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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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第十五話 おっとりだけど頑固

 校長室にて。

 俺は初めて、ひめの姉――星宮さんと顔を合わせていた。


「こほんっ……私は星宮聖です。ひめちゃんのお姉ちゃんをやってま~す」


 丁寧にあいさつをしてくれたので、俺も少し居住まいを正して軽く会釈した。


「ど、どうも。俺は――」


「大空陽平くん、でしょ? ひめちゃんから聞いてるよ~」


 こちらも自己紹介をしようとしたのだが、彼女はどうやら知ってくれていたらしい。

 ひめが、俺のことを話していたようだ。


「えっと、ひめには良くしてもらっていて……!」


「いえ、良くしてもらっているのはわたしですよ?」


「うふふ。うちの妹を可愛がってくれているみたいで、ありがとうだよ~」


 ……軽く話してみただけ、ではあるけれど。

 しかし、今のところ星宮さんの態度はすごく柔らかい。

 もしかしたら、妹に近づいた俺を警戒しているかもしれないと思っていたけど、その心配は杞憂だったみたいだ。


「昨日、この子が君の話を楽しそうにしてくれてから、ずっと気になってたの。まさか、あのひめちゃんから男の子の話を聞くなんて思ってなかったから、びっくりしちゃった~」


「お、お姉ちゃんっ。そんなに話してないですからっ」


「え~? 夕食の時間だけじゃなくて、お風呂に入ってるときもずっと『陽平くんが~』って話ばっかりだったのに~」


「ち、ちがっ――! 陽平くん、そこまでじゃないですからっ。お姉ちゃんは話を大げさにする癖があるんです!」


「うふふ。ひめちゃんったら、照れててかわいいなぁ♪」


 ……なんというか、星宮姉妹らしいやり取りだと思う。

 ひめも、姉の前では自然体でいられるのだろう。いつもより表情豊かで、こうしてみるとやっぱり幼い子供だと言うことを強く実感した。


 噂には聞いていたけど、姉妹仲はかなり良さそうである。

 あと、姉の方は噂以上におっとりしているというか……すごくふわふわしている人だった。


「あ、おなか空いてるよね? ごめんね~、そろそろお弁当を食べよっか。ほら、二人とも座って~」


 指示通り、ソファに座ると星宮さんが弁当を配ってくれた。

 ……重箱に入っているこれが、弁当に分類されるのかはさておき。


「ありがとう、星宮さん」


 受け取って、お礼を伝える。

 それからすぐに食べようとしたのだが、彼女がそれを遮った。


「星宮さんってどっちかな~?」


「え? まぁ、ひめのことは『ひめ』って呼んでるから……」


「――ずるいっ」


 ……どうやら、呼ばれ方がお気に召さないようだ。

 ひめもそうだったけど、星宮姉妹はあまり苗字が好きじゃないのだろうか。


「私も名前で呼んでね? ひめちゃんもそうしてるんだから、いいでしょ~?」


「いや、でも……ひめは年下だから平気なだけで、同級生には少し抵抗があるというか……あの、星宮さん? 聞いてる?」


「え? なに? 聞こえませーん。星宮さんってだぁれ?」


 絶対に聞こえているくせに、彼女は聞こえないふりをしていた。

 おっとりしている人だけど、意外と……なんというか、あれだ。


「……あの、陽平くん? お姉ちゃん、こう見えてかなり頑固なので一度言い出したら聞かないですよ。諦めて、受け入れるしかありません」


 そう。結構、頑固な気がする。

 ひめもそれに苦労させられているのか、ため息をついていた。


 ……性格だけ見ると、妹より姉の方が子供っぽい気がする。

 清楚で大人びた見た目なので、なんだか意外だ。


 でもまぁ、ギャップがある感じは可愛いと思う。

 妹とはまた違う魅力があって、彼女に人気がある理由も分かる気がした――。


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