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 モニカの奇妙な相棒 ~ 最強スキルは、俺自身!? ~  作者: マカルー
第二章 モニカの奇妙な学園生活
253/426

2-9【アクリラ大祭 2:~祭りの開会式~】



「あー、なんとか間に合った!?」


 広場の様子が見えてきたところでモニカが漏らすようにそう言った。

 開会式の会場となる中央広場は、いつもの品の良い公園という様子は完全に消え失せ、凄まじい大観衆で溢れかえっていた。


『まだ式典は始まってないみたいだな』


 広場の奥に設置された演壇の上を見てみれば、まだなにかしかの催しが始まった空気はなく、出席者と思われる身なりの良い者たちが用意された席に順番に座っているところだった。

 ”体内時計”と予定表を突き合わせれば、ちょうど5分前というところ。


『ギリギリだな』

『アドリア先輩も出席者で良かったよ』


 でなければ、”あの要件”ですぐに帰してくれることはなかっただろう。

 壇上を見れば当たり前のような顔でそこに立つ青髪のドワーフ少女の姿が。

 だが俺達が必死に馬車と人で溢れかえる車道を駆け抜けて来たというのに、明らかに俺達より後に出たあの人が余裕を持って汗1つかかずに先着しているのは、なんか納得いかないのはなぜだろうか。

 やっぱ、飛べるのは大きいな。

 早く”免許”取りたい。

 その先輩は、俺達に見せた悪魔のような笑みを完全に隠して、他の同席者に挨拶している。


 列席しているのはアドリア先輩の他に、生徒代表と思われる商人学校の生徒が1人、後は校長とスリード先生の管理者2人と、たぶん商人学校側の同格と思われる教師が3人、それとよく分からないが身なりの良いのが5人・・・街の有力者とかかな、そして形の違う軍服を着たのが2人・・・あ、今4人になった。

 最後に入ってきて皆に挨拶してる軍服の2人はマグヌス軍の人間だ。

 しかもたぶん将軍クラス。

 大丈夫だと思うが、あれには気をつけないと。


『ねえロン、あのマグヌスの軍人さん』

『ああ、気をつけないと・・・』

『そうじゃなくて・・・』

『うん?』


 モニカが眉間に皺を作りながらその将軍を見つめる。

 だがその状態はすぐに解かれた。


『あ、気のせいだと思うから・・・気にしなくていいよ』

『なんだ? その反応』

『なんでもないから!』


 そう言って誤魔化す様にモニカが髪を撫で付ける。

 なんだろうか?

 その反応が気になった俺は、モニカに内緒で髪留めの感覚器に【望遠視】を掛けてその将軍の顔を鮮明に記録した。

 今度、スコット先生辺りに聞いてみよう。


 しかし壇上に並ぶと体格の差が凄まじいな、スリード先生ともう1人、アリクイみたいな顔の人(というと語弊があるが)が図抜けて大きく、2人でスペースの8割を使っている。

 流石に慣れたので10mくらいなら街を歩いていても気にしないが、こうして並んで座っていると違和感が凄い。

 それにしてもアラン先生の姿が見えないのはどういうことだろうか?

