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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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領都ボストク

 トッピークの街や農業ギルドの実験農場等を視察した私は、現場レベルでの細かな打ち合わせや作業の必要なメンバーを残し、トッピークから一日ほどの距離にある、ボストク侯爵領の領都ボストクへ向かった。

 主要メンバーは私の他に、いつものメンバーであるレジーナとレオ君。

 ただ、流石にこの3人だけだと不用心ということで、ヤタカさんの部下の中から、あまり船乗りっぽくは見えない見た目の良さそうな人達を数人、護衛として貸してもらうことにした。

 私達3人だけだと、実力はともかく、傍目には親に黙ってこっそり遊びに来た子供達にしか見えないからね。

 短い距離とはいえ、野盗等も引き寄せやすいし、どうでもいいところで保護者はどうしたとか難癖をつけられそうだし……。

 それに、これでも一応は貴族のお嬢様なので、子供3人乗合馬車でというのはちょっと体裁が悪いそうだ。

 私は前世でも、パック旅行は旅ではないって主義の人だったし、セーバでは現地視察と称して割と自由に動き回っていたけど、普通の貴族のお嬢様は護衛も侍女も連れずにふらふら出歩くことなどないそうだ。

 ちなみに、この場合の護衛と侍女は大人のことで、レジーナやレオ君のような子供の所謂(いわゆる)見習いは、数にはカウントされないんだって。

 レジーナもレオ君も、その辺の冒険者や兵士より余程強いのに、失礼な話だ。

 まぁ、その辺、セーバの街が非常識なだけだってことは理解しているから、私も他領では極力常識的に振る舞うよう努力しているんだけどね。


 そんなこんなで道中何事もなく、ユーグ侯爵に借りた馬車は無事ボストクの街に到着した。

 ボストクの街は、高い城壁に囲まれていた。

 こんなの、王都でも見たことがない。

 強いて言えば、同じ国境の街であるザパド領のクボーストが近いけど、あそこの城壁はもっと継ぎ足しだらけで、歴史的建造物に近い感じがした。

 でも、ボストクは違う。

 ここは見るからに、今でも現役の城塞都市って感じだ。

 この街と国境を接するソルン帝国とは、多少の政治的な緊張はあるものの、表立った敵対はしていない。

 国同士での正式な国交はないため、我が国が直接ソルン帝国に魔石を輸出したりはしてないんだけど、完全に国境を閉鎖しているってわけでもないんだよね。

 だから、商人等を通して多少の物や人の行き来はあるみたい。

 それでも、モーシェブニ魔法王国にとって、ソルン帝国と国境を接するこの地は、軍事的に最も警戒しなければならない土地であることは間違いないわけで……。

 そのため、このボストクの街には、国内で最も多くの兵力が割かれているのだ。

 このボストクの街は、領都でありながら、国境に駐留する兵士と、その兵士の生活を支えるために集まった人達によって成り立っている街なのだ。

 そんな訳で、普通なら他領から来た人間の門での審査はかなり厳しいらしいんだけどね。

 ただ、私達の来訪は先にボストクの街に戻ったボストク侯爵からも知らされていたようで、ユーグ侯爵家の紋章入りの馬車を見た兵士は、私達が拍子抜けするほどあっさりと中に通してくれた。

 前世の旅では、陸路での国境越え、入国審査というのは、面倒だけどドキドキする旅の醍醐味の一つだったから、列に並ぶ旅人達をスルーして馬車から降りることもなく簡単に通過できてしまったのは、正直ちょっとつまらなかったけどね……。

 ともあれ無事に着けたのは何よりだ。

 私達の馬車はそのまま門にいた兵士さんの先導で街中を進み、ボストク侯爵の住む砦?に到着した。

 なんか、屋敷というよりは、むしろ基地と言ってしまった方が正解な感じだ。

 セーバや王都にあるうちのお屋敷やユーグ侯爵の別邸なんかは、そのまま貴族のお屋敷って感じで……。

 王都の王宮も一応城壁には囲まれているけど、あれは“王城”ではなく“王宮”って感じだった。

 建物は豪華だけど普通の家だし、敷地は広いけど基本的には景観重視だ。

 でも、ここは……。

 あのお屋敷?、建物って、多分魔法攻撃とかを想定してるよね?

 敷地内に見えるのは庭園ではなくて、恐らく籠城とかを想定した畑だし……。

 あっちに見えるのは練兵場かなぁ……? 武器持った人がたくさん練習してるし……。

 なるほど、体育会系の領地であることは間違いなさそうだね。

 レオ君は、さっきから周囲を見ては目をキラキラさせてるし……。

 レジーナは逆に、周囲を警戒するような目をしているし……。

 まったく、どちらが護衛なんだか……。


 建物の前に止まった馬車の中でそんなことを考えていると、しばらくして数人の部下を引き連れてボストク侯爵がやって来た。


「侯爵自らのお出迎え、痛み入ります。しばらくお世話になります」


「いやいや、歓迎しますぞ、アメリア公爵。我が領にようこそ!」


 つい先日会ったばかりということもあり、お互いに簡単な挨拶を済ますと、私達は建物の中の客室に案内された。

 建物の中は普通だ!

 なんか、兵の寄宿舎みたいのを想像してたんだけど、外観に似合わず内装は侯爵家のお屋敷と言われても違和感のないものになっている。

 それは、そうだよね……。

 有事に備えているってだけで、ここは侯爵様のお屋敷なんだから。

 一瞬、狭い4人部屋に二段ベッドが2つみたいな部屋を想像しちゃったけど、案内された客室は貴族的に普通だった。

 その日はもう遅かったので、私達はボストク侯爵夫妻と夕食をいただき、早めに休んだんだけど……。

 私だけでなく、レオ君や、平民のレジーナまでが夕食の席に同席を許されたんだよね……。

 ボストク侯爵の奥さんも、そのことを当然のように受け入れていたし……。

 レジーナがマルドゥクさんの孫だからとも考えたんだけど、どうも違うっぽい。

 そもそも、初対面の貴族であるボストク侯爵の奥さんが、私に対して嫌味の一つも言ってこないし……。

 恐らく、旦那さん(ボストク侯爵)娘さん(王妃様)が口添えしてくれているんだと思うけど、打算とか礼儀とかって感じでもなくて……。

 自然に私達3人との食事を楽しむ奥さんを見ていると、ここが他所の貴族家ではなくて、何だかセーバの街にいるみたいな気分にさせられてしまった。


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