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0-4【はじまる”俺達”4:~フランチェスカ~】

 うへぇ・・・


 思考の中を縦横無尽に飛び回る情報を前にして、俺は只々圧倒されていた。



 視界の全て・・・いやその外側までもが”スキルを起動しています”の文字で溢れかえっている。

 そして徐々にそれらが起動していくにつれ、できることの量が加速度的に増えていくのを感じた。

 

 一番最初に起動したのはこの大量のスキルを一斉に起動させるスキルを起動(・・)する、だけのスキルだ。

 それは俺が”魔水晶を使え”というメモを思い出した時に発動していた。

 

 ただ、起動にはあるものを要求された。

 ”魔力”と”名前”だ。


 俺はそれをどうにか主に伝えようと、頭の中で怒鳴りまくると、偶然にもその幾つかが伝わったようですぐに魔力と名前が主から差し出された。

 ただ魔力の方は、本当に起動プロセスを起動するだけに使われたのは衝撃だったな。


 どうやら重要なのは”名前”の方らしい。


 モニカ・・・・


 主がその名前を口にした途端、突然様々な情報が嵐のように吹き荒れた。


 そして今のこの状態である。


 どうやらこれは無数のスキルを纏めたもののようで、それぞれが独立したスキルでもあり纏まった一つのスキルでもある。

 それらは全て”モニカ”という名前を入れることで、スキルとして完成するようだ。


 気になるのは、この大量のスキル・・・・


 ・・殆どが起動に失敗しやがるのだ!


 しかもエラーログを見ると、”魔力量不足”や”魔力操作精度不足”といったそれっぽいものもある中、やれ”身長が足りない”だの、”体重が足りない”だの、子供の体に対して言いたい放題言ってくれているのもある。

 かと思えば逆に”身長が高すぎる”や、”体重が重すぎる”といった相反するものまである始末。

 

 もはや、何がしたいのかわからない。


 おい、そこ!”胸が小さい”はないだろ!


 他にも顔の造形が好みでない等の、完全にイチャモンの領域に足を突っ込んでいるエラーログも沢山有る。

 明らかに起動しているスキルのほうが少なかった。


 だがそれでもその起動しているスキルの力は凄まじかった。


 まず探知系のスキルのおかげで、確保できる情報の数が段違いだ。

 さらに思考強化系のスキルのおかげで、この圧倒的な情報を負荷なく捌けている。


 世界がゆっくり進んで見えるのは、思考加速系のスキルの恩恵だろう。


 もっとも、これらはそういった使いやすい能力があるわけではない。

 本当に極簡単な機能を持ったスキルを、状況に応じて組み合わせているのだ。


 その組み合わせるための枠組みが、この”スキル群”の正体らしい。


『 ”スキル群と管理用インテリジェントスキルのリンクを確認” 』


 そして時々、俺が勝手にこういった台詞を喋ってしまう。

 いや声が出るわけじゃなくて、主の方に何やら情報を送っているらしい。

 

 お、全てのスキルの起動プロセスが終了したな。

 起動したのはざっと10分の1くらいか・・・・少ねえ・・


 まあいい、これでも十分に凄まじい力を感じる。


 おや?なにやら主の方にメッセージを送るらしい。

 なになに・・・


 ・・・いいだろう、この情報は俺が自分の意思で送るとしよう。


 せーの!


『 ”スキルID:04:ランク”王位”:スキル名”フランチェスカ” を起動する” 』



 ?



 威勢よく言ったはいいが、肝心のその内容がよくわからない。

 フランチェスカというのはたぶん、このスキル群の名前なのだろうということは分かる。

 意味的には”ウ◯ンドウズ”とか”アン◯ロイド”とかの類だろうか。


 問題はその前だ。

 スキルIDもスキルIDなのだろうとは思うが、ランクとは?

 それに”王位”とはなんぞや?


 まあいい、何やら主も今ので気分が上向いたようだし。


ガキィィィイイイイインンン!!!!!


 突如鳴り響く謎の音。


 何事かと確認してみれば、ほんの目の前に巨大サイカリウスの牙があった。


 あ、完全に忘れてたわ・・・・



 だがその巨大な牙がそれ以上近づくことはなかった。

 

 というよりも、巨大サイカリウスの顔自体が何かに阻まれて、それ以上口を閉じれなくなっている。

 よく見れば何やら薄い膜のようなものが、俺達の周りを覆っており。

 それが巨大な顎から守ってくれているらしい。


 一見すると膜のように薄くとても柔らかそうに見えるが、

 噛み付いている巨大サイカリウスの口から漏れる、ガリガリという硬そうな音と、その強大な顎の力をもってしても全く変形すらしないことから

 相当な強度があることが伺える。


 だがこんな膜に覚えはないぞ。


 主もその光景に驚いている。


 いや、全てのサイカリウスを含むその場にいた全員が驚愕していた。


「ウグァアアアアア・・・」


 噛み付いていた個体がなんとかしようと持ち上げにかかるが、その瞬間、展開していた膜が突然形を崩してしまった。

 噛み付いていた相手を失った巨大サイカリウスは、哀れにも自分の力で後ろ向きに倒れる形となる。


 そして俺達を守った不思議な膜は、その形状を複雑に変えると・・・

 なんと、棒状に纏まりだしたのだ。

 今はどう見ても長さ2mのいつも使っている棒だ。

 砲撃魔法に使ったり、たまに曲げてフック代わりに使ってたあれだ。


 ええっと・・・なになに? ”パッシブ防御システム”?


