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20/23

20 ナンゾにて 2

前の話である19話は不要だなと感じる部分も多いので削除するかもしれません



ロメオの出身地の話によって微妙な空気になったテーブルだったが、テーブルの酒が減る速度は変わらなかった。

そうなれば高尚な話も馬鹿な話も価値は同じになる。誰もが次の話題で盛り上がる。



顔に大小幾つもの切り傷を付けた大男が、友であるドワーフ擬きのヒューマンがそこで騒いでいるのを見つけ、三人の仲間と共に足舵(あしかじ)を向けたのはそんな時だった。


「おい?ゲタックじゃないか!いつナンゾに着いたんだ?」


「おお!バルバ達か。今日の朝だな」


お互いに再開を喜ぶ男達。傷の多い男はバルバと言うらしく、ゲタックジョーの知り合いなだけあって格好も雰囲気も冒険者のそれだ。


「俺らより2日早く山を登ると言ってたが...何かあったのか?」


「ん。ああ、アレだ。途中で強敵に出会でくわしてな。散々山を駆け回されたわ」

強敵なんて存在しなかったが面倒なリーダーならいた。そのリーダーは酒は入っているが影部屋を誤魔化すことは忘れてないらしい。


「ハハ、それは災難だったな。それと見ない顔だが新しい奴か?」


「ああ、若いがかなり使えるぞ。ロメオ、この男はバルバ。まぁ同業者だな」


「は、初めましてロメオ・マウンディンと言います」



「俺はバルバ・ルコンだ。先に言っておくが名はバルバでちゃんと切区切ってくれよ。性と名を繋げられるのは好きじゃないんでな」

鋭利な目付きと強面そうに見える彼だったが氏名の要望を含めて思いの外フランクな挨拶。初対面で緊張するロメオにも気安い感じだった。


「それにしても強敵とはな...最近、童貞操(ブランドキーパー)も山狩りに借りだされた様だし、山は何かと物騒だな」


挨拶もそこそこに、立ったまま友のパーティーに起きた嘘の出来事と山の近況を合わせて語り始める。



「ブランドキーパー?裸の奴も引っ張り出されるとは...何か出たのか?」


「どうやらテネドラル王国系列のパーティーが1つ全滅したらしい。それを調査するために呼ばれたとか」


「なんだぁ?それ位なら別に奴じゃなくてもええだろうに」



「俺もそう思ったんだが全滅した場所が山の表層だったらしく、疑問に思ったギルドが調査依頼をしたようだ。結果はムムムーンベアーが犯人だったらしいが」


二人の会話から、裸とムムムーンベアーと聞いてとある人物が思い浮かんでくる。この都市で出会った、尊敬する裸の剣士。


(冒険者は強くなればなる程に色んな渾名が付いて回るけど...ブランドキーパー?響きは格好いいがどんな意味なんだろうな?)


ロメオは話に加わりたくてウズウズするがアレな事が災いの元になりそうなので控える。


「あん?山の熊に倒される程、テネドラルの連中は弱くないぞ?」


「そんな事皆知ってるさ。熊にやられたなんて誰も信じちゃいないだろうよ。大方王国に恨みを持つだろう。メンツの事もあってギルドと王国が話を着けてそう発表したんだろ」


「その結果が熊にやられたマヌケにされるってか?国に尽くすのも考えモンだな」


「全くだな」

バルバの相槌に同意するように何人かが嘲笑う。酷いようだが力の無い者が悪いとされるのが冒険者。国に仕えながら迷宮に潜る彼等を冒険者と扱っていいのかは不明だが、騎士が総じて好まれていないのもあるのだろう。



「ま、都市部での被害が出なきゃワシら外野に依頼は来ないだろうさ。迷宮内出来事は自己責任だが、これ以上被害が出たらギルドがどうにかするだろ」


「そうなんだが、騎士様に喧嘩を売った頭のおかしい奴がいるかもしれないんだ。山に入る時は気を付けろよ。.....っと、それよりもだ。仕事の話はこれくらいにしてお前達は行く所があるんだろ?俺達も一杯飲んだら行こうと思ってたんだ。一緒に行かないか?」


