2-8【決意と選択 5:~血の繋がり~】
「今日明日とはいかないが、半年はいらない」
ガブリエラが提示した期間は、予想以上に短いものだった。
「どうやって?」
モニカが問いかける。
とてもじゃないが、そんな短期間でマグヌスを納得させつつ自由に動ける様になるとは思えない。
「”今は”、まだ言えない」
だがガブリエラの口からは、明確な返答がない。
「なんで?」
モニカが更に問う。
「そなたは・・・そなたはまだ、”己の心”を塞ぐ事ができない。 故にそこから漏れる恐れがある。 分かってくれ」
ガブリエラはそう答えた。
その表情は痛々しい苦痛を浮かべていて、その瞳は誠実そのものに見える。
だがそう判断するわけにはいかなかった。
「その言葉を信じる根拠はなんですか?」
堪らず俺がそんな質問をぶつける。
『ロン?』
「自由をくれると言いましたが、それがどの様なもので、どうやって創り出されるかも分からない。
もっとおぞましい条件・・・例えばあなたの”奴隷”にされない保証はあるんですか?」
言葉に少々棘が出てしまい、その事に少々肝が冷える。
「やめろ、王位スキル保有者を奴隷化など冗談でも言うな。
想像して肝が冷えたではないか」
ガブリエラはそう言いながら、心底恐ろしいことを想像したと言わんばかりに、わざとらしく体を震わせる。
だがこれを妥協するわけにはいかない。
「それを聞かなきゃ納得いかない。 モニカの命は預けられないです」
「なるほど、たしかにその通り。 だがこれは事前に漏れれば、一気に流れかねん話だ。
その情報管理には万全を期さなければならない。 そして私にはその状態で、そなた等に伝える方法がない。
故に、私を信頼してくれと頼むしかできないのだ」
そう言うと、驚いた事にガブリエラは頭を下げた。
部屋の中が俄に色めき立ち、侍従たちがどう反応すべきかと凍り付く。
「正直なところ、問題がないわけではない、ややこしい力関係に組み込まれる事にもなるし、長期的に見ればこれも時間稼ぎだ。
だがそれでも、奴らが提示した話を今飲むよりも”選択肢”は多いし、窮屈な思いもしなくて済むようになる。
そして何よりアクリラの外を、完全に自由とまではいかないが、それなりに動き回る事も可能だ」
ガブリエラは下を向きながらそう言った。
そして俺は、それが今俺達に話していい限界である事静かに悟る。
「なんで・・・そこまでしたいんですか?」
だが俺はなおも問いかけを続ける。
モニカのために、あえて買った”汚れ役”だ。
中途半端で終わらすわけにはいかない。
「”借り”があるからだ」
それは知っている。
「そうだとしても、普通の人はそんなに必死にはなりませんよ?」
「私は”普通の人”ではないからな」
ガブリエラはそう答えると再び顔を上げてモニカを見つめた。
それに対しモニカが静かに呟く。
「”王女様”・・・だからですか?」
「それもある、同じ苦しみを持つ者としての同情もあるだろう」
そう言ったガブリエラの顔が僅かに苦げに歪む。
だがそれで言葉を緩める訳にはいかない。
「それをどうやって信じればいいんです? あなたはどこまで行っても雲の上の王女様だし、俺達はただの小娘だ。
他人である俺達が、”借り”だけで敵対している勢力の王族に言葉に、将来を乗せる訳にはいかない」
「”他人”じゃないさ・・・”繋がり”はある」
「繋がり?」
その時、その場にいた全員が驚愕に顔を染める事が起きた。
ガブリエラが俺達に抱きついたのだ。
「”あの時”・・・そなたと繋がった事で分かった事がある。 私は愚かだった・・・モニカ、そなたは私の”親類”だ」
「え?」
『ちょっ・・!?』
突然の出来事にモニカが驚きの声を上げ、そこに俺が続く。
「だが私以外、誰もそなたを認知しないばかりか、過去の汚点としてどう処理するかばかりにとらわれている。
私が助けねば、誰が助けるというのだ」
その言葉には強い憤りや不満が滲んでいた。
だが何より驚いたのは、その声が震え、顔には涙が浮かんでいたのだ。
「で、でも、わたし・・・”ツクリモノ”だし・・・」
慌てたモニカがそう指摘する。
だがその瞬間、俺たちを抱きとめるガブリエラの力が強くなり、その言葉は途中で打ち消されてしまう。
「言ったであろう、”血の繋がり”は”理屈の軛”から外れた存在だと。
作り物が何だ。 ならば何が”正当”なのかそなたは本当に説明できるのか?
