表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劇場型転生:元ヤン男性、ホラー映画のヒロインになる  作者: 依馬 亜連
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/100

33:一方その頃、もう一人ののぞき魔は

「おほぁっ、じゃないだろうが! あのボンクラめがぁ! 楽しそうに、小娘と乳繰(ちちく)り合いおって……くそっ、くそぉぉーっ!」

 一人きりの居室にて、ダニエルはベッドの上で盛大に悪態を吐きまくっていた。

 大きくてふかふかの枕を抱え、そのままのたうち回り、勢い余って下まで転がり落ちる。


「いでぇ! ちくしょうっ……これも全て、あいつらのせいではないか! おのれぇー!」

 床に敷かれたスカーレット色の絨毯に、勢い任せで枕を打ち付ける。

 やっていることが、完全に駄々をこねる子どもと同レベルだ。


 しかし子どもと比べて、持病持ちの中年男性(ほぼ寝たきり)の体力は、悲しいほどに少ない。

 すぐに息が上がり、虚しさに襲われたのだろう。

 無言で、八つ当たりしまくって少々凹んだ枕を抱えなおし、ベッドによじ登って横になった。


 そして掛け布団を再度首元まで引っ張り上げて、天井をにらみながら

「あの小娘は、規格外過ぎる」

ぽつりと断言。判断が遅すぎではなかろうか。


 しかしこの場に、のんびり過ぎるダニエルの考えを(いさ)めてくれる相手もいないため、彼の独白は続く。

「こちらがあの手この手を打っても、一切響かないうえに、あいつは……あいつだけは何を考えているのか一切分からん。むしろ怖い。出来るなら、もう屋敷から追い出したい」

 掛け布団を掴む手も、かすかに震えている。赤みを帯びた茶色い瞳にも、うっすらと涙の膜が。どうして雪深い、出入りが不便な屋敷に呼び寄せちゃったんだろう。


 今すぐこの場で縁を切りたい一方、彼女の健康と美しさ(と、謎の強フィジカル)は、やはり惜しいので。

「……であれば、先にクライヴを排除するべきか。あやつ単体ならばどうとでもなるだろうし、小娘にも必ず精神的痛手を負わせられるはずだ」

 暗い声で、義弟を見切ることを決めた。


 本来ならば彼を焚きつけて、ヘザーを精神的に追い詰めるつもりだった。そう、己の手を直接汚さずに。

 そのためヘザーを迎え入れる前に、渋る愚弟を何度もしつこく呼び出しては、自分がどれだけ養女に期待しているのかと長々語った。

 次いで、お前は本当に期待外れのどうしようもない愚か者である、とクライヴをとことん(おとし)めることも忘れなかった。


 ヘザーを誉めそやして彼を(けな)せば貶すほど、あの陰気な顔が恥辱に(まみ)れていく様を見て、これならば計画通りに事が進む、とほくそ笑んでいたのは――もう遠い昔のことのように思える。


 まさかこんな、あっという間に小娘に飼い慣らされるだなんて、夢にも思っていなかった。

 あの女が恐ろしいまでの美貌の持ち主であることは、ダニエルも認めている。むしろそれ以外に、これといった取り柄のない女とすら思っていたのだが……

「思っていた以上に、アレは愚かであったのだな。ヘザーの件がなくとも、殺処分は必須だな」


 細いため息をつき、翌朝の早期処分を決意する。

 夜の内に、睡眠中を狙った方が何かと手間は省けるが、ぶっちゃけもう全身が睡眠を求めていた。

 ヘザーの戦闘力や行動力は当然規格外であるが、ダニエル自身の病弱さもまた、規格外である。


 元々体は弱い方だったが、悪魔の依り代となったことでかなりの負荷がかかっているらしい。憑依した途端、ほぼほぼ寝たきり生活になったのは大きな誤算であった。

 それでも、ヤることは結構ヤったりしているのだが。だって悪魔だし。


「まったく、ままならぬ肉体よ……忌々しい。だが、朝食の場であやつを派手に殺せば、さすがに小娘の精神にも傷が入るだろう」

 目の前でなすすべもなく、惹かれつつある男が死ぬ様を眺めている時――果たしてあの美貌が、どこまで崩れるのだろうか。


 想像するだけでワクワクする。青白く皮膚の薄いダニエルの頬に、束の間赤みが戻った。

「あやつらが(ねんご)ろになったのは想定外であったが、惨殺するならばかえって好都合か」

 本来は優しげな美貌に、酷薄な笑みを重ねて、ダニエルは密やかに笑う。


 派手に、そして出来るだけむごたらしく。

 規格外の女ですら、気が触れるほどに。


 クライヴのそんな死にざまを想像しながら、うつらうつらとする内に、ダニエルは夢の世界へと飛び立った。

 夢想するものの陰惨さに反し、なんとも穏やかな寝顔で。


 だが彼の一連の奇行や呟きは、薄っすらと開いたドア越しにずっと観察されていた。

 観察者は、水差しを持ったシェリーだった。

 彼女の顔は強張り、全身がかすかに震えている。

「旦那様、どうして……」


 ほとんど吐息のような声は、ぐっすり熟睡中のダニエルに届かなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 悪ダニ……慢心かつ満身創痍すぎてセキュリティガバガバですよ…… あとお前も覗き魔かよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