「ほほう?」

先程までのキリッとした、出来る冒険者の表情を一変させ、ニヤケながらバルバが話題を変える。

ゲタックジョーには伝わったようだがロメオは理解出来ずに首を捻る。


「行くところ?」


「ああ、見たところ羽振りが良さそうじゃないか?強敵が何か知らんが金は入ったみたいだしこの後行くんだろ?」


「えーと?」


「分からないか?綺麗なお姉さんが居る処だよ」


「っ!そ、それって、ももしかして!」

目が覚める一言だった。今日までの恵まれ山の探索の疲れが吹き飛ぶ位の。もしかすると自分が行きたかった場所に行けるかもしれない。そう思うと知らずに身を乗り上げていた。


「おっと!野暮な事は聞くんじゃないぞ。夜の冒険は働く男の嗜みだってことくらい男なら解るだろ」


「わかりますけど、わかりますけど!行くんですか!?」

目を見開き、思わず大声で叫んでしまったロメオ。興奮のあまり意図せず敬語になってしまう。


「お~?ほうほう、これはイカンな!イカンんぞロメオ?経験が無いなら何事も挑戦だ。丁度いい。エデビスも機会があれば夜の冒険に連れて行こうと思ってた所だ。ココに邪魔者(カーリン)は居ないからな」


「そいつはいいな!新人の二人くらい俺達で面倒視てやろうじゃないか!」



「い、いやいやいやぁ!良いのかなぁ。ぐへへへ」


「そんな顔して良く言うわ。さっきまでああも思慮深そうな顔をしていた奴とは思えんぞ」

だらしななく、緩みきった顔を見て煽った本人も多少呆れてしまう。こんな奴だったのか?と。


「コイツは...女で失敗するタイプだな。間違いない。昔の俺にそっくりだ」

バルバはもあらん、と知ったような顔で一人納得している。



ロメオが舞い上がってしまうのも無理はない。

彼も思春期の男だ。そう言う話への興味は充分にあった。だが、いざ女性を目の前にそんな事を意識してしまうとテンパってしまう。

その点大人のお店は深く考えなくて良いと聞いた。良くは分からないが煩わしさは無く、緊張していても天井のシミを数えているだけで良いと。それだけで大人の階段を知る事が出来ると。



「バルバもジョーさんも辞めるんだ。ロメオは今、正常な判断が出来ていない」

年頃になって強烈になった人類半分に対する未知への探求心。そこに待ったを掛けたのがエルフだ。いつもの笑顔は無く、至って真面目な表情は皆の視線を集める。


「君はまだ若い。快楽に身を任せるより、清らかな交際が可能ならそこに全力を出すべきです。グリンジョンにきて日は浅いがココには美女は多いと感じなかったかい?世界中から冒険者が集まるココには同じく美女も集まるんだ。勿論そういう仕事に就く者もいるが大抵は給仕か売り子になる。そんな彼女達と仲を育むのを想像した事は無いかい?」


...そんなこと何度も妄想したに決まってる。冒険者の乱痴気に巻き込まれそうになった処を颯爽と助けたり、酒場で冒険者の自慢話に辟易した女の子にエッジの効いたトークで気を引いたり、幸薄そうな少女の病気の家族を救うために迷宮の奥にしか無い薬草を無料タダで採取しに行ったり......

街中で起きると嬉しいイベントは誰だって想像しただろう。するに決まってる。


けれども現実は買い物や依頼上のやり取りは問題無いが、そういう事を意識するとどうにもならなかった。あの魅力的なアンジーと仲良くなれたのは今考えると本当に奇跡に近かったのだろう。



「セナケイよ。エルフのその高潔さは天晴れだが、それはあくまでも自己を高める為のモノだろう?他人にまで押し付けるモノではない。エルフとはそこまで傲慢な種族であったか?それにだ。お前さんの恋愛至上主義を採ったとして第一コイツに上手く話が出来ると思うか?無理だろう。だから先に女に対しての緊張を解いてやらねばいかんのだ。色々と柔らかくして貰わなければならんのだ!」


対してゲタックジョーも先程までの下品な雰囲気は鳴りを潜め、毅然とした態度を取っている。ただ、言っている事は失礼だし、下品だ。それでもその言葉からはロメオへの善意がヒシヒシと伝わってきた。




そうだそうだ!

