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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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サラ様の校外学習

 報告会の数日後、トッピークへ派遣する人材の選定や、その後の段取りなんかをアメリア商会の副会長であるカノンに任せ、私達はドワルグへと出発した。

 今回のサラマンダー討伐隊のメンバーは、私、サラ様、レオ君、アディさん、サマンサの5人だけ。

 まさに、少数精鋭の編成だ。

 無茶? いやいや、ちゃんと考えてますよ。

 今回、思い切って人数を絞った最大の理由。それは、私が兵を使い捨ての駒にする気がないってこと。

 軍であれば、全体の最大利益のために、最小限の人間を切り捨てるのもやむを得ない。

 たった一人の兵を救おうとして、結果として部隊が全滅してしまっては元も子もないからね。

 そういう多少の犠牲は覚悟の上で用兵をするのであれば、数の力というのは強いと思う。

 でも、私にその気はない

 少なくとも、今回の討伐作戦において、私は一人の犠牲者も出す気はないのだ。

 そうなると、一人ではサラマンダーとまともに戦えない人材って、邪魔なだけなんだよ。

 多少の火力と引き換えに、こちらの護衛対象が増えるわけだからね。

 とはいえ、いくら被害を出さないように人数を絞っても、それで討伐できないのであれば本末転倒だ。

 私だって、全く何の勝算もなく、カッコつけでそんな事を言い出した訳ではないよ。

「そもそも、サラマンダーは一人の犠牲も出さずに討伐できるような甘い相手ではない」というアディさんを連れて出かけた近所の森で、私とサラ様が森を銀色に変えるのを見て、アディさんも私の作戦に納得してくれた。

 そう、私達には広域凍結魔法(コキュートス)がある。

 いくらAランクの魔物といっても、所詮は寒がりの蜥蜴(トカゲ)だ。

 いくら体を炎で包んでいるといっても、変温動物の蜥蜴に体温調節機能はない。

 マイナス数十度の世界は、さぞ辛いだろう。


 アディさんの了承も無事得られ、私達は荷物を載せた馬を引きながら、徒歩でドワルグへと向かった。

 王女殿下と公爵様は馬車で?

 使いませんよ、そんなものは。

 そもそも、馬車で安全に進めるほど道は整備されていないし、馬車の中にいては、魔物が襲ってきた時に即対応ができない。

 私は勿論、今回の旅ではサラ様も立派な戦力だからね。

 当然、働いてもらいます。

 というか、今回の旅のもう一つの目的が、サラ様の校外学習、林間学校だからね。

 最初の数日は、一日中歩いて足は痛いわ毎日野宿だわで、だいぶキツそうにしていたサラ様だったけど……。

 魔力をうまく体内に循環させることで疲労や肉体の軽度の損傷を回復させるコツを掴んでからは、表情にもだいぶ余裕が見られるようになった。

「昔、お兄様が旅はキツいと言っていた意味が、(ようや)く理解できました」と、笑顔でサラ様は話してくれたけど、それを聞いているアディさんは苦笑いだ。

 きっとサラ様のお兄様の言う旅の辛さって、一日中馬車に揺られてお尻が痛くなったとか、お風呂にも入れず馬車の寝台で眠ることになったとか、多分その程度のものだ。

 精々が、普通の街道を行く一般的な商人程度のもの。

 普通の商人だって、ちょっとした規模の商人なら、使用人と護衛くらいは連れているからね。

 一国の王子様が、侍女や側仕えを全く連れずに出かけるとも思えない。

 王宮にいるよりは不便だけど、最低限の衣食住や安全は全て周囲の大人が整えてくれる。

 恐らくは、そういう旅だ。

 今サラ様が体験しているような旅って、辺境への行商や魔物討伐なんかを生業にしているベテラン冒険者のもので、一般的な旅ってもう少し快適だと思うよ。

 誰も教えないけどね……。

 私やレオ君は、セーバの街周辺の魔物討伐を目的としたサマンサ教官のブートキャンプで鍛えられている。

 でも、最近学園の上級クラスに上がったばかりで、なにより王女様であるサラ様を、そんな危険で過酷な訓練に参加させたことは今までになかった。

 今回は王妃様からの依頼ということもあるし、サラ様自身が今回の作戦における最大戦力でもある。

 サラマンダー討伐の鍵となる広域凍結魔法(コキュートス)を使えるのは、私とサラ様だけだしね。

 それもあって、サラ様にはサラマンダーとの遭遇前に実戦経験を積んでもらうために、始めから積極的に魔物との戦闘にも加わってもらっている。

 やはり、実戦に勝る訓練は無いようで、ここ数日のサラ様の成長には目を見張るものがある。

 始めは先輩風を吹かせていたレオ君が、ちょっと焦り出しているのが面白い。

 うん、ライバルは必要だよね。

 野営の焚き火の側に寝転びながら、そんなとりとめのない事を考えていると、見回りに出てくれていたアディさんが戻ってきた。


「アディさん、お疲れ様」


「只今戻りました。

 アメリア様はまだ起きていらっしゃったのですか?

