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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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トッピーク首脳会議

 そして、翌日。

 場所は、ユーグ侯爵邸の会議室。

 私の隣にはフェルディさんが座っている。

 私のすぐ後ろには、いつものようにレジーナとレオ君が控えている。 

 私の前の席に座るのは、ユーグ侯爵とトッピークの代官を務めるヴィーノっておじさん(男爵)。

 そして、もう一人、見覚えのあるお爺さんが……。


「あの、どうしてボストク侯爵がこちらに?」

 

 私が入った会議室で、いきなり笑顔で迎えてくれたボストク侯爵を見て、私は港で突然ユーグ侯爵が現れた時以上の衝撃を受けた。

 ボストク侯爵?

 なんで、あなたがここにいるの!?

 折角可愛い孫娘がはじめてのおつかいをするんだから、王都に行ってあげなよ!

 ボニーツナを食べる機会だって、その歳だともうないかもよ!

 いや、目の前の老人は相変わらずお元気そうで、私の方に笑顔を向けながらも、ちょっと油断すると取って食われそうな感じが……。流石は王妃様のお父さんって感じだね。

 サラ様はがんばり屋で素直な良い子なのに、その親族はどうしてこんなに可愛げがないんだろう……。

 ん? 私も従姉妹だから、一応親族か?

 そんな混乱する私に、ボストク侯爵は機嫌良く対応してくれる。


「うむ、それは勿論、トッピークにアメリア公爵がやって来ると、ユーグ侯爵から知らせを受けたからじゃよ。

 孫娘も世話になっておるからな。

 ここはワシの口からもアメリア公爵には礼を言わねばならぬと思ってな」


 なんか、前回会った時より、随分とフレンドリーな感じだ。

 前回は王宮での挨拶だったから、きっちりと貴族の礼節を守った感じだったのかも……。

 いや、いきなり“威圧”してきたよねぇ……このお爺さん。

 嫌いなタイプってわけでもないんだけど、ちょっと苦手なタイプだ。

 老人とは思えない筋肉が、ちょっと怖い。


「それに、トッピークはユーグ領とはいえ、ボストクの街と非常に近い。

 今後、セーバの街とトッピークとの直接取引が始まるとなれば、むしろユーグ領よりも我が領の方がその影響は大きい。

 ボストク領主として、この会談にはぜひ同席せねばと考えるのは、当然のことと思うが?」


 確かに、ボストク侯爵の言うことは正しい。

 そして、ユーグ侯爵の今回の対応もだ。

 もし、私が2人の立場でも、多分同じ判断をすると思う。

 今のセーバとトッピークを繋ぐ海路には、それだけの価値があるのだから。

 ザパド領の様子とザパド侯爵、身内であるお父様、王妃様の尻に敷かれてそうな国王陛下……。

 そういう大人(貴族)しか見てこなかったから、ちょっとこの国の為政者を舐めてたかも。

 魔力至上主義の価値観は変わらなくても、それ以外の現実を全く受け入れられないほど頭の固い貴族では、大領地を維持することなどできないということだろう。

 実際、ザパド領は潰れかかっているしね。


 今後の交易や港の整備についての話し合いが進むなか、トッピークの代官の……男爵は、目下侯爵2人に挟まれて完全に置物と化している。

 トッピークの街や港のことについて知りたいことがあると、初めのうちは皆男爵に聞いていたんだけどね。

 そのうち急遽呼び出された文官みたいな人や漁師っぽい人に直接聞くようになって、完全に置物と化してしまった。

 だって、全然答えられないんだもの。

 まぁ、無理もない。

 本来なら、私達との話し合いをするのが、普段の男爵の役目だからね。

 いつもなら、偉そうに「そこのところは、どうなっている?」とか部下に聞く立場なのに、侯爵2人と一応公爵の私に囲まれて、いきなりペーペーの扱いなのだ。

 これは、あれだ。

 大企業の田舎の支店で急遽本社の重役会議が開かれて、そこに現地代表としていきなり参加させられた支店長みたいなものだ。

 決して悪い人ではなさそうだし、ちょっと同情する。

 男爵のおじさんには、今回の事にめげず頑張ってもらいたい。

 実際、今まではボストク領にも近くて魚の獲れる貴重な街とはいえ、所詮はただの港町だ。

 相手にするのは漁師達と魚を買いに来る商人だけだ。

 でも、これからは違う。

 今後、セーバの街が本格的に国際貿易都市としての地位を確立すれば、この街はボストク領、ユーグ領に入る交易品が全て集まる大都市へと発展していく可能性が高い。

 頑張れば、見返りは大きいのだ。

 私のせいとはいえ、ユーグ侯爵に見限られないよう頑張ってもらいたい。


 そんな会議の中で、大活躍を見せているのがうちのレジーナだ。


「現状のセーバの街の人口増加率から試算する来年度以降の小麦の購入量は……」


「武器を作れる職人の数は今のところ不足気味ですが、先日中級クラスに上がった者達の多くが職人を希望してますから……」


「そこの詳細はアメリア商会の方で管理していますので、魔鳥便で問い合わせれば、今回の滞在中には確認できると思います」


 今回必要になりそうな資料は予めまとめてきているとのことで、初めは私付きのただの侍女見習いと考えていた両侯爵も、最後の方ではレジーナのことも完全に会議の参加者の一人とみなしていた。

 傍から見ると、大企業の重役2人が、小学生の女の子2人と真剣に討論しているような異様な光景なんだろうけど、セーバの街では見慣れた光景だ。

 後からフェルディさんに聞いた話だと、会議に夢中の当事者達はともかく、それ以外の周囲の大人たちは唖然としていたようだ。

 しかし、これはセーバの街と関わるようになる大人が必ず通る道だ。

 慣れてもらうしかあるまい。


 二日目以降は、セーバの街の港の整備を担当したユーベイ君や、大型船の設計責任者のタキリさんも話に加わり、トッピークに大型船用の港を作るための技術協力の話や、トッピークの漁船に魔動エンジンを導入する話等もされた。

 セーバの街の首脳陣の大半が皆10代前半の子供ばかりであることには驚かれたが、そのことで自分の立場に危機感を持ったヴィーノ男爵の奮闘もあり、5日におよんだ話し合いはお互いに納得いく形で幕を閉じた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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