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 モニカの奇妙な相棒 ~ 最強スキルは、俺自身!? ~  作者: マカルー
第二章 モニカの奇妙な学園生活
403/426

2-22【あの山を登るために必要な船頭の数8:~迷子のお供~】


「・・・で、その子を拾ってきたと」


 教会の外で合流したエリクに軽く経緯を説明すると、彼はそう言って不審そうな目を向けてきた。

 その視線に、俺達の足元の幼子が隠れるように俺達の後ろに回り込み、俺達があげた携帯食に齧り付く。

 ちょっとかわいい。

 数日風呂に入ってないせいでちょっと臭いが。

 俺はこっそり、その子に掛けている補助魔法に臭気抑制効果のあるものを追加する。


「放っておけないから」


 モニカがエリクに答えると、エリクも困ったように顔を顰めた。

 彼自身、孤児の守護者なんて事をしている手前、困っている幼子を放置できるかと問われれば黙るしか無い。


 現状この幼子に聞いて判明していることを整理してみる。


 4日前、どうもこの子は親とはぐれたらしい。

 原因はもちろん、この国際会議に付随する大混乱だ。

 おそらく食料の買い出しについていく途中で人混みにのまれたのだろう。


 それでも普段であればそれほど問題にはならない。

 幼子と言えど、市場から自分の家に戻る程度の感覚は持っているし、人の目が届く田舎なので探すのはそれほど苦でもないからだ。

 いやそもそも、本来なら人混みがこんなに暴力的な密度にならないので、はぐれる事もなかっただろう。

 親が無用心にも子供を連れて行ったのも、それが危険という感覚がなかったからだろう。


 だが今は、大国がいくつも集まる大会議の中。

 当然それらの関係者が一同に介し、街の中には街の者ではない者で溢れ、それらを通すために街中の道が寸断され、魔力を動員した急激な区画整理で街の形が毎日変わる。

 この子の話では、食料を買いに行くために商店街へ行くのに普段なら数分もかからない距離なのに、現在は街の外周を迂回して半日ほど移動しなければ辿り着けないらしい。

 その道も、毎日変わるんだとか。


 こうなると話はややこしい。

 試しにこの子に聞いてみたが、住んでいる地区の名前も知らなかった。

 しかも厄介なことに、数日かけて街中を探し歩いているらしい。

 まあ、これくらいの子なら仕方がないのだが、つまるところこの子は今、完全に自分が何処にいるのか分からないのだ。

 そして重要なことに、目的地までの道はおろか、目的地のアテもない。

 なにせそれらを示す情報は現時点と互換性の無い古い情報なのだから。


 これが地図が短期間で変わることの恐ろしさである。

 当たり前過ぎて無視されがちな基礎的な能力というのは、その者が思っている以上にインフラに依存して動作しているということを忘れてはいけない。

 ・・・というか、これどうしようもなくない?


「街の兵士の人に預けるべきだと思う。 俺達じゃ手に余ると思うよ」


 エリクがまっとうな意見を述べる。

 もっとも、彼もそれが通用するとは思ってないようだが。


「だがあれではな・・・」


 スコット先生が、苦々しげにしせんを教会前広場の奥に向ける。

 そこには数人の兵士達が、地図と実際の光景を見比べながら真っ青になっていた。

 間違いなくこの街の者ではない。

 いや、あそこまで蒼白になるということは、むしろ案外この街の者なのか?


「・・・今ここにいる兵士さん、だれも”リャーダ”を助けてくれなかった」


 案の定、幼子も不信感を滲ませた視線で兵士達を見ている。

 彼らの助けを請う段階など、とっくに終わらせているのだろう。

 

