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そして、いつか、余白な世界へ  作者: 秋真
第四章 クロイキリの行方
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第132話 風使いの男・前編 (桐花杯決勝トーナメント編Ⅱ)

「いやぁ、俺もさ、予選ブロックでやべぇ奴と当たっちまってよ……。すげぇ水属性の魔法の使い手だったんだけどな、そこはまあ俺が……」



 好雄の自慢話に花が咲く。予選で対戦した強敵をどうやって倒したか、(とうとう)々と語る。一頻(ひとしき)り好雄の話が終わったところで俊輔が眞衣に話を振った。



「眞衣は残念だったな」


「うぅ……、俊輔さんー。私、あんなに頑張ったのにぃ……」


 言ってテーブルに突っ伏す眞衣。予選ブロックでは周囲の魔法士に全く遅れはとっていなかった。むしろ周囲にいた魔法士たちを眞衣は圧倒していた。その魔法士たちを倒して余韻に浸ってるところを狙われた。



「あぁ……。これで決勝トーナメントにいける……って思ってたんですけどね。せっかくの悠貴さんとの約束もこれでパァです……」


「なんだよ、悠貴との約束って?」


「実はですね俊輔さん……。私が決勝トーナメントに進めたら1日だけ悠貴さんを自由にして良いっていう約束を……」


 それまで大人しく聞いていた悠貴が立ち上がる。


「それはお前が勝手に言っただけだろ!? 俺の返事聞かずに一方的に言いたいこと言って、『じゃあ、そういうことで!』って逃げるように去ってっただろうが!」



 悠貴の抗議の声に眞衣は、えぇーと、と人差し指を突き合わせる。


「そうやって調子に乗るようなことばっかしてるから負けるんだぞ?」


「うっ……。そ、そんなの自分でも分かってますよぉ……」


 泣き真似をする眞衣を好雄が笑う。


「まあ桐花杯ほどの規模じゃないけど魔法士同士が対戦するって大会とかはあるからさ。だから落ち込むなって。むしろ今回の敗けを良い経験にしないといけないぞ。そう、俺様のように冷静沈着に戦いを進めてだな……」


 言いながら胸を張る好雄を後ろから笑う声が上がる。


「よっしーさぁ、確かに予選ブロックのよっしーの戦い見て凄いな、とは思ったけど……、アンタ、冷静沈着キャラとは程遠いでしょ。勘違いもホドホドにしておきなよー?」


 声の主はそう言って大盛のつけ麺を載せたトレイを置いた。



 特務高等警察本部。

 地下大空間(ジオフロント)


 桐花杯の試合が行われるアリーナは地下大空間(ジオフロント)でも深部に位置していたが、そこよりは地上に近い階層にある食堂で悠貴たちは遅めの昼食をとっていた。

 食堂には人の姿は(まば)らだった。観客席があるフロアは人が溢れていたが、この周辺に立ち入ることが出来るのは桐花杯に参加している魔法士またはその関係者、さもなければ特務高等警察の隊員だけだった。



