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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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第百三十話 きんきゅーおねーちゃん会議

 久守さんが来ているおかげで、いつもより賑やかな放課後を過ごしていたわけだが。

 ひめと仲良くなってから、毎週のように何かしらの事件や新しい出会いがあった。しかしここ一週間は平和でのんびりしていただけに、その反動が今になって訪れているのかもしれない。


 今日は色々なことが起きていた。


「――たいへん! ひめちゃん、よーへー、とてもたいへんなことになりました。きんきゅーおねーちゃん会議を開催します!!」


 慌しく教室に駆け込んできたのは、星宮聖さん。

 現在時刻はまだ十七時くらいである。いつもより早めの到来だったので、俺もひめも驚いてしまった。


「聖さん、今日は早いね」


「生徒会のお仕事はどうしたのですか?」


 二人で首を傾げていたら、意外にも彼女がその質問に答えてくれた。


「テスト休みらしいっすよ。ほら、生徒会の皆さんって優秀じゃないっすか。テスト期間はちゃんと勉強したいみたいなんで、今日で仕事を締めたんだと思うっす」


 さすがの情報網だ。

 ひめの足元で四つん這いになっている久守さんは、新聞部だからなのか……いや、単純に本人の友達が多いだけか。校内の情報は色々と把握しているのだろう。生徒会の事情まで知っているようだった。


「あれ? 久守ちゃんもいる~。やっほー」


「やっほーっす!」


 イェーイ!

 顔を合わせるや否や、ハイタッチを交わす二人。顔見知りだと先程言っていたけれど……想像していたより仲は良さそうだ。


 久守さんも聖さんも明るい性格なので、たぶん相性がいいんだろう。

 そして、ひめが久守さんに対してそこまで人見知りを発動しない理由も、なんとなく分かった。久守さんが聖さんに近い系統の人間だから慣れているのかもしれない。


 だからこそ、俺みたいに地味な人間が仲良くなれたことに感謝……と、いう自己否定的な思考は今時あまり流行らないのでさておき。


「って、そーじゃないのっ。きんきゅー会議をするから、みんな注目して!」


 そう言って、聖さんは俺たちの目の前に仁王立ちした。

 腕を組んで、唇をまっすぐに引き結んで、シリアスな表情を浮かべている。


「……あたし、席を外した方がいいっすかね?」


 そして久守さんはこのキャラにしてはすごく空気が読めた。いい子なんだよなぁ……ちょっと図太いところはあるのだが、引き際はちゃんと見えるタイプのようだ。


「ううん、大丈夫。久守ちゃんも聞いていいよ」


 ただ、聖さんは久守さんのことを気にしていないらしい。

 うーん、どういうことだろう? ひめだけに相談するなら、パーソナルな問題があるのかもしれないので俺も気を遣おうかなと思ったのだが……他人の俺と久守さんがいても気にしない問題とは、一体何事なのか。


 顔つきがいつもよりも真剣というか、堅苦しい。

 何かしらの事件が起きたのかもしれないと思って、こちらも少し肩の力が入った。


「りょ、了解っす」


 久守さんもようやく四つん這いの状態から立ち上がってくれたので、これでふざけている人間はこの場にいなくなった。さてさて、聖さんは何を言おうとしているのか。






「――テストで赤点を取ったら夏休みがなくなっちゃいそう! ど、どどどどうしよう!?」






 ……なるほど。騙された。

 緊急会議を開いた張本人が一番ふざけていた。


「そんなことだろうと思っていました」


 さすが妹である。ひめは聖さんが何を言うか予想していたようで、呆れたように肩をすくめている。

 一方、俺と久守さんは身構えていた分、聖さんの自業自得な発言に苦笑することしかできなかった――。


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