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 モニカの奇妙な相棒 ~ 最強スキルは、俺自身!? ~  作者: マカルー
第二章 モニカの奇妙な学園生活
188/426

2-1【ピカピカの一年生 6:~ダービン砦の戦い~】



 荒野を駆ける騎馬隊。

 槍や弓を手に並ぶ歩兵達。

 様々な攻城兵器を運ぶ工兵達。

 その数は膨大で身が竦むほどの迫力を伴っていた。


 それに対し、その敵意を一心に受ける砦はあまりにも小さく見る。

 だがそれでも、その砦に立つ兵士たちの顔色は悪いものではなかった。


「これが、かの有名なダービン砦だ!」


 ザーリャ先生がそう言うと、青い光で描かれた砦の上に”ダービン砦”という文字が現れた。

 まるで歴史番組を見ているかのよう・・・いや、臨場感はこちらの方が上だ。

 クヴァント先生の操作する魔道具によって作り出された立体映像により、教科書だけでは伝わってこない歴史の瞬間を見ることができた。


「麓に布陣するのはオルドビスのフテリー将軍率いる7万4千の大軍! 砦に篭もるのはカラン王オンドリウス二世率いる精鋭達!」


 立体映像の布陣にザーリャ先生の語った情報が追加されていく。

 

『ダービンの戦いはオルドビスとそこから独立したカランとの戦いだ、この直前にカランが敗れて追い詰められている』


 俺が教科書の内容をモニカに伝えると、モニカから頷くように肯定の感情が飛んできた。

 この辺は受験勉強でも軽く触れているので概要は知っているが、こうして目で見るとまた違った実感のようなものが湧いてくる。

 そしてカラン軍の貧相な部隊は、オルドビス軍の勢いの前ではあまりにも頼りがない。


「この時にダービン砦に入っていた数には諸説あるが、概ね400〜2000人程度といわれている」


 2千人対7万人。


 オルドビス軍の端数の方が多いくらいの途轍もない戦力差だ。

 だが、


「だがこの数は問題ではない、この戦いにおいて後の世の我らが注目すべきなのは、この”40人”だ」


 すると砦の上に立つ数十人の体が光り、その存在が強調された。

 

「これが俗にいう”ダービン40衆”である!」


 現代まで続く異名、そんな物を背負っているせいか、彼らの姿はとても強そうで、気のせいか表情のないはずの顔が不敵に笑っているような錯覚を受ける。

 そしてダービンの戦いは、この40人によって大きく変わる。

 