「だ、誰が勘違いだ……。大体だな、お前はそうやっていつも俺を……。思えば学年合宿の時だって……」


 好雄を勘違い呼ばわりした主は、はぁ、と好雄を一瞥(いちべつ)してつけ麺をすすり始める。


「んんー! ほへ(これ)ほひひひ(おいしい)!!」


 舌鼓を打って麺を頬張る。


「へぇ、そんなにか?」


「ええ……。これは、そうね、今まで私が食べてきた中でもベストファイブには入るわね……。見て、このスープ……。麺に絡み付くくらい濃厚なのにくどくない……」


 つけ麺のスープの素晴らしさを語る少女の向かい側でわなわなと震える悠貴。我慢が限界に達した悠貴はさっきと同じように立ち上がる。



「何でお前がここにいるんだよーッ!? お前こんな所で何してるんだよーッ!?」



 悠貴に指差された莉々は心外だと言わんばかりの顔をする。


「何よっ、人を指差して……、失礼な奴。何してるって言われてもねぇ……、つけ麺をすすってるんですとしか言いようが……」



 つけ麺と悠貴の顔に何度か目を行き来させて莉々は肩を(すく)めて、ずれた制帽を被り直した。



「そうじゃねぇよ……。はぁ……。突っ込みどころしか見当たらねぇ……。まず、何でお前そんな格好してるんだよ?」


 悠貴に言われた莉々は「ん?」と自分の格好を見直す。特務高等警察の制服は北関東州で(あて)がわれた物は少し大きかったが、今着ている物はピッタリだった。



「いや、ほら、悠貴って制服フェチじゃん? 喜んでくれるかなと?」


「勝手に人に妙な性癖設定を付けるな。そして眞衣、そんなことメモるな。コイツが適当に言ってるだけなんだから……」



 手帳を取り出そうとした眞衣を止めて悠貴は莉々を見る。


「で、ホント何でお前がここにいるんだよ……?」


「えぇと、それはね……」


 困った顔をして頬を掻く莉々。



「私が呼んだのだ」


 その声に悠貴たちは振り向く。



「た、武井補佐官……」



 悠貴が武井に会うのは北関東州の都市圏(エリア)以来だった。相変わらずの鋭い眼光を向けられた悠貴は気圧される。


 莉々の後ろに立った武井が周囲を気にしつつ口を開く。


「コイツがある人物を通して私に接触してきたんだ。どうしても桐花杯の会場に潜り込みたい、とな。この間、北関東州の都市圏(エリア)に行ったときに偽造したIDカードがまだ生きていてな。それで今回も我々と同じ制服を着て潜り込んだ、そういうことだ。」


「ある人物って……?」


 悠貴がそう口にしたとき視界に入ってきたのは良く見知った少女だった。桐花杯が始まるまでの数日間、文字通り朝から夜まで特訓に付き合って貰った。



「お前かよ……、なつ」


 ため息をついてきた悠貴に新島なつみは目を逸らす。


「だってしょうがないでしょ? わざわざ通ってる塾まで押し掛けてきて、何とかしてくれって泣きついてきて離してくれないんだもの……」



 キッ、と非難の目をなつみは莉々に向け、莉々は「あはは」と乾いた笑いを発した。


 呆れた悠貴は武井を見る。


「いいんですか? 武井補佐官……。一般人を気軽にこんな場所に通しちゃって」


「一般人……とも言いきれないだろう羽田悠貴。桂莉々は都市圏(エリア)の外を見ている、知っている。国家機密に首を突っ込んでいる人間だ。秘密を守って貰うためにこうやって便宜を図ることもあるだろう。口外すればそれを見知った連中共々処理するだけだが、それはあくまで最終手段だ」


 恐ろしいことをさらっと口にした武井だったが目が笑っていない。本気でそう考えているのだろう。悠貴はゾクッとした。


(それにしても武井補佐官……、妙に莉々のこと気にかけてくれてるような……。北関東州に行ったときも結構二人で話してるとこ見たし……)



 そんな光景が悠貴には意外だった。必要最低限のこと以外は口にしない印象の武井だったが莉々とは良く話していた。一応は武井の部下という(てい)だったからそれを取り繕っているのかとも思ったが、それにしても莉々と言葉を交わす時間は目立って長かった。



 それを不思議に思いながら莉々を見ていた悠貴だったが、ふと時計が目に入ってきて自分の試合開始時間のことを思い出す。


(ヤバい……! そろそろ行かないと……)


 さっきまではチラチラと時計を見て時間を気にしていた悠貴だったが莉々のことで頭が真っ白になった。


 腰を浮かせかけた悠貴を優依が突っつく。


「悠貴君、時間大丈夫……? そろそろ行かないと……」


 思っていたことを優依に代わりに言われた悠貴が頷く。


「お、行くのか、悠貴。一回戦ぐらい突破しないと決勝トーナメントまで来た甲斐がねぇ。負けんじゃねえぞ!」


 発破をかけてきた俊輔に、おう、と応じる悠貴。立ち上がってアリーナへ向けて歩き出す。


「あっ、ちょっと待って先生! なつ、話しておきたいことが……」


「悪い、なつ! 早めにアリーナの近くに行っておきたいんだ……。心配すんなっ、特訓の成果見せてやるよ。また後でな!」



 言ってその場を後にした悠貴の背中を見ながらなつみは溜め息をついた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



