2-23【世界よ、さあ踊れ3:~竜王~】
「『心が乱れておりますね。 まあ、先程のあれでは無理もありませんが』」
聖堂の中に入ったところで、精霊ルクラが徐ろにそう切り出した。
その言葉通り、モニカは憤りで少し興奮気味。
耳目のある外で言わなかったのは、気を使ってくれたのか。
「”ともだち”を悪くいわれて、乱れないわけない」
「『ですが、少し落ち着いたほうがよろしいかと』」
モニカの言葉に、そう答えながら精霊ルクラが視線を護衛のトルバ兵の方へと流す。
言われるまで気が付かなかったが、彼等は確かに僅かではあるが体を緊張させていた。
どうやら”戦略兵器”に不機嫌でいられるのは、精神衛生上好ましい環境とは言えないらしい。
モニカが少しバツの悪い顔で彼等から視線を外す。
俺達の同行者達は、あの程度の無礼でそこまで感情的になるのかと訝しがっているが、モニカはあの連中が言い放った”嘘の名前”の意味を知っているので仕方がない。
あれからすぐに、俺はあの言葉の意味をモニカに伝えた。
あえてモニカに伝えない事も考えたが、あれを名詞だと思ったままだと、何かの拍子にポロッとシルフィに言っちゃう可能性があるからな。
どっちのリスクを取るか考えたら仕方がない。
同様の理由で、今後シルフィと会う可能性のあるエリクにはヴィオ経由で伝えてるし、スコット先生とアルトには彼等の”インターフェイスユニット”に表示させる形で伝えている。
彼等はモニカと違って感情を逆立てる事はなかったが、”酷い奴らがいたものだ”とは思ってくれたらしい。
あのエルフ達は”ブラックリスト行き”だな。
アルトヴラ商会に来ても叩き出すようにしなければ。
そう考えたところで、俺達自身もブラックリストに乗って苦労している事を思い出し心が少し痛んだ。
まあ、彼等がゴーレム機械の商会と取引することなんてないだろうけど。
「『では、お連れの方々はこの場所でお待ち下さい』」
付き添いの全員が聖堂の中に入り大扉が閉まったところで、精霊ルクラが全員に向かって告げる。
これから”竜王の間”に進めるのは、招待されている本人、即ち俺達のみ。
それ以外の者はたとえ関係者であろうとも、入ることは許されないとのこと。
するとトルバ兵達が、恐る恐るスコット先生を見やった。
要人を一人にしろと言われて、すぐに”はいそうですか”と納得する護衛などいない。
これが普通の護衛なら無理やり納得させる事もできるかもしれないが、スコット先生クラスがゴネた場合、ここにいるトルバ兵達ではどうしようもなくなってしまう。
特に彼等にとっては、スコット先生は大英雄であるだけに、尚更どうにかできるレベルではない事を自覚しているのだろう。
だが、彼等の心配を他所にスコット先生は、冷静なまま。
途中で護衛が外れなければいけない事は精霊ルクラから聞いているし、即席だがスコット先生の納得できる対策もできていた。
「では、中は任せたぞ」
スコット先生がエリクに向かってそう言うと、エリクが真剣な表情で頷き、ロメオの背に跨がって魔力装甲を展開した。
ともすれば”魔導装具”の親戚にも見えるその異様に、トルバ兵達のエリクを見る視線が一瞬で重いものに変わる。
そしてそれを確認したスコット先生は、俺達に軽く頷くと、そのまま正面扉を再び開いて外へと出て行っていった。
同時にエリクがロメオに乗ったまま少し俺達とどうこうし、関係者の中で一番内側に出たところでくるりと向きを変えて、外側を睨むように陣取る。
スコット先生が敷いた”防衛体制”、それは内側にこちらの最大火力を誇るロメオとエリクを置き、経験値に優れるスコット先生が建物の外周を見るという布陣だ。
外側担当は、既に敷かれているトルバ軍の護衛と協力する必要があるし、彼等の様子から状況の変化を読み解く必要があるため、経験値に優れたスコット先生が当たる。
このために先生には事前に、現地入りして状況把握とロメオの”場慣らし”をしてもらっていたのだ。
