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 モニカの奇妙な相棒 ~ 最強スキルは、俺自身!? ~  作者: マカルー
第二章 モニカの奇妙な学園生活
365/426

2-20【先史の記憶 8:~部屋の中心で~】


「それじゃ、俺が入り口に張り付くから」


 エリクがそう言うと、入ってきた階段を親指で指差す。

 見た限りでは他の出入り口は無いので、ここを押さえれば中に脅威は及ばない。


「うん、お願い、わたしは中を見るから、そっちでも時々2人を見ててね」


 モニカはそう言いながら、(インター)(フェイス)(ユニット)を軽くつつく。

 何かあれば、すぐにヴィオ経由で伝えろという合図だ。

 まあ、そんな事しなくても大丈夫だろうが、一応の確認である。


 その軽い確認を終えると、エリクは階段の下に上を向いて張り付き、俺達は部屋の中へと足を進めた。

 かなり雑然としているが、ある意味で整然とした部屋は、例のごとく崩落した瓦礫などで足元はグチャグチャ。

 移動はなんとも不格好にならずを得ない。


 俺達はいざという時にそこに足を取られないように、ライトで照らしながらマップを作っていく。

 時折、高めの瓦礫の上とかに、有線でつないだ”感覚器”を置いていく。

 こうしておけば俺はこの部屋の様子をリアルタイムで掌握できるのだ。

 まあ、ここまでしなくても何の気配も無いので心配ないのだが、これも”稼働試験”と思えばいいだろう。


『いいぞ、ちゃんとデータは来てる』


 俺は上がってくるデータを元に、空間を仮想上に展開しながらそう言った。

 とりあえず、問題はなさそうだ。

 複数の感覚器から得た観測データを擦り合わせるのは中々ややこしいのだが、その辺を処理するスキルを以前苦労しながら作ったので、今はそこに投げるだけで大丈夫。


『ヴィオ、そっちは見えてるか?』


 ヴィオに確認を飛ばす。


『はい、でもかなり重たいデータなので大変です』


 ヴィオの情報処理能力でも、この規模のシステムは閲覧するのは一苦労か。

 この辺は要改善だな。


『無理そうなら更新速度を落とせよ、エリクなら2秒間隔でも対応できるだろうし。 それよりも正常動作が優先だ』


 ”強化情報システム”の動作的に、ヴィオとの情報の共有は重要だ。

 客観視のできる目が2つあれば、把握力に歴然とした差がつく。


『よし、そっちの観測データの取得を開始した』


 俺の中に、ヴィオが取得した階段付近の情報が追加される。

 この部屋の構造上、階段の上が大きな死角になるので不意打ちされる危険があったのだが、これでそれもクリアされた。




 一通り感覚器を設置し終えた後、俺達は崩れた天井が積もり小高い丘のようになっている瓦礫の上に登った。

 ここがこの部屋で一番高いし、見た感じ遺物への影響も少ない。

 モニカが”次元収納”から、俺達の身長の3倍ほどの長さのポール状の物体を取り出すと、瓦礫の隙間に差し込む形で突き刺し、その上部を捻って調整しながら天井に向ける。

 少し膨らんだように大きなポールの上部には、小型ゴーレム用のコアとジェネレータが一式入っていて、モニカが魔力を流して起動すると強い光が天井を照らし、部屋の中が一気に明るくなった。

 ピカティニ先生直々に教えてもらった、”意外と便利なゴーレム機械の応用”である。

 すると下の方に、クレストール先生とアイリスが手持ちの魔力灯を消して、こちらに向かって手を振っているのが見えた。

 モニカが笑顔でそこに向かって手を振り返す。


 強い光で天井が照らされ、手持ちの明かりがなくても本が読めるくらいに明るくなったことで、部屋の構造が一気に(あらわ)になっていた。


『それにしても大きな部屋だな』


 ここから見下ろすと、部屋の全体構造がよく見えた。

 その光景は中々に壮観だ。


ましかく( ・・・・)じゃないんだね』


 モニカが部屋の形に言及する。

 

