表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/426

1-10【ピスキアの長い夜 7:~Salad~】


「よし! かかった!」


 ルシエラが声に出して喜ぶ。

 さすが、純血の”青”の竜だ。


 黒い竜の牙は全てユリウスの鱗にガッチリと挟まって動かない。

 魔力を帯びた黒い煙と瓦礫でできた竜の首はこれですべて動きが封じられた。


 これでゆっくりと”本体”に取り掛かれる。


「さあ、オイタをする悪い子はどこだ!?」


 その言葉の直後にルシエラの眼球の周りに魔法陣が複数飛び出し、ルシエラの視界が真っ青に染まった。

 これは視覚情報に魔力の流れを付加する高等魔法だ。


 ルシエラの視界には現在、周囲を流れる魔力が全て見えている。

 非常に高性能な魔法だが高性能な反面、あまりに見えすぎるせいで、ある程度近づかないと何がなんだか、分かんなくなってしまうのが欠点だ。


 黒の竜は”本体”ではない。

 何かの魔力によって土塊で作られた見せかけの竜だ。

 まあ、そのせいで形を崩すだけでユリウスの鱗から脱出できるはずなのだが、まだその事に気がついていないようだ。


 こういうところから、この黒い竜にまともな思考がないことが窺える。


 おそらく”本体”の意識がないのだろう。


 ルシエラは真っ黒な魔力の流れを遡って”本体”を探す。

 

 それにしても恐ろしいほど制御された魔力の流れだ。 

 これほどまでにきれいに整えられた魔力をルシエラは見たことがない。

 こんな綺麗な魔力が使い放題ならば、一体何が出来るだろうか?


 そう考えただけで空恐ろしくなる。

 ルシエラの持つとされる”加護”ですら、特定の魔力傾向のみの変換以外は普通の魔法師と何も変わらないのだ。

 

 だがそれを活かした攻撃が来ないことを見るに、それほど知識は持っていないのは間違いないだろう。


 そしてそんなことを考えている間に、


「見つけた!」


 全ての竜の魔力が吹き出すその一点に、子供程度の大きさと思われる”本体”が見つかった。

 全く動いていないことからして、おそらく意識はないか。

 むしろこれほどの魔力が自分の制御を超えて噴き出す苦しみに耐えて意識を保っていれば、それはもはやまともな生き物ではないだろう。


 さて、ここからどうしたものか、この感じだと本体は1階の最奥か。

 

 この魔力の本流を掻き分けてそこまで進んでいくのは骨だぞ。


「それでも、やれるだけのことはやってみますか!」


 その瞬間、ルシエラの全身を青い魔力の奔流が覆い尽くした。

 それはまるでの青く輝く光の繭だった。


 これが、彼女がもつ最強の対魔力防御魔法 ”変性の渦” だ。


 そしてその状態で建物の中へ突入する。

 幸いなことに建物の中の魔力は外と違って物理的特性を持っていなかった。

 それでも十分に致死量を上回る魔力量だが、これならば動き回ることに支障はないだろう。

 もちろんすべての隙間から濃密な竜の魔力が吹き出しているので、普通ならば入ることは出来ない。

 だが今のルシエラにとってはむしろ何もない外よりも動きやすかった。


 内部へ入るとすぐに魔力が異物であるルシエラを検知して排除しようと密度を上げる。

 だがその魔力はルシエラの”変性の渦”に触れた瞬間、あっという間にルシエラの使いやすいように変換され渦の維持に回されて、余った魔力は中和拡散される。


 本来ならば変換時に自分の魔力をいくらか持っていかれるために、長時間維持することは不可能な魔法だが、魔力変換コストがいらないルシエラは相手の魔力が尽きるまで文字通りいくらでも変換を続けることが出来る。


 ルシエラを倒したければ、魔力だけではダメなのだ。


 もっとも、普通は魔力で押し流すなんて事はしないし、思考能力があればすぐに他の攻撃に切り替えるだろう、物理攻撃には無力なので実は単純な防御としてはかなり穴だらけなのだ。