(さあ……、いよいよだな……)


 これから試合が行われるアリーナへ続く通路を悠貴は進む。

 さっきまでいた食堂よりも更に人の姿が少ない。通り過ぎたベンチでは、これから自分と同じように試合に出るのだろう、女の魔法士が緊張した面持ちで宙に目をさ迷わせていた。



(まずはなつにもアドバイスされたみたいに距離をとって相手の属性とか戦闘スタイルを見極めないと……)



 試合開始、そしてその後とるべき行動のイメージを膨らませていた悠貴が唐突に後ろから名前を呼ばれた。


「こんにちは、悠貴君」



 名前を呼ばれて驚いた悠貴は振り向いたが、声の主を見て更に驚いた。


「あ、有紗先輩……」



 悠貴に名前を呼ばれた嵯峨有紗は静かに笑って近づいてきた。


 どこか軽い足つきで悠貴の傍らまで進んだ有紗が悠貴を見上げる。



(うっ……。いつもなんだけど……、この人距離近いんだよな……)


 少し赤くなった悠貴の顔を見て有紗は笑う。


「ふふ、どうしたの? 悠貴君。緊張しているの……? まさかね。あれだけ予選で圧倒的な強さだった貴方だもの……」


「そんなこと……。そ、それよりも有紗先輩はどうしてこんな所に?」


 悠貴に言われ有紗は、ああ、と腕章を悠貴に見せた。


審判員(ジャッジメント)……」


「そう……。基本的には桐花杯は対戦相手が動けなくなるまで……つまり最後まで立っていた方が勝ちなのだけれど、(まれ)になかなか決着がつかないことがあるの。その時にどちらが勝者かを決めるのが審判員(ジャッジメント)。あとは魔法が電磁障壁を突き抜けたときに対処したり、大会の治安維持……」


 審判員(ジャッジメント)の役割を指を折りながら数える有紗。


「忙しいんですね」


「ふふ、そんなことないわよ。実はね、私は審判員(ジャッジメント)と言ってもそのまとめ役みたいなものだから。実際に動いてくれるのは他の魔法士。だからこうやって試合前の悠貴君に話し掛けに来るぐらいには暇なのよ」


 言って笑った有紗はアリーナへ続く道の先を見た。アリーナからの歓声が悠貴と有紗がいる辺りまで伝わってくる。



「そう言えば悠貴君、緒戦で対戦する魔法士のことは知ってる?」


 トーナメント表で名前だけは見たが知っている情報はそれだけだった。


「柴関海斗。特務高等警察所属の魔法士よ。魔法の属性は風……、悠貴君と同じね」


「そうなんですね……。特高所属……、いや、それよりも同系の属性……。さて、どうやって戦えばいいんだろう……」


 考え込む悠貴に有紗が笑う。


「そんなに難しく考えることはないわよ。心配しなくても悠貴君の圧勝よ」


「えっ……。でも相手だって決勝トーナメントまで勝ち上がってきた魔法士ですし……」


「いいえ。そうね、言ってしまえば格が違うわ。悠貴君の方が圧倒的に上。魔力の桁が違う……。実戦経験も……、ね?」


 悠貴はその言葉にドキリとした。有紗は明らかに新人研修での戦いのことを言っている。戸惑う悠貴に有紗は、でもね、と続ける。


「圧勝は間違いないのだけれど……、ある意味では()()はするかもしれないわね」


 有紗はクルリと回って悠貴に背を向けた。


「それは……、どういう意味ですか?」


「言葉の通りよ。悠貴君は圧勝するけど苦戦する」


 同じような言葉を有紗に繰り返された悠貴だったがやはり理解できない。考えるようにする悠貴に有紗は笑う。


「ふふっ、混乱させてごめんなさい。何も心配することないわ。貴方はただ戦って、ただ勝てば良いだけ。そうね……、何も考えずに勝つことだけ考えれば苦戦はしないかもしれないわね。頑張ってね」


 言って有紗は悠貴から言葉を返されるのを待たずにその場を後にした。有紗の姿が通路の向こうに消えたところで悠貴の名前がアナウンスされた。



(何が言いたかったんだろう有紗先輩……。いや、今はそう、先輩が言った通り勝つことだけ考えないと!)