『台形・・・いやそもそも南北の壁が湾曲してるみたいだな』


 不思議な形と思えば不思議な形だ。

 東側の壁が広く、全体の中心がそっちによっている( ・・・・・)というか。

 少なくとも、この東西の壁には何らかの”差”がありそうだ。

 階段が西側についているので、ひょっとすると東側が祭壇染みた意味があるのかもしれない。


『あとで、クレストール先生に聞いてみるか』

『うん』


 目下の先生は現在、石碑の内容を血眼でチェックしているので話しかけられそうにない。

 明るくなったことで作業性が上がって、テンションも瀑上げって感じだな。

 たぶん話しかけたらキレる。


 そしてその周りをアイリスがウロウロと彷徨いながら、近くの石碑を手元の資料と照らし合わせて確認していた。

 以前に来たときの配置と変わってないか見ているのだろう。

 石碑が動くわけもないが、かなり雑然と並べられているし、半分以上埋まっているのもあるので記録違いがあるかもしれない。


 ただ、この高い位置から全体を確認すると、ある程度の”規則性”は見えた。


『なんか”中心”があるよね?』

『みたいだな』


 下から見たときは完全にランダムに思えた石碑の配置が、上から俯瞰するとある一点を中心に変形した放射線状に並んでいるように見えたのだ。

 ちょうど東側の部屋の膨らんだ部分の中心と重なっているか。


『”花弁”というか、もう少し密度の高いヒダの集合体みたいな・・・いや、全体を一体と見るなら何かの有機的な構造を表してるのかも・・・近い形だと・・・』


 ・・・・・・


『・・・ん? なんか”ムズムズ”するけど、”いやらしい”こと考えてない?』

『か、かんがえてないし!』


 慌てて俺が否定する。

 いや、もちろん考えたけど、さすがに”それ”を気軽に口にするほどアカデミックな裏付けはないし、それなしに口にできるほど俺の神経は太くはない。

 それに”中心”といっても他より少し多めに空間が開いてるだけで、特にそこに何かあるわけでもないし。


 すると今度は逆にモニカの方から変な感情が流れ込んできた。


『うーーーーん・・・・』

『どうした?』


 どうやら俺が石碑の”なやましい配置”に悶々としている間も、モニカは部屋全体をいろいろと見ていたらしい。

 なにか、気になるところでもあるのだろうか?


『なんか・・・へんじゃない? この部屋・・・』


 変か変じゃないかでいえば、そりゃ”変”だらけだけど・・・

 

『変じゃない古代遺跡ってあるのか?』


 俺がそう聞き返す。


『そうじゃなくて・・・なんというか・・・こう』


 モニカが言葉に詰まって、何かを探すように周囲を見渡す。


『上にあれだけ大きめの動物がいたのに・・・ここにはその”あと”がない・・・』


 モニカはそう言うと、石碑の一つの上に付いた”小動物の糞”を睨む。


『ネズミなんかは、かなりノビノビ動いてるみたいなのに・・・』

『そんなもんだろ、単純にまだ見つかって無いだけじゃないか? ほら、ここの階段見つけづらかったし』

『・・・だといいけど』


 モニカはそう言うと、最後に念を押すように部屋全体を見渡した。

 まだなにか引っかかるようだ。

 ・・・妙だな。


 俺は心の中で警戒を強める。

 モニカがここまで言うからには、間違いなく”何か”はあるからだ。

 それが”脅威”かまでは分からないけれど。

 今の所、強化情報システムに反応はない。



 とりあえずの設置物を全て設置し終えた俺達が、瓦礫の斜面をスガガっと滑り降りると、ちょうどそこにアイリスがやってくるところだった。

 