 これが効く相手はムキになって押し付ける魔力を増やすガブリエラの様な魔力馬鹿か、意識のない存在。

 今回は後者だが、ちゃんと効いていて助かった。


 ただ、廊下がミシミシいっているので、できるだけ早く本体を見つけてどうにかしなければ崩れた建物の下敷きになってしまう。


 ルシエラはできるだけ急いで建物の中を進んだ。


 廊下にはそこらじゅうに動かなくなった人間が倒れている。

 その多くは全身を黒い衣装で覆った顔もわからない連中だ。


 ”奴隷の館”なんて後ろ暗そうな場所で働いているということは、やはりそれなりに後ろ暗いものが有るのだろう。

 あと、たまに見かけるそうではない連中は、皆一様に豪華な服を着込んでいた、間違いなくどこかの金持ちか貴族だ。

 たぶん、奴隷の買い付けにでも来ていたのだろう。


 ルシエラの母国は貴族が居ないので、いまいちこの貴族というものに馴染みがないのだが、こんなところにいるからには死んでも仕方のないようなやつなのかもしれない。


 そんな死体を見送りながら建物の中を進んでいくと、不意に魔力の全くない空間を見つけた。

 まるでそこだけ何かに守られたかのように、黒い魔力が避けている。

 何事かと興味深く見つめれば、その空間の中心に一人の男性が裸のまま座り込んで震えていた。


「あなた大丈夫!?」


 思わず声をかける。

 信じられないことにその男性はこんな状況なのに、生きていたのだ。

 

 だが返答はない。

 ただ膝を抱えてガクガクと震えている。


「何があったの!?」

「ひいっ!?」


 ルシエラが近づくと、何かを怖がるように後ろへ後ずさる。

 その時に男性の前に付いているモノまで見えてしまったが、同時にその男性があまりにもみすぼらしい姿をしていることに気がつく。


 間違いなく奴隷だ。

 この部屋に居たのは誰かに売るための展示品としてだろう。


 おそらくその誰かは、横で死んでいる身なりの良い老夫婦だ。

 哀れなのかどうかはさておいて、馴染みのない魔力を過剰摂取して中毒死している。

 ここまで見てきた死体たちと同じ死因だ。

 

 つまりここも本来ならば人が生きてられる空間ではないのだ。


 だがこの奴隷は生きている・・・・

 ルシエラは少し気になって、その男性の横の扉を開けた。

 そこは表の”ショールーム”に奴隷を出すための”待合室”の様で、出番を待っていた奴隷たちがそこで震えていた。

 

 そして当然のように彼等を避けて流れる魔力の流れ。


 これは間違いなく奴隷を避けて流れていると思われた。


「早く逃げて!!」


 ルシエラが大声で指示を出す。

 どっちにしろこんな所にいれば、いずれ建物の倒壊に巻き込まれて死んでしまう。

 見た感じだが、魔力自体が何らかの意思でもって避けているようなので、移動に問題はないだろう。


 だが、奴隷達は恐怖の瞳でルシエラを見つめたまま動こうとしない。


「どうしたの!?」


 すると奴隷の一人が、必死に口をひっかくジェスチャーを始めた。

 そして、もう一人が脚をひっかく。


 なるほど・・・・


「まったく! 手間のかかる!!」


 そう叫びながら、一息に奴隷たちにかかっていた契約魔法を全て破壊する。

 必要な魔力はその辺にいくらでも漂っているので、大盤振る舞いだ。


「これで動けるでしょ! 早く逃げて!」


 そう言うなり、部屋から飛び出す。

 よし、ちゃんとあの奴隷たちも動き出したな。


 おそらく、”喋るな”と”動くな”という命令が入っていたのだろう。


 契約魔法自体は、最低限の簡素なもので魔法士学校の高等部に行った人間などには無力だろう、おそらくどこぞの魔法士が適当に量産した魔法陣を魔力ごと紙に封じた”魔法紙”でも使っているのだろう。


