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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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トッピーク上陸

 お〜!

 なかなかいい感じの街だねぇ!

 トッピーク!

 私は、船の甲板から遠くに見える街並みを眺めている。

 船が港に入る時って、本当にわくわくするよね。

 やっと着いた!ってのも勿論あるんだけど、それとは関係なく、この海側からの視点で見る港っていうのが何とも風情があって、私の旅心(たびごころ)を刺激してくれるのだ。

 ここはトッピークの港から少し離れた沖合。

 キティーシャーク号はそこに錨を降ろして、停泊している。

 ユーベイ君達に調べてもらったところ、やはりキティーシャーク号が安全に入港するには、港の大きさも水深も少し足りないようで、念の為、港の外に停泊することにしたのだ。

 今は上陸のために、テンダーボートを船から下ろす作業をしてもらっている。

 ちょっと大きめのモーターボート程度のものだけどね。

 それが2(そう)、この船には積み込まれている。

 セーバの街の漁師が、近海でのちょっとした漁や釣りに使っている舟だけど、魔動エンジン付きだ。

 大型船がトッピークの港に入港できない可能性は高かったから、人や荷の搬送用にこういった装備もしっかり用意してある。

 各々の舟に5人ずつ、上陸組が乗り込む。

 私、レジーナ、レオ君、タキリさん、ヤタカさんで1艘。

 もう1艘の方には、フェルディさんとその部下の人が1名、他船員3名(ヤタカさんの部下)が乗り込んだ。

 海上でのテンダーボートから大型船への乗り降りは、前世で経験した時には揺れるし高いしでかなり怖かったけど、今回はそうでもなかった。

 大型船といっても所詮この世界ではという話だし、ベボイナ湾自体がとても海とは思えないような、波の静かな海だしね。

 これなら海上での荷物の積み降ろしも、それほど難しくはないかもしれない。

 そんなことを考えながら、私達は遠くに小さく見える桟橋へと向かった。

 港に舟が近づくと、そこには多くの人が集まっているのが見える。

 こちらを指さして、何やら漁師らしき人達が騒いでいる。

 兵士らしき人達も見える。

 あれ? ユーグ侯爵を通して、トッピークの代官には私達が来ることは伝わっているはずなんだけど……。

 末端の兵士や街の住人には、連絡が伝わってないのかも?


「何か騒いでいるみたいだけど、私達が来ること、街の人には知らされてなかったのかなぁ?」


 誰にともなく口から出た疑問に、答えてくれたのはタキリさんだ。


「多分だけど、きっとこの舟に驚いているんだと思うよ。

 私も初めてセーバでエンジン、スクリュー付きの船を見た時は驚いたし……。

 帆もオールも無い舟が、魔法を使っている気配もないのに凄いスピードで走っているんだから、ほんと訳が分からなかったよ。

 この舟、私が初めて見たのより更に速くなってるから、船に乗るのが日常の漁師にはかなり衝撃なんじゃないかなぁ」


 私がセーバで作った船は、初めから魔動エンジンとスクリューが取り付けられていた。

 だから、今のセーバではそれが当たり前で、ただのボートのことなど気にも留めていなかったけど、言われてみればこのボートって、かなりのオーバーテクノロジーだ。

 プロペラ機しか知らない人達のところに、ジェット機で乗り付けるようなものかも……。

 これは騒がれても当然か……。

 でも、それならそれで、ついでにこのボートの売り込みもできるしね!

 怖がられて攻撃されたりしなければ、特に問題は無いだろう。

 私達は、あまり相手を刺激し過ぎないように舟のスピードを落として、ゆっくりと桟橋に近づいていった。

 そうして私達が桟橋に辿り着くと、桟橋を遠巻きにしていた人混みが割れ、奥から漁師町には不似合いな身なりの整った一団が近づいて来た。

 その中心にいる人物には見覚えがある……。

 ユーグ侯爵!?

 どうしてユーグ侯爵がこんな港町に?って、勿論私に会いに来たんだろうけど?!

 ユーグ侯爵自身がトッピークに来るなんて、一言も言ってなかったよねぇ?

 不備が無いよう担当者に話を通しておくって、返事はもらったけど……。

 てっきり、王都の晩餐会の方に行っているとばかり……。

 そう、はっきりとした日にちは分からないけど、ちょうど今頃、国王陛下が王国の主だった貴族を招待しての、晩餐会を催しているはずなのだ。

 娘のサラ様が研修先(セーバ)から持ち帰った高級食材、ボニーツナを振る舞うためのお食事会だ。

 サラ様がセーバの街で獲れたボニーツナを献上するために、久しぶりに王都に帰るという連絡をいれたところ、幻の高級食材ボニーツナと、久しぶりに戻って来る娘のことですっかり浮かれてしまった国王陛下が、お祭り騒ぎで急遽晩餐会を開くことに決めたそうだ。

 実際、ボニーツナは家族だけで食べるには大き過ぎるし、一度解凍しちゃえば保存もきかないから、ここは皆を招待して大々的に振る舞うってのが正解だとは思う。

 そんな訳で、当然晩餐会に招待されているであろうユーグ侯爵は、今は王都に行っているものと考えていたんだけど……。

 そもそも、それを抜きにしても、ユーグ侯爵の住む領都からここまでって、数日はかかる距離のはずだ。

 同じ領内とはいえ、ちょっとそこまでって気軽にほいほい来れる訳ではないと思うんだけど……。

 私は、この国の貴族の私に対する扱いをよ〜く知っているから、たとえ今後のユーグ領にとって非常に経済効果の大きい問題であっても、ユーグ侯爵が自ら私のために国王陛下のお誘いを蹴って、わざわざ漁師町まで出向いてくるとは、思ってもいなかったんだよね。

 利益になるから無視もしないけど、わざわざ礼を取る必要もない出入りの商人程度の扱い……。

 そんな認識なんだと思ってたんだけど、どうやら私の方がユーグ侯爵に対する認識を改めなければいけないらしい。

 私はさっと自分の身なりを確認し、滅多に使うことのない貴族モードで、ゆっくりとユーグ侯爵に近づいた。

 因みに、今の私の服装は、ドレス姿ではないにしろ、船旅直後とはとても思えないほど小奇麗にまとまっている。

 私のキティーシャーク号は、なんとお風呂完備だからね!

 海水をポンプで組み上げる魔道具に、海水を真水に変える魔道具、更にそれをお湯に変える魔道具。

 既にセーバの街では一般家庭にまで普及している水道設備や湯沸かし器の技術が、キティーシャーク号に導入されていない訳がない!

 お陰でとても快適な船旅だと、タキリさんにも大感謝されたものだ。

 それはさておき、ユーグ侯爵は私の前に進み出ると、当然のように貴族の礼をとる。


「アメリア公爵、ようこそお出で下さいました。危険な船旅でさぞお疲れでしょう。屋敷にご案内いたしますので、まずはそこでゆっくりと旅の疲れをお取り下さい」


 ユーグ侯爵の予想外の対応に戸惑いつつも、私はタキリさんに船のことを任せて、レジーナ、レオ君、フェルディさんを伴い、ユーグ侯爵の屋敷に向かうことにした。


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