「あ、モニカちゃん。 明かりありがとう」


 そう言って、瓦礫の山の上のポールを指差す。

 するとモニカは嬉しそうに頷いた。


「うん、明るいほうがアイリスも動きやすいでしょ。 安心して、空気はよごさないやつだから」


 そう言って”ドヤ”とばかりに腰に手を当てるモニカ。

 アイリスがそれを見て小さく笑った。


「とりあえず、後で描画魔法で全体を記録するんだけど、それまでは今の作業を続けるね。 モニカちゃん達も今のままお願い」

「わかった。 アイリスは”せきひ”の場所を確認してるんだよね?」

「うん、そう」


 アイリスがそう答えながら、近くの石碑と照らし合わせて資料にチェックを書き込む。

 資料の書き込みを見た感じ、問題はなさそうだ。

 まあ、石碑が動くはずもないからな。


 するとアイリスがクレストール先生と階段をチラチラ見て、どちらもこちらを見ていないことを確認してから、俺達の耳元に体を傾けて小声で話しかけてきた。


「・・・ねえねえ、モニカちゃん、モニカちゃん」

「どうしたの?」


 その不審な様子にモニカが怪訝(かいが)する。

 するとアイリスは予想外のことを聞いてきた。


「あの子・・・エリク君だけど・・・随分仲良さそうだよね?」


 その言葉の意味を理解できなかったモニカが一瞬キョトンとしてから、なお理解できなかったらしい台詞を返す。


「うーん、どうかな? まだ、ときどき変になるし、”お風呂いっしょに入ろ”って言ってもいやがるから、そんなでもないと思うんだけど・・・」

「え!? そんなことしてるの!?」


 まさかのモニカの返答にアイリスが驚いて、小声で叫ぶ。

 その音に一瞬だけエリクが階段から顔を出したが、すぐに俺達の駄話だと思ったようで顔を引っ込めた。

 2人でそれを見てから、モニカが答える。


「・・・いや、だからしてないって・・・でも、へん?」

「変というか、えっと・・・」


 アイリスはそう言うと、もう一度エリクの方を見てから更に小声で言ってきた。


「私てっきり、モニカちゃんは”ルーベン君狙い”って思ってたから」

「え?」

『・・・!?』


 なんですと!?

 いやいやいや・・・さすがに、それは想像が飛躍しすぎだろ。


 アイリスのまさかの言葉に俺は大いに驚く。

 だいたいルーベンに失礼だろう。

 あっちは”公爵家”の息子、モニカの事なんてしょっちゅう噛み付いてくる猛獣と怖がってるだろうに、そんなのとの浮ついた噂を立てられてはたまらないに違いない。


 ただ、当のモニカはなんともピントのずれた理解をしているらしく、


「うーん、ルーベンみたいになりたいなとは思ってるけど、なんでルーベンが出てくるの?」


 そんな風な答えをして、アイリスが逆に戸惑っていた。


「え・・・ええっと・・・モニカちゃんはルーベン君が好きなんだよね?」

「うん」


 その質問の意味も理解してないモニカが、何の躊躇もなく首を縦に振り、それを見た俺が仮想の顔を仮想の手で抑えた。


「ええっと、そんな時に他の男の子仲良くなるのは、どうなのかなーって・・・」

「なんで?」

「ええっと・・・」


 モニカの問にアイリスが逆に口籠る。

 ”馬の耳に念仏”というのは恐るべきことらしい、これではどっちが問いただしているのかわからなかった。

 そしてその反応に、ようやくモニカは自分の理解がうまくいっていないのではと考えてくれたようだ。


『ええっと、アイリスの言ってる”好き”ってのは、”交尾して子供を生みたい相手”って意味だよね?』

『・・・・』


 うわ!?・・・【オートオブラート(自動言語ぼかし)ver.3 Lv.7】の能力が足りなかっただと!?

 これに、どんだけ投資してると思ってんだ!!?

 ちくしょうめ(【警告:制限対象】)! ”う◯こ(【警告:検閲対象】)”やら”ハナ◯ソ(【警告:回数制限】)”に特化し過ぎたか!?


 だが真に恐るべきは、モニカの理解がとりあえず正しい( ・・・・・・・・)ということだ。

 これは俺が下手を打てば、とんでもないことになる。


『まーーーーー・・・そうだな、そういう意味だ。 それでルーベンやエリクは違うだろ?』


 俺が縋るようにそう問いただす。

 だがモニカの答えは無情だった。


『そうでもないよ。 レオノアさんとかの方がいいけど』


 あー、うん、えーっと、あーーーー・・・・


 いつのまにか、しかも何故だか俺が、モニカとの”カルチャーギャップ”に磨り潰されそうになっていた。


 それもこれも、”ドラン伯爵”のせいだ!

 やっぱり教育的によろしくなさすぎたんだ! あのデブ伯爵!


 と、俺は責任転嫁と思考放棄のために、実家の近くの中核貴族を糾弾して心を落ち着けようとした。


『いいか? モニカこういう話は、とっても・・・とーーーーーーっても恥ずかしい話なんだ、わかるか?』

『エリクやルーベンが好きなこと? それとも※※(【検閲済】)したいこと?』


 よっし、今度は機能したぞ!

 俺は心のなかで小さくガッツポーズを決める。


『どっちもだ、特に”後ろ”は人前では絶対に口にするなよ! 後で物凄く恥ずかしくなるからな!』


 最近、ちょっと異性を意識して羞恥心を持ち始めたかと思えばこれだ。

 油断できない。


『うーん・・・わかった』


 モニカはそう言うと、なんか謎の動きをして悶ているアイリスに答えた。


「ありがとアイリス。 でも本当にエリクは”仲間”だし、ルーベンは”友達”だから。 だから2人とも”そういう意味”で好きだけど、その、”そういう意味”の好きじゃないから安心して」

