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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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第百五十三話 うわばき19センチ

 ひめが足をくじいたかもしれない。

 軽度なら安静にしていれば治ると思うのだが、念のため状態を確認しておこうと思ってひめの上履きと靴下を脱がしてあげた。


(……本当に小さいな)


 左足から外した上履きと靴下は、手のひらよりちょっと大きいくらいのサイズ感である。


「ひめ、足のサイズってどれくらい?」


 今、ひめは素足を見られて恥ずかしがっている。

 気を紛らわすためにも、雑談した方がいいと思って聞いたみた。


「足は……19センチです」


「へー。もしかして、小さいほう?」


「いえ、平均くらいですよ。決して発育が悪いわけではないのですが……陽平くんから見ると、たしかに小さいかもしれないですね」


 話していくにつれて、少しずつひめの声も落ち着きを取り戻してきた。

 先ほどまでは動揺で揺れていたので、いつものように淡々とした口調でなんだか安心した。


「ちなみに、陽平くんの靴のサイズはどれくらいですか?」


「俺は27だよ」


「……大きいです」


「まぁ、平均くらいなんだけどね」


 冷静に考えてみると、俺とひめの年齢は9歳離れているわけで。

 サイズ感に違いが出るのはむしろ当然のことである。同世代の中では平均でも、俺にとってひめは小さいし、ひめにとって俺は大きいのだ。


 通常であれば、仲良くはなれても理解しあえる年齢の差ではない。

 しかしひめの精神が早熟なおかげで、内面的な年齢の差がないのが不思議な部分である。


「触るよ? 痛みが出たら言ってね」


「……はい。分かりました」


 そろそろ顔の赤みも薄れてきた。

 もう大丈夫かと思って、痛めた個所であろう足首に触れた。


 まだ幼く、二次性徴も来ていないせいか、体が骨ばっていない。

 ぷにっとした感触はこの世代特有のものだと思う。心陽ちゃんに近い感触だ。


「ここは?」


「大丈夫です」


「じゃあ、こっちは?」


「……問題なさそうです」


 やっぱり、上体はそこまで悪くなさそうだ。

 軽く握ってもひめは平気そうである。我慢もしているようには見えないので、本当に痛くないのだろう。


「えっと、それなら……これは?」


「あ。ちょっと痛むかもしれません」


 左足首の外側。くるぶしの数センチほど下に、少し赤みがかっている部分がある。そこを軽く押してみたら、ひめが頷いた。


「……あまり無理しない方がいいかなぁ」


 今のところ、決して酷くはないと思う。

 でも、医療に関する知識なんてないので自信はない。


「少し休んだら、歩けそうな感じはありますよ」


「でも、怪我した直後だから痛みを感じていないだけって可能性もあるし」


「なるほど。それは否定できませんね……そういえば前にお姉ちゃんがねんざした時も、後から腫れていました」


 こういう時、ひめの冷静なところはすごく安心できる。

 もちろん俺が過保護というか、神経質すぎる気もするのだが……とはいえ、悲観的な視点もこういう場面では決して悪いとは思わない。


「お姉ちゃんは『これくらいよゆ~!』とか言って何も処置せず、悪化した後で芽衣さんにすごく叱られていました。さすがに真剣に怒られたので、ものすごく泣いてましたね」


「そんな過去があったんだ……」


「はい。ちなみに去年の出来事です」


 意外と最近だった。聖さんは相変わらずである。

 まぁ、ひめの反面教師になっているみたいなので、そこはいいのか。


「芽衣さんは看護師の資格を持っているので、診てもらいたいと思います」


「看護師って、すごいね」


「メイドさんになれなかったら看護師になる予定だったらしいですよ。あと、メイドさんになった後で栄養管理や調理の資格も取っていました。学校に通いながら働いていましたね」


 万能すぎるメイドさんだ。すごく頼もしい。

 ともあれ、医療についても心得があるのなら良かった。


 ひめの状態は芽衣さんに判断してもらうことにして。

 とりあえず……空き教室に戻らないといけない訳だが。


 当然、まだひめには安静にしてもらいたい。

 つまり、彼女に歩いてもらうわけにはいかないわけで。


 そうなってくると、俺がやるべきことは一つだ。


「ひめ、おんぶするから乗って」


 そう告げると、彼女は目を丸く見開いてぽかんと口を開けた。


「……え」


 まるで、何を言われているか分からないと言うようにびっくりしている。

 そんな顔も、ひめはやっぱりかわいかった――。

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