「彼らは君らの古い先輩であり、当時としては珍しい”訓練を受けた魔法士”である。

 オンドリウス二世は先の”サンドビの戦い”の敗北を受け、当時はまだ秘密結社だったアクリラに救援を要請したのだ!」


 訓練された魔法士。


 その力は絶大で、目の前の立体映像では次々に攻撃が仕掛けられるのにも関わらず、オルドビス軍はダービン砦に有効なダメージを与えられないでいた。

 そして一日、また一日と過ぎるにつれオルドビス軍の中に”恐怖”が蔓延していく。

 前線で魔法士の”驚異”を目の当たりにした兵士達の心理状態は急速に悪化し、中には魔法士の姿を見るだけで逃げる者も出る始末。

 遂にはカラン軍によるダービン砦への決死の補給を許し、状況は一気にカランに傾く。


 それに危機感を抱いたオルドビス軍のフテリー将軍は、自らが全軍を率いての突撃を敢行する。

 だがそれは彼の最大の愚策となった。

 カラン軍の魔法士40人が強固に連携しながら迎え撃ち、ついにフテリー将軍は討ち取られる。

 そしてカラン軍はそれを魔法を使ってオルドビス軍全体に宣言すると、数万の大軍は雪崩を打って瓦解したのだ。


「こうしてオルドビスのカラン討伐は失敗し、カランの勢いが増すことになる。

 ルーベン君!」


 するとザーリャ先生が突然誰かの名前を呼び、それに反応したかの様に隣の席の男子生徒がゆっくりと背筋を伸ばした。


「はい」


 隣の男子生徒が返事をする。

 どうやら彼の名はルーベンというらしい。

 ザーリャ先生はルーベンが己を見たことを確認すると、そのまま質問した。


「この戦いにおける、”歴史的意義”は何かね?」

「ダービンの戦いは、訓練された少数の魔法士が大軍を打ち破った事例であり、また史上初めて高度に組織化された魔法士部隊が実戦に投入された事例です。

 つまり魔法教育の”軍事的優位性”が証明された、初めての戦いになります」

「うむ、素晴らしい答えだ!」


 ザーリャ先生がそう言って、手を叩いた。


 ちなみに、それまで”魔法使い”が戦場にいなかったわけではない。

 魔力が充満してる世界だけあって、何らかの魔法を使う人間はそれなりにいたし、オルドビス軍の中にも当然いた。

 だが最も簡単で効率的な魔力の使い方は筋力強化であり、それを利用した剣や槍、弓の威力の前では見劣りしていたのだ。

 そしてその常識が崩れたのがこの戦いなのである。


「これ以降、各国で魔法士の教育が盛んになり、それまで世捨て人の集まりだったアクリラが急速にその影響力を強めていく事になる」


 そしてそれは皮肉なことに、カランの寿命を大きく削ることになった。

 実は、カラン王オンドリウス二世はアクリラの卒業生であり、その縁で強力な魔法士を借りる事ができたのだ。

 だがそれはカランの優位性には繋がらなかった。

 各国が急速に魔法士の教育という名の”兵器開発競争”に国力を注ぐ中、小国であるカランはついていくことができなかった。

 結果としてこのわずか20年後、再び攻めてきたオルドビスの魔法士部隊によってカランは壊滅し、歴史から姿を消す事になる。


「そして、これ以降魔法の能力は急速に強さを増していく。

 一例としてこの”ダービン40衆”は、巷では歴史上最強の魔法士と呼ばれる事があるが、実際の実力はそうではない。

 この部屋にいる者の中で1対1で彼等に遅れを取るのは、おそらく私だけであろう!」


 ザーリャ先生がそう言うと、偉そうに腕を組み直した。

 この先生、自分が弱いというのをやたら嬉しそうに語るところがあるな。

 というかここにいる生徒って、全員がそんな英雄的な存在よりも強いのか。

 となればやはり成績で選抜されたメンバーと見るのが自然だろうか。


「そして・・・」 


 ザーリャ先生はそのまま、何人かの生徒へ目線を送る。

 その中にはモニカや、隣りに座るルーベンも含まれていた。


「何人かの生徒は、仮に”ダービン40衆”全員と戦っても勝てるだけの力を、既に持っているだろう。

 だがその力は例外なく、この日、聖王1628年の夏の日に起こった戦いの影響を強く受けている。

 彼等は君達の力の中に生きているのだ!」


 ザーリャ先生がそう言うと、妙に俺達の力に重みを感じるから不思議だ。

 俺達は主にスキルだが、それだってこの戦いで魔法の軍事的優位性が示されなければ、研究が進むことは無かったのだ。


 さて、そんな実感に浸っている中、俺は今しがた偶然得た、とあるリストを確認していた。

 それは先程ザーリャ先生が目線を送った面々。

 一人で”ダービン40衆”に勝てると言われた生徒だ。

 彼等はモニカと同い年の中でもかなりの実力者と見て間違いない。

 力が全てではないが、知っておくだけでも価値はあるだろう。

 今後、モニカの振る舞いを決める上でも大きな指標になる。


 俺達の得意な大出力魔法はかなり目立つので、マグヌスを刺激しないようにできるだけ使用は避けたいが、その”基準”がよく分かっていないのだ。

 だが彼等の使うくらいの魔力量ならばそこまで浮くことはないだろう。

 これは要観察だな。


 俺はそのリストに載る一人である、隣りに座る男子生徒へ髪留めの感覚器の焦点を合わせる。

 するとルーベンは俺の視線を察知したのか、少し居心地悪そうに体を捻った。

 

 ザーリャ先生の授業は、尚も続いていく。 

 だがこのペースだとこの授業の前半の内にカランは滅びそうだ。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





「ねえ! ねえ! ねえ!」


 俺達の目の前に”ぱあ!”っと形容する他無いほど、明るい笑顔が突きつけられた。  


「モニカはどこから来たの? 北国の顔立ちだよね? マグヌス? アルバレス? すごい綺麗な瞳だね!」

「は・・・はあ」


 その子の猛烈な勢いにモニカがタジタジになる。

 