エリクとロメオは見た目で侮られやすいので抑止効果が薄いのもあるし、俺達との距離で攻撃力が結構変わるから、内側の方が適任である。
スコット先生が一旦中に入ったのは、建物の構造と俺達の様子の確認のためなので、エリクと打ち合わせが終われば早々に出たというわけだ。
最後の守護者となるエリクの背中(のつのりだったが、手が届かなかったので彼の尻)を、モニカが任せたとばかりに軽く叩き、そのままの動作でロメオの吸魔器に魔力を注いでおく。
わずかな期間とはいえ、スコット先生に指導されただけあって、彼らの背中は先程までの無邪気さはどこへやら、どこか守護者然としているから面白い。
俺達は精霊ルクラに連れられて部屋の奥へと進んだ。
そこには、この先に待つ竜王へと続く仰々しい扉が鎮座していた。
扉の雰囲気だけで、傍若無人な荒くれ者も引き返してしまいそうなほどの威圧感がある。
その価値を高めるためなのだろうか、俺達が近寄っても開けられる気配はない。
本当に開けてくれるのかと少し心配になったが、扉の眼の前まで来たところで、精霊ルクラが魔力を扉に流した。
どうやら”自動ドア”らしい。
しかも驚愕の横スライド式だった。
どう見ても観音開きなデザインなのに。
モニカが騙されたとばかりに口を開けながら、横に動く扉を目で追う。
しかも呆れた事に扉の向こうには、また扉があるではないか。
正確には謁見の間の直前の控室のようになっている。
どうやら、竜王の姿は招待した者の関係者にすら見せたくないらしい。
どれだけ勿体ぶるのか。
モニカが軽く周囲を見回す。
20ブルの正方形に近い、この仄かな魔力灯に照らされた場所は、これまで見てきたどの場所よりも神秘的に感じられた。
材質だろうか?
装飾らしい装飾のない無地の薄紅色壁に、何ともいえない迫力がある。
これまた驚いたことに、内側の扉は一般的なそれではなく、”氷の大地のモニカの家”で用いられていたような、壁と面一になるかなり精密な構造をしていた。
確か、実験室や保管施設のような、内部の気密性を一定に保つ必要のある場所で良く使われるんだったか。
おそらく”内部の存在”を保護するためだろう。
モニカの家で使われていたこともあって俺達に馴染み深いが、その冷たい印象を嫌う者も多く、値段も高いので単なる雰囲気で採用するとは考えづらい。
その証拠に、”ビチリ”という独特の音を立てて玄関側の扉がしまると、建物の中まで伝わっていた、周囲の喧騒が完全に遮断され、この場所の神秘性が一段と増した。
そちらは横スライド式だというのに、やはり気密性を求められているようだ。
『エリクたちの気配つかめてる?』
『ああ、なんとかな』
『よかった、わたしの”感覚”だと、もうムリだから』
モニカの感覚を遮断するとは、中々の気密性能だな。
その辺も、”仮設とはいえ新築”というところだろうか。
「『それでは改めて、竜王様と会われる際の注意事項をお伝えしましょう』」
精霊ルクラの言葉にモニカが頷く。
事前に聞いてはいたが、改めて念を押す意味もあるのだろう。
それだけ粗相は許されない相手ということか。
精霊ルクラが求めたのは、要約すれば”竜王の政治利用”をしないことの念押しだった。
とはいえ、会うことが自体がかなりの政治的意味を持つので、求められるのはもっぱら竜王にこちらのスローガンを聞かせたりとか、その信認を貰おうとしたりとか、または信認されたと嘘を喧伝したりといった内容であるのだが。
あと当たり前だが、竜王を傷つけようとしたり、威圧しようとするのも御法度。
つまるところ、”竜王に会っただけで満足しろ”って事だな。
まあ俺達みたいなのにとっては、それだけで万金に値するワケで。
「やっぱり、そういう人、おおいんですか?」
精霊ルクラから繰り出される注意事項に反応するように、モニカが問う。
「『残念ながら、陛下はどうしても利用されやすいので。
立場もありますが、陛下自身がどうしても利用しやすく感じられるようでして・・・』」
「・・・?」
精霊ルクラは少し話しづらそうに、その情報を話しだした。
