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劇場型転生:元ヤン男性、ホラー映画のヒロインになる  作者: 依馬 亜連
第2章 おまけ

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100/100

おまけ6:大きいからね、仕方ないよね(後編)

第2章おまけ、最終話です。キリよく100話目になりました。

「オレはさ、ついおっぱい見ちゃうことは別にいいんだよ。嫁のおっぱいなワケだし。デカいから目につくのも分かるし。さすがに人前は、やめといた方がいいと思うけど」

「はい……」

「それよりさ、思わずおっぱいガン見するぐらい、テメェを追い込むなってワケよ。分かる?」

「仰る通りで……」


 幼少期より頑丈さが売りだったクライヴは、盛大に額を切って流血したものの、やはりというべきか軽傷だった。

 今は額の中央にガーゼを貼られ、安静にするべく本日宿泊予定の客室へ押し込まれている。見張り役兼お説教役は、当然ヘザーだ。


 クイーンサイズのベッドの端に座るクライヴの前で仁王立ちになり、普段着に戻ったヘザーは鼻息も荒く続ける。

 表情は完全に、肝っ玉母ちゃんのそれである。


「あのなぁ、クライヴ。仕事しねぇと貧乏こじらせて死ぬけど、仕事し過ぎても頭イカれて死ぬんだぜ? 今のアンタ、たぶんかなりイッちゃってるぞ」

 背中を丸めて己のつま先を見つめ、クライヴはこくこくとうなずく。

「ああ……本当に申し訳ない」

「ほんとだよ。仕事はほどほど、休む時に全力出せよ?」

「すまなかった、ヘザー」

 丸まった背中が、更に縮こまった。腰に手を当てたまま、ヘザーは一つ嘆息(たんそく)


「ってかアンタが早死にしてオレがシングルになったら、たぶんむちゃくちゃモテると思うぜ。再婚も早いんじゃ――」

「死んでも死なない!」

 顔を跳ね上げて、力いっぱいの即答であった。

 たまらずヘザーは、ふはっと気の抜けた笑い声をこぼす。


「ま、分かりゃいいよ。今度からはいっぱいいっぱいになる前に、もっと周りに頼れよ? オレも体力は自信あるしさ、アニキもその方が絶対喜ぶし」

「ああ。必ずそうする」

「ん」

 彼女とて、クライヴが健やかな方が嬉しい。

 反省してくれたのならば、何よりだ。


 ヘザーはベッドへと身を乗り出して片膝を乗せ、上掛けを軽く叩いた。

「夕飯まで、ひとまず休んどけ。あとはアニキと義姉さんが頑張ってくれるだろうし」

「君は何もしないのか?」

 不思議そうに尋ねるクライヴに、ヘザーはニヤリ。

「オレに会場のデザインとか任せたら、たぶんアンタ一生後悔するぜ?」

「それも……そうだな」


 割とあっさり認められたのは若干(しゃく)であるものの、根っこがヤンキーであるヘザーの趣味嗜好を全面に押し出そうものなら、待っているのは黒歴史一択なので致し方なし。

 それにヘザーが卓越したセンスの持ち主であったとしても、それは二十一世紀の感覚である。

 現時代の貴族のダニエルや、元貴族従事者・現新米貴族のシェリーに任せるのが一番だろう。

 自分は大人しくダンスの練習や、来賓者(らいひんしゃ)の暗記に努めようかと珍しく殊勝(しゅしょう)な考えとなった彼女の細い手首を、クライヴが控えめに握った。


「あ? どうしたクライヴ?」

 ヘザーが首を傾げると、クライヴが一つ唾を飲み込んだ。

 そして親指で彼女の肌を撫でつつ、ためらいがちに答える。ちょっとくすぐったい。

「全力で休むなら、その……ヘザー、君の助力も乞いたい、のだが」

「あー、つまり」

「出来ればその、そ、添い寝を……」


(いつも無言でタックルして来んのに、今日はどうした)

 タックル後、そのままベッドまたはソファにタッチダウンが普段の流れであるため、小さな進歩に目を丸くした。まもなく二十八歳のアラサー、意外と伸びしろがおありでいらっしゃる。


「ま、ちゃんと休むなら協力してやるよ」

 減らず口を叩きつつ、内心は耳まで赤くなっているクライヴにキュンとしつつ、ヘザーは靴を脱いでベッドへ全身を乗り上げた。

 安堵の吐息を漏らしたクライヴもベッドへ潜り込む。


 いつもの、腕の中にすっぽり収納ポジショニングを取るかと思いきや。クライヴは初手からヘザーの細い腰に腕を回し、胸に顔を埋めた。

 胸元から彼のベルガモットの香りが、柔らかく漂って来る。ヘザーはぱちくり、と数度まばたき。


「あ、そこは照れねぇんだ」

 素直な感想を漏らすと、胸の間からくぐもった声がした。

「取り繕う余力が、正直もうない」

 眠いのか、筋肉質で上背のある身体は普段以上に体温が高い。

「だろうな。アンタ、働き過ぎだよ」

 ヘザーは悲壮感漂う声音に小さく吹き出し、顔の真下にある赤みがかった金髪を撫でる。堅物な本体に反し、髪質はフワフワと柔らかい。


「で、寝心地はどうだ?」

「……ちょっと硬い」

「そりゃまあ、今、ブラしてるんで。あー……脱ごうか?」

 ほんのり恥じらいつつ提案すると、男性にしてはまつげの長い目が、眠そうに細められた。


「今脱がれたら、仮眠どころじゃないから、いい」

 実家でおやつ時に、何をするつもりなのか。ヘザーはつい、目を細めて呆れる。

「さてはテメェ、元気あり余ってんだろ?」

 傷口に触れないよう髪をかき回すと、かすかに笑う気配がした。


「いいや、ないよ」

「ほんとかよ」

「ほんと、ほんと」

 とはいえ間延びした、ゆるふわ口調から眠気も確かに感じ取れた。

 ヘザーは空いている手を使い、広い背中も一定調子で軽く叩く。すると、あっという間に寝息も聞こえて来た。

 秒殺じゃねぇか、とヘザーは呆れ顔で鼻を鳴らす。


「のび太くんかよ。過労死寸前のお貴族サマとか、世界中でアンタだけじゃね?」

 長めの前髪越しに見える、眉間のしわが取れた幼い寝顔に緩く微笑んで

「アンタが死んじまったらオレ、一生独り身だからさ。長生きしてくれよ?」

こっそりとそう、囁いた。

最後まで締まらない、残念イケメン探偵と元ヤン助手ちゃんのお話はこれにて終幕です。

ご清聴ありがとうございました!


お慈悲でもって「いいね」やポイントを押していただけますと、書いた人間が雄たけびをあげて狂喜いたしまする。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後まで、二人らしいというか、ほのぼのしていてほっこりしました。 末永くお幸せに! きっと子宝には直ぐに恵まれると思うので(笑) [一言] 完結、おめでとうございます! お疲れ様でした。 …
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