 今は午前中の授業が全て終わり、これから昼食と午後からの授業のために移動しようかという時だった。

 実際、他の生徒達は既に移動を始め、俺達もロメオの確認のために事務局に行こうかと思っていたところだった。

 すると前の方の席に座っていた女子生徒の一人が、俺達の座っていた場所までやってきたのだ。

 先程の授業でザーリャ先生が意味深な視線を送った生徒の一人だ。


 他の生徒達はこちらにそれほど興味を持っていないので、これはこの子の性格なのだろうが、編入生のモニカに対して”興味津々”と顔に書いてあるようだった。


「魔力傾向は黒だよね? 私は青!」


 目の前の女の子が太陽のように”ニカリ”と微笑んだ。


 その子を形容するなら、”すっごい美人” だろう。

 正直、他の言葉は全く出てこない。

 俺の思考が ”うわぁ、美人さんだ~” で固まっている。

 その耳の形からして恐らくは”エルフ”なのだろうが、そんなことがどうでも良くなるほどの美しさだ。

 彼女の白い肌とプラチナのような髪も美しいが、なにより宝石のように青く輝く瞳が魅力的だった。

 ルシエラと同じ青目の美人さんだけど、ルシエラがスタイルとか顔立ちとかで美人なのに対して、こちらは顔に”美人”が貼ってあるかのようだ。


「私、シルフィー! よろしくね!」


 彼女は、そう言って握手しようと右手を差し出してきた。

 随分とフレンドリーな子だな。

 それがようやく絞り出した彼女の美しさ以外の印象だった。

 そしてモニカがそれに応じシルフィーの手を握ると、突然ものすごい力で右手を引っ張られる。


「!?」

「あ! やっぱり!」


 そう言って、シルフィーが俺達の右手をマジマジと見つめた。

 そこには俺達のスキルの制御用魔水晶が嵌められている。


モニカも(・・・・)スキル持ってたんだね!」


 そう言って笑顔を深める。


「えっと、何で分かったの?」

「だってモニカ、出してる魔力が凄く整ってるだもん!」

「出してる魔力?」

「うん! スキル持ってる子はね、魔力を整えて使うから、体から漏れる魔力も整ってるんだよ!」


 シルフィーがそう言ってまたニコリと笑うと、俺の中の感情が再び”美人さんだ~”で埋め尽くされた。

 だがそんな俺の感情に対してのなのか、それとも少々強引なシルフィーに対してなのか。

 モニカから少し否定的な感情が飛んできたかと思うと、そのまま席を立ち上がった。


「えっと、ごめんね、急いでるから・・・」


 そう言ってこの状況からモニカが少し強引に脱出にかかると、シルフィーが急に慌てて俺達の手を離した。


「あ! そうだよね、編入したてで色々やることも多いもんね」


 どうやら、モニカの言動をいい方向に理解してくれたらしい。

 そしてモニカが教材を自分のバッグに詰め込み席を離れると、こちらに向かって笑顔で手を振ってくれた。


「またね! モニカ!」

「あ、うん、またね・・・・シルフィー」


 モニカがシルフィーに返事しながら手を振り返して答えると、シルフィーの笑顔がさらに輝きを増し、それを見たモニカが若干顔を赤らめながら教室を後にした。




『綺麗な子だったな』


 廊下を歩きながら、俺がシルフィーの感想を述べると、モニカから肯定の感情が返ってきた。

 モニカも彼女のことを綺麗だとは感じたようだ。


「・・・でもちょっと・・・」

『グイグイ来るのはまだ厳しいか』

「・・・悪い子じゃないとは思うんだけど・・・」

『そのうち慣れるさ、こっちも、向こうもな』


 ある意味で初めて見知った同い年の女の子だ。

 少なくともこの授業では暫くは一緒になるはずだし、今後も他の歳の子よりは関わってくることは多いだろう。

 仲良くできればいいが、他人との付き合い方がまだまだ分かっていないモニカには、少し難易度が高い相手かもしれない。


「・・・ロンは気付いた?」

『ん? 何に?』


 廊下を歩いていると、モニカが突然俺に何かを聞いてきた。


「・・・あの子・・・シルフィーはスキルの魔水晶持ってなかった」

『それが?』


「”モニカもスキル持ってたんだね”」


 モニカが、シルフィーの言葉を思い出すように呟いた。

 ”モニカも”というからには他にも居るだろうが、シルフィーは魔水晶を持っていない。

 

『誰か他のことじゃないか? これだけ生徒がいればスキル保有者くらい、何人もいるだろう』

「誰なんだろう」


 モニカが廊下の先を見つめる。

 その表情はいつもと違っていた。


『・・・? 気になるか?』

「あの子・・・物凄く強い。 だけどあの子が私を見る目には憧れ(・・・)があった・・・たぶん”スキル”に対してだと思う。 スキルを持った、あの子より強い子がいるのかもしれない」