 あの人の”格”的に絶対呼ばれてそうなのに。


 それから俺達は、準備が進む前方に急かされるように、先に来ているはずのベス達を探して群衆の中に視線を泳がせた。

 やっぱりここで現地集合はまずかったかもしれない。

 ここまで混むとは思わなかった。

 そりゃ、生徒や街の住民はあまり来たがらない筈だ。

 周りを見回しても、魔法学校、商人学校問わず制服を着た者は少ない。

 人口比率こそいつものアクリラだが、来ている服装の色の地味さから、この街の住人は少ないだろうことが伺える。

 つまり外から祭りにやってきて、とりあえず一番最初に開会式を見に行っておこうという連中だろう。

 俺達みたいな。


『どこにいるか分かる?』

『ちょっとまってな、流石にこう人が多すぎると判別がつかん』


 時間的にそれほど前にはいないはずだ。

 最前列とかは数日前から並んで抑えてる連中がいるからな。

 だが、そうはいってもそこはミーハー向けイベント、始まる数分で一気に人が増えている可能性もある。

 となれば、真ん中あたりを見たほうがいいのかいいかもしれない。

 俺は必死に視覚情報の中から該当しそうなものを絞り込んでいく。

 ええっと背の低いベスはロメオの背中から降りていない可能性が高いだろう。

 つまり、小柄な人間が列の中で浮いて見える箇所を重点的にチェックすればいいはずだ。


 すると俺がそう意識した瞬間、人が多すぎて平板な印象の視覚情報が一気に絞り込まれ、数十箇所の小柄の人物が浮かび上がった。


『あ、見えた!』


 モニカがそう声を上げる。

 これはモニカの視界にも反映しているので同じ光景が見えているはずだ。

 しかもその中から更に絞り込んだらしい。


『あの左の真ん中らへん』


 と広場の一点を指したのだ。

 視界を共有しているメリットとして、こういう時どこを指さしてるのか迷わないで済む。

 そしてそこには非常に分かりづらいながらも、確かに見慣れた緑色が小さく見えた。


『あ、あそこか!』


 この辺の最後の絞り込みの能力は流石モニカだ。


 そのまま俺達は人混みに割り込みながらその場所へと歩みを進める。

 だがその瞬間、突如としてボルテージの上がった観客が一斉に前に寄りながら背伸びをした。

 背の小さなモニカの体が、その人のうねりに飲み込まれ視界が真っ暗に染まる。


『な!? なに!?』

『式典が始まったみたいだ、みんな前に気を取られてる。 気をつけろ、踏み潰されちゃかなわん』


 なるほど、生徒の参加が少ないもう一つ分かった。

 どれだけ強かろうが子供の体でこんな場所に来るのはゴメンだ。

 式典が始まったみたいだが、覆い被さる大人達のせいでどんな内容かなんてちっとも見えない。


『どこにいけばいい!?』

『おちつけ、向きはあってる』


 ベスの姿は見えないが、この程度俺の”完全記憶マップ”を利用したマッピングがあれば迷いはしない。

 この人の動きの中でその場所にとどまっているか怪しいが、とにかくその場所に向かうのが先決だ。

 その時、俺は自分の中にふとした不安が広がるのを感じた。


『あ、』

『どうしたの?』

『ロメオ、暴れてないだろな・・・』


 最近のあいつの筋力考えたら、この群衆の興奮に当てられて暴れたらエライことになるぞ・・・・

 

『大丈夫だよ、ロメオはベスと一緒だし、アクリラにも慣れてるから』

『慣れてるからって・・・・』

『あの子を信じてあげて、今は・・・それよりもっ!』


 モニカが俺にそう答えながら、俺達に向かって倒れてきた人物を腕で押し返す。

 たしかにそれどころではない。

 だが、ロメオが慣れてるからって、この喧騒は無理だろ。

 俺は口にこそ出さないがそんな思いを抱えながら、それでも前にベスの姿を見た地点までの方向を示し続ける。

 

 ただモニカがそれに従って動くにはかなりの困難を伴った。

 人の波を押しのけることは簡単なのだが、1人押し退けても、すぐに他の人間が押し寄せてくる。

 もういっそ吹き飛ばしてやりたいところだが、そういうわけにも行かない。

 それでもモニカはその中を必死に動いていた。

 もはや”歩く”というより”泳ぐ”の方が近い。


 だが数十m進んだところで、ついにその動きも完全に止まってしまった。

 4mはあろうかという皮膚の硬い亜人種の集団に挟まれてしまったのだ。

 触った感じはもはやコンクリート。

 怪我をさせずにどかすことは出来ない。

 そして回り道しようにも、これを迂回する余裕は・・・


「お、おいおいなんだ!?」


 そのとき、亜人達が何事かに慌てながらざわめき出した。

 モニカがそれに押されまいと踏ん張っていると、突然人の波が大きく割れ、そこから見慣れた細長い顔がニュッと突き出される。


「キュルル?」

「ロメオ!」


 どうやら俺たちの接近を感じ取ったロメオが、こちらまで迫ってきたらしい。

 小柄な俺達と違って大柄な彼なら押しのけるのも幾分楽らしい。

 それでも亜人たちに比べればかなり小さいのだが。


 見れば背中の上でベスがしきりに周りの者に謝っていた。

 そしてその顔が俺達を見つけると、安心した様に明るくなる。

 どうやら心配させてしまったらしい。

 モニカはロメオの顔をよくやったとばかりに撫で回すと、そのまま脚力だけでジャンプして背中に飛び乗る。


「ごめんね、遅れて」


 正面から飛び乗ったので向かい合わせで座る事になったモニカが、ベスにそう謝る。


「いえ、モニカ姉さまが悪い訳じゃないですし」


 そうだベス! 悪いのはあの極悪生徒会長(アドリア先輩)だ!