エルフは黙ってろ!

お前ぇのそれは顔がいい奴だから言えるセリフだっーてーの!

手前ぇはいつも格好付けすぎなんだよ!

『拐い屋』は俺達の仲間も奪う気か?

俺達冒険者に普通の恋愛なんて出来るもんか!


聞いていたであろう周囲にいた冒険者達も賛同する。...というよりセナケイへの私怨が圧倒的に多いが誰も止める者はいなかった。



「...早すぎるのではないかと思います。彼はまだ16だ。順序というモノもある。歳相応の相手もいるでしょう。そうだろう?」


セナケイは飛んで来る野次に呆れながらも返事をするが勢いは無い。理由は解らないが、ゲタックジョーに対して強く出れないらしい。



チラリと顔を向けられ、そう言われると浮かぶのは犬耳と金髪の二人の女の子。

別に恋人という訳でも好きという訳でもない。イヤ、あわよくばという思考はいつも持っているが現状は友情で満足していた。そのハズだ。

にも関わらず何故か浮かんだ二人は空想であるのに、理由は分からないが犬耳の子は怒った表情で、金髪の子は悲しそうな顔をしている。



「ハッ?歳相応?まぁ、お店によっては居るかもしれんがなぁ~?」


反論してきたセナケイに下品な顔に戻ったゲタックジョーは茶化し始める。

その背後には幻だろう...そうに違いない。そうでなければ夢だろう。誰も見えてないらしいが...うっすらと曾祖父テュカス様の幻が見える。そしてその顔は今のゲタックジョーと同じくらい下品である。夢か真かは兎も角、確かなのは元伯爵がしていい顔ではないという事だ。



気が付けばゲタックジョーに同調し盛り上がる周囲。イケメンエルフ憎しと人も野次も増えていた。


ロメオ、ロメオ、ロメオ、ロメオ!

バルバに至っては自身のパーティーと共にロメオをコールしている。



「青花テュカスも言っておるではないか。抱いた分だけ男は強くなるとな」

ゲタックジョーの背後にいる老人の幻も、その通りだと言わんばかりに大きく頷いている。


確かにそんな事を言っていた。その後にエルフの曾祖母に「子供になんてことを教えているの!」と極大魔法を食らっていたのも覚えている。


「性欲で悩んでいるなら救えないが、女の子の顔が浮かんでいるのなら行くべきではないよ」

セナケイの言葉に頭の中の二人が力強く何度も頭を縦に振る。



二つの反する意見。教導的か同情的かの違いはあるがどちらも俺の事を思って言っているのは分かる。

こうも熱心に関わってくれる事は嬉しい。けれどもどちらも正しく思えて選べない。


(お、俺は!一体どうすれば...)

広がる喧騒の中で、ふと視線をさ迷わせると目があった一人のウェイトレス。兎耳の可愛らしい顔の彼女が野卑な言動が飛び交う中、勇気を振り絞るかの様に口元で何か言っている気がした。


が・ん・ば・れ。


この喧騒の中そう聞こえた。確かに聞こえたのだ。脳に入った彼女の姿が決め手だ。


「俺は、俺は行かない!そういう行為は...せめて!れ、恋愛に挑戦して、その、負けた時に行く事にする!」



凄く興味はあった。一人旅では怖くて行けなかった娼館に、連れて行ってくれると言った先輩冒険者がいる。絶好のチャンス!


だが!なのだが!

あの下品な顔をしている元伯爵は大冒険の傍らに多くの恋をした。その物語は何度も読んだし、本人からも聞いた。それを含めて自分は好きだったのではないか?


そうだ、そうさ!



自身の名前『ロメオ』の由来だと聞かされたロマンスと言う言葉。

(もじ)って他人から『ロマン』と言われるのが好きでは無かったのだが今なら言える。




ラブロマンスだって悪くない!

