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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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第八十五話 いっぱい食べて偉い!

 本日の夕食は、芽衣さんお手製のステーキとつけあわせの副菜とライスである。

 メニューとしてはシンプルかもしれない。でも結局、こういうのが一番いいと思う。


 とても充実した食事時間を過ごしていた。


「おかわりもあるわ。足りなかったら遠慮なくしてね」


 夕食に出してくれたステーキはそこまで大きなサイズではない。

 食べ盛りの男子高校生としてはやや物足りなく感じていたので、おかわりもあるというのはありがたかった。


「じゃあ、いただいてもいいですか?」


「ええ、もちろん。いっぱい食べてね」


「私もっ。芽衣ちゃん、おかわり~」


「聖お嬢様、食べすぎると太るわよ。気をつけなさい」


「ねぇ、芽衣ちゃんってやっぱり私にだけ厳しいよねっ。よーへーもそう思うでしょ?」


 ……まぁ、たしかにそう見えなくもないけど。

 とはいえ、聖さんに対してはひめも結構厳しいんだよなぁ。たぶん、甘やかしたら大変なことになるタイプなのだろう。身内として色々と思うところがあって、あえてこういう態度をとっているのかもしれない。


「陽平くんもお姉ちゃんもいっぱい食べられて偉いですね」


 おかわりを申し出た俺と聖さんを見ながら、ひめはもぐもぐと一枚目のステーキを咀嚼していた。サイズも小さめのものだが、やっぱりこの子は食べるのが遅い。元々食が細いタイプなのだろう。お昼ごはんも完食することの方が珍しいくらいである。


「そうでしょっ? お姉ちゃん、いっぱい食べられてすごいよね~」


「はい。わたしもたくさん食べて、お姉ちゃんみたいに大きくなりたいものです」


「お腹が大きいって言わないで!」


「いや、ひめはお腹とは言ってないよ」


 それに聖さんは太っていない。肉付きがむちっとしているだけなのでいいと思う。

 ……なんて言ったらもちろんセクハラみたいになるので黙しておいた。余計なことは言わないようにしないと。


「お腹じゃないならどこ? 身長は平均よりも下だよ? うーん……あ、もしかして――」


 ああ、言わなくてもダメだったか。

 聖さんは何かに気付いたように自分の胸元をさっと両手で隠した。


「よーへーのえっち」


「何も言ってないのに……」


 理不尽な物言いに苦笑いすることしかできなかった。

 まぁ、聖さんも冗談半分なのだろう。おかわりのステーキが到着するとコロッと表情を変えて、満面の笑みで食事を再開した。あるいは食欲が旺盛なだけとも言えるが。


 そんなこんなで、夕食を食べることしばらく。

 俺が二枚目のステーキを食べ終える頃に、ひめがようやく一枚を完食した。


「よーへーくん、見てください。全部食べられましたっ」


 頑張って食べたのだろう。全部食べ終わることができてすごく嬉しそうだ。完食した綺麗なお皿を見せてきたので、彼女の頭を軽くなでてあげた。


「すごい。いつもよりたくさん食べてひめも偉いね」


「えへへっ。いっぱい食べました」


 普段は女子を撫でるなんてできないけど、ひめが相手だったらそれが自然とできるから不思議なものである。この子なら嫌がらないし、喜んでくれるという信頼があるから……なのかな?


 慕われているし、懐かれている。

 だからこそ、こうやって甘やかしたくなるのかもしれない。ひめが相手だと、すごく心が穏やかになった。


「陽平くんが一緒にいてくれたので、ごはんがいつもより何倍も美味しく感じました」


「そうなの? そう言ってくれると嬉しいよ、ありがとう」


「ひめお嬢様……今日はたくさん食べたわね。普段はあんまり食べないから心配なのだけれど、やっぱり陽平様がいてくれると心強いわ」


 芽衣さんも、ひめが完食しているのを見て喜んでいた――。


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