「『これは、それに関連することなのですが・・・竜王陛下があなたに反応を見せることはありません』」
その情報にモニカが小首を傾げる。
「『竜王陛下はこの数百年の間、殆ど反応を見せることもありませんでした。
聖王時代より以前は積極的に政と関わっていましたが、今ではもうその面影のみ。
故にそれをいいことに、様々な事が行われてきました。
動かぬ陛下を足蹴にして姿を描画魔法に残したり、陛下を立ち合い人扱いとして御前で交渉するなら可愛いもので。
中には、契約魔法を行使しようとしたり、陛下の鱗を剥ごうとする者まで現れる始末』」
なるほど、そりゃ周りにしてみれば気を使う。
もちろん俺達にそんなことをする気はない。
先に会ったガブリエラだって、俺達には黙ってたくらいだ。
なにせ”精霊”の怖さを知ってるからな、ここで精霊ルクラに敵対されたくはない。
「どうして、反応しなくなったの?」
モニカのその問いに、精霊ルクラはどこか疲れたような視線を竜王の間へと続く扉に向けた。
「『興味を失ったのですよ。 竜王陛下は万を越える年月の間、数多の社会生物達に触れてきました。
天変地異も、世界を根底から覆す変革も、共に死のうと誓った親友の死でさえも、陛下にとっては雨のように降り注ぐものでしかない。
そんなささいなものに永遠に付き合っていられる程、心というのは強くはないのです』」
『ほへぇ・・・』
『”万を超える時”ってすげえな』
俺達が精霊ルクラの語った言葉に心の中で驚きの声を上げる。
一応俺は”億”を超える年齢の教師に師事してはいるが、あの先生の意識はせいぜい数百年しか連続していない。
古い精霊のアラン先生ですら数千年・・・それも長い年月の間に精神が更新し続けているので、生まれたころの記憶は思い出せないどころか痕跡すら消え失せているのだ。
逆に言えばそうでもしなければ、意思を長期間保たせる事はできない。
万年といえば、文明が生まれ育つのに十分な時間だ。
そんな時間を同じ意識で生きればどうなるのか・・・その答えがどうやらこの扉の向こうで待ち構えているようだった。
「『ですからシセル・アルネスも、ガブリエラ王女にも反応を見せたことはありませんでした。
近年で反応らしい反応をみえた相手となれば、トルバ独立戦争を終わらせたクリント・ミューロック、”大戦争”の引き金を引くこととなった”ホーロン王:デジテーリア”、
そして”初の軍位スキル”とも呼ばれることのあるクロイ・レン、そして大戦争の英雄マルクスとカシウスが2人揃った時くらいのもの。
その彼等ですら、竜王陛下にとっては”瞬き”をしただけです』」
モニカが名だたる偉人達の列挙に息を呑む。
その評価には様々な意見があるとはいえ、全員に共通するのは、今なお彼等の起こした衝撃に世界中が晒されているということ。
だが、そのクラスの重要人物で”瞬き”しかしなかったとは。
「でも、わたしを呼んだんですよね?」
「『直々に声に出して呼びつけたわけではありません。
あくまで我々のような”心を読める者”が、陛下の心を読みそこに流れる意識の渦の中から、その心の内に映った者を引き合わせているだけに過ぎません。
いや、最近ではただ単に、世界に名を轟かせようとしている者を、儀礼的に会わせる事ばかりになっていますね』」
「じゃあ、わたしもそんな感じなんですね」
モニカはそう言うと、少し息を吐く。
当たり前だが、こんな状況でいきなり”世界的権威”に名指しで呼び出されたということで、モニカもそれなりの緊張をしていたのだ。
それが特に意味のないと分かったことで、俺達の体中にほぐれる感覚が行き渡る。
もっとも、その感覚はすぐに緊張で塗りつぶされるのだが。
「『いえ、どうやら少し残念なお知らせになるようですが、ヴァロア卿のイメージは比較的ハッキリとしたものでした。
それに、ここ最近では珍しい程頻繁にあなたの姿を思い描いておりましたよ』」
その言葉にモニカの緊張が再び舞い戻ってくる。
「で、でも竜王へいかって、今はほとんどはんのうしないんですよね?