自然に生まれようが人の手で作られようが、そなたが”愛”故に生まれたことに代わりはないだろうに。
そんな事すら、モニカと魔力を交わすまで気づかなかった自分が、憎らしい」
ガブリエラはそう言うと、縋るように俺達の制服の袖を掴んだ。
そして、もうこれ以上言うことは何もないとばかりに、口をぎゅっと結び、俺達の反応をじっと待つ。
その顔には、僅かばかりだがこれまで見たことがない彼女の”恐怖”が滲んでいた。
きっと誰もこんなガブリエラを見たことはないだろう。
ルシエラなど、きっと言っても信じないに違いない。
さてどう答えたものか・・・
正直なところ俺の答えは決まっていた。
強くなるまで待つか、マグヌスの好意を当て込んで条件を飲むか、ガブリエラの話を受けるか。
すべて看過できぬ欠点を含んでいるが、その中で受け入れられる欠点なのは一つだけ。
『モニカ・・・どう思う?』
だが結局の所、すべてを決めるのはモニカだ。
それはあらためて言うことではないし、今のモニカの考えは俺と一致するという”確信”もある。
ただそれでもモニカはしばらくの間、答えることはなかった。
そして俺は、自分の中をモニカの暴風のような感情が吹き荒れるのを静かに見守る。
「わたし・・・誰かと繋がってるの?」
ようやくモニカの口から出てきたのは、そんな言葉だった。
それに対しガブリエラは優しげな声で諭すように言葉を絞り出す。
「誰とも繋がっておらぬ者などいない。 みんな誰かの繋がりとして生まれ落ち、死や別れがそれを遮ろうとも、決して失われることはないのだ」
「・・・”作り物”の命でも? 誰かのまねっこのわたしでも?」
「植物の中には、己の腕を切り飛ばし新たな生命とするものもいる。
魚の中には別種の卵を乗っ取り、己の種に作り変えるものもいる。
寄生虫の中には、宿主の体を自らを複製するための工場にするものだっている。
奴らは正当に生まれたわけではない。 だがその”命”は本物であろう?
ならば誰かが誰かを模して生命を作り上げても、その命は本物だ」
「ガブリエラは気にしない?」
「私がそんな”些事”を気にする様な、小さな女に見えるか?」
ガブリエラはそう言うと、一旦モニカから離れて巨大な胸を張る。
そうすると、まるでその胸の巨大さが説得力の大きさように見えるから、なんだかおかしな気持ちになってしまう。
そしてガブリエラはその姿勢のまま話を続けた。
「よいかモニカ。 誰がどのように作ろうと、そなたは”そなた”でしかない。
もう”製作者”がどのような”存在”になるかを決める段階は終わっている。
誰かの複製ではない、”自分”としての自覚を持って生きよ。
私と”血の繋がり”を持った、”モニカ”として生きよ」
「ガブリエラとの”血の繋がり”?」
「愚か者が複製品と呼ぼうが、そなたには私と同じアイギスの血が流れておる。
だから私もこれからは・・・いや生まれたときから私は、モニカと血の繋がりを持ったガブリエラとして生きる。
もしこの”誓い”に異議を唱える者がいても耳は貸さん。 この手で捻り潰してくれるまでだ」
そう言うとガブリエラが腕を振り上げ、拳を強く握りしめる。
するとその瞬間、”パン!”という乾いた破裂音が部屋の中に鳴った。
なんとなくだが今、ガブリエラの手の周りの何もない空間が瞬間的に数億分の1まで圧縮されたような気がしたのだが・・・・
それにしても、何という”ジャイアニズム”か・・・
だがその”ジャイアニズム”は、確実にここ数日モニカが陥っていた己の正体に対する”泥沼”を、跡形もなく破壊していった。
再びガブリエラが俺達の体を抱き寄せると、モニカの目から熱い涙が零れ落ちる。
「私・・・”1人”じゃなかったんだね」
モニカが涙混じりの鼻声でそう言った。
と、同時に彼女の中から大量の感情が一気に吹き出す。
これまで彼女が背負ってきた物、新たに背負ってしまったもの、ずっと”1人”だけだと思っていた世界が、本当の意味で崩れ始めた。
ここで”俺がいるじゃないか”というのは誤った指摘だ。
モニカにとって俺は”内側”の存在であり、どれだけ好き勝手に喋ろうが”1人”の範疇を出ない。
”他人とは違う存在である”
