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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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ユーグ邸訪問

 私達を乗せた馬車は、漁師町らしい活気に溢れるトッピークの市街地をゆっくりと抜け、街を見渡せる小高い丘の上に立つ白壁の美しいお屋敷に到着した。

 ここはユーグ侯爵の別邸。

 仕事以外の、夏のバカンス等にも利用しているそうで、貴族貴族した堅苦しい印象はなく、とても開放感のある居心地の良さそうなお屋敷だった。

 案内された2階の客室の窓からは、トッピークの街並と、その向こうに広がるベボイナ湾が一望できるようになっていて、視線を下に向ければ、色とりどりの花が咲き誇る可愛らしい庭園が見える。

 ユーグ侯爵が、家族との休暇を過ごすために使っているというのは本当のようで、ここがもし普通の宿屋だったら、私の中でも間違いなくお気に入りの宿になっていたと思う……。

 思うんだけど、残念ながらここはただの宿屋ではなくて、この国の貴族を代表する三侯の一人、ユーグ侯爵様のお屋敷なんだよねぇ……。

 全く緊張しないと言えば、嘘になる。

 だって、三侯だよ!

 この国で最も力のある貴族の中の一人で、国内の農作物の6割を握っている、この国の食糧庫の主だよ!

 王都だってセーバの街だって、多分他の領地もだけど、ユーグ領からの食糧が途絶えたら、確実に食糧不足になる。

 なんだかんだ言って、第一次産業を押さえている領地は強いのだ。

 まぁ、セーバ(うち)の場合は、最悪食糧は他国から輸入するって手もあるんだけど、できればユーグ領とは友好な関係を築いておきたい。

 私としては、今回は王都経由の交易ルートは使わずに、直接船で食糧を買いに行きますねっていう、軽い気持ちで来ただけだったんだけど……。

 まずは何度か船で買い付けに来て、港の整備とか他国との中継貿易の話とかは、ある程度の信用と実績を作ってからのつもりだったのに……。

 これを機に、ぜひ本格的にセーバとの交易をって、ユーグ侯爵の方から話を振ってきた。

 港の整備についても前向きに検討したいから、知恵を貸してもらいたいとお願いされてしまった。

 明日にはこちらの関係者も揃うから、そこで詳しい話をって急に言われても、こちらとしても対応に困る?

 いや、別に困りはしないけどね。

 トッピークの港の整備にしても、ユーグ領やボストク領との交易にしても、切り出すタイミングを見計らっていただけで、計画自体は私がセーバの街の開発に着手した頃からあったのだ。

 さっさと話を進めてくれるというのなら、私としては大助かりなんだけどね。

 ただ、王都で挨拶した時に、私がこの国の貴族だってことは、ユーグ侯爵にも一応認めてはもらえたんだけど……。

 それって多分、打算というか政治的判断というか、そういったものを踏まえて、渋々認めてくれたんだろうなぁって思っていたから……。

 まさかユーグ侯爵が自分から、私のような碌に魔力もない小娘に対して、あんな友好的な態度を取るとは想像していなかった。

 馬車の中で、(魔力の少ない)私なんかのために、どうしてわざわざ?って聞いたら、アメリア公爵はもっと今のご自分の影響力を自覚するべきだって、苦笑されてしまった……。

 私はただ、自分が住むセーバの街をより安全快適にして、ついでに、私にとっての危険人物であるザパド侯爵を潰しておこうと画策していただけなんだけど……。

 ユーグ侯爵によると、今現在、王都経由でセーバから流れてくる品質の良い農機具や様々な魔道具によって、ユーグ領の収穫量は確実に上がってきているそうだ。

 また、セーバの街向けに買われていく農作物の量も年々増えていて、その売上額も、領全体の収益の中で決して無視できないものになっているらしい。

 王都の貴族の間でも、ウィスキーや魚料理の流行で、セーバの評価はとても上がっていて、その評価は、今回国王陛下が振る舞うボニーツナによって、決定的なものになるだろうって話だ。

 今では、私に対して魔力云々で苦い顔をする者はいても、ある程度の情報を持つ力のある貴族や商人の中で、私やセーバの街のことを侮るような者など誰もいないと言われてしまった。

 私がセーバに引きこもっている間に、他所での私の評価はだいぶ変わってきているらしい。

 お母様から王都の貴族の様子は多少聞いていたけど、実際に第三者の貴族から面と向かって言われると、本当に二年前とは状況が変わってきているってことを実感するね。

 そんな訳で、明日の話し合いには非常に期待しているし、私の訪問は大歓迎だから、まずは遠慮なくくつろいで旅の疲れを癒やして欲しいと、ユーグ侯爵には笑顔で言われてしまった。

 おまけに、一応貴族であるレオ君やユーグ領との食糧の取引をお願いしているフェルディさんはともかく、身分的にはただの平民であるレジーナにまで貴族用の客室を用意してくれた。

 なんか、ここまでしてくれると、明日の会議がとても恐いんですけど……。



ちょっと短いので、連続投稿です。

明日も投稿します。

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