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1-3【最初の1人 5:~VSアントラム 前編~】

 アントラ厶


 体長は7mから10mほどのクマによく似た大型の肉食獣だ。

 特徴はその非常に長い前足と後ろ足。


 サイカリウスと比べると体長は少し短いが、半分以上を尻尾が占めるサイカリウスと異なりアントラムは尻尾が短いため、体長がそのまま大きさと言える。

 それにアントラムのほうが体ががっしりしていて遥かに足が速い。


 狩ではその機動性を活かして一気に獲物に詰め寄り仕留めるスタイルだ。


 俺達はここにくるまでに魔獣化した個体を仕留めているが、モニカいわくあれは例外的に弱い可能性が高く今回のように集団で来られた場合厄介なのはこっちかもしれない。

 それに後ろに回り込んだ個体がかなり大きい。

 おそらくだが魔獣化している。


 さてこの状況どう料理したものか、俺もモニカもそういうようなことを考えながら作戦を考えていた。

 だが、


「早く隠れろ!」


 突然リコがモニカの腰に巻いていたソリを引くためのロープを切ったかと思うと、そのまま凄い勢いで近くの木の根元に投げ飛ばされた。


 そこは木の根っこが複雑に絡み合って小さな洞窟のようなものを形成しており、そこに押し込まれたかと思うとリコもぎゅうぎゅうの所へ体を押し込んできた。

 そして最後にリコが羽織っていた地味な色のマントをかぶせると、マントに魔力を流し始めた。


 ほうこのマント、魔道具だ。


 魔力を流すことで何らかの認識阻害魔法を展開しているらしい。

 俺達が気が付かなかった理由がこれだろう。

 どうやらリコはアントラムの群れから全力で隠れることを選んだらしい。

 そりゃそうだ、いくら魔法ありの世界とはいえホッキョクグマよりもでかくて遥かに攻撃的な生き物の群れなど相手にしてられない。


 今は全力で隠れてアントラム達が居なくなるのを待つ作戦で、さらに俺達の口をふさいで音が出ないようにする念の入れようだ。



 しばらくすると木の枝が折れるバキバキという音と獣の臭い、それに大型の獣が発する荒い息遣いが聞こえてきた。

 かなり近い。

 

 リコのマントから薄っすらと見える外の景色に、大きな生き物の足が映り込んだ。


 その姿はこの前のと比べると明らかに小さい。

 だが隠れているせいもあってから、どうもこっちのほうが迫力がある気がする。


 そんなことを考えていると周りに群れがどんどん集まりだした。

 数は合計で8匹。

 うち一匹が明らかに体が大きく、そいつだけ少し離れた位置に陣取っている。


 取り巻きと思われる普通の連中が俺達を探しているのかそのへんの地面の臭いを嗅ぎだした。

 どうやら俺達がリコに投げられた地点を探っているようだ。

 そこで俺達が空中を投げ飛ばされたので、地面に匂いが残っていないので見つけられないようだ。


 しばらく数匹が辺りを嗅ぎ回り、他の数匹が周囲を移動している。


 そしてそのうちの一匹が俺たちのところまでやってきた。

 

『モニカ、俺の準備はできてる、お前の判断で行け』


 慌てて迎撃準備を取りその事をモニカに伝える。

 だが驚いたことにそのアントラムがマントの臭いを嗅いだのにも関わらず無視した。

 これには俺も驚く。


『レンジャーのマントすげー』


 モニカから同意の感情が伝わってくる、どうやら同じことを思ったようだ。

 この隠蔽力なら隠れるのは容易だし奇襲し放題だろう。


 なんとかこの機能をフロウで再現できないものか。

 ドサクサに紛れて数日前に存在に気づいた解析系のスキルにかけてみるが、案の定どれもレベルが低すぎて解析不能としか返してこない。


 どうも起動はしているのだがいかんせんポンコツというか、何でこんなスキルがあるのかよくわからないレベルだ。

 解析スキルってチートの代名詞じゃなかったのか?


 そうこうしているうちに近寄って来たアントラムがこの辺にはいないと判断したのか離れていった。

 その強烈な獣臭さがなくなると新鮮な空気の香りが酷く甘く感じられる。

 同時に俺たちを抑えていたリコの腕から僅かに力が抜かれる。


 かなり強い力で抑えられていたようで緩められた途端僅かな血の流れを感じるほどだった。


 だが反対にモニカの筋肉が急激に緊張する。

 アントラムの一匹がソリのそれも”前”の方に興味を示したのだ。

 まずソリの周りの臭いを嗅ぎ、ついで上の方に移動する。


「抑えろ!」


 モニカの、のっぴきならない空気を感じたリコが小さな声でモニカを押しとどめようとした。

 見ればかなりの冷や汗だ。

 同時にモニカの表情を見ることになったようで更に焦燥の色が濃くなる。

 