 膜を展開していたと思われるスキル見つける。

 どうやら物理的脅威に対してオートで防御機構を展開するスキルらしい。

 ご丁寧に、今取れる選択肢の中から勝手に選んでくれるそうだ。


 なにやら俺の仕事を取られたみたいで不満があるが、それで助かったのだから文句はいえまい。


 そう、俺は自分の正体を把握していた。

 正確には、新たに得た情報の中に俺に関する物があったのだ。


 ”スキル群:管理用インテリジェントスキル”・・・略してSg-MIS

 それの”フランチェスカ”用なのでFMIS!

 

(この略称は絶対、俺の人格が後付したものだろうな・・・・)


 まあ、とにかくそのFMISがこの膨大なスキル群の動作を一元管理しているのだ。


 そして、そのFMISはどうやら3層構造になっているらしく、上から


 ・大まかな決定を行う・・・・人格層


 ・細かな決定を行う・・・・処理層


 ・実際に各種スキルとの連携を行う・・・・接続層


 ・・・で構成されているようだ。

 そして、各層は自分の一つ下の層に対して命令権があり、つまり人格層は直接スキルをいじることは出来ないが、接続層と処理層を段階的に噛ますことでスキルの行使ができるらしい。

 一見面倒な構造だが、人格層が意思決定のみに集中できるというメリットが有る。


 そしてその”人格層”こそが、俺の正体らしい。



 ・・・・・。


 俺がスキルになっていた件。



 いや感傷に浸るよりも、今は目下の危機に対処するべきだ。

 そのためにできることを優先させよう。


 緊急時対策の基本・・・まずは情報共有だ。


 ええっと、


 あー、てすてす。


 ちがうな・・・・


『もしもーし!聞こえてるか!?』


 



※※※※※※※※※※





 今まで感じたことのない力が、自分の中を吹き抜けるのを感じていた。


 知らない力・・・


 想像もつかない可能性


 だが、なぜか分からないが不安は無かった。

 

『もしもーし!聞こえてるか!?』


 奇妙なことに頭の中から知らない声が聞こえる。

 先程からこうして、何者かの声が聞こえてくるのだ。

 

 死を目前にしてついに頭が逝かれたのかもとも思ったが、先程から発生している様々な不思議現象と間違いなく関連がある。


『聞こえてるなら返事してくれ!!!』


「聞こえてる、うるさい・・」


『お!聞こえてるか良かった、こう、ひねる感じだな』


 どうやら意思疎通はできるらしい。

 

 眼前では、”獣”どもが固まっている。

 何が起こっているのかわからないのだろう。

 まあ、私もよく分かっていないが、その隙は使わせてもらおう。


「今の・・・フロウを使ったのはあなた?」

『フロウ?なんだそれ?』

「・・これ」


 そういって手に持っていた棒を視界の前に掲げる。

 そしてその行為を威嚇と判断した”獣”たちが、一斉に唸りだした。


 どうやら”獣”なりにこの”フロウ”が先程の”膜”に変形したことに気づいたのだろう。

 もっとも、私も今初めて知ったばかりだが・・・

 

『ああその棒、フロウっていうのか、てっきりただの棒かと』

「さっきの変形、また使える?」


 今は非常時、知りたいことはそれが使い物になるかどうかだ。


『ええっと、おう、使えるぞ!』

「なら操作は任せた!」


 それだけ言って前へと飛び出す。

 今、目の前で、すっ転んでいる大きい”獣”の隙きを逃す訳にはいかない。


 こいつはさっき転んだ状態からまだ立ち直っていない。

 どうやら私の思考が加速しているのが原因らしいが、目の前の好機を逃せるほど事態は好転しているとは思えなかった。


 だがそれでも、先程までとは比較にならない程のパワーが足に発生している。

 それもほとんど負荷がかかっていないのだ。


 まるで何かに導かれるように、最適な動きで大きい”獣”に飛びかかると、全力でフロウを首元に叩き込む。

 その時に意識を微妙に移動させて、”合図”を送った。


 確証は持てないが、あの声の奴ならこれで意図が伝わるという確信があったのだ。




※※※※※※※※※※※※




 会話の途中でいきなり巨大サイカリウスに飛びかかったもんだからびっくりした。

 それも凄まじい勢いでだ。


 視界はまるでジェット機のように景色が流れている。


 どうやら、新たに起動した身体強化スキルのおかげで、筋力強化魔法による耐久上限が大幅に上昇しているのを感覚で理解しているらしい。

 

