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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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鉄鋼組合

 今日は、ここセーバの街の定例会議の日。

 私の側近が勢揃いだ。

 専属護衛のレオくんと側近統括筆頭秘書のレジーナはもちろん、農業部門の責任者のハーべ君、漁業船舶部門の責任者のユーベイ君、建築工業部門の責任者のユーノ君、ユーノ君の妹で技術開発部門の責任者のアンさん。それに、レジーナと同じく公爵家メイド部隊のメンバーで、私が商会長を務めるアメリア商会の副会長をしてもらっているカノン。

 皆セーバ小学校発足時からのメンバーで、私が育てた大切な生徒で、頼りになる側近達だ。

 初めて会った時には、まだ全員未成年だったのにねぇ……。

 月日が経つのは、本当にあっという間だ。

 今ではハーべ君、ユーベイ君、ユーノ君が成人していて、アンさんももうじき成人を迎えるそうだ。

 もっとも、この世界の成人は13歳だから、私の感覚だとまだまだ子どもにしか見えないんだけどね。

 9歳児が何を偉そうにってツッコミは、無しでお願いします。


 さて、そんな初期メンバーに加えて、外部からの参加者もだいぶ増えてきている。

 まず、セーバの街の初期メンバーともいえる、私の御用商人でもあるレボル商会のフェルディさん。

 この街の商業ギルド長であり、セーバの街と他国との貿易関係の仲介をお願いしているルドラさん。

 ルドラさんの奥さんであり、この街の自警団の相談役でもあるアディさん。

 それに、私の共同研究者であり、セーバの街の造船所の責任者でもあるタキリさん。

 フェルディさん以外の3人は、この街に来てまだ1年足らずだけど、3人とも私の事を子供と侮ることもなく、セーバの街の発展にも非常に協力的だ。


 そんなわけで、今日の会議なんだけど……。概ね順調ってわけでもなさそうだ。


「では、最近セーバの街に入ってくる鉄や銅等の金属の値段が上がってきているのは、王都や国全体での話ではなくて、セーバの街に売られる金属だけが意図的に値を吊り上げられているってことですか?」


 私の質問に、フェルディさんが難しい顔で答える。


「はい。レボル商会の王都支店の者に、ドワルグにも行かせて調べさせました。

 ドワルグでは金属の値上がりなどはおきていません。

 どうやら、王都の金属加工を主に扱う幾つかの商会や大手の工房が、鉄鋼組合に圧力をかけて、セーバに売る金属の価格を吊り上げているようです」


 今現在、セーバで作られる武器や道具類の材料となる金属は、全て王都経由で購入されている。

 これらの各種鉱山資源は、みな王都の北にある魔石の山、モーシェブニ山を中心とした鉱山地帯で採れる。

 それらの鉱山資源は、全てモーシェブニ山の麓にある鉱山の街ドワルグに集められ、それが王都に運ばれてくる仕組みだ。

 そうして一旦王都まで運ばれた金属は、王都の鉄鋼組合を通して、更に南の各侯爵領や我がセーバ領に売られていくわけだけど……。

 王都に店を構える金属製品を専門に扱う商会や、多くの金属加工の職人を抱える大手の工房等は、他領に比べより良質な金属をいち早く安価で押さえることができる。

 腕の良い職人も集まりやすいし、他所からの人の出入りも元々の人口も多いので、お客さんにも困らない。

 そんな事情もあって、王都の金属関係の商会や工房は、よく言えばみんな仲良く、悪く言えば何の競争もなく、現状維持で平和にやってきたわけ。

 でも、事情が変わった。

 最近、辺境の街で、王都で売られている物よりも明らかに質の良い商品が、王都よりも遥かに安く売られ始めたのだ。

 それこそ、わざわざ王都から足を伸ばしても、お釣りがくるくらいの価格でだ。

 今では、値段の高い上流階級向けの商品を中心に、明らかに王都の商会や工房産の商品の売れ行きが落ちている。

 こんなことが許せるのか!?

 たとえ公爵領とはいえ、ぽっと出の辺境の田舎町の商品が、王都産の金属製品よりも評価されるなど、許されるはずがない!

 ここは、力の差というものを思い知らせてやらねばなるまい。


 フェルディさんが、王都で懇意にしている職人さんに聞いた話だと、大体こんな感じらしい。

 その職人さんは、自分の腕を磨くのではなく、裏でこそこそと圧力をかけるなど、見当違いも甚だしいといって、ひどく怒っていたらしいけど……。

 実はそういう良識と気骨のある職人ほど、王都を離れてセーバに移ろうとするものだから、余計にこの問題は(たち)が悪いそうだ。

 さて、どうしたものか……。


「アメリア様、このようなやり方は商業ギルドとしても看過できません。

 商会同士での嫌がらせ程度ならともかく、一国の鉱山資源の流通を担う鉄鋼組合が、特定の商会の利益のために、公爵領に対して不当な妨害工作を仕掛けてくるなど、許されるものではありません。

 私の方で王都の商業ギルドを通して正式に抗議することもできますし、国王陛下に直訴して、国に然るべき対処をお願いしてもよいかと思われます」


 まぁ、それが正解なんだろうけど……。

 それで今回の嫌がらせは一旦収まるかもしれない。

 でも、根本的な問題はそのままだ。

 セーバの街が王都経由でしか資源の調達ができない以上、どうしても王都の情勢に振り回されることになる。

 これは鉱山資源だけの話ではなくて、実は食糧についても言えることだ。

 セーバの街周辺の畑の開墾も進めてはいるけど、今後輸出量が大幅に増えると予想されるウィスキーやビールの生産量増加を考えると、セーバの街単独での自給自足は不可能だと思う。

 今でも、小麦を始めとした保存の効く農作物は、かなりの量を王都経由でユーグ侯爵領から購入しているのだ。

 これは、以前王都でユーグ侯爵にも言われたことだけど、セーバが国内から物資の調達をする際に、必ず王都を経由しなければならない以上、今回のように王都を押さえられると、それだけでセーバは干上がってしまうことになる。

 これは、由々しき問題だ。

 そもそも、セーバで使う金属を、王都経由で買い付けている現状が問題なのだ。

 地理的に考えて、セーバ、王都、ドワルグは、丁度正三角形の各頂点に位置している。

 単純な距離で考えるなら、ドワルグからセーバも、ドワルグから王都も、距離的には大して変わらない。

 ただ、セーバ、ドワルグ間の道がないだけで、もし道さえあれば、わざわざ王都を経由して大回りしてくる必要などないのだ。


 よし、道を作ろう!


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