「なるほど・・・」


 それで俺達は薄っすらと事態の深刻さを察した。

 この街は今、完全に都市機能を麻痺させられているのだ。

 とはいえ聞かないわけにもいかないわけで。


「ちょっときいてくる」


 モニカはスコット先生とエリクにそう言うと、リャーダと名乗る幼女の手を軽く引いて兵士達の所まで歩き、駄目元で声をかけた。


「そこの兵士さん! ちょっといいですか!」


 モニカが少し張った声を兵士達に飛ばす。

 すると兵士達はなんと、僅かに”おそれ”すら混じった表情を俺達に向けてきたではないか。

 だがそれに臆するわけにもいかない。


「この子、家がわからなくなっちゃったみたいなんです!」


 その言葉に、兵士達の視線が一斉に俺達の横の幼女に向かう。

 だが彼等の顔浮かんだ”まいったなぁ”的な物で、その僅かに滲む排他的な色合いにリャーダは怯えたように俺達の後ろに逃げ込んだ。

 

「申し訳ない、我々もこの街のことは分らないんだ」


 兵士達の中で、もっとも年長と思われる赤い肌の亜人が困ったようにそう答える。

 予想通り、彼等はこの国際会議のために他所から派遣されてきた兵士らしい。

 だが、そんな言葉で逃がしてやるもんかとばかりにモニカは離さない。 


「じゃあ、どこに聞きにいけばいいですか?」


 別に彼等に迷子の親探しをさせたいわけじゃない、必要な情報を得られる場所を教えてくれればいいのだ。

 だが、兵士達は首を振る。


「ごめんな、オジサンたちも、自分達の持ち場も確認中なんだよ。 どこに連れて行けばいいのかもわからないんだ」


 そう言って一軒誠実そうな顔をする。

 だがその実、彼らが言葉に出さない威圧でもって拒否を押し通そうとしているのは、誰の目から見ても明らかだった。

 自分たちの体を大きく見せるように一歩詰め寄ってきたし、子供の過敏な感覚を刺激するように魔力を体に流している。

 まあ、きっと彼等もどうしようもない力に呑まれているのだろう。

 ”それどころではない”というやつだ。


 もっとも、それで止まる黒の精霊様(代役)ではないのだが。


「それでも”ヘイタイサン”なんですか?」


 モニカが威圧してくる兵士達にまるで迎え撃つように詰め寄った。

 俺の中に、”迷子の保護すらできぬ奴が何を守るのか!”という強烈な感情が流れ込んで、頭の中で反響するように唸りを上げる。

 当然ながらその感情は魔力となって体の中を駆け巡っているわけで、理性と俺が抑え込んでごくわずかとはいえ、その只ならぬ魔力の蠢きに兵士達の目が一瞬で険悪なものになる。