 そのまま巨大サイカリウスの上に飛び上がると、何やら首元に向かって棒・・フロウを叩きつけにかかる。


 その時、いつもの集中力の移動を使った”注文”が飛んできた。


 どうやら、フロウを変形させて薄く長くしてほしいらしい。

 薄さは先程の防御膜くらいがお望みとのことだ。


 早速俺は、先程”パッシブ防御システム”が起動させていたスキルの情報を引っ張り出す。

 使ったのは”魔力操作”のスキルだ。


 実は先程の”防御膜”自体はスキルでもなく、フロウの機能ですら無い。


 フロウは大量の細長い繊維状の物質が、棒状に集まった構造をしている。

 そしてこの繊維状の物質は非常に魔力を通しやすく、また通す魔力の状態で周囲の他の繊維に対して魔力的に干渉するという特性を持っているらしい。


 まあ、要約すると高度に流す魔力を制御してやれば、繊維同士が反発したり引き合ったりしてくれるのだ。


 その特性を利用して、膜状に変形して周囲に展開、保持したのがさっきの膜の正体。


 ここで重要なのは、あの薄さで巨大サイカリウスの顎を防ぐほどの強度を持った素材を、自由に変形させられるということだ。


 

 そして今は棒の先、数センチ分を長さ4mほどに薄く伸ばしている。

 

 その姿はさながら巨大な刀だ。


 その刀の直撃を受けた巨大サイカリウスは哀れにも、首から上を失っていた。

 そしてとんでもないパワーでもって巨大刀の動きを止めると、なんと勇ましいことに落ちた首を蹴飛ばしてサイカリウス達の群れの中に叩き込んだ。


「うああああああああああああああああ!!!!!」


 そして追い打ちとばかりに発する怒声。


 自分より遥かに大きな仲間の首を叩きつけられたサイカリウス達は、その迫力に圧倒されてしまいその場で右往左往している。

 

「グゥオウウ!!」


 だが、例外もいる。

 2体の魔獣化した個体はどちらもその程度では心は折れず、即座に群れを一喝して混乱を収めた。


 だが一瞬で巨大化した個体を沈めた俺達を警戒してか、突っ込んでくるようなことはしない。


 その時、超巨大個体が素早い動きで俺達の反対側に回り込もうとしてきた。

 どうやら魔獣化した2体で挟み撃ちにするらしい。


 だがそれを待ってやる道理はない。




※※※※※※※※※※※※※※※※※




 大きい”獣”のさらに大きい方がジャンプしながら後ろに回り込もうとした時、私はもう走り出していた。


 これはもう本能だ。


 瞬間的に相方の援護を失うことになった大きい”獣”は驚いていたようだが流石に場数が違うのだろう。

 素早い動きで、こちらの攻撃にカウンターを入れようとしてきた。


 だがまだ甘い。


 頭の中に示された動きをなぞるようにして、巨大なナイフのようになったフロウを叩きつける。

 すると、その攻撃を受けた腕ごと”獣”の上半身が真っ二つに割れた。

 その頼もしい切れ味に、これならいけるという確信を持つ。


 だが突然、後ろからものすごい衝撃が襲った。

 振り返ると、ナイフ状だった筈のフロウが再び膜のように広がっていて、その膜が一番大きい”獣”の噛みつきを防いでいたのだ。

 どうやら、こちらが突撃したのを見て慌てて戻ってきたようだ。


 噛みつきは防御膜が防いでくれたが、直感がこの状況は不味いと告げる。


 膜の大きさは自分をすっぽり覆う程度のものであり、明らかにこの巨大な”獣”の口のほうが大きい。


 今はこの膜ごと咥えられている形になっている。


 今のところ攻撃手段の殆ど全てをフロウに依存しているが、そのフロウを防御膜として展開してしまっているので攻撃できない。

 仮に今、この防御膜を解けば即座に噛み砕かれてしまうだろう。


 自分ではどうしていいかわからないが、幸い今は相談できる。


「なんとかなる?」




※※※※※※※※※※※※※※




 なんとかなるかと聞かれてもなぁ・・・


 俺は必死で使えるスキルの組み合わせを検討していた。

 フロウを使わずに行えること・・・・

 

 ええっと、あった!!


『空中に魔力溜まりを作れ!!』


「こんところで、爆発したら、わたしもただじゃ・・」

『俺を信じろ!!』


 その指示に対して少し悩んだものの、このままでは不味いと判断したのだろう。

 意を決した主が目の前の空間に魔力流し出す。


 魔力が流れることを確認すると、俺はその流れを適当なスキルで一気に加速させた。


「え!?、っちょっ!?」


 魔力の量が今までの臨界の量をあっさり超えた事に気付いた主が慌てる。

 だが現状でもコントロールには、まだまだ余裕があるのだ。


『問題はない』


 そして、防御膜の噛みつかれている”喉側”に穴を開けた。


『その穴から、魔力溜まりを外に出せ!』


 その指示で俺の真意に気づいた主が、魔力溜まりを穴の外に押し出した。

 そして外に出ると同時に、俺が穴を塞いで魔力溜まりのコントロールを切る。



 防御膜の向こうで、制御を失った魔力溜まりがそのエネルギーを放出し、俺達の視界が痛いほどの眩しい光で埋め尽くされた。



 

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