どうして、わたしの姿を知ってるんですか?」
モニカが恐る恐る疑問を投げかける。
同時に俺も今の話で疑問に感じた事をモニカ越しに伝えてもらうことにした。
「それに、あなたの話だと・・・まるで未来を感じられるみたい・・・ですよね?」
・・・と。
その質問と同時に、俺は外部に影響が出ないタイプの観測スキルを全て展開させた。
リソース不足でいざという時に逃げ遅れるリスクはあるが、この精霊の回答にはそれくらいの価値はある。
”未来を見る能力”といえば、俺達の【予知夢】がそれに当てはまるが、正直そんなものを俺は本当には信用していなかった。
まだその時が来ていないとはいえ、当たったものといえば先の魔王入場の一件くらいなもの、それだって全て観測できた情報の解析で説明はつくからだ。
だが、精霊ルクラの話を信じるならば、竜王陛下とやらは全く動くことなく”歴史の趨勢”が感じられるかのようにも聞こえるではないか。
すると精霊ルクラは、大いに面白そうな声で答えた。
「『だから”竜王陛下”なのですよ』」
その時、まるでそういう演出であるかのように、竜王の間へと続く扉が音を立てて開き始めた。
隙間なく壁に埋まっていた扉がゆっくりと手前に迫り出し、可動域を確保したところで一気に観音開きに開け放たれる。
それと同時に、遮蔽されていた巨大な空間の感覚が一気に俺達の中になだれ込んできた。
球技でもするのかという程の大きな空間と、そこに確かに存在する巨大な”気配”。
俺達の竜王の第一印象は、事前に聞いていた通りの”巨岩”といったものだった。
全体像を見れば、確かにユリウスや飛竜などと同じ”ドラゴン型”の体形をしている。
だが、あまりにもの年月の力で骨が歪み、表皮の巨大なコブで元の形が掴みづらい。
何より、元の色を想像できないほどのくすんで苔むしてしまったその色が、山の中から切り出してきた巨岩の印象を強くしていた。
ただ、聞いていた事とは異なる事もある。
「『・・・な!? 竜王陛下!?』」
それまで案内人然としていた精霊ルクラが取り乱したように歩み出て、その”異常”に瞠目する。
俺達も俺達で、”精霊が驚く”なんていう、一生話のタネになりそうな事象を目にしたというのに、そんなことなどどうでも良いとばかりに目の前の光景に釘付けになっていた。
モニカの額を冷や汗が流れ落ちる。
100ブルを越えようかという巨体の、おそらく魔獣より遥かに上位の”巨竜”に見つめられて、緊張しない者などいようか。
この世の全てに関心を失い、瞬きすら大騒ぎになる竜王が・・・
首を持ち上げて、巨大な瞼の奥から、その年月を全く感じさせないほど澄み切った瞳でもって、俺達を見下ろしていたのだ。
「・・・お待ちしておりました」
竜王と呼ばれているその竜が、俺達に向かってそう語りかける。
その声は、天の声のように厳かではあったものの、風前の灯のように弱々しいものでもあった。
「えっと・・・これって”まばたき”より、うごいてるよね?」
呆気にとられたモニカが、恐る恐るといった感じに精霊ルクラへと視線を動かす。
だが、精霊様の方は”呆気に取られる”レベルでは済まなかったらしい。
「『なんと!?』」
と、腰が抜けそうなレベルで狼狽している。
精霊がどの程度嘘が上手いかは分からないが、その様子からしてこれは相当とんでもないことなのだろう。