「ソリのことは諦めろ!死にてえのか!?」


 リコは必死だ。

 だがモニカは”前のソリ”がこれ以上の危険に晒されたら迷わず飛び出すだろう。

 そのことに躊躇はない。

 俺もその前提で準備をしていた。

 幸い以前にも同種の魔獣化個体を相手にしているので動きはだいたい予想できるし、運用に関してもサイカリウスの群れの動きをベースに現在の位置関係からある程度想像できた。

 更に今なら奇襲が可能だ。

 遠すぎる上に木が邪魔で最初の一撃で魔獣化個体を仕留められないのが残念だが、そいつが合流するまでに1体1の状況はどうにか作り出せるだろう。


 俺の中ではかなり致命的な想定外の要素がない限り勝てるという結論が出ていた。


 あとは実際にそれを実行するモニカの判断次第だ。

 

 そしてソリの臭いを嗅いでいたアントラムが、試しにとばかりにカゴの縁を噛む。

 それが合図になった。


「出ちゃだめだよ」


 モニカが短くリコにそう伝える。


 次の瞬間、最大級の筋力強化を足に流し俺達はリコのマントを吹き飛ばして飛び出していた。

 あっという間にソリにかじりついていた個体の所までの距離を縮め、相手がこちらを認識する間もなくフロウを叩きつける。

 薙刀状に変形していたフロウの直撃を受けたアントラムの首がまるでサッカーボールのような勢いで飛んでいった。


 あと7


『次! 左後方20』


 フロウを振り切った姿勢のままその勢いを利用してモニカが次の目標に突撃する。

 こちらも突然の事のようで反応できていない。

 あっという間に袈裟斬りにされ倒れ伏す。


 あと6


『前方40、少し右に飛べば後ろからまわれる!』


 モニカが俺の指示通り前方やや右寄りに飛ぶ。

 本来なら先程の姿勢から左側の個体の方が近いのだが、こちらの方が勢いを殺さなくて済む。

 

 モニカが目標との個体との間にあった木を回り込む形で相手の後ろ側に出た。

 そのまま今度も薙刀状のフロウで一刀のうちに斬り捨てる。


 あと5


『そのまま目の前に向かって砲撃、威力はこっちで調整する。』


 先ほど無視した個体が目の前に見えている。

 ここは森なので木が邪魔でなかなか射線が通らないのだが、ここからなら通ることが分かっていたのでこちらを優先したのだ。

 それに次の目標がこちらを向いても、今叩き斬った個体の死体に一瞬気を取られて固まる。

 予想通り相手は何が起こったのかわからないようだ。

 その隙にモニカが砲撃魔法を発射してそいつの首を吹き飛ばす。


 あと4


『続けて砲撃、振り向くなよ』


 その途端ガキン!という音がして、軽く衝撃が走る。

 すぐ後ろにいた個体が砲撃の轟音にも臆せずに突っ込んできたのだ。

 だがそれも俺が展開したフロウのバリアによって阻まれる。

 いちいち持ち替えるのが面倒なのでモニカの服の下に薄い鎧状にして着せているフロウを使っての防御だ。

 そのまま防御の一部に砲撃魔法の発射部分を作り、そいつを吹き飛ばした。


 あと3


『やや左に曲がりながら前に向かって走れ』


 モニカがその場から離れるようにダッシュした。


 次の二体はソリを中心にして反対側にいる、木が邪魔でここからは砲撃できないので、できるだけ補足されないように回り込む形で接近することにした。

 ただし時間がない。

 異変に気がついた魔獣化個体でかいのが慌てて急接近してきた。


『モニカ!悪いが次はアドリブで行ってもらう』

「わかった」


 もうすでにこちらの存在は相手に知られている。

 だがそれで怯むモニカではない。


 最後に上方向に跳躍し木の中腹を蹴って目標に向かってダイブする。

 だが今度は相手もそれを知っていたらしく、横から長い腕が伸びてきてはたき落とされた。

 なんとかフロウの鎧でダメージを軽減したがこれがなかったら致命的であったであろう。


『くっ、、なんて威力だ、、』


 痛みで一瞬意識が朦朧となる。

 単純な腕力だけなら魔獣化したサイカリウスといい勝負かもしれない。


 そしてその隙を逃さないとばかりにもう片方が噛み付いてきた。

 その瞬間モニカがフロウを地面に叩きつけその反動で距離を開ける。

 ずっと訓練してきたので無意識でも行うことができた。


 空を切ったアントラムが何事かと一瞬俺たちを見失う。

 だが俺達はその隙でもう一方を狙ったこっちはまだ俺達を認識していたので脅威度が高い。

 そいつはその長い腕で殴りつけてきたが、それを躱しガラ空きになった懐へ飛び込みそのままそいつの首を落とす。


 あと2


 首を失い倒れ込む死体に隠れながら、もう一方の後ろに回り込んでチェックメイト。


 なんとか間に合った。


 そして俺達は最後の一匹・・・つまり魔獣化したアントラムと相対する。


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