 明日はサラマンダーと遭遇する可能性が高いのですから、見張りは私とサマンサさんに任せて、アメリア様は無理せず休んで下さい。

 子供の夜ふかしは感心しませんよ」


 そう。今回の旅では、昼間の魔物との戦闘は主に私、サラ様、レオ君の子供チームが担当し、代わりに夜の見張りは主にサマンサとアディさんが担当してくれている。

 大人でも厳しい旅に加え、Aランクの魔物(サラマンダー)の討伐までついてくるのだ。

 流石のサマンサ教官も、夜はしっかりと休んで体調を整えるようにと、夜の見張りを引き受けてくれた訳なんだけど、その彼女は私の前で目下熟睡している。

 明日のことを考えてしまって、ちょっと寝付けない私とはえらい違いだ。

 もっとも、サマンサは少しでも周囲に殺気を感じればすぐに反応して目を覚ますから、決してサボっているわけではないんだけどね……。

 まぁ、それはいいとして、


「アディさん、明日うまくサラマンダーを倒せたら、この浅い森周辺の魔物の分布は元に戻ると思いますか?」

 

 私は、アディさんに疑問をぶつけてみた。

 というのも、ここまでの道中で私達を襲ってきた魔物が、はっきり言って強過ぎたから。

 別に、特に苦戦したって訳ではない。

 子供チーム3人で、問題なく討伐はできたよ。

 でも、それは私達だからできたことで、例えば私達3人の代わりにボストクの街で模擬戦をした3人を連れてきたとしたら、恐らくかなり不味いことになったと思う。

 あの3人はあれでも一応ボストク軍の若手のトップで、一般兵やその辺の冒険者よりは余程強い。

 それでも、私の印象としては、この森で出会った魔物はあの3人よりもずっと強いと思う。

 魔物の強さはBランク。

 小隊規模の護衛をつけないと危険な魔物。

 少数とはいえ、前回の討伐から大して日も空いていないのに、あんな魔物が複数襲って来るのだとしたら、正直街道を通しても交易路としては使い物にならない。


「そうですねぇ……。

 勿論絶対とは言えませんけど、縄張りを荒らした大元の魔物さえ倒してしまえば、大して日もかからず元の状態に戻ると思いますよ。

 そもそも、あのランクの魔物が生きていくのに、この辺りの森の魔力では弱過ぎますから。

 一つの土地から吸収できる魔力では足りないから、その分を補うために必要以上に広範囲を移動したり、別の生き物から魔力を吸収したりしているのだと思います。

 そうでなければ、Bランク以上の高ランクの魔物が、好き好んでこんな魔力の少ない土地に現れたりはしません」


 なるほど、なら話は早い。


「では、明日がんばってサラマンダーを倒してしまいましょう」


 サラマンダーさえ倒してしまえば問題は全て解決だ、と思ったんだけど……。


「問題は、恐らくサラマンダーが大元の縄張り荒らしではないということです」


「えっ?」


「前回、今回と襲ってくる魔物を見て確信しました。

 縄張り荒らしの大元は、サラマンダーではありません。

 そもそも、サラマンダーが現れたせいで魔物の分布が変わったのなら、大元のサラマンダーはもっと魔力の多い深い森にいるはずです。

 こんな魔力の弱い浅い森にいるわけがありません。

 サラマンダーもまた、元の住処を追われてきた魔物のうちの一体ということだと思います。

 最初は、何らかの理由で元々居た場所が魔力枯渇を起こして、それでこちらに流れてきたという線も考えたんですけど……。

 アメリア様達が倒してくれた魔物の何頭かに、縄張り争いの跡と思われる傷が見られました。

 たんに魔力が減って住処を移動しただけなら、魔物同士があのような傷を負ってまで戦う理由がありません。

 魔物というのは、本来確実に勝てる相手しか襲わないものです。

 勝つにしろ負けるにしろ、自分が傷を負うような相手とは理由もなく戦わないものですから」


「………………」


 どうやら、敵はサラマンダーだけではないらしい……。

 ともあれ、サラマンダーは王妃様直々に仰せつかった討伐対象だし、実際ドワルグまでの道に居座っている以上、いずれにしても対処は必要だ。

 問題は、それで終わりではないってことだね……。

 明日はサラマンダーを倒してサクサクとドワルグに行く。

 で、ゆっくりとお風呂に浸かって美味しい物を食べて……とりあえずは情報収集かな。

 何か、王都には伝わっていないラスボス情報とかあるかもしれないしね。


先日、お話の続きを書いていた時のこと。

「あれ? あの話って細かな設定どう書いたっけ?」って、前のところを読み返していたのですが…

書いたはずの話がない!

どうやら、空想(妄想)しただけで、書いたつもりになっていた模様。

その話も書いてある前提で続きも書いていたのに…

空想と現実の区別が曖昧に…

大きく影響する設定ではなかったからよかったものの…

恐ろしいことです、、

長いお話を書くと、こういうこともあるんだなぁと、ちょっと考えてしまった事件でした。

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