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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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神童

 この世界での地下資源、金属の採取は、土魔法を使って行われる。

 鉱石を採掘してそれを炉で溶かして、なんて面倒な作業は一切無し。

 ただ欲しい金属が含まれる場所に魔力を浸透させて、土魔法で望みの金属を取り出すイメージをするだけだ。

 たったそれだけで、望みの金属の塊が手に入る。

 ちなみに、それを成形したい時には、また同じように魔力を浸透させて、今度は金魔法を使えばいい。

 それで武器だろうが雑貨だろうが、イメージ通りの物が手に入る。

 土魔法と金魔法が使えれば、道具も何も無しで、その場で材料の確保から加工までできてしまう。

 実に簡単お手軽だ。

 ただし、イメージ通りの加工に失敗した時は少し厄介で、加工した物を一度壊して、元の形を認識できない状態にしないと再加工はできない。

 初めに金魔法を見た時、これを利用すれば相手の武器破壊ができるのでは?と考えたんだけどね……。

 閑話休題。

 さて、単純に地中から欲しい金属を取り出すだけの土魔法なんだけど、実は術者によって結果はだいぶ異なることが分かっている。

 魔動エンジンを作る際に、同じ金属を使っていても加工のしやすさや品質に微妙な違いがあるという意見が出て、工業製品の材料となる金属についても徹底的に調べたのだ。

 で、分かったのは、土魔法を使う術者の魔力の浸透のさせ方や、その金属に対する認識によって、同じ金属を取り出すというイメージでも、取り出した金属には微妙に違いがでるということ。

 その中でも特に影響が大きかったのが、不純物の有無。

 例えば、鉄。

 実は、一般的に鉄と呼ばれている物質は、鉄に何かしらの不純物が混じった合金だ。

 同じ鉄でも、混ぜた不純物の種類や割合なんかによって、その性質はかなり変わってくる。

 それを意図的にやって作られているのが、鋼鉄等の合金ってわけ。

 で、ふつう術者が土魔法で地中から鉄を取り出す場合、取り出したい鉄のイメージは術者が考えている“鉄”になる。

 つまり、術者が“鉄”と認識している物に、多くの不純物が含まれていれば、取り出された“鉄”にも多くの不純物が含まれる。

 だったら、初めに良質の鉄を覚えさせておけば、安定して品質の良い鉄が採掘できるのでは?

 ところが、問題はそう単純ではなくて……。

 例えば、鉄に1割程度の炭素を含んだのが鋼鉄で、これを“鉄”と認識させて鉄山で採掘させたとする。

 鉄を採掘するために魔力を浸透させた場所に、たまたま合金にするのに適した状態の炭素が都合よくあればいい。

 でも、なかったら?

 無いものは無いとして、あるものだけ取り出す。

 無い部分は別の物質で補う。

 そもそも、術者が要求しているのは“硬い金属”なんだから、鉄以外の別の金属を使って別の合金を取り出す。

 良くも悪くも、術者のイメージや指示に忠実なのがこの世界の魔法で……。

 当然、術者の“鉄”に対する認識次第で、十人十色の結果が出てしまう訳。

 普通鉱夫が採掘する場所は決まっているので、地質にもそれ程の違いはない。

 だから、合金云々の理屈を知らない一般の鉱夫が、いつも通りの感覚で普通に“鉄”を取り出せば、ほぼいつも通りの鉄を採掘することができる。

 でも、そこには“鉄”に対する共通認識とか品質管理みたいな発想はないから……。

 特に発掘場所が違ったりすると、同じように鉄鋼組合から買った鉄でも、その性質にかなりの違いがあったりしたのだ。

 ついでに補足すると、採掘する術者が均等に魔力を浸透させた金属ほど、金魔法で加工する際にも魔力を浸透させやすく、イメージ通りの形になりやすいという性質も確認されている。

 そんな訳で、今現在のセーバの街では、鉄鋼組合から購入した金属をそのまま使うのではなく、一旦土魔法や金魔法を駆使して資材の質を高めるという行程が行われていたりする。

 もう、超オーバーテクノロジー!

 鉄と鋼鉄(神鉄)は違う金属って考えられているような世界で何やってるんだって話だけど、おかげでセーバの街の工業製品の品質は、他の追随を許さない!


 それはさておき、そんな科学未発達の世界だから、ウーゴさんの言う“呪鉄”っていうのも怪しいもんだと思っている。

 たまたま伝承にあるのと同じ合金ができちゃって、それで大騒ぎしているだけなのではないかと……。


「これが“呪鉄”です。

 研究用に採掘してきた物ですが、必要があればまだ取って来られます。

 ……僕が採掘した鉄は、全て呪鉄に変わってしまいますから」


 ん? 全て?