「・・・本当?」


 アイリスが謎の動きを、頭を抱えたポーズのところで止めて、若干ジト目でこちらを見ながら確認する。

 するとモニカがわずかに苦笑い気味に答えた。


「本当本当。 ()にはまだまだ”そういう”の早いから。 でも2人とも好きなのは本当だよ? でもアイリスも同じくらい好きだから」


 そう言って恥ずかしげな笑顔を浮かべるモニカの毒気のなさに、アイリスもようやく自分の質問が”早とちり”だと気がついてくれたらしい。


「なんだぁ・・・ちょっとビックリしちゃったよ」


 そう言うアイリスの表情は、いつもの特に特徴のない地味なものに戻っていた。

 どうやら、”そんな話をするにはモニカはまだ幼い”と納得してくれたらしい。

 その事に、俺は仮想の平たい胸を撫で下ろしてホッとする。


 ふぅ・・・


『ずいぶん、色々( ・・)使ったね』


 モニカが表情筋のコントロールを取り戻そうと、舌で内側から頬を突きながらそう言ってくる。


『しゃーねーだろ、それくらい微妙な話なんだ』


 下手すりゃ、全方位に角が立つ。


 なので今のモニカの答えは、所作から言葉まで全部俺が用意した代物だ。

 ちょっと気恥ずかしげな表情も、俺が【表情制御】のプリセットを色々混ぜてでっち上げたもの。

 里帰りの時に作った【社交】スキルも、今ではこんな事ができるまでに進化していた。


『そんな気にすることかな? わたしは気にしないけど』

『来年のモニカは気にしてるよ。 きっと』


 というか気にしてくれないと俺の身が持たない。

 だがそんな俺の心を、モニカは理解してくれないらしい。


『どうだろう、もう子供がいたりして』

『シャアアアアアアラッップ!!!!!!!』


 これは、本格的に”性教育”ならぬ、”性って恥ずかしい教育”が必要かもしれない。


 そして、そんな事を考えていたせいだろうか。

 俺の中に、”とある通知”がデカデカと表示された。


『うん? あ・・・』

『どうしたの?』

『いや、特に大したことではないんだが・・・・』


 いや、ある意味で”物凄く大したこと”ではあるのだけれど・・・

 俺はモニカの感情の状態を見ながらしばし考える。


『・・・・・なんでもない、気にするな』


 バイタルに変化はないし、後で言おう。

 どうせ今は気にすることじゃないし。


 ただ、”模倣品”でもちゃんと機能するもんなんだな。

 それだけは、ちょっとだけ感慨深かった。






 それからしばらくの間、俺達は特にすることもなくただ2人の護衛対象が作業をするのを見守っていた。

 とはいえ、今日の作業は何かの危険を伴うものではないし、なにかの変化を伴うものですらない。

 時々クレストール先生が小走り気味にロメオに駆け寄り、なにかの資料を漁っているくらいか。


 唯一の入り口である上の階への階段はエリク・・・というかヴィオが完全に抑えていた。

 何回か、上の階に討伐に行っていたので完全に安全ではないだろうが、彼等がいる限りこの部屋の平穏は保たれるだろう。

 いつしかモニカも、巡回の制御をほぼ全て俺に投げて魔力回路の宿題を始めたくらいだ。

 呑気なもんである。

 俺は俺で、見回りに石碑の自力での翻訳に挑戦してるのだけど。 


 オートで解析をかけているので内容は飛び飛びだが、どうやらこの石碑の文字は幾つもの言葉で書かれているらしい。

 他の場所で見つかった石碑を集めたんじゃないかって言ってたからな。

 下に載っている”訳文”との整合性を考慮すると20種類はありそうだ。

 これは、訳文の方を訳したほうが賢明だな。


 とはいえ、どうも訳文も”原典”を訳しきれてはいないようで、ところどころ抜け落ちていたり、支離滅裂なことを書いている部分も散見される。

 技術関連とか酷いので、”先史時代”というのはやはり相当発展していたのだろう。

 なになに・・・


『お、面白そうなこと書いてるな』


 ようやく訳文が上がってきた石碑の一つに俺が興味を持つ。

 するとそれまで宿題の紙に目を落としていたモニカが視線を上げる。


『なんて書いてあったの?』

『細い管・・・たぶん”ナノサイズ”の、魔力回路の合成方法っぽいな・・・だが、”なにか”に絡めるっていうのがよくわからんな・・・うーーーん、あ、注釈にも”不明”って書いてあら・・・』