 モニカの言葉には僅かな”焦り”の様なものが含まれていた。

 となればシルフィーの強さは本物だろう。

 そして、それ以上に強いと思われるその”スキル保有者”は、いったいどんな奴なのだろうか。

 気がつけば俺も、その”謎のスキル保有者”に対して、謎の対抗心の様なものを感じていた。





 ロンとモニカの去った教室の中ではまだ何人かの生徒が残っていた。

 殆どの生徒は次の授業に向けて、できるだけ早く移動したいために足早に去るが、中には次の授業が近場などでそれほど急ぐ必要のない生徒もいるのだ。

 

「ルーベン! あの子どう思った!?」


 そして、その中には先程モニカに声を掛けたシルフィーや、モニカの隣りに座っていたルーベンも含まれていた。

 彼等の今日の話題は、いきなり自分達の授業に組み込まれた編入生の”第一印象”だ。


「へんなやつ」

「ほうほう」


 ルーベンの言葉にシルフィーが目を細めて安っぽい意味深な表情を作った。

 そしてそれを見たルーベンはそれに対し、


「お前よりは普通だ」


 と突っ込んだ。


「あう!? なんか酷いこと言われたような気がする!? 酷いよルーベン!」


 シルフィーがルーベンの物言いに顔を膨らませて憤慨する。

 そして、そんなシルフィーを見たルーベンは、こんな表情でも可愛く見えるのだからずるいと感じていた。

 

「それで・・・シルフィー」

「ん?」


 ルーベンがシルフィーを睨むと、シルフィーが何事かと首を傾げた。


「俺とあいつ・・・どっちが強い?」


 その質問をしたルーベンの表情は真剣そのものだった。

 そして唐突な質問をされたシルフィーも難しい顔をして悩みこむ。


「うーん・・・彼女かな」


 シルフィーがそう言いながらルーベンの顔を見ると、ちょうどルーベンのこめかみがピクリと動くところだった。


「僕より・・・強い?」

「一応言っておくと、ルーベンが聞いたんだよ?」


 シルフィーが、癇癪を向けられては敵わないとばかりに責任の所在を確認する。

 予想ではルーベンはこの手の回答を看過できない。


「そうか・・・そうだな、ごめんシルフィー」


 だがシルフィーの予想に反し、ルーベンはあっさりとそう言って自分の目の前の教科書などを纏め始めた。

 見た感じいつもとそう変わったところはない。

 それでもシルフィーは、学友の手の動きがぎこちない事を見逃さなかった。


「なんでそう思ったかは聞かないの?」

「シルフィーがそう言うなら、そうなんだろう」


 ルーベンはそう言って荷物を纏め終えると、席を立とうとした。

 だがそれは、シルフィーの手により制止される。


「追っちゃだめだよ」

「人の後をつける趣味は無い」


 ルーベンの表情が ”何を言っているんだ?” とばかりに怪訝なものに変わる。


「そうじゃないよ。 ルーベンも”今”ならあの子に勝てると思う。 だけどあの子の成長に合わせようとしたら、必ず後悔するわ」


 そう言ったシルフィーの目は普段からは考えられないほど、とても真摯なものだった。

 だがルーベンはその目線をすぐに切って立ち上がる。


「忠告、感謝しておくよ」


 そう言ってルーベンは視線を外に通じる扉へと向けた。

 その表情からはシルフィーの言葉の意味を理解したようには思えない。


 シルフィーは心の中で”ああ、やっぱり” と呟いた。

 おそらくルーベンは、本当の意味で自分が”追いつけない存在”というものを信じていない。

 ましてや追い抜いていく存在など、”その瞬間”まで気づくことはないだろう。

 だが、それが”天才”というものだ。


 ルーベンは無表情のまま教室を出ていってしまった。

 あとに残ったのはシルフィー1人だけ。

 彼女は暫くの間ルーベンの出ていった扉を見つめた後、大きく息を吐いた。


「忠告・・・か」


 シルフィーの瞳に憂いのようなものが浮かぶ。


「実体験なんだけどな・・・・」


 そして、かつて”天才”だった少女は、僅かに顔を歪めながら”天才達”の出ていった扉から目線を外した。



自分が治ったと思ったら、製作に使ってるソフトの調子がおかしくなった。

コピペの改行絡みが、うまくいかないです。

この話限定のファイルの問題だとは思うのですが、ちょっと怖いです。というか面倒です。

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