 おそらく察しの良い何人かの手が懐に伸びた・・・


「ああっ!!! ごめんなさい!!」


 唐突に、険悪化した空気を裂くようにエリクが俺達と兵士達の間に割って入る。


「ごめんなさい!! この子が心配で気が立ってるだけなんですよ、決して兵士さん達の邪魔したいわけじゃなくて!!」


 そしてそんな薄っぺらい謝罪の言葉を兵士達に投げつけると、俺達とリャーダをまるで兵士達の視線から隠すように腕を広げ、そのままものすごい勢いで後ろに押し始めた。


「・・・なにするの!」


 容赦なく首元にガシガシと押し込まれるエリクの腕を払うように、モニカがエリクに文句を言う。

 だがそれでエリクの動きは止まらないばかりかより一層激しくなり、更に俺達の腕を掴みながら厳しい顔で耳打ちしてきた。


「・・・喧嘩する気だったろ」

「・・・」


 エリクの言葉にモニカが無言で顔をしかめる。

 彼の言葉を裏付けるように、俺達の腕にはナイフサイズのフロウが握りしめられているので口答えはできまい。

 その反応にひとまずの危機を脱したことを悟ったらしいエリクが後ろを振り返り、大きな声を上げた。


「すいませんでした!!」


 エリクが俺達を追いかけるかどうか迷いを見せていた兵士達を釘づけるように、念押しの言葉を浴びせかける。

 ヴィオが裏でブーストしているのであろうその迫力に、兵士達は何か言いたげではあるが口に出すタイミングを見失ってしまった。




「やはり上手くいかなかったか」


 教会の前まで戻ると、一部始終を遠目に見ていたスコット先生にそう言われた。

 先生は顔が知られているので、代わりにエリクを送ったのだろう。 


「・・・ひどい、兵士さん」


 モニカがボソリと呟くと、先生は仕方がないとばかりに肩をすくめた。


「トルバ軍の軍服を着ていたが、彼らの本分は自国の要人警護だからな。 現地住民の困り事に手は出さないだろう」

「でも、こんな小さな子だよ?」


 モニカが横でしがみつくように怯える幼女の頭を撫でる。

 犬獣人の特徴的な犬耳は、萎れるように完全に畳まれて震えていた。

 はっきりと拒絶の意思を示した兵士が怖かったのだろう。


「それで、どうする?」


 スコット先生が改めて姿勢をただし、問いつめるような口調で俺達に聞く。

 言わんとしていることは嫌でもわかった。


 ”警備上のリスクだぞ”


 である。

 だが、モニカはそれに当たり前のように首を横に振る。


「まだ、街の半分くらいはまわる必要があるから。 最後まで見つかりそうになかったら、警備さんに”わたしの名前”でお願いする」


 あれだけ聞く耳を持たない兵士達でも、国際会議に正式に参加している”モニカ男爵”が迷子を連れてくれば対応せざるをえないだろう。

 少なくとも拠点機能を持っている場所では。

 だが、俺達が役人相手に名前をひけらかすには少々早い。


 そんな意志を込めた回答を返すと、スコット先生は肯定も否定もない表情で頷き、エリクがなんとも面倒くさそうな息を吐いた。

 とはいえ孤児の守護者であるエリクが迷子を放り出すワケもないので、本当にただ面倒なだけなのだろうが。





 それから少しの間、俺達は幼女を背中に乗せて裏路地を爆走することになった。


 これまでかかっている時間と残りの時間を考えれば、設置ペースを上げる必要が出たからだ。

 小さな街とはいえ、今日中に必要箇所を網羅するには急がなければならない。

 まだ午前中だが、もう正午が見えているのだ。

 魔力で強化されている俺達の走行速度は時速100㌔ブルくらいなので、リャーダの足にそんな負荷はかけられないと俺達が背負っている。

 スコット先生いわく、”護衛対象が纏まっている”というメリットもあるしな。


 裏路地を行く理由はもちろん、人でごった返す表通りを通りたくないから。

 出会い頭で交通事故を起こさないように、俺が索敵スキルを前面に展開しその結果を受け取ったエリクが先行して安全を確認する。

 俺達が幼女を背負ってそれに続けば、スコット先生が両足義足とは思えない動きで後ろをカバーする。

 

 こう書けばさぞ目立つことだろう、と思うかもしれない。


 だが驚いたことに、この速度で動くのは俺達だけではなく別に最速でもなかった。


「左通ります」


 そんな声がドップラー効果で飛んでいく。

 今のなんて時速130㌔くらいは出てたんじゃないか? 

 もはや当たり前過ぎて気にならないが、服装からしてどこかの小国の下っ端役人あたりだろう。

 軍関係者、政府関係者、その他関係者。

 連絡や、次の会談の打ち合わせ、はたまた部隊の移動など。

 ルクラの上空に飛行規制が掛けられている事もあってか、地上を急ぎたい者は多いのだ。

 流石に人混みに近いところでは自重しているが、おかげでそれ以外の場所によっては裏路地が事実上の高速道路と化している。

 住民達もぶつかるとかなら気にするだろうが、器用に避けるし聞く耳を持ってくれないものだから気にするのを諦めている。

 

 きっと俺達もどこかの国同士の連絡係だと思われているに違いない。

 偶に驚いた顔で振り返るのは、ひょっとして俺達の関係者だろうか。


 爽快な速度域が面白いのか、背中の”迷子のリャーダ”から暗い空気が抜けていた。

 この子も犬獣人、鍛え方次第でこれくらいの速度域で走ることは可能な種族なので、速度に対する恐怖感は薄いのだろう。


「ここ、来たことある?」


 珍しく元々の景色と思わしき古びれた市場に出くわしたので、モニカがリャーダに聞いた。

 すると背中の幼子は、俺達の方に体重をかけて頭を突き上げ、必死に見知った光景との類似点を探すような視線であたりを見渡した。

 だがその表情が落胆の色に変わり、力なく頭を横にふるまでに多くの時間は流れなかった。


「みたことない・・・」


 リャーダが力なくそう答える。


 この哀れな幼子は母と買い出しに出かけているときに迷子になったとのことだったので、俺達は目標を今回のラクイアによる再開発が始まる前から存在する市場や商店街に絞っていた。