 どうやらここを作った古代人も匙を投げたらしい。

 こうなりゃ原典の本文を訳すしか無いが、見た所、訳文以上の内容が読み取れるまでは相当時間がかかりそうだ。

 興味を失ったモニカが手元に視線を戻す。



 そんな風に俺達が時間を過ごしていると、いつの間にか、その足がまるで吸い寄せられるように石碑の並びの”中心”に向いていた。


『やっぱり、ここだけちょっと広いね』


 モニカが両手を広げてそう言う。

 その場所は中心に立つと、一番近くの石碑まで5(ブル)はあった。

 著しく大きな空間ではないが妙に広い。


 それに、ここに立って初めて気づいたが、ここからだと上手い具合に石碑の隙間が重なり、全ての石碑が一望できるではないか。

 そしてその事に、モニカの警戒が若干強まる。


『ロン・・・なんか、ちょっと怖い( ・・)ね』

『そうか? 脅威に繋がりそうな要素は見当たらんが』


 確かに、全ての石碑が一望できるその光景は異様を通り越して、少し気持ち悪く、何かの結界に飛び込んでしまったような違和感があるが、それは想像以上にこの部屋が精密に作られていることに気づいたからにすぎない。

 いうなれば、俺達が古代人を少し馬鹿にしていただけのこと。


 どうやら”先史文明”と比べれば酷くとも、今と比べるなら”第一社会文明”の建築、測量技術は捨てたもんじゃないようだ。

 まあそれは、上の”大廊下”の巨大な柱を見れば当たり前なんだけど。



 すると、また近くにアイリスがやってきた。

 たまたま彼女の”チェックコース”と被ったようだ。


「あ、モニカちゃん。 何か気になることでもあった?」

「ここ・・・この部屋の”ちゅうしん”なの?」


 モニカが今、自分の立っている地面を指差す。

 するとアイリスは、少し関心したような表情になった。


「あ、わかる?」

「やっぱり、ここが”まんなか”なんだ」


 モニカがそう言って、足元の地面を軽く足でならす。


「うん、先生たちも、ここには何か意味があるんじゃないかって。 ここだけ全部の石版が見えるでしょ?」

「うん、ビックリした」


 モニカがそう答えると、アイリスがすぐ近くに来て周囲の石碑を指し示していく。


「それにこの近くの石碑は、”先史時代”に最も影響力のあった”神話”が並んでるの、たぶんここはとっても神聖な場所なんだと思う、上の見える?」

「うーーん?」


 2人して天井を見上げる俺達。

 そこには、俺達が設置した魔力灯に煌々と照らされる天井が見えた。

 かなり高い天井だが、こうして見上げると実際以上に遠く感じるな。

 それにかなりの部分が崩落してわかりにくいが、なにやら模様のようなものが彫り込まれているか。


「あの天井の模様の”中心”が、ちょうどこの真上なんだって」

「あれは、何の模様?」

「さあ、それは調査中。 先史時代の天井なんかによくみる模様なんだけど、それが何の意味を持ってるかは、まだハッキリしないんだって」

「へえ・・・・」


 モニカが頭を横に捻るようにして見える確度を変える。

 そんな事しても形は変わらんだろうに。


『なんに見える?』

『さあな、魔法陣っぽくもあるが・・・あれじゃ機能しないし・・・・』


 よく見れば、天井の中心部は少し下向きに盛り上がっているか。

 あれは何を意味してるんだ?


 俺がそんな事を考え、自分の集中をその天井に向けた・・・ 




 その時だった。



 不意に、頭の中に”激痛”が走る。



「「「『『!!!!????』』」」」


 突如の激痛に、俺達の顔が苦痛に歪んだ。


 なんだ!? ”力”の暴走か!?

 俺は咄嗟に、最近すっかり大人しくなった自らが内包する”呪い”の暴走を危惧した。

 その”きっかけになりうる材料”もあったからだ。


 だが、前を見ればアイリスも同じように苦悶に呻いているではないか。

 更に後方視界で、同様に顔をしかめるクレストール先生とロメオの姿が。

 俺達だけではない!?


「・・・ぅうっああああああ!!!!」


 痛みにモニカが叫ぶ。


『何だこりゃ!!??』


 頭の中を割れるような痛みが駆け抜ける、まるで魚が何匹も脳味噌に潜り込み食い荒らしているみたいだ。


 その痛みは、”音”だった。


 そしてその”音”は、”言葉”だった。




「『 ”対象者”の接近を確認 』」




 とんでもない音量で頭の中に響き、そのあまりの迫力に、俺達もアイリスも、遠くに見えるクレストール先生までもが、咄嗟に両耳に手を当ててその場にへたり込む。

 アラン先生みたいな”精霊”が発する声と同じように頭に直接鳴る不思議な声だが、こっちは遥かに”暴力的”だった。




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