供というものは想像力が豊かでよいナァ……。


 ち、が、う!!

 現実逃避している場合ではない!

 この手紙を送ってきたのは、あのアメリアだ。

 下手な貴族の報告より、余程信用できる。

 で、ミスリルゴーレムの討伐は私とお姉様でするつもりですけど、もしできたら応援を送ってください!?

 ドワルグの街にいる貴族はジーノ伯爵と護衛の騎士爵数人程度で、戦力としては全く役に立たない!?

 セーバの街からどの程度の討伐隊を連れて来ているかは書かれていないが、いずれにしても相手は伝説級のミスリルゴーレムだ。

 決して十分な戦力とは言えないだろう。

 二人からの手紙を見たベラと兄上の顔色も悪い。

 ベラの話でも、今現在ドワルグにまともな兵力がいないのは事実だそうだ。

 今回、サラをサラマンダー討伐に参加させた目的の一つには、ジーノ伯爵の不正を押さえるというのもあったらしい。

 流石(さすが)に、自分の護衛以外の兵を全く置いていないとは思わなかったそうだが……。


「まぁ、今回のミスリルゴーレムの討伐にサラが参加しているのは、不幸中の幸いというべきでしょう」


 皆の沈黙を破って、ベラが発言する。


「何を仰るのです、王妃殿下! 相手はミスリルゴーレムですぞ!

 もしサラ様に万が一のことがあれば……」


「万が一も何も、もしこのゴーレム討伐が失敗すれば、我が国も滅ぶのですよ?

 結局、同じことです。

 それよりも、このような王国滅亡の危機に際して、それを救う戦いに王家が全く関与していない事の方が問題です。

 これでサラもいなくて、アメリアが一人でミスリルゴーレムを討伐してご覧なさい。

 アメリアこそが正統な国王に相応しいなんて話にもなりかねないのですよ」


 確かに、国を守るのが王の務め、巨人の復活を防ぐのがモーシェブニ魔法王国の存在意義というのなら、それを成し遂げた者こそが正統な王であろう。

 今回のゴーレム討伐には、幸か不幸か王族であるサラも参加するという。

 これで無事討伐が成功すれば、対外的には王族と公爵が協力して国の危機を救ったというかたちになる。

 討伐が、成功すればだが……。


「とにかく、今は王家としてできうる限りの支援をするしかありません。

 ドゴール将軍、至急使える部下を引き連れて、少数でドワルグに向かって下さい。

 部隊を引き連れての移動では時間がかかり過ぎます。

 軽量魔法や加速魔法を使える騎士を見繕って急がせれば、3,4日でドワルグに着けるはずです。

 アメリアのことですから心配無いとは思いますが、万が一もあります。

 サラのこともそうですが、アメリアは女神様より授かったこの国の至宝です。

 何がなんでも守り抜きなさい!

 同時に王都軍の半数を非常呼集。準備が整い次第ドワルグに向かわせます」


 王妃であるベラの指示により、皆が動き出す。

 指示を出したのは王妃だが、国王である私が横にいて反対を唱えないのだから、それは王の承認を得た命令となる。

 そもそも、ボストク侯爵の娘であるベラは、王都の軍事面の最高責任者を兼任している。

 王都軍をまとめる立場のドゴール将軍もボストク侯爵領の出身で、ベラが王妃となる前までは、ボストク領でベラの率いる軍の副官をしていた。

 そんな訳で、軍関連の指示が国王である私からでなく王妃のベラから出るのは、この国では別に珍しいことではない。

 至極合理的な帰結だ。

 国王とは国の象徴!

 細かな事は周りに任せて、どっしり構えていればいいのだ……どっしりとな。


次回更新は、木曜日の予定です。 

コロコロ変わってすみません。

なんか、微妙に金土日曜日のアクセスって伸びない気がして…

ただの気休めです。

見逃して下さい。



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