「それに丁度、式典が始まりましたよ」


 そう言ってベスが壇上を指差すと、列席者が全員起立してこちらに礼を送っているのが見えた。

 どうやらこの狂乱は式典の開始の宣言によるものらしい。



 開会式は意外にも粛々と始まった。

 まずは主要関係者による挨拶と、祭り関係者や参加者、やってきた旅行者に向けた感謝などが主なものだ。


「あの人が、アクリラの市長さんです」


 ベスが今挨拶している人物を指差す。

 この祭りの慣習なのか、挨拶しているのが何者なのか名乗らないのでありがたい。

 市長はこう言っちゃ何だが普通の老人だった。

 あ、いかん。

 この街に住んでると、種族以上の特徴って印象が薄いんだよな・・・

 観客も誰が誰か把握していないのか反応が少ない。

 そりゃド派手なスリード先生の後だからね、今日は高そうな服を着てるのでかなり品が良く、観衆の受けが良かった。


 しかし招待客の紹介もないのはちょっと困ったな。

 あの気になるマグヌスの将軍2人の名前もわからない。

 どちらも身なりは大変良く、50代くらいだろうか? それなりの歳なのに全身から滲み出る覇気は若々しい。

 ひと目見ただけで分かる、”やばいやつ”だ。

 片方なんてスコット先生とか、グリフィス先生とかと”同類”の空気を感じる。

 これだけの祭りの中で何かできるとは思わないが、できるだけ避けないと。


 式典は次に、この祭りの概要とその歴史の説明に移った。

 司会はベスに市長と呼ばれた老人だ。

 その声は慣れたもので、毎年やっている事が伺える。


 するとその時、広場の上空に七色の光が現れ、それが形取り始めた。


 現れたのは広大でなにもない大地、その立体映像だ。

 歴史の授業なんかでよく使われる光の魔法だが、やはり初めて見るものが多いのだろう、それが現れただけだというのに、観客が一斉に息を呑んで感嘆の声を上げた。


 話は続く。


 曰く、”最初の人々”と呼ばれた者達がこの地にやってきた時、最初に”車輪”を作ったという。

 車輪は人々を繋げ、多くの者達が広大な範囲に進出した。

 だがそれも川や海に阻まれる。

 次に人々はそれを乗り越える”船”を作った。


 すると今度は障壁だった川や海が、より強力な繋がりとなり、人々の輪は大きくなる。

 そして”船”と”車輪”の交わる場所には人々が集まり、それはやがて巨大な交易都市に発展していった。


 ある時、”漁師のユミル”は偶然大河の支流が集まる場所を見つける。


 それは途轍もない大発見だった。

 すぐに多くの者がその場所を通って”新たな世界”に旅立った。

 そしてすぐに”新たな世界”は”こちらの世界”に変わる。

 様々な種族、様々な言葉、様々な価値観が好奇心という名の力でもって混ざり合い、その”中心部”を通った。


 人々は”中心部”で待った。


 この場所で待てば新たな”物”に出会える。


 この場所で待てば新たな”文化”に出会える。


 この場所で待てば新たな”価値”に出会える。


 多くの”無能”や”ゴミ”がこの場所で、”天才”に、”黄金”に替わった。


 様々な価値がぶつかり合い、様々な色がぶつかり合うその場所はやがて”虹の街(アクリラ)”と呼ばれる様になる。



 その時、頭上の光が一斉に消え、昼間だと言うのに広場が闇に包まれた。

 群衆達が戸惑いの顔を周囲に向ける。


「・・・どうしたんだろう?」

『装置の故障か?』


 俺とモニカも周囲を見回しながらそう呟く。

 するとベスの鋭い声で注意された。


「しーっ! 今から良いところですよモニカ姉さま」

「あ・・・うん」


 珍しいベスの叱責にモニカが面食らっていると、すぐに群衆の一部がざわめき出す。

 見れば広場の後方付近の空が妙に明るくなっていた。