「それは、採掘する場所が変わっても、ウーゴさんが採掘すれば全て呪鉄になるということですか?」


「はい、全てです。

 たまたま僕が採掘した場所に呪鉄があったとかではありません」


 力無く答えるウーゴさん。

 ウーゴさんに地質云々、合金云々の知識は無いようだけど、たまたま自分が採掘した場所に呪鉄が埋まっていたという可能性は考えたみたい。

 色々と条件を変えて採掘をしてみた結果、自分が採掘する鉄は全て呪鉄になるという事実が判明したそうだ。

 そうなると、呪鉄=合金って可能性は低いのか?

 私は、ウーゴさんに渡された呪鉄に鑑定魔法を試みる。

 えっ? 軽ッ!

 物体に魔力を通す時に感じる魔力抵抗を殆ど感じない……?

 いや、全く感じない!


「随分と魔力を通しやすいんだな」


「そうなのですか?

 私にはよく分かりませんが……」


 私と同じように、ウーゴさんから受け取った呪鉄に鑑定魔法をかけていたレオ君とサラ様が、感想を漏らす。

 ちなみに、アディさんは見ているだけ。

 別に見学に徹しているって訳ではなくて、単純にアディさんは鑑定魔法が使えないから。

 セーバの街では感覚が麻痺しちゃってるけど、本来神殿の石版に書かれていない魔法は使えないものだから。

 当たり前のように鑑定魔法を使う私達3人を見て、ウーゴさんとブリツィオさんが驚いている。

 まぁ、それはいいんだけど……。

 通しやすい? レオ君、通しやすいって言った?

 レオ君もサラ様も貴族、王族ということで、魔力は高い。

 正確な魔力操作は仕込んでいるものの、それでも限界はある。

 体重計で砂糖何グラムとか測れないのと同じで、魔力の多い人には細かな違いは区別がつかないのだ。

 これは、そんなレベルじゃないよ!

 私は自分の魔力を限界まで研ぎ澄ます。

 1MP……0.1MP……0.01MP……0.001MP……0.0005MP…………0.0003MP…………0.0002MP………………。

 集中して、集中して、集中して、限界まで出力を絞り込んだ私の極極極わずかな魔力は、コップの水に落とした1滴の墨汁みたいに薄く薄く呪鉄全体に広がっていった。

 そして、問題なく鑑定魔法は発動する。

 魔法は、影響を与える対象にまず魔力を浸透させる必要がある。

 その際に、外からの魔力に侵食されないよう対象からの抵抗を受ける。

 いわゆる魔力抵抗だ。

 これが大きい物には魔法がかかりにくく、魔法をかけるためにはより多くの魔力を必要とする。

 私の場合は、この魔力抵抗を正面から受け止めて押し返すのではなく、太極拳の推手の要領でうまく受け流すことで、より少ない魔力で魔法を発動させているのだけど……。

 この呪鉄からは、魔力抵抗を全く感じない。

 そして、私の考えを裏付けるように、鑑定結果が頭の中に浮かんでくる。


『魔力抵抗 0』


 更に詳しく情報を探ることで、この鉄がどういうものか理解していく。

 鉄、純度100%の純鉄、不純物0、魔力による歪み0。

 これは!

 純度100%の純鉄なんて、前世の世界でも相当作るの難しいのでは?

 まぁ、科学と魔法だから、単純な比較もできないし、そもそも前世の鉄とこの世界の鉄が全く同じとも言い切れないわけだけど……。

 それよりも、魔力による歪みが全く無いって、ウーゴさん、どれだけ優秀よ?!って話だ。

 土魔法を使う際、金属を取り出したい場所に魔力を浸透させるわけだけど、ここで浸透のさせ方にムラがあると、それが取り出した金属にも“歪み”として反映されてしまうんだよね。

 この歪みが酷いと、魔力が通りにくいとか加工がしにくいとか、そういう問題が出てくるのだ。

 つまり、これはどういうことか?

 “鉄”という物質を正確に理解した術者が、魔力の偏りなく均等に魔力を浸透させて土魔法を使った結果採掘できるのが、この呪鉄と呼ばれる金属だと……。

 これを、何の理科教育も魔力操作の訓練も受けていない子供が採掘したと……。


 ウーゴさんって、忌み子じゃなくて、神童じゃん!!!


先月も無事PV記録更新できました。

みな様のお陰です。

ありがとうございました。

m(._.)m


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