俺達の目の前の巨大な竜が、その苔むした体表からこびり付いた埃をパラパラと撒き散らしながら、ゆっくりと身をくねらせて俺達の真正面に首を動かし、そこにある力強い瞳で俺達を見下ろした。
「申し訳ございませんモニカ様・・・そこの精霊の無礼には目を瞑ってくれませんか。
まだ生まれて数十年しか経験しておりませんゆえ、”この世の本当の道理”をまだ知りませぬ」
竜王が、そう言って本来ならば歴史の一大事とされる”瞬き”を行う。
「もっとも・・・モニカ様も、まだ御理解なされていないようですが」
やがて、話の流れ的に何かの許可を求められているらしいと思い至ったモニカが、ゆっくりと頷いた。
そしてそれを見た竜王が、ゆっくりと視線を隣の精霊ルクラへと移す。
「では少しの間、黙っていてくれぬか精霊よ。 2人で話がしたいのだ」
「『はい・・・その予定でしたので』」
竜王の言葉に精霊ルクラが気圧されるように頷き、すごすごと下がって、その存在感を薄くさせる。
精霊の顔が青くなるところなんて初めて見た。
「ではあらためてモニカ様、よくお越しくださいました。
そしてこのような貧相な場所で、御身を迎えなければならなかった事をお詫びいたします。
何分この無様な身であります故、私の”歳”に免じてくだされ」
そう言ってこちらに頭を垂れる巨大竜に、モニカが少し固まる。
「・・・うごけたんですね」
やがて出てきた言葉は、何とも原始的な内容だった。
するとモニカのその反応が面白かったのか、竜王の放つ強大な威圧感が少し薄くなる。
「あなたを驚かせることができてよかった、黄泉の国での自慢となりましょう。
だが、あいにく体はもう殆ど動かない、声を出すのが精一杯なのです」
「・・・なんでわたしと話すんですか? ガブリエラは無反応だったのに・・・」
モニカが慎重に言葉を選ぶようにそう問いかける。
精霊ルクラの言葉通りなら・・・彼がいきなり「ドッキリ大成功」と書かれた看板を持ち出すような輩でないのなら。
俺達が今直面しているのは、”歴史的超大事件”なのだから。
だが竜王はモニカの問いかけを不思議に思ったらしい。
「本当に、あなたが”あのような小娘”に劣るとお考えで?」
その問い返しに、モニカが小さく頷く。
だがその瞬間、竜王が目と口を大きく開け放ったではないか。
「・・・カ、カカ! これは愉快!
モニカ様ともあろう者が!」
何がツボに入ったのか、
まるで咳き込むように竜王が笑い、動かないはずの体が地震のようにビリビリと振動する。
その光景にモニカが後ろを振り返って精霊ルクラを見るが、完全に許容量を超えているらしい精霊様は、”こちらを見るな”とばかりに青い顔で睨むだけ。
「・・・いや、失礼いたしました。
私の”価値観”が、他の者とズレていることを失念しておりました故、無礼をお許しください。
ですがそれでなくとも、あなたは私にとって、そこらの有象無象とは違う”特別”な存在だ。
”英雄”にも”最強”にも”革命的”にも飽き果てたが、あなたに代わる者などいないのだから」
「・・・特別な?」
モニカが訳が分からないとばかりに問い返す。
当たり前だ、万年単位生きた初対面の竜にとって、俺達が特別になるような事柄に覚えはない。
だがそれに対して竜王から返ってきた言葉は、俺達の想像を超えるものだった。
「”死因”ですよ」
竜王が短く告げたその言葉の意味を、この場にいた全員が一瞬理解することができなかった。
「あなたは今日これから、この私の”死因”となるのです」