 生活必需品を買うための場所となれば、こういった施設に限られてくるからな。

 いくら国際会議中とはいえ市場を潰すことは考えづらいので、市場さえ特定できればあとはそこから物理的に近くて道が寸断されている箇所から逆算してやろうという寸法だ。


 ただ、すぐにアタリとはいかなかったらしい。


 希望を込めてやってきた場所が見当違いでリャーダが露骨に暗い顔になる。

 だが、俺達はそれほど落ち込みはしない。

 次を当たればいいし、俺達の”要件”は別にある。


「すまない。 ラクイアの前からある他の市場は、ここ以外にどこにあるか教えてくれないか?

 それと、この包み焼きを4つ( ・・)くれ」


 スコット先生が、手近の古そうな屋台の店主にそう問いかけ、情報料として昼飯の調達を同時に行う。

 すると店主は、物好きな旅行者が来たなといった顔ではあるが、特に気にした様子もなく答えた。


「テレイ市場とライス市場だな。 どっちもノルゲイ通り・・・今は大正門通りって言った方があんたらも理解しやすいか、それを挟んだ反対側にある。  あとは雑貨と食料品くらいならフランコ、ガーレン通りのむこうの・・・ルフジンガーにも小さな市場があるが」

「親切にありがとう」

「なーに、困ったときはお互い様だ。 ほい包み焼き6個( ・・)で72セリス」


 そう言って屋台の店主が伸ばした手に、スコット先生はあっけにとられたような表情で懐を弄った。

 会議中ということもあってか、手のひらサイズの包み焼きが中々のお値段である。

 美味そうだから良いけれど。

 税金で食う飯は美味いのだ。


 まあ、これで次に行く場所の情報が手に入った。


 俺はここに来るまでの調査で作った最新の地図から、該当しない市場を排除していく。

 よほど急速に物資需要が高まっているらしく、中心部だけで3箇所もの増設市場が判明した。


「おじさん、この市場は古いの?」


 モニカがそう言いながら屋台に近づき、俺が足元からフロウを伸ばす。


「ああ、前からあるよ。 少なくとも俺がまだガキの頃にはあった」


 饒舌にそう答える店主は、俺達が屋台の後ろにある木の陰にビーコンを設置したことには全く気が付かなかった。





「じゃあ、次にいくよ!」


 ちゃっかり”ビーコン設置”という自分の都合は果たしたモニカが元気よくそう言うと、まだ包み焼きを頬張っているエリクが急かすなとばかりに蒸せこんだ。

 情報量分の2個はモニカとエリクで分けることになり、更に事前に腹持ちのいい携帯食を大量に食べていたリャーダが1つを食べきれなかったことで、受持ち量が2.5倍になったせいで彼だけ食べ終わりが遅いのだ。