 俺達がなんだろうかとそこに視線を向ければ、その光が次第に強まり、最後にその中心に円状の物体が形つくられる。

 と同時に、周囲のざわめきが、轟音のような歓声に変わった。

 その音量に思わずモニカが耳をふさぐ。

 そしてその歓声は次第に1つの”単語”に変わっていった。


「「ギリアン! ギリアン!」」


「なに!?」


 モニカがベスに向かって叫ぶ。

 こうでもしないと掻き消されるくらい、歓声は大きかった。


「ギリアンです! ”力の王:ギリアン”!」


 ベスが答えを叫ぶ。

 それを聞いたモニカが瞠目した。


「あれが!?」

「魔力で光らせてるだけですけどね!」


 なるほどあの”光の円”は、”力の王”を模しているらしい。

 だが作り物とはいえその出来は凄まじく、他のものになど視線がいかないほど強烈な存在感を放っていた。

 あれは”王”というよりはもう、何かのエネルギーの塊を表現しようとしているのではないだろうか?

 少なくとも何か知性を感じさせるようには思えない。


 だがその光に向かって1人の人間が歩いている様子が見えた。

 そこへ向けてモニカが視線を上げる。

 位置的に空中を歩いてることになるが、どうやら立体映像のようだ。

 そして再び市長の言葉が始まった。


 現れたのは1人の名のない少年。


 そして彼の前にはいくつもの光が現れた。

 少年と”力の王”の間に現れた光は全部で6つ。

 全て違う色で、全て魔力傾向と同じ色分けだ。


 少年は光に辿り着く度に光から攻撃され、膝をつく。

 だが、それでも歩みを止めない彼に光は頭を垂れ、その周りに漂い始める。

 それと同時に、そういう演出なのか少年はどんどん成長していった。


 そして最後に”力の王”の光に達したとき、そこに手を伸ばし・・・その手を途中で止める。


 驚いた事に、光から振り返った少年は・・・・荘厳な空気を纏う大人に変わっていた。

 だがその体は驚くほど生物的な特徴を失っている。

 髪はなく、顔立ちに性別を感じず、筋肉などは不自然になく、全身の何処を見ても”人類種”以上の特徴を見いだせない。

 それでも、その姿はその場にいた全ての者の心を掴み、畏怖させた。


「聖王さまあぁぁ!!」


 向こうの方で誰かが叫んでいる。

 そうか、これが”聖王”か。

 となれば、周囲に浮かぶ6つの光は、彼の”6人の従者”の暗喩だろうか。

 俺はミリエスの”結界祭”でやった”黒の従者役”のことを思い出し、”聖王”の周りを回る光の中で、特に黒く光る1つに強い共感を覚えた。


 そして聖王は光を伴いながら、広場上空までゆっくりと歩く。

 するとその後ろから光が広がり、同時に聖王の体がゆっくりと透明になっていく。


 最後にその場所に到達したとき、”聖王”は自分の周りに並ぶ光達になにか言葉をかけた。


 するとその瞬間、聖王の体と一緒に光達は一斉に飛び散り、上空に先程まで描かれていた広大な大地が再び描写される。

 そしてその大地を、先程までなかった凄まじい光の”流れ”が埋め尽くした。

 その流れはそれまでの”車輪と船”による交流をさらに広げ、大地の隅々まで広がっていく。

 そしてその”中心地(アクリラ)”の周りには、まるで渦のようにその波の勢いが押し寄せ、その光が次第に大地を飛び越え、広場の上空一杯に広がった。


 その時、俺達を含め観客全員の首が上を向く。


 まるで台風のような渦の中心から、1つの光が降りてきたのだ。

 その光は明らかに白く、そして何故だかわからないが・・・悲しみに震えていた。


 白い光はゆっくりと広場の前方に移動する。


 そこには、いつの間にか舞台のような空間が用意されていた。

 白い光はそこに静かに着陸すると、震えるように光を明滅させる。

 やはり悲しんでいたらしい、そういう解説が入った。

 だが、何を悲しんでいたのだろうか?


