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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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調査隊 〜自警団員視点〜

(自警団員視点)


『よし、大丈夫だ。オーク共はいない……』


 素早く周囲を確認すると、仲間2人と共に所定の位置に身を伏せる。

 ここは、セーバ領と王家の直轄領の間に広がる大森林。

 その西の端に位置する、かつてオレが生活していた集落だ。

 この位置からは、以前オレが住んでいた家も見える。

 そこには今ではオークが住み着き、かつてのオレたちの生活の場を、我が物顔で闊歩している。


 数年前、ここから少し離れた場所でオークの集落ができつつあるのを発見したオレは、慌てて集落の皆と共にこの森から逃げ出した。

 着の身着のままに流れ着いたセーバの街の領主様は素晴らしい方で、ただの平民に過ぎないオレたちに、住む場所と教育を与えて下さった。

 ただの猟師だったオレは、領主様の作られた学校で攻撃魔法を学び、今ではセーバの街の自警団の一員として、領主のアメリア公爵様に仕えている。

 そんなオレの元に、ドワルグまでの街道整備と魔物討伐の話が来たのは、今から10日ほど前。

 同じ集落から逃げてきたサリーからオレの話を聞いたそうで、ドワルグまでの行程や当時の森の様子について詳しく教えて欲しいと言われた。

 その後、オレや、同じく森の方からセーバの街に逃げて来た連中から情報を集め、自警団の指導教官でもある上級冒険者のアディさんを隊長に、この調査隊が結成された。


 今オレたちは、かつてのオレたちの集落に住み着いているオークの群れを討伐すべく、作戦行動の真っ最中だ。

 護衛2人、測量チームのメンバー1人を一組として、各々が等間隔に集落を囲む位置に隠れ潜んだ。

 息を潜めて、奴らの動向を伺いつつアディ隊長の号令を待つ……。


「囲め!!」


 突如集落全体に響き渡る隊長の声。

 次の瞬間、集落を取り囲むように、オークの身長を超える壁が現れる。

 壁の内側には、壁の材料に使うためにくり抜かれた地面が、深く穴を開けている。

 高い壁と手前に掘られた堀。

 これで奴らは袋のネズミだ。

 囲いの中では、オレたちと壁の存在に気付いたオーク達が騒いでいるが、今更どうしようもない。

 力は強いが攻撃魔法は使えないオークには、この壁を越えて来ることは絶対にできないのだから。

 壁の外側に足場を作り、オレたちは壁の上によじ登る。

 全員が配置についたのを確認したアディ隊長が、次の指示を飛ばす。


「撃て!!」


 一斉に放たれるファイアーボールに、オーク達が右往左往する。

 炎は、オークだけでなく建物にも燃え広がり、囲いの中は炎の海と化す。

 かつてオレたちの生活を脅かした屈強な魔物は、呆気ないほどにあっさりと殲滅された。


 その後もオレたちは、簡易的にドワルグへの道を整えながら、大森林を東へ東へと向かって行った。


『おいおい、この辺ってこんなに魔物が多かったか?』


『チッ、何で魔狼の群れがこんな南に!?』


『まさか、こんなでかい魔獣を俺たちが倒せる日が来るなんてなぁ……』


『以前にこんなのに出会っていたら、間違いなく瞬殺されてたぞ』


 調査隊は順調に東へと歩を進めていた。

 ただ、出会う魔物はかつて無い程に凶悪で、もし昔の自分が遭遇していたら、確実に殺されていただろうというようなものばかりだった。


(こんな凶悪な魔物が、この辺りにこんなにいたのか?)


 勿論、出逢えば確実に殺されるような魔物なのだから、今までに見たことがなくても不思議ではない。

 それでも、こんな危険な魔物が南の森に現れれば、少しは噂になったりするのではないか?

 この任務で出会う魔物の多くは、もっと北の深い森の方に生息していたはずだ。

 この辺りのように大森林でも南の比較的浅い森には、このような魔物は現れないはずだ。

 オレと同じ疑問はアディ隊長も感じていたようで、ある夜、野営地で皆に自分の考えを語ってくれた。

 曰く、このようなランクの高い魔物が、ここのように土地の魔力の弱い地域に頻繁に現れるのはおかしいと……。

 魔物というのは土地の魔力を喰らって力をつけるため、強い魔物ほど魔力の強い土地を好むという。

 その基準で考えるなら、ここ最近出会ったような魔物が、こんなに魔力の弱い浅い森まで降りてくるのは不自然だと……。


「みんな、気を付けなさい。

 きっとどこかに、もっと大物がいるわ。

 大抵こういう現象が起こる理由は一つ。どこかに突然変異的に強力な魔物が現れて、元々そこにいた連中が縄張り争いに敗れて流れてきた場合よ。

 オークの話を最初に聞いた時、その可能性が高いと思ったけど、やっぱりそれで正解みたい……。

 ただ、これだけ強い魔物が不自然な場所に出没してるってことは、それを追い出したヤツはとんでもない大物よ。

 正直、私でも手に余るかもしれない。

 その場合は、速やかに撤退の指示を出すから、皆も無理に戦おうとかしないように!

 あなた達に万一のことがあったら、アメリア様が悲しむわよ」



 アディ隊長の言葉に、意地でもドワルグに辿り着くと意気込んでいた隊員(オレたち)も、皆冷静さを取り戻す。

 その訓戒が効いたのか、翌日の撤退戦は一人の死者も出すことなく、皆が無事に逃げ延びることができた。

 遭遇した敵はサラマンダー。

 5メートルほどの巨体を魔力の炎で包む、Aランク指定の凶悪な魔物だった。


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