 簡素で弱い魔法しか使えないが、それでも一般人からすれば比較的複雑な魔法を僅かな魔力で使えるのでそれなりに便利なのだが、こんなものルシエラの前では玩具にも劣る代物だ。

 だがそんな簡単なものでも魔法知識のない人間には破ることの出来ない枷になる。

 

 この分だと、他の奴隷も似たような状態だろうな。


 そう考えたルシエラは、そこらの魔力を一気に”ある魔法”を発動するために注ぎ込んだ。

 それは今しがた奴隷の契約魔法を破壊するために使用したものと同じ魔法だ。


 実は先程の奴隷たちは、全員が全く同じ魔法陣で契約されていたのだ。

 そこから、この建物の奴隷が皆同じ魔法陣で契約されたと仮定し、周囲1000ブルほどの空間にその契約魔法陣を破壊する魔法を撒き散らしたのだ。


 これで、この一帯の奴隷たちは一斉に開放されただろう。

 奴隷の主は怒るかもしれないが、それはルシエラの知ったことではない。

 

 文句があるならそんなチャチな魔法陣を使用したことに文句を言ってくれ。


 今は忙しいのだ、いちいち構ってられない。

 そして、ルシエラは声量強化と音量拡大の魔法陣を用意し、そこに向かって力いっぱい叫ぶ。


「逃げろおおおおおお!!!!」


 間違いなく、この地区の半分くらいの人間はこの声を聞いただろう。

 この声を聞いて、契約魔法が切れていてなお逃げないのならば、それはもうルシエラの力の及ぶところでは無い。

 これで後腐れなく、問題の箇所に向かえる。


 その時、建物がまたもグラグラと大きく揺れた。


 どうやら、黒竜とユリウスの取っ組み合いが少々激化してきたようだ。

 今はまだ、ルシエラの掛けた防御魔法が有効なので押さえておけるが、ダメになるまでそれほど時間は残されていないだろう。


 ルシエラは階段を建物の階段を一気に駆け下りた。


 当たり前だが下に行けば行くほど魔力が濃くなっていく。

 その代わりどこから噴き出してくるのかすぐに分かるが、変性量が増えた体の周りの”変性の渦”の光が少し眩しくなってきた。

 

 1階に降りると事態はさらに混迷を極めていた。


 そこら中に大量の死体が転がっていて、その脇を多くのボロや裸の小汚い奴隷たちが駆け抜けていく。

 多少身なりがいいのが混じっているのは、まだここに来て日が浅い連中だろうか?


 とにかくその逃げる奴隷たちと、逆方向にルシエラは走る。

 誰もルシエラを見て足を止めたりはしなかった。

 まあ、止められても困るが。


 そのまま、魔力の流れを辿っていくとある地点から突然周囲の雰囲気が様変わりした。

 これまでは暴れまわる魔力の流れのせいで壊れたりはしてるものの、周囲には高級な雰囲気が漂っていたのだが、ここはそんな雰囲気はなく、ひたすら冷たい質感の床と壁に囲まれた牢屋の鉄格子が続いていた。

 

 どうやらここがこの館の裏の顔のようだ。

 牢屋はとても狭く、その中から奴隷たちが牢屋の扉を必死で揺すって助けを求めている。


「あ、」


 こういうところもあるのか、そりゃ鍵くらい掛かっているよな。


 ええい、乗りかかった船だ。

 魔力も潤沢に使えることだし、これもサービスの範囲だと思っておこう。


 ルシエラは再び巨大な魔法陣を展開させ、解錠魔法を周囲にばらまいた。

 周囲の家の鍵まで見境なく開けてしまう形だが、この魔法が届く範囲は避難地域だし問題ないだろう。


 鍵が空いた途端、中から大量の奴隷たちが飛び出し入り口に向かって廊下に殺到する。

 その勢いに思わず脇に避けてしまった。

 そしてその横を奴隷たちが走り去っていくのを眺める。


 それにしてもこんな時でも魔力の流れは器用に奴隷たち・・・今はルシエラが解除したので元奴隷たちを避けて流れていく。

 こういうところは本当に丁寧な魔力調整だ、どういう風に認識しているのかは分からないが、とにかくこの魔力の本体は攻撃したい者としたくない者を明確に区別しているらしい。


