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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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第六十二話 小さな嫉妬と大きな決意

 ひめは小さく首を振った。


「嬉しかったですよ?」


 俺の発言に対して、彼女は少し驚いたような表情を浮かべている。


「わたしのことを特別だと言ってもらえて、すごく嬉しかったです。そのことで謝る必要なんてありません……むしろ、わたしの方こそごめんなさい」


 今度は逆に謝られてしまった。

 もちろん、俺としてはひめが謝る必要なんてないと思っている。しかし彼女の認識はちょっと違うらしい。


「たしかにびっくりしましたけど……それ以上に、嬉しすぎてどうしたらいいか分からなくなっちゃって。陽平くんの顔を見るたびにドキドキして、何も言えなくなっちゃいました」


 お昼休みはあと数分で終わる。

 周囲の生徒たちが早足で戻っているのを眺めながらも、俺たちの足は止まっていた。


 あまり長話ができないのは分かっている。

 しかし、それでもまだ話したりなくて、急ぐ気持ちにはなれなかった。


「でも、お姉ちゃんが陽平くんに『あーん』しているのを見てから……ずるいって感じてしまって」


「ずるい……?」


「わたしも、陽平くんに食べさせてあげたいなぁって思いました」


 聖さんの策は、ひめとのぎくしゃくした関係を修復してくれた。

 ただ、どうしてこの子がいつも通りになったのかは謎だったのだが。


 どうやら、ちゃんとした理由があったようだ。


「その時に、気付いたのです。どうしていいか分からずに何もしないでいると、こうやって物足りない気持ちを感じることも増えるのかな……って。これから先も同じような気持ちを抱くのはイヤなので、ちゃんとお話した方がいいんだって切り替えました」


 ……やっぱりこの子は賢い。

 自分の感情の理解も、切り替えも、論理で思考して結論を出している。


 俺の前では子供っぽい一面を見せることも多い。ぎくしゃくしたのも、ひめが自身の感情に振り回されたが故のことだと思う。しかしそれではダメだと気付いて改善するところが、子供離れしていた。


 久しぶりに、感じた。

 ひめはやっぱり、飛び級している天才幼女なのだ――と。


「つまり、やきもちです」


「やきもち、か」


「はい。ちょっとだけ、お姉ちゃんに嫉妬しちゃいました」


 それからひめは、小さく笑った。

 愛らしい笑みは、やっぱりかわいくて……つられて俺まで笑うほどだった。


 こんなに小さくてかわいい嫉妬を俺は初めて見た。


「えへへ……お姉ちゃんと結婚してほしいと言っておきながら、おかしな話です。もっと喜べば良いはずなのに、妬いちゃうなんて」


 そして、同時に気付いた。

 ひめの感情が、少しずつ変化していることにも。


 なんとなく……俺も、感じていなかったと言えばウソになる。

 ひめの好意が、無邪気な子供っぽいものではなくなっていることに。


 気付かないわけがない。

 こんなに純粋に、まっすぐに、無邪気に懐いてくれた少女の思いが、日に日に熱を帯びていることを、分からないような鈍感な人間ではないのだ。


「……あ。もうお昼時間も終わりますね。陽平くん、急いで戻りましょうか」


 ただ、ひめはまだそこまで意識していない。

 まだまだその領域にまでは達していない。しかし、今日のようにこの子は近いうちにその思いに気付くことだろう。


(その時までに、俺も自分の気持ちを整理しておかないと)


 ちゃんと、年上としてこの子を導いてあげられるように。

 俺もまた、しっかりしようと決意するのだった――。

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[良い点] 可愛い [気になる点] 全肯定過ぎる気もするような、しないような? [一言] 詳しくは覚えてないんですが日本でも複数の人と付き合う事自体には問題無いって聞いた事あるので、もう二人とも付き合…
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