 頭を振って悠貴は有紗が消えていったのとは反対側の通路の先にあるアリーナへ向かった。



 通路からアリーナへ出た悠貴。

 地下とは思えないぐらいにそこは広かった。土のアリーナは円形で観客席に囲まれていた。



 思わず足を止めた悠のだったが、物々しい武器が並んでいるのが目に入った。


「武器をお使いになるのならお好きなものをどうぞ。試合が始まってからも武器を使えますし、また武器を交換するのも許可されています。回数も無制限なのでご自由にお使いください」


 声を掛けてきた女の特高隊員はそれだけ口にするとあとは黙った。



 壁に沿って並ぶ武器に近づいて見回す悠貴。剣、槍、斧、銃……何でも揃っていた。



(魔法士の演習施設でもそうだったけど、これだけ色んな種類の武器があるとホント迷うよな……)


 迷うとは思いながらも悠貴は無意識に探していた。そして、意中の武器を目に留めた悠貴がそれを持ち上げる。



(好雄たちと特訓に行ったときから、なんかしっくりくるんだよな……)


 悠貴が手に取ったのは日本刀だった。特に意識はしなかったが好雄たちと特訓合宿に行ったときもずっと刀を片手に戦っていた。

 今はずしりと重く感じるが魔装すれば気にせず振り回せる。



「よしっ!」



 そう言って気合いを入れた悠貴は刀を(たずさ)えてアリーナの中央へ向かって歩き始めた。



 観客席からも見える位置に悠貴が進み出るとアリーナは歓声に包まれた。予選のときは(まば)らだった観客席は今は(ほとん)ど埋まっている。



「悠貴さんー! 頑張ってくださいー!!」



 立ち止まって振り返る悠貴。

 観客席の最前列で眞衣が立ち上がって手をブンブンと振っている。横には俊輔と莉々の姿もあった。


 苦笑いして片手を上げる悠貴。そして自分と同じようにアリーナに出てきた対戦相手に向き直った。


 魔法士のローブを羽織っている。ローブのフードを被っているので顔は見えない。



『Bブロック一回戦第二試合、羽田悠貴選手対柴関海斗選手!!』



 名前がアナウンスされると会場から一層高く歓声が上がる。



(電磁障壁が張ってあっても音は普通に通すんだな……)


 思って見上げる悠貴。会場では魔法士が互いに魔法を使って対戦する。観客席と対戦場所の間は炎や水、電気などを物理的に通さない電磁障壁が二重に巡らされていた。



 対戦相手の魔法士と審判員らしき魔法士が待つアリーナ中央へ向かって歩きながら、ふと有紗の言葉を悠貴は思い出した。



(圧勝だけど……苦戦……。ホントに意味が分からないな……)



 考えながら進む悠貴。気づいたときにはアリーナの中央に立っていた。



 悠貴と対戦相手の柴関海斗がアリーナ中央で向かい合う。悠貴は柴関をチラリと見る。柴関は長めの槍を武器に選んでいた。



「宜しくお願いします」


 悠貴は軽く頭を下げて対戦相手に挨拶したが相手は何も返してこなかった。


 有紗は圧勝だと言っていたが決勝トーナメントまで進んできた魔法士には違いない。恐る恐る対戦相手を見る悠貴だったが、その対戦相手は顔面蒼白で震えている。



(な、何だコイツ……、メチャクチャ震えてるな……。まあでも緊張もするよな、これだけの観客に囲まれてるわけだし……)



