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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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ザパド侯爵の憤り 〜ザパド侯爵視点〜

(ザパド侯爵視点)


 実に、不愉快だ!

 私は手に持ったグラスの中のワインを一息に飲み干すと、晩餐会の会場を後にした。

 今宵、国王が急遽開いた晩餐会は、久しぶりに王都に戻ってきた(サラ王女)と、(サラ王女)が持ち帰ったボニーツナを、皆に自慢する目的で開かれたものだ。

 フンッ、いくら珍しいと言っても、所詮はただの料理ではないか!

 出来損ないの娘が、辺境から見慣れぬ魚を持ち帰ったくらいで、国王ともあろう者が浮かれおって!


 最近、王都ではセーバの魚料理が流行っていて、忌々しいことに、あの公爵家の派閥の連中が社交界で幅を利かせている。

 しかも、それに追随するかのように、今までは私に尻尾を振っていた連中まで、公爵家のご機嫌を伺い始めた。

 なにが、「アメリア公爵のような優秀な娘を、私も欲しいものですなぁ」、だ!

 この前まで、魔力を持たない能無しと馬鹿にしていた口で、恥ずかしげもなくよくも言えるものよ。

 だが、口惜しいが、確かにあの小娘が領主になってからのセーバの街の発展には、目を見張るものがある。

 ウィスキー、質の良い武器や道具類、見慣れぬ魔道具と、全て小娘の功績のように喧伝されているが、どうせ大賢者が裏で糸を引いているに決まっている。

 ちょっと考えれば、分かるだろう!

 常識で考えて、あんな私の娘と歳も変わらぬ子供に、あのようなことができるはずがないのだ!

 それでも、現実問題として、今のセーバの街が我が領を脅かすほどに力をつけてきていることは事実だ。

 しかも、質の悪いことに、セーバの街の商品は全て、この国の経済の中心たる我がザパド領を一切経由しないかたちでこの国に流通している……。

 レボル商会の移転を許したのは失敗だった……。

 まさか、昔からザパド、クボーストに根を張り商売を続けてきたレボル商会が、流通の中心地たるザパド領内から一斉に撤退するとは思わなかった。

 この国の主だった商会は、みなザパドの街に本店を置いている。

 国内の品も国外の品も、全ては一旦ザパドの街の市場に集められ、そこから各地に分配されていく仕組みだ。

 故に、ザパドから撤退するということは、この国における巨大な流通網を全て失うに等しい。

 そんな馬鹿な真似を、誰がすると考えるのだ!?

 結果として、レボル商会は今までに築いてきた全ての経済基盤を失い、ほぼ全て一からのスタートとなったわけだが……。

 セーバ産の他所では手に入らない商品をほぼ独占状態で販売することで、ヤツはザパド領を一切経由しない、独自の流通網を作り上げようとしている。

 これでは、セーバの商品を市場から締め出すことも、うちが独占することもできんではないか!

 今は、セーバ向けに王都に入ってくる商品を扱う配送業者や王都の鉄鋼組合に圧力をかけて、セーバの街に流れる資材や食糧の値を吊り上げてはいるが、依然この流れは変わりそうにない。

 懸念事項はまだある。

 クボースト経由での連邦、倭国からの商品の流入が、目に見えて減ってきている点だ。

 いや、減ってきているどころではない!

 連邦はともかく、倭国からの商品に関しては、なぜか完全にストップしてしまった。

 何故このようなことになったのか訳が分からないが、連邦の馴染みの商人の情報では、倭国の皇家と主だった貴族が連名で、商人達に倭国の商品をクボースト経由で輸出することを禁じたという。

 なんでも、『羅針盤の発明により、大きく海上輸送が発展する時勢を踏まえ、海洋国家たる倭国は、率先してその流れを牽引する』というのが、倭国側の主張らしい。

 なんだ、それは!?

 つまり、元凶は小娘の羅針盤ということか!?

 このままでは、いずれ倭国だけでなく、連邦からの商品まで全て、セーバ経由で輸入されることになる。

 そうなれば、少なくとも他国との取引を中心に商売をしている商会は、全てセーバに拠点を移すことになるだろう。

 いや、実際に、既に幾つかの小さな商会は、拠点をセーバに移している。

 このような馬鹿げた変化はここ数年の話だから、まだ大半の商会は様子見を決め込んでいるが、今後この流れが続けば、いずれは我が領を捨ててセーバに拠点を移す馬鹿も増えてくるだろう。

 早急に、対策をせねば……。

 今日の晩餐会で、貴族の間でも小娘とセーバの街の存在は、完全に受け入れられてしまった。

 市場に出せば途方もない値がつくであろうボニーツナを王家に献上し、今までは攻撃魔法を使えない無能と思われていたサラ王女を、王太子の魔術教師(ジェローム)を退けるほどに成長させた。

(それにしても、あの役立たずめ!)

 本人の魔力はともかく、数々の魔道具を開発し、サラ王女に新しい攻撃魔法を授け、ボニーツナを献上することで、小娘は王家への忠誠を示した。

 しかも、多くの貴族が集まる晩餐会の場で、サラ王女自身が全てはアメリア公爵個人の功績であると宣言したことで、完全に小娘を受け入れる流れができあがってしまった。

 一応、国王には、小娘からセーバの街を取り上げるよう進言したが、あの兄に頼りきりの男にそんな強硬手段が取れるとは思えん。

 こうなれば、後はこちらの息のかかった補佐役なり婚約者をあてがって、陰からあの街を操るしかあるまい。

 実際、過程はどうあれ、我が国でのセーバの街の影響力がこれ程大きくなった以上、その統治を子供などに任せてよいはずがない!

 名目上の領主ならともかく、実際の街の統治は、政治経済に精通した信用のある大人がするべきなのだ。

 少なくとも、そういった実績のある大人の補助は不可欠であろう。

 この点に関しては、さすがに国王といえども反論はできまい。

 私の親族にあのような庶民が加わるのは業腹だが、これもやむを得まい。

 ディビッドが退き、あの街の実権をこちらが握った後なら、あのような小娘など簡単に始末できよう。

 のんびりしていれば、他の貴族も動くだろう。

 これは、早めに話を進めねばならんな。


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