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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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サラマンダー討伐依頼

 ボストク侯爵領での模擬戦後、急遽開かれることになった歓迎パーティーに参加したり、そこで紹介された何人かの有力貴族と改めて面談したりして数日を過ごし、私達はトッピークに戻った。

 トッピークでは、港の工事や漁船への魔動エンジンの導入計画等についての最終確認で何だかんだと忙しい時を過ごし、どうにか今後の目処がついたところで慌ただしく帰途についた……。


 全然のんびりできなかった……。

 もっと、こう、気ままに知らない街を彷徨ったり、お気に入りのカフェを探したり、港で働く漁師さん達の様子をぼぉっと眺めたりって……そういう旅を想像していたのだ。

 それが、視察、視察、会議、会議って……。

 これじゃあ、仕事じゃん!って、まぁ、仕事で来たんだけどね……。

 ともあれ、今回はただ航路を確認して穀物を買って帰るだけのつもりが、思いがけない成果を得ることができた。

 ボストク侯爵、ユーグ侯爵とは確かな繋がりができ、トッピークへの新航路は両侯爵公認のものとなった。

 トッピークには今後レボル商会、アメリア商会の支店が作られ、物資の売り買いだけでなく、両商会を通しての人材派遣、技術提供等もしていく事になった。

 それもあって、レジーナとユーベイ君、それにフェルディさんは、今回急遽トッピークに残ることになった。

 レジーナとフェルディさんは主に商会の支店の立ち上げを、ユーベイ君には港の整備と魔動エンジンの取り扱いについての指導をしてもらうことになっている。

 一応、レジーナとフェルディさんは、次の船でやって来るトッピーク支店要員を待ってセーバに戻ってくる予定だが、ユーベイ君には港と船の整備工場が完成するまでは、居てもらうつもりでいる。

 レジーナとユーベイ君を他領に残していくのは少し悩んだけど、フェルディさんも残るって言うし、レジーナには祖父のマルドゥクさんもいる。

 ユーグ侯爵の対応を見ていても、平民の子供だからと私の側近を粗雑に扱うような事はなさそうだし、ここは2人を信じて任せることにした。


 帰路も特に大きな問題はなく、私達は10日ほどで無事にセーバの街に戻ることができた。

 トッピークで、ボストクでと、色々と時間を取られたこともあって、私達がセーバの街に戻った時には、ドワルグ行チーム、お魚配達チームとも、既に街に戻って来ていた。

 それで、私は今、学園の会議室で皆の報告を受けているんだけど……。


「…………サラマンダーですかぁ」


 サラマンダー。

 全長5メートルを超える火蜥蜴(ヒトカゲ)で、冒険者ギルドの指定ランクはAランク。

 全身は固い鱗に覆われ、更にその周囲に高熱の炎を纏っている。

 巨体でありながら動きは速く、パワーもある。

 火属性の魔法は一切効果がない上に、剣や弓、礫等による攻撃も固い鱗に阻まれ、殆ど効果がない。

 また、体を包む炎のために近接戦闘が難しく、鱗に触れた武器も数合で溶けて使い物にならなくなる。

 討伐方法としては、複数の水属性魔法の術者による水魔法で体表の炎を消し続け、魔力枯渇により炎が弱まったところで、ミスリルやオリハルコンで作られた武器による近接戦闘で仕留めるというのが一般的。

 そのため討伐には、最低数十人の水属性の魔術師とその護衛、ミスリルやオリハルコンで作られた強力な武器、強い魔物との近接戦闘も可能な凄腕の戦士が複数人と、かなりの戦力が必要とされているんだって……。

 こんなの、もう国の軍隊規模での討伐だそうで、サラマンダーの姿を発見した瞬間、アディさんは即時撤退を指示したそうだ。

 それでも、サラマンダーには所謂(いわゆる)“圏”と似たような能力もあるそうで、直接見えなくてもこちらの魔力を追跡されたりと、撤退戦はなかなかに大変だったらしい。

 多少の怪我人はでたそうだが、大事には至らなかったようで、それだけが救いだった。


(この情報、もう少し早く欲しかったなぁ……)


