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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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第九十九話 おでかけが楽しみすぎた結果

 ひめが来るのを断ろうと決意したのが、お昼の十二時ごろのこと。

 約束は十四時なのでドタキャンに近い形になってしまうが、この埋め合わせはまた後日絶対にやろう。そう決意して、ひめに連絡を入れることにした。


 連絡先の交換はこの前にすませてある。

 ひめはあまり電子機器を好んでいないようで、あいさつ程度のやり取りしかまだ交わしていない。


 電話……は、心陽ちゃんにバレると色々追及される気がしたので、メッセージにしておこう。


『ひめ、ごめん。急に用事ができちゃったから、遊ぶのはまた今度にしてもいい?』


 心陽ちゃんが俺のお腹にぐりぐりとほっぺたを擦り付けている間に、スマホで文章を作成して送信する。

 気付かれないうちに、と思っていたのだが……心陽ちゃんは何かしらの匂いをかぎ取ったようだ。


「よーちゃん? なんでスマホしてるのー?」


「な、なんでもないよ」


「……もしかして、うわき?」


 おませさんめ。いったいどこでその単語を覚えたのだろう……たぶん、姉が見ている大人向けドラマを一緒に見て影響されたのだと思う。


 姉さんは泥沼の不倫ドラマとか大好きなのだ。心陽ちゃんもそれに影響されて、こうやってちょっと愛が重たい系統の女の子に成長している気がする。


「浮気じゃないから、安心して……そろそろお菓子でも食べる?」


「んー、さっきごはん食べたからおかしは後で! 今度はぬりぬりするゲームやりたいっ」


 と、いうことで二つ目のゲームをやることになった。

 今度はカラフルなインクを水鉄砲で撃ったり、ローラーでコロコロ塗ったりする大人気シューティングゲームである。これに関しては、買ったはいいものの画面酔いして俺はすぐにやらなくなったので、ほとんど心陽ちゃん専用のゲームと課していた。


「ころころ~」


 対人戦、というよりはインクでステージを塗るのが楽しいのだろう。心陽ちゃんはのんびりと遊んでいる。その姿を隣で眺めながら、スマホを盗み見た。


 返事は……まだ来ていない。


(だ、大丈夫だよな?)


 まだ連絡を送ってから十分程度しか経っていない。返信は気長に待てるタイプだが、急な連絡だったので少し不安だった。


 約束の時間まであと二時間を切っている。家を出るタイミングにしては早いので、さすがに間に合う――と、油断していたのだろう。


 俺は少し舐めていた。

 ひめが、俺の家に来ることをどれだけ楽しみにしていたのかということを、軽く見ていたのである。


 自分で言うのもなんだが、ひめはすごく俺に対して好意的だ。

 だからなのだろう。彼女はどうやら、待てなかったようだ。


『ピンポーン♪』


 不意にインターホンが鳴った。

 時刻は十三時ちょうど。まだひめからの連絡は来ていない。


 この時間帯なら、宅配かなと思った。


「だれかきた! よーちゃん、こはるが見に行くねっ」


「あ、ちょっ」


 好奇心旺盛な活発元気娘、心陽ちゃんは突然の来客に対しても臆することはない。むしろ誰が来たのか興味津々のようで、俺が止める間もなく部屋から飛び出していった。


 慌てて後ろから追いかけた。

 たぶん宅配だろうけど、一応不審者の可能性もあるしすぐに玄関から出るのは危険だと思う。このあたりは後で姉さんに報告しようかな、と思いながら階段を下りる。


 そして玄関に到着した、その瞬間だった。


「――あ」


 もう、遅かった。

 俺が到着した時には既に心陽ちゃんが扉を開けていて、そして扉の奥にはなんと……ひめがいた。


 出会わせてならない二人が、ここで顔を合わせてしまったのである――。


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