その思いは人の世に降りてきても尚、いやむしろ強く、静かに、それでいて重く乗し掛かっていた。
それが今、ガブリエラという”繋がり”を得て初めて取れようとしているのだ。
「理解してくれたか?」
「・・・うん」
ガブリエラの確認の言葉にモニカが小さく頷く。
同時に俺に向かって最後の確認が飛んできた。
『・・・ロン、この話だけど・・・』
『この話の唯一の欠点は、ガブリエラを信じれるかどうか分からないところだ。 ”そこ”は答えが出たろ?』
『うん・・・ありがと』
『それは俺に言うことか?』
『うん・・・そうだね』
モニカは俺にそう言うと、鼻水を手で拭い、真剣な表情でガブイエラを見つめた。
「ありがとうガブリエラ。 それがどんな話かは分からないけど、わたしガブリエラを信じるよ、”親戚”として・・・”同類”として・・・」
モニカは晴れやかにそう言い切った。
それは”同類”であるガブリエラの提案を受け入れるという返答であり、
同時に今後、ガブリエラの”親類”として”血の繋がり”を受け入れるという宣言でもある。
「感謝するのはこちらだモニカ。 この私に、この穢れかけた血の系譜に、”過ち”を正す機会をくれて」
ガブリエラはそう言うと、またモニカの頭を自分の胸に引き込んだ。
「ロンは・・・これでよいか?」
ガブリエラが最後の確認として、俺にそう聞いてきた。
「あなたにあそこまで言わせたんだ。 俺はそれでいいです。 ただ・・・・・」
俺としてはモニカの心がこれほど救われたのだ。
感謝こそすれど文句はない。
ただ、だからこそ念を押しておくのが、今の俺の”役目”だ。
「ただ・・・ここまでモニカの心を大きく動かしたんだ。
あんたがやることにモニカが失望するようなことがあれば・・・その時は”覚悟”しろ。
・・・いつか・・・俺達の方が強くなって必ず報いを受けてもらう」
きゃあああー!! 言っちゃったよ・・・
ガブリエラに向かって”あんた”とか”覚悟しろ”だなんて、・・・どうなっても知らないぞオイ!!?
だがそんな風に内心ガクブルの俺に対し、ガブリエラは真面目な顔を作るだけにとどまった。
「そこまで言われては、失望させないようにしっかりと動かねばならないな」
「あの・・・無理のない範囲でいいですよ?」
「安心しろ、来年の今頃にはそなた等は自由の身で飛び回っておるわ、期待して待っておれ」
そう言うとガブリエラがこれまた見たことない笑顔で、”キシシ”と笑った。
怪物王女にそんな顔をされては俺も「あ・・・はい」と頷くしかない。
こうして、俺達はガブリエラの用意した、謎の”妙案”に乗ることになった。
それがどんな”案”なのか、それを受け入れた俺達がどうなるかそれはわからない。
長期的に見れば”時間稼ぎ”に過ぎないとの話だし、そこまで大きな変化は期待できないのも事実だ。
だがこの人にここまでさせるのだから、悪い話ではないと思いたい。
俺だって、”モニカの一部”としてガブリエラに”親類”と言ってもらえて救われた部分があるのだ。
周りを見れば、侍従たちがどこか誇らしげな視線をガブリエラに向けていた。
彼等なりに、自分の主の行動に感銘を受けているのだろう。
スコット先生も、こちらを見てこそいないが、どこかホッとしたような、そんな雰囲気になっている。
彼がそういう反応を見せることからも、この話に乗っても大丈夫のだと俺は理解した。
・・・ところで・・・
現在モニカは、ガブリエラに優しく抱きとめられている。
正面に座っていたガブリエラに抱きつかれたという事は、正面から抱きつかれたわけで・・・
ということは当然、ガブリエラの正面に付いていた巨大な胸が挟まるわけで・・・
俺達の顔面は、現在その谷間に絶賛埋まっていた。
頬に伝わる柔らかくて暖かな感触が存在を主張し、それに俺が徐々に居心地が悪くなる。
先程までの空気の中ではそれほど気にならなかったが、今のこの”すべてが収まった”空気の中では、この”圧倒的包容力の化身”は色んな意味で危険極まりない。
だがモニカはそんな俺のことなどお構いなしに、両手でその柔らかさを確認していた。
流石に止めるべきか・・・
いや、この流れでそんなこと口に出せない!
