二十四話
気配を感じクラウスは目を覚ます。するとジョスが額の濡れタオルを交換していた。
「ジョス……ルーフィナを、ちゃんと送り届けて……くれた?」
「それがお迎えには伺ったのですが、ルーフィナ様からご自身で帰られるとお断りされたもので……」
「…………は?」
予想外のジョスからの返答に理解するまで数秒掛かってしまった。そして理解した瞬間、唖然とする。
「まさか、それで彼女を送り届けないで帰って来た訳じゃないだろう⁉︎」
「あの、はい……申し訳ございません」
「ジョス、君……っ」
思わずは起き上がり叫んだが、一気に頭に血が上り眩暈がしてベッドに倒れ込んだ。
「今、帰りは彼女の屋敷からは迎えは来ないんだよ。僕が、毎日迎えに行っているから……」
「⁉︎」
ようやく理解したのかジョスは血相を変えた。確かにジョスに言葉で伝えてなかったかも知れないが、毎日のクラウスの行動を知っているのだから分かっていると思っていた。
「も、申し訳ごさまいません‼︎」
「もういい……やっぱり僕が行くから……っ」
そうは言うものの、どうやっても身体は動かず結局断念をする。
「兎に角急いで、もう一度彼女を迎えに行って……」
そうクラウスが言うと、ジョスは慌てふためきながら部屋を飛び出して行った。そんな彼の姿に疲労感を覚えた。
また熱が上がってきたらしいく頭痛が酷くなり意識が遠のいていく。
クラウスが窓の外に目を向けると、窓には新たな滴が付着しており先程まで止んでいた雨はまた降り出してきたようだ。雨の中、途方に暮れるルーフィナが脳裏に浮かぶ。
(風邪を引いたら、僕の所為だ……)
数時間後、意気消沈した様子でジョスが戻って来た。話を聞けば義父であるジルベールから随分と説教を受けたそうだ。ジルベールは穏やかだが、ああ見えて怒ると怖い。正直、クラウスも昔から頭が上がらない。
「へぇ……そう」
薬が効いて熱も下がってきておりようやく落ち着いてきたが、ジョスからの報告にまた熱が上がりそうだ。
学院に戻ったジョスだったが彼女の姿はなく暫く周囲を探すも生徒の一人も見当たらなかった為、ルーフィナの屋敷へと急ぐと彼女は既に帰宅していた。ジルベールに訊ねるとテオフィルが彼女を送り届けたと聞かされたそうだ。
「ジョス、君には色々と言いたい事がある。でもまた後日にするよ。今日はジルベールからも散々叱られたみたいだしね。僕も一人でゆっくり休みたいから、もう下がってくれるかい」
何度も頭を下げながら部屋から出て行くジョスの姿に苦笑する他ない。
それにしても、よりにもよってテオフィルがルーフィナを送り届けたなんて最悪だ。無性に腹が立つ……が今日の所は感謝しておく。
そう言えば、庭の花は大丈夫だろうか。雨はそこまで降ってはいなかったが、午前中は少し風が強かった。
二カ月程前に植えた種はすくすくと育ち蕾を付けた。そろそろ花が咲くかも知れない。明日の朝にでも確認しないといけない……。