 まあ、そうなるとその攻撃したい者の中にルシエラも入ってしまうことになるのだが、そのおかげでいつもは使えない大量の魔力を使い放題出来るので、仕方ないと考えていた。


 しばらくすると比較的元気な奴隷たちが、動けない奴隷を抱えて通り過ぎる事が多くなった。


 どうやらここより先は、比較的健康状態の良くない奴隷を収容しているようだ。

 だが本体はさらにその奥・・・

 さらに奥の方に向かって進んでいくと、魔力の量はいよいよあまりにも濃すぎて数歩先が見通せないほどにまでなってきた。


 そして奴隷達を避けようとはしているが、それでもわずかに漏れた魔力だけで致死量に達したのかこの辺りからは奴隷達も死んでいた。


 だが見た感じ、そうでなくても長くはなかったのではないかと思える人が多いが・・・・


 そして、あまりに魔力が濃すぎてもはや完全に中の様子は見えないが、廊下の突き当りの部屋に魔力の流れの中心があることは感じられた。

 この中は一体どうなっているのかと、内部に入ると”変性の渦”の輝きが一層眩しいものになり思わず目をしかめてしまう。

 だが、これほど明るいのにもかかわらず、伸ばした自分の手すら見えないほど周囲は真っ黒だ。

 

『急に奴隷たちが建物から飛び出してきたが、中はどうなっている!?』


 その時、アンジェロからの通信が脳内に響き渡る。

 いきなり声を掛けられると、ビックリしてしまうのでもう少し音量を絞って欲しいが、その声は事態の切迫さを孕んでいた。


「外の様子は? 黒竜はちゃんと押さえられていますか?」

『ああ、ずっと君の竜に噛み付いたままだが、そっちはどうなんだ!?』

「私の方は、これから”本体”に取り掛かるところです」


 そう言ってルシエラは魔力の中心に向かって手を伸ばす。

 そしてその手が”本体”と思われる人の肌に触れた。


 そのまま、確かめるように手を動かす。


 胸、頭、肩、腹、腕、脚・・・


 流れる魔力のせいで全く見えないが、どうやらそれが小さな少女の体ということはわかった。

 体の大きさからして恐らくは記憶にある、寝ぼけながら見たあの女の子だろう。

 だが、既に皮膚の一部から液体のようなものが漏れている。

 さっと手を目の前に持ってくれば、ルシエラの手にベッタリと血がついていた。


 おそらく魔力暴走による破壊が始まっているのだろう。

 こうなるとそれほど長い時間は保たない。

 だがスキル保有者の魔力暴走は死んだとしてもそこでは止まらない、体そのものが制御機構も兼ねているので本格的に身体の破壊が始まると暴走がより顕著なものになり、体から完全に魔力が消費されるまで、どんどんその暴走の度合を強めていくのだ。

 

 そしてこの少女の体にはまだまだ魔力が有り余っていることが感じられる。


 こうなると迂闊にこの少女を殺すという選択肢も取れない。

 ルシエラは最初、最悪の場合は躊躇なくその選択肢を取る気でいたのだが、瞬間的にこの少女を消滅でもさせない限り、”体”という制御装置を失った魔力が、一気に開放されて周囲が焦土と化すのは目に見えている。


 となると、制御できる状態に戻すしか無いが、そもそもそれが出来ないからこうなっているわけで。


 試しに何処かに魔水晶がないか弄ってみるも、この少女がベッドに固定されているという新事実が発覚しただけで、魔水晶と思われるものは見つからなかった。

 右手にはめ込んでいたと思われる跡があったので、そこに嵌っていたのだろうが、今はそこにはない。


 ということはやはり制御用の魔水晶を失ったスキルが暴走してこういう形になったのか。


 それに、ベッドに固定されいているという事実も見逃せない。

 おそらく黒竜がこの館から動けない理由がこれだろう。

 