それにもう少し・・・
その時、モニカが真面目な表情で胸から顔を上げ、驚きの行動に出た。
なんとガブリエラのドレスの胸元をめくったのだ。
眼の前に大写しになる巨大な肌色の塊。
まだ下着があるので”アウト”な部分は見えていないが、下着までは見えているわけで。
何やってんのこの子・・・
これには流石に部屋の空気が凍った。
だがそんなものはお構いなしとばかりに、モニカは真剣な様子でガブリエラの胸を見つめる。
「キズ・・・なくなってるね」
『え? キズ?』
「なんだ、気にしておったのか」
ガブリエラがモニカの行動に特に気にした様子もなく、ただ意外そうな声でそう聞き返した。
「”あの時”つけたキズ。 胸に穴開けちゃってたから・・・」
どうやら【思考同調】をするために槍で空けた”穴”が、傷として残ってないか心配になったらしい。
胸骨の手前までだが、結構ザックリ行っちゃってたもんね・・・
胸がでかいだけに、空けた穴も深くなっちゃったのだ・・・
「フフフ、モニカ、ここはアクリラだぞ?」
「そうだよね」
「そ、そうですよね・・・あはは」
そりゃそうだ、色んなものが引きちぎれても1日もあれば引っ付く医療水準の街だ。
あの程度の穴を塞ぐなど造作もない。
「まあ、スキルが安定するまで治療が延期されたから、1週間はそのままだったがな」
「「え!?」」
「しかも、ちょうどいいとばかりに管とかを適当に突っ込まれての。 グチャグチャだ」
「ヒーッ!?」
「痛くないの!?」
俺達がそれぞれに反応すると、ガブリエラが味をしめた様に悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「痛いぞ、なにせ胸に風穴が開いてるんだ。 そこにハエや汗が入り込んでさらに・・・」
「うわぁぁ・・・」
「ごめなさい、ごめなさい、ごめなさい、ごめなさ・・・」
俺たちがその痛みを想像し、それに対してそれぞれに呻く。
だがその時、頭の中に違和感のような感覚が・・・
『安心してください。 麻酔魔法と患部の保護は徹底されていたので、全く苦痛はありませんでした』
「「え?」」
突如、頭に割って入ったその声に俺達が素っ頓狂な声を上げる。
するとガブリエラが憤慨した。
「おい、”ウル”よ。 せっかく遊んでいたというのに・・・」
『そんなことをして、せっかく得たばかりの”信用”を失っては元も子もありませんよ』
それを聞いたモニカの顔から表情が消える。
どうやら俺達はガブリエラに遊ばれていたらしい。
見かねた彼女のスキルがそれを咎めに出てきたようだ。
「あああ、面白みの無いやつめ。 少しは話がわかるようになったかと思えばこれだ」
『”それ”と”これ”とは、別問題です』
ガブリエラが不満げに文句をいい、それに対して”ウルスラ”の管理スキルが反論する。
だがそのやり取りを見ていて、俺は違和感を感じた。
「あれ? 喋りがなめらかになってる?」
それまでどこか機械音声的だったスキルの声が、僅かではあるが抑揚が豊かになり、自然になっているのだ。
『前回の【同一化】・・・そちらの名称の【思考同調】の発動時、こちらのスキルの中にあなたの一部が書き込まれたようで、思考プログラムが少し最適化され、一部ではありますが自己調整も可能になりました。
これがそのログデータです』
するとその瞬間、俺の思考の中に大量の謎のデータが流れ込んだ。
『うわ、なんだこれ!?』
『ガブリエラのスキル調整情報を纏めた物です、以前同調時に使われたプロトコルを使用しているので解読可能でしょう。
このシステムが正常稼働している個体として、データの評価や注意事項などを次回の会合時に渡してください』
『ちょ、ちょ、ちょっとまって・・・』
『送信の方法と通信プロトコルは、ログデータファイルの冒頭に記載しています。 それでは』
『え? ちょっと、センパイ・・・』
反応がない・・・
言いたいことを言うだけ言って、ガブリエラの中に引っ込んでしまったか。
「な? 最近この調子だ。 言いたいことだけ言ったらすぐに籠もりおる。 自分勝手なやつだ、誰に似たんだか・・・」
ガブリエラはそう言って肩を竦めた。
その様子からして、だれも”本当のこと”は言ってないらしい。
まあ、俺達も言えないし・・・
