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16 偽ドワーフ




ドワーフだ。



一目で分かった。赤茶色の角刈りに口周りに無精ヒゲを生やした厳つい顔。

背は低くく、身軽さに自信があるのか体を守る鎧は胸部のみ。それ以外は布の衣服を身に付け、背には小さなバックパックと両刃の大きなバトルアックス。体は筋骨隆々と、(めく)られた袖から見える腕はこれでもか!というくらい毛が生えているドワーフらしい体付き。


短い髭と背の低さ以外の特徴は標準的なドワーフ。間違いなくドワーフ。




「言っておくがワシはドワーフではないぞ。れっきとした人族ヒューマンだ」

と思ったら違うらしい。



「...えーと、すみません」

忌々しげにそう言う男に、ドワーフだと勝手に決めつけてバツが悪くなる。



謝罪をするとフンと鼻を鳴らすだけで、追及はしないようだ。



「まぁいい。それよりも兄ちゃん、イヤ、キミは素晴らしい!」

「へ?」



背後から声を掛けられてからずっと警戒していた。そもそも声を掛けられるまで気が付かなかったのだ。

敵意が無さそうでも目の前の男の挙動を注意するのは当然だった。

それがドワーフと間違われて不機嫌そうにしていた表情を一変させ、急に笑顔で褒められる。

訳が分からずに間抜けな声が出てしまう。



「その若さで魔物とああまでやり合える。剣も上手く、魔法も気力も扱える!知り合いからここ最近、稼ぎ額が凄いソロの新人がいると聞いてだね!どういう奴かと興味を持って調べに来たのだが...どうだ?ワシと組まんか?いやなに、ワシは顔が広いからな。ワシと組めばキミはもっと稼げるぞ!」


嬉々としながら自分の戦闘を見てたと言い放ち、その上に手を組もうと提案する男に自身の緩んだ気を引き締める。



この10日間、俺はアンジーと会う日以外は、恵まれ山に挑み続け資金を稼いでいた。

一度山に入ると、魔物を狩り、植物を採取し影部屋の能力で保管する。大凡おおよそ、一日で小さな商隊キャラバンが運ぶ積載量に近い量を収穫していたが、人にバレると狙われるであろう影部屋の事を秘匿するための偽装工作を行いながら過ごしていた。



簡単に言えば日に数度、山に入り影部屋の収穫物をバックに詰めて換金する。これを繰り返していた。

日に何度も大量に恵まれ山から収穫物を持ち帰るのでギルドからは注目される処だったが、有難い事にマールが気を利かせて俺の情報書類を他の職員に触れられないように一人で管理してくれた。上役に提出を求められたらそこまでだが、ギルドの職員規約に違反はしていない。



マールは知らずに行った事なのだか、ギルドでは受付嬢がお気に入りの冒険者の情報を私意に管理することがある。

自分が担当した顔や稼ぎの良い冒険者を他の受付嬢に回さない為だ。

争いとなるので確保された冒険者の情報は、業務に関する内容以外は受付間で不可侵が暗黙の了解となっている。受付個人でその冒険者に関する全ての業務をしなければならないが、お近付きのチャンスでもあるし、他のギルド職員もおいそれと情報を扱う事が出来なくなる。

ある意味冒険者のキープ。



マールはその受付嬢の特権キープを知らずに行使していたが、周囲からその様に見られていたのでロメオにとっては運が良かった。





だがマールの情報操作の及ばない場所。

山なり換金所なり、大量の荷物を持った青年が何度も出入りする姿を見た誰かが、目の前の男に伝えたのだろう。そしてこの男はその数日間に出現した青年を怪しみ、直ぐ様調査した。恐るべき行動力である。

目立つのを恐れていたが、グリンジョンの冒険者を舐めていた。そんな自身の迂闊さに腹が立つ。



ただ一つ言うならば、ロメオとしては、今日のクエスト次第では資金の目安に届いていたので明日にでも換金のペースを下げようと思っていた。そんな時に出会エンカウントいである。そこは運が悪かった。




(とはいえ)


目の前の男が言うようにリベラルシャドウを使う処から見られていたのなら、特殊な魔法による陰遁か、純粋に自分より高い技量があるのだろう。

声を掛けられるまで全く気が付かなかったのだから。



「まぁまぁそんなに警戒しないでくれたまえ!ワシの名はゲタックジョー・タナーという。タナーでもゲタックでもジョーでも好きな様に呼んでくれ」

そんな警戒を露わにする自分に構わず馴れ馴れしく話を続ける男。


「...ならタナーさん。俺達は初対面だし、こういう話は少なくとも魔物と闘い終えた後にするような話じゃない事は知っているでしょう?」


「う!まぁ、そりゃそうだがなぁ」


「なら俺が反対するのも分かるのでは?」


「イヤイヤ待ってくれ!本当に警戒しないで欲しい。あるクエストの為に腕の立つポーターを探してたんだが、君が大量に物を運べると聞いて確認しに来たんだ!」



焦った様に詰める男―タナー。余り言いたくないが、見た目がかなり胡散臭い。無理して丁寧な言葉を使っている様だし。誠意を見せようとしているのかもしれないけれど...



相手の実力がどうあれ、下手な対応は組んだ時に良いように使われる事は過去に経験済みなので冒険者には強気でいく。交渉事もある意味冒険だ。


「なら尚更信用出来ない。隠してる魔法を見られるし、知らない人からつけられたんだからな」



「まぁまぁ、確かに尾行したり魔法を見たのはスマンかった。だがキミは連日山に登っているようだ。金が欲しいのだろう?ワシの見たとこ装備の買い替えか?キミの剣の腕前に革の防具は役不足だろうからな。それなら装備に関しても相談に乗れるぞ。良い鍛冶屋を紹介できる」



「確かに資金を集めようとは思っているが...」

影部屋がバレたのは予想外だがそこまで悪意がある様には見えない...それに俺の格好や戦闘を見て資金集めの理由を当てるとは...

鍛冶屋紹介のメリットと彼の洞察力から、タナーの評価が上がる。同時に初め合った時よりも警戒する意識を下げた。


(それにしても)


「なら一度話し合わんか?ワシの仲間も交えてな!勿論奢りだ!」

良い笑顔で親指を立てるタナー。


(ゴリ押しが強いというか...)

これが女性なら、とは思わない。だが彼なりの誠意ある対応に少しだけ付きあってもいいと思った。


「...わかった。タナーさん。組むかどうかは分からないが一度だけ応じよう。俺はロメオだ」


「おぉ!やったぞー!とりあえず細かい話は山を降りてからにするか。それとな、ソイツは肉が美味しいんだ。特に串焼きにすると酒に合うからな!何処の店でも人気がある!金にするなら肉を持ち帰った方がいいぞ!要らないならワシにくれんか!?」

下卑た顔で笑いかけるタナー。食べる為では無いのだろう。目がリーアのマークになっている。


その状況を見ていると冷ややかに彼を見てしまう。

食事ではなくお金に関心がある彼はドワーフでは無かった。見かけだけの偽ドワーフだった。



そんな姿を見て「やはり交渉は辞めておいた方がよいのでは?」と少し不安になるロメオだった。





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