 私は、ドワルグへの街道を作る許可と一緒にサラ様が預かってきてくれた、王妃様からの手紙に改めて目を通す。

 そこには、ドワルグの街の西を走る大地の裂け目の対岸の地に、数年前からサラマンダーと思われる魔物が出没していることが書かれていた。

 裂け目で隔てられているため、魔物がドワルグの街に近づくことはないが、そういう訳で、今現在ドワルグからセーバ領方面への移動は一切禁止になっているらしい。


(なるほど、それでドワルグからの行商人が急に来なくなったんだね……)


 そして、王妃様の手紙にはこうあった……。


『サラマンダーの問題を解決して、しっかり管理してくれるなら、セーバの街からドワルグまでの街道については、王家の直轄地に当たる地域も含めて、全てアメリア公爵に任せます』


 なるほど、そうきたかぁ……。

 サラマンダーの討伐ともなれば、これはもう軍を動かしての大規模作戦となる。

 ちょっと騎士や魔術師を派遣してって訳にはいかないだろう。

 今現在、裂け目の向こう側に行けないだけで、街の存続に関わるような大きな問題になっていない以上、多額の予算と人員をつぎ込んでの討伐は、王家としても割に合わないのだろう。

 それをこちらに任せられて、おまけに王都〜セーバ間のように街道の管理もしてもらえるなら、直轄地を管理する王家にとっても悪い話ではないんだろうね……。

 それは理解できるんだけど、問題はもう一つの方だ。


『追記:サラマンダーの討伐には、できればサラも参加させてあげてちょうだい』


 これは、どう解釈すれば良いのだろう?

 娘にもっと実戦経験を積ませろってこと?

 セーバ〜王都間の快適な旅しか知らないサラ様には、少し過酷な旅の経験も必要ってことかなぁ?

 今までなら、属性のせいで王宮に居場所が無かったサラ様に、サラマンダー討伐の実績をつけることで、王宮に居場所を作ってあげるって線が一番濃厚だったんだけど……。

 サラ様の報告を聞く限り、その心配はないよねぇ……?

 私がボストクの街で、サラ様の株が上がるように意図的に風魔法を使った試合をしていた頃、サラ様はサラ様で、私の株をあげるために王宮魔術師相手の大立ち回りをしてくれていたらしい。

 結果、私だけでなく、サラ様自身の株も爆上がりしているらしくて、何やら付き合いが面倒になったサラ様は、多くの貴族からの面談申込みを全て断って、さっさとセーバの街に戻って来たそうだ。

 う〜ん。

 こんな状態のサラ様に、更に実績が必要?

 聞いた話では、サラ様の大立ち回りの際、サラ様の兄である王太子殿下は、ただ自分の妹と魔術教師の間で右往左往していただけだそうだ。

 今までは魔力も高くて優秀だって言われてきたみたいだけど、ここにきて落ちこぼれだと思われていた(サラ様)との格の違いを、貴族達の前で見せつけられてしまった訳だ……。

 ボストク領でのこともあるし、場合によってはこの先、ライアン殿下ではなくサラ様に王位を継がせるべきといった意見が全くでないとも限らない。

 この上、サラマンダー討伐なんて実績がついたら、明らかに後継者争いに発展しちゃうと思うんだけど……。

 私の心配など、あの王妃様が気付かない訳がない。

 それも承知で、サラ様にサラマンダー討伐をさせようとしているってことだ……。

 まぁ、考えてもしようがない。

 政治的な話は王妃様に任せて、私はサラ様の教育とセーバの街の発展だけを考えることにしよう。

 私はアディさんやアルトさん、レオ君とも話し合い、改めてサラマンダー討伐のための作戦を練っていった。



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