 黒竜には知能が殆ど無いので、本体の拘束を解くという発想がないのだ。

 もっとも、本体を傷つけずに拘束を解けるほど、あの黒竜が器用には見えないが。


 しかし参ったな・・・


 制御用の魔水晶が何処か近くに落ちていれば嵌めるだけで済むのだが、そんなわけもなく。

 かといって、魔水晶なしに取れる手段は殆ど無い。

 ここは一旦引き返して、魔力が尽きるまで放置するか・・・・


 その時、建物が大きく振動した。


『ルシエラさん!!! 建物が崩れます!!!!!』


 そしてアンジェロの警告が脳内に木霊した。




 轟音と粉塵を巻き上げ、さらに何やら怪物の叫び声のようなものが木霊する”奴隷の館”から少し離れた路地の一角では、何事かと集まってくる野次馬と、現場から命からがら逃げ出してきた者達が入り混じり普段からは考えられないほどごった返していた。


 そしてその人混みをかき分けるように、背骨の曲がった小男がその背をさらに曲げて、地面を睨みながら怒鳴り散らしていた。


「どけよお前ら!!! 俺の大事なものが落ちてるんだ!!! こんな所に居ないで、ふぶへっ!?」


 だが、あまりにも大勢の人が押し合い怒鳴り合っているなかで、その声はあまりにも小さい。

 すぐに誰かよくわからない者の肘によって遮られてしまった。


「・・・んが、っくそ!!!」


 だがそれに負けてなるものかと、目の前の人間を押しのける。

 あの魔水晶を売れば確実に数十万にはなるのだ、こんなところで失くすわけにはいかない。



「「「うわああああああ」」」


 その時周囲が一気に明るくなり、その場に居た人々が一斉に大きな声を上げて逃げ始めた。

 そしてその流れに為す術もなく飲み込まれる小男。

 だが同時に今の光で道路の端に、わずかに残る硬貨と、目的のどこまでも澄んだ輝きを見つけることが出来た。


「みつけ・・・・」


 そして次の瞬間、鼓膜が破れるかというほどの音量で衝撃波がその場を駆け抜けた。


「うあわあああ!!!!」


 その勢いに押され、多くの者が道に将棋倒しになる。

 その中には当然のように小男も含まれていた。


 だが、多くの者にのし掛かられながらでも、執念で目的を見失うことはなかった。


「うんぐっ・・・・ふんぐっ・・・・・」


 地べたを這いながら、目的地に向かっていく。

 だが、そこら中に人が倒れ伏せっていて、当然のように魔水晶のところにも人が倒れていた。


「それは・・・・おれのだ!!!」


 小男は自分でも考えられないほど大きな力で以って、自分の上に倒れていた男を押しのけるとそのまま、多くの人を踏みつけながら魔水晶のある場所にかけより、そこに倒れていた身なりの良い男を突き飛ばした。


 突き飛ばされた男が、悲鳴を上げながら目の前の壁に叩きつけられ向こう側に倒れたが、そんなことに構ってはいられないと、小男は地面に手を付けながら魔水晶を探す。


「あった!!」


 思わず歓喜の声を上げる。

 それはあまりにもあっけなく見つかった。


 小男の手には再び、魔水晶の滑らかな感触が広がった。


「ああ、よかった・・・・」


 まるで慈しむように、小男が魔水晶の表面を撫でながる。

 その安堵に夢中なせいで、煙の向こうに巨大な青い竜が飛び上がっても、そのことに恐れおののいた人々が必死に逃げようともがいていても、気にもとめなかった。


 そして自分の後ろに全身から怒りの感情を漂わせるパンテシアが、静かに近づいてくることにも・・・・



連続投稿7発目

※只今、話が一段落着くまでの間を一気に通過するための連続投稿を行っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