そう強く思うと頭の中にいた二人の女の子も微笑んでる気がする...テュカス様の幻はいつの間にか現れた女性の集団の幻に袋叩きにされて消えていった。



これでいい、これでいいのだ...別に恋愛感情では無いと思うのだが彼女達に知られると思うと無性に恥ずかしかった。ひたすらに嫌だった。ただただ、逃げたくなった。



何より格好良くなるって決めたじゃないか!

経験が無くたって格好いい人もいるって知ってるじゃないか!

そう思うと胸がスゥーっと晴れる!胸を力強く張れる!



ロメオの答えに外野はブーイングや舌打ちのオンパレード。

だが目を瞑りジーンと自分に浸るロメオには聴こていない。

(好きに言わせておけばいい。俺達は俺達だ。高潔なエルフと、同じ(わらべ)仲間のエデビスと語り明かそうじゃないか!恋バナってやつだ!男友達が出来たらやってみたかったし!貞操の硬い友情トリオの結成だ!)


「其処まで言うのならば無理強いはせん。仕方ないのぅ。なら今日は解散だ。ホレ行くぞエデビス」


「え?」


「準備は出来てます兄貴!さっさと行きましょう!」

いつの間にか席を離れてゲタックジョーの隣に立つエデビス。シャツのボタンは綺麗に締められ、何処から持ち出しかわからない櫛で髪をすいでいる。身綺麗にして何処かに出掛ける気満々なのが一目瞭然だった。


「あれぇ?えっ!?ちょっ!」



「....聞いていたでしょう。エデビスは酒が入ると正直になると。本人も娼館へはずっと行きたがってましたが、今まではカーリンが止めに入ってましたから。私も彼女が居ない時にはその意思を汲んで何度も注意していたのだが...もういいでしょう。彼が強く望んでいるからこそああなったのだから」


店を出るゲタックジョーの後に躍りながら続くエデビス。誰がどうみても浮かれている。それを見てセナケイは溜息を吐く。


(仕方ない。こうなれば知性派の二人で友情のデュオで洒落混むとするか。それかモテる秘訣でも教えて貰おう)

「全くドワーフは。性欲に直情的過ぎる」

やれやれ、と格好を付けチラリと先程の決め手となったウェイトレスを見る。なのだが


「さて、本当なら私の考えを尊重してくれた君と朝まで付き合いたいのだが、ココにいる私の馴染みと約束をしていてね。私もここらで失礼するよ」

まるでウィンクをするかのようにロメオに一瞥し、愛用のチロリアンハットを被り席を離れたセナケイ。その隣には自身の選択の決め手となった兎耳のウェイトレスが頬を赤く染めながら、寄り添っていた...


「えっ...えーー!?」


ポツンと、気が付けばテーブルにはロメオが一人。先程までいた野次馬もゲタックジョーと共に出て行ったらしい。

(馴染みってそういう...しかもよりによって彼女だなんて)

茫然自失と言うのだろうか。口は白い何かが出てきそうな程に開き、目は何処を向いているのか分からない。仲間に置いてきぼりにされ、少し気になったあの子はホイホイと仲間のイケメンに付いていった。



再起動したのはそれから数分後。動きの止まったロメオを見かねてサービスでレモンのカクテルを別のウェイトレスが持って来た際に「頑張れ」と声を掛けてからだ。


(あんの糞エルフ...!散々止めるだけ止めて自分は女の人と消えやがった...しかも(ウサ)子(仮)ちゃんと!くそ、知るもんか!もう!友情なんか知らねえ!そんなモンは無い。俺はソロでいい!...イヤ、違うやっぱ嘘、嫌だわ。友達は欲しい)



一人目を閉じながら余った料理を掻き込んで行く。冷めた料理はどうやら塩気が強く、レモンの酸味と一緒に目に来るようだ。


彼の胸中にはセナケイへの大きな怒りと悲しみ、そしてやっぱり夜の冒険に行けば良かったかな、という小さな後悔が渦巻いていた。




また明日に投稿します

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