 自分にしても、予選で既に魔法を使って散々戦ったんだからもう緊張はしないかと思ったけどそうでもない。


 AからHの8ブロックに分かれている決勝トーナメント。4試合が同時に進められている。予選より同時進行の試合数が少ないこともあるが、明らかに決勝トーナメントが始まってから観客の数が増えていた。



「あのさ、俺も緊張してるんだけど、まあお互い全力で……」


 恐らく同じくらいの年だと思い、悠貴はフランクな感じでそう切り出したが、悠貴がそこまで言ったところで男は声を上げた。



「う、うるさい!! さっさと始めるぞ! おい、審判!」



 柴関はそう声を上げて審判を見る。凄まれた審判の魔法士はムッとした顔を見せたがすぐに表情を変えた。



「試合開始っ!!」



 審判の声と同時に柴関は魔装して悠貴に向かって来た。咄嗟(とっさ)に構える悠貴。しかし、その時には柴関は目の前に迫っていた。


 突き出してきた槍を同じく魔装した悠貴が間髪でかわす。


「うおっ!」



 思わず声を上げた悠貴は一度距離をとる。


(いきなりだな、コイツ! ていうか……速い!!)



 かわして体勢を整えきらない悠貴に柴関は更に風の刃を放つ。


「くそっ、今度は魔法か!? 風……、有紗先輩が言ってたように俺と同じ属性!」


 (シールド)で風の刃を防いだ悠貴。そこに柴関が再び槍を突き出してくる。魔装した柴関は槍と魔法を織り混ぜた攻撃を続ける。



 悠貴の防戦一方。

 少なくとも観客席からはそう見えた。

 しかし……。



「これで終わりだ!!」



 悠貴の姿勢が僅かに崩れたのを見留めた柴関は勝利を確信する。魔装の魔力を速度(スピード)に特化するこの攻撃を防げた者は少ない。


 疾風の波状攻撃で相手の体勢が崩れたところで槍を突き出し、(ひる)んだ相手の至近に迫り、魔装を解除してゼロ距離から全力で魔法を放つ。それが柴関の勝利の方程式だった。しかし……。


「え……」


 思わず声を漏らす柴関。

 体勢を完全に崩す為に突き出した槍を対戦相手の魔法士は綺麗に刀で受け流していた。


 悠貴は固まる柴関をそのままに、一度距離をとって手を(かざ)す。


「今度はこっちの番だな!!」


 暴風が柴関を襲い、魔装と(シールド)の力を借りた柴関がそれを辛うじて受け止める。



「な、何だ……。何なんだ……、コイツ……。この力……。ホントに新人なのか……」


 勝利を確信して高揚していた柴関の顔がみるみる青ざめていく。同時に会場から歓声が上がった。柴関の放った魔法よりも悠貴が放った魔法の威力のほうが明らかに勝っていたからだ。



「そ、それでも……、僕はこんなところで終われないんだぁ!!」



 正面から悠貴に突っ込む柴関。魔法の攻撃を先行させて悠貴が弾いたその直後に槍で突く。しかし、槍をかわした悠貴が槍を掴み、その槍をへし折る。



「な、なんだ……、何でだ……。何でこのコンビネーション攻撃を初見で防げるんだ……!?」


 柴関は折られた槍を捨てて一度下がり、壁際に並ぶ武器の中から同じような槍を手にとって悠貴に向かって構える。



 肩で息をする柴関を見据える悠貴。


(確かに速度は凄いし戦い慣れている……。武器と魔法を上手く組み合わせての攻撃は厄介だけど……)



 武器の扱いは好雄や優依の方が明らかに上だし、魔法の威力に関してはなつみのバカみたいな力で感覚が麻痺している。



 ──それに、自分の方が、速い。



 静かに息を吐き、刀を構え直す悠貴。


「これは……、いける……」

今話もお読み頂きありがとうございます!


次回の更新はイレギュラーになりますが12月30日(木)の夜を予定しています。



宜しくお願いします!



12月30日追記

→更新は12月31日(金)へと変更させて頂きます。お待たせしてしまい申し訳ございません。宜しくお願い致します!

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