 するとそこに奇妙な姿の”影”が現れる。


 観衆達が息を呑む声が聞こえた。

 無理もない。

 モニカもその姿を見ただけで身を縮こませる程、おどろおどろしい姿をしていた。

 その影からは腕のようなものが何本も伸び、光の周りを取り囲む。

 だが光を飲み込むことはしなかった。


 影は光に問いかける。


「光よ、なぜあなたは泣いている?」


 すると光は影に答えた。


「影よ、私達は”価値”を失ってしまった。 もうここにいる意味はない。 ”あの人”も、”みんな”もそれを悟って消えてしまった」

「ああ、光よ。 そう悲観してはいけない。 君にはまだ”価値”があるんだから」

「影よ、私は”王”に貰った力を全て撒いてしまった。 そんな私に”価値”がまだあるというのかい?」

「いいや、”その価値”はもう君には残ってない。 だが、その代り新しい”価値”を見つければいいのさ」

「新しい”価値”?」

「そうさ、ここは”アクリラ”、全ての者が”価値”を見つけることが出来る場所だ」

「闇よ、それは本当ですか?」

「本当さ。 だが光よ、心せよ、この場所で”価値”を見つけられなければ、待っているのは本物の”闇”だ。 私なんかよりもっと恐ろしい・・・本当の”虚無”」


 闇がそう言うと、光は恐怖で僅かに身を引いた。


「ど、どうやれば”価値”は見つかるの?」


 光が恐る恐るそう問いかける。

 すると闇が僅かに蠢き、その中に俺は”笑顔”のようなものを見たような気がした。


「学びなさい、それから考えなさい」

「それで見つからなければ?」

「また学びなさい、それから考えなさい」

「何を学べばいいの?」

「それは君が決めることさ、私は知らない。 だが”学ぶ物”を与えることは出来る」

「本当に?」

「ああ、そうさだって私は”アクリラ”、この街の全てだから」


 そういうと闇の一部が腕のように伸び、それに反応するように光が伸びる。


「これから私は君に”世界”を見せよう」


 闇がそう言うと、上空の立体映像いっぱいに様々な種族の映像が数え切れないほど大量に、そして次々に映し出される。


「”知識”を見せよう」


 すると今度は様々な技術や学問・・・それを書した文字や、イメージが浮かび上がる。


「”物”を見せよう」


 次に現れたのは、世界中の様々な物品、見知ったものもあれば、何なのか想像もできないようなものもある。


「さあ光よ、”価値”を探そう」


 闇がそう言うと、光は少しの間迷うように明滅してから闇のその”手”を力強く握った。


 次に起こったことを表現するなら、”爆発”だろうか?

 上空の立体映像が、凄まじい勢いで切り替わり、それが混ざるように次に繋がる。

 下を見れば、手を取り合った”光と闇”がトグロを巻くように混ざり合い、それが次第に別の形に変わっていく。

 最後に現れたのは、何人もの”光の精霊”だった。

 ある者は人の形、またある者は獣の形、またある者は単純な立方体といった具合に、全員が違う形とっている。

 そして俺は、それが”全部で1人”であることに気がついた。

 しかも見知った存在だ。


「『皆のものよ! 今年もよくこの街に集まってくれた!』」


 その白の精霊、”アラン先生”はいつにも増して荘厳な声で広場にいる全員に語りかけた。


「『これからこの街で、皆が持ち寄った”価値”を存分に披露するとよい。 そしてその中に、誰かが新たな”価値”を見出すものがあることを願う!』」


 精霊であるアラン先生のその言葉は、その場にいた全員の心に直接語りかけられた。


「『”価値”を探す者よ、期待するがよい! この街は、そなたらの期待を決して裏切らない。 それはこの私・・・光と闇の化身・・・白の精霊である、この”アラン・キルヒ・アクリラ”が保証しよう!』」


 アラン先生がそう言うと、それに応えるように広場いっぱいの大歓声が轟いた。

 それをアラン先生が満足そうに見渡す。

 その迫力は完全に”精霊”のそれであり、いつもの優しげな彼とは雲泥の差がある。


「『さあ・・・これより、”ミルス・アクリラーレ”の始まりである!!』」



 そしてアラン先生のその”宣言”によりアクリラの1年は幕を下ろし、また新たな1年に向けて”狂乱の祭り”の期間が正式に始まったのだ。



”長くなったので半分カット”の発動により、夜にもう1話更新します。

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