「あの店主の話だと、”あの大通り”を渡らなければならないが・・・」


 スコット先生がそう言って考え込んだ。

 ちなみに”あの大通り”ことノルゲイ通りとは、俺達が入場行進した”あの大通り”である。

 只今絶賛、各国の要人たちが次々到着している”あの大通り”である。


「つっきりたいね」


 モニカが正直な感想を述べた。

 飛行が制限されている以上、迂回するとなれば結構な時間のロスになる。

 迂回路にはもう既にビーコンが設置済みなので、行くとなれば完全に無駄足だ。

 たしか入場行進の合間の時間に、反対側に人を通していたはずなので、そこまでのロスは無いだろう。

 だが、スコット先生は苦い顔をした。


「できれば”あの大通り”には、あまり近寄りたくはない」

「なんで?」


 モニカが蒸せ込んでいるエリクの背中をリャーダと一緒に擦りながら聞く。

 だが、その答えは聞くまでもない。


『もうすぐ”魔王”の入場時間と被るんだよ』


 俺がそう答えるのと、スコット先生が答えるのはほぼ同時だった。



「あー・・・」


 と、モニカがバツの悪い顔を作る。

 そう、間もなくあの辺りには”俺達が最も気をつけなければ行けない相手”がやってくる。

 そんなところにノコノコ出ていくのは、いくらなんでも無謀すぎる。

 というか、この市場も比較的近いんで、あまり長居するのもよろしくないだろう。


『仕方がない、向こうの市場は後回しにして、こっち側の行けるところを回ろう』

『・・・そうだね』


 俺の妥協案の提案にモニカが同意するように頷く。

 まあ、とはいえ回れるところもそんなないんだよなー。

 俺は全体マップを眺めながらそんな事を考えた。


 比較的良い位置にビーコンを設置できていることが幸いしてか、街のこちら側は網羅できる状況になっているので、正直これ以上ビーコンを設置するメリットは薄い。

 それよりかはまだ全然配置できていない反対側に行きたいというのも人情だ。

 だがそれで魔王に近づいては本末転倒である。


「それじゃ、次に行くところは・・・」


 モニカがそう言いながら、次の目的地をエリクの(インター)(フェース)(ユニット)に表示させる。

 するとすぐにスコット先生がエリクと道中の移動についての諸確認を始めた。

 もうすっかり慣れたものであるので、俺達もその光景を安心して眺めることができる。



 そのとき・・・・ふと視界の端を黒いものが横切った・・・ような気がした。


「・・・?」


 モニカもそれに気がついたらしい。

 僅かに身を起こすと違和感を感じた方に集中力を向けるように、視線を動かし始めた。


 それは、なんてことのない”(もや)”のような物だった。

 煙のような綿雲のような・・・人の頭くらいの大きさのガス状の塊が空中を浮遊していたのだ。

 その塊が、ゆっくりと市場にごった返す人の空気に煽られるように流れていく。

 大方、どこかの屋台が出した煙か何かだろう・・・


 だが俺達にはそうは見えなかった。


「ねえ? あの”もや”って何かわかる?」


 モニカが浮遊物を指さして隣りにいたリャーダに問う。

 見慣れないタイプの靄だったので、とりあえず地元住民のリャーダに確認を取ったのだ。

 だが不思議なことに、リャーダは否定も肯定もしなかった。

 ただ、モニカの指差す方にある何かを確認しようと目を泳がせていたのだ。


「あの・・・もや?」


 そんな物があるのか?


 リャーダの瞳にはそんな言葉が書いてあるようだった。


『見えない?』

『みたいだな・・・』


 となると魔力感知能力が必要な事象ということか・・・


 そういった現象はこの世界には意外と沢山ある。

 身近なのだと、そういった事象を利用した魔力保有者だけが見える警告看板とかだが・・・


「ねえ・・」


 モニカがエリクとスコット先生に声をかける。

 2人にも見えているのか確認するためだったのだが・・・


 その瞬間、突然何かが俺達のこめかみを引っ張るような違和感が俺達を襲った。

 咄嗟に額を抑えたモニカを訝しがるようにエリクとスコット先生がこちらを振り向く。


「どうした?」

「あの包み焼き変なもん入ってたのか!?」


 エリクが言葉と同時にまだ手に残る包み紙を睨んだ。

 だがそれが原因ではないことは明白である。


 これはもっと内部的( ・・・)な・・・


 その時、俺はコンソールに映る警告表示を見て血の気が引いた。 



 その通知は、これまで殆ど動作の兆候を見せてこなった大問題スキル・・・【予知夢】が発動していることを示すものだったのだ。



『うわっ!? やべっ!!』


 想定外のスキルの発動に、俺は慌てて事前に準備していた”対抗策”を実行する。

 忘れがちな【予知夢】の副作用・・・モニカの強制睡眠、つまるところ急な意識の喪失を食い止めようと試みたのだ。

 だが予想通り、どれだけ俺が脳内に覚醒信号を鳴らしたところで、プリセットスキルの絶対且つ問答無用な作用は、容赦なく俺達の瞼を閉じてしまう。


 そして今回は、それでは収まらなかった。



 恐ろしいことに、俺の意識までもが覚醒状態から切り離されたのだ。



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