するとそんな俺を置いてモニカがガブリエラに話しかけた。
だが内容はスキル絡みではない。
「ねえ・・・ガブリエラ」
「ん? どうした?」
「わたしは・・・ガブリエラの”叔母さん”? それとも”従姉妹”?」
と真剣な顔で聞いたのだ。
するとガブリエラも真剣な表情で顎に手を当てる。
「そなたは叔母様とは、姉妹ではないからな・・・ただ、従姉妹というのもそれはそれで語弊があるし・・・」
そう言って、2人して思慮の海に潜っていった。
「どっちでもいいんじゃ・・・」
それに対して俺は、少々呆れた感じでそう言ったのだ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
その日の夜・・・・
「『・・・もう行くのか?』」
「ええ、王女様が出はられては我々では対処不能だ。 戻って陛下に相談せねば・・・これで再開まで、数ヶ月は時間を作られてしまった」
「『それは災難だったの』」
「いえ、交渉自体が破断になるよりはマシでしょう」
「『我が少し焚き付けすぎたかもしれん、ここ数日、彼女にかかった負担を計算できなかった』」
「いえ、それを頼んだのはこちらです。 彼女に自発的に条件を飲んでもらうように・・・なのに”暴発”のリスクを低く見てしまった」
「『我は心が読めるだけで操れはせんからな、もっとも読めているともいえんが・・・』」
「例の・・・ガブリエラ様の”独自ルート”ですか?」
「『そうだ、だが我に漏れることを恐れてか、結局モニカ本人にも”詳細”は教えなかった』」
「ガブリエラ様は、あなたに心を開いてないのですか?」
「『もちろん開いておるし、信頼もしてくれておる。 だがあの子は我よりも強い、本気でその情報を隠されれば、見ることはできん』」
「それは信頼されていないのでは?」
「『疑念は抱かれておるかもしれん、だが、あの子なりの万全を期したいのだろう。
ああ見えて怖がりだからの』」
「なるほど、その”独自ルート”とやらが我々の”利益”を阻害しない事を祈るばかりです」
「『力になれず面目ない』」
「やめてください、”あなた”と”私”は対等なビジネスパートナー。
あなたが私に”モニカ・シリバ”を売ってくれると言ったんだ」
「『売るとは言っておらん、生徒の最大の利益を考えたとき、そなたらに預けるのが最善と判断しただけの事。
君達があの子に、それを与えられると我が思う限り、我はあの子にその便宜を図るというだけ』」
「私はそれを”売る”と認識しましたが?」
「『意見の相違だな。 そちらがあの子の最大の利益を提供できると思ったのは、間違いだったかな?』」
「・・・フフフ・・あなたも商売人ですね、さすが”アクリラ”の名を持つだけの事がある」
「『ただ、裏に回る者だからこそ、用意できる”利益”もあるというだけの事。
そちらにはこれから、次にここに訪れるまでの間、ルブルムで尽力してもらいたい』」
「わかりました、やれるだけの事はやってみましょう。 叔父上も友人の忘れ形見を義理の娘として引き入れるのだ。
口にしているほど悪い事にはなりませんよ」
「『あの”はなたれ小僧”に、それだけの理性が残っていればの話だが』」
「そう思ったから、接触してきたのでしょう?」
「『そう”願った”からじゃ』」
「・・・わかりました。 それではこの辺で、飛竜たちを待たせているので」
「『ああ、よい飛行を、ディーノ・フルーメン』」
「・・・・そうだ、最後に1ついいですか?」
「『良いぞ』」
「ガブリエラ様の”お考え”・・・・本当に読めてません?」
「『・・・・読めてはおらぬ』」
「なるほど・・・」
「『だが・・・』」
「?」
「『全ては・・・全ては”生徒の最大の利益”のためである・・・』」
「・・・わかりました、それでは今度こそ・・・」
「『ああ・・・さらばじゃ』」
「また次に会う日まで・・・アラン先生」
ずっと続いてた重たい話の期間はとりあえずこれで修了。
次回からしばらくは明るい(?)話が続くとおもいます。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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読者の皆様の存在が私の原動力です。




