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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第3部 大地の章

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月に想いを馳せし者5※R15

いつもお読みいただき、ありがとうございます♪ブクマや評価、感想等、大変励みになっております。


作者の力量不足で6まであります。ごめんなさい……。


ルーナの付き人ヘンゼルの視点で話が進みます。

読者様によってはご不快な表現や、辛い記憶を想起させる内容となっておりますので、ご注意下さい。ご了承いただけるかただけ、お読みになってください。大変ご迷惑をおかけ致します。

この話を読めずとも、本編はお楽しみいただけます(^^)



 ヘンゼルは『料亭白薔薇』で一番人気だ。そのため、個人の部屋を与えられている。そこにグレーテルと一緒に暮らしていた。

 仕事が終わり、朝少しだけ眠った後に眼を覚ます。だが、近くに妹の姿はない。

 今日は昼間、久しぶりに買い物に行こうと二人で約束していた。

 恐らく裏庭だろうと思い、ヘンゼルは部屋から出た。

 彼女は、裏庭で短刀を投げる妹を発見する。

 貧民街では、歩いているだけで善からぬ相手に出くわすことがある。この街では、女子どもだからと言って容赦はしてくれない。

 それに娼館で働いていると、女性をいたぶるのが趣味の男が来たりもする。客に誤って殺される女を、ヘンゼルは何度か見たことがある。


 自分の身は、自分で守らないといけない。


 自衛のため、ここに勤める娼婦達は、護身術を学ぶ。

 娼婦の中には魔力を持つものもいたが、字が読めない者も多い。魔術書が読めずに、力を行使出来ない者も少なくない。

 姉妹は、字を理解は出来たが、魔力がないため、女性でも扱いやすい武器の扱いを学んでいた。


 妹は一人で訓練しているものと思っていたが、他に人がいた。

 確か客寄せの男だったと思う。彼の名は知らない。切れ長の瞳を持つグレーテルよりも、さらに細い目をした男だ。年齢は、ヘンゼルより少し若い気がする。

 視線に気付いたようだ。グレーテルと細目の男が、ヘンゼルの方を振り向いた。

 男が、「じゃあ、今日はこれで」と言って、立ち去っていく。

 グレーテルは、その背に声をかけた。


「やっぱり、避けるのがお上手ですね~~ありがとうございました~~またよろしくお願いしま~~す」


 その声に振り返った男は、笑顔になった。そして、その場から去った。

 娼館で勤める男と懇意になる女は、わりといる。だが、両者とも不幸になることが多い。

 自分の妹もそうならない事を祈るばかりだった。




※※※




「私とグレーテルを引き取りたい?」


 昼間、出掛けようとする二人に、料亭の主人が声を掛けてきた。


「ああ、そうだ。あの美しいお方が、お前だけでなく、妹もと仰っていた。心の広いかたがいらっしゃって良かったな、ヘンゼル」


 主人にそう言われ、ヘンゼルは半信半疑だった。

 けれども、夜に現れた青年から、同じ事をお願いされた。しかも、二人を一旦男爵家に養子に出してからだと話す。

 二人とも引き取るなど、相当な大金がかかるはずだ。

 昔の自分なら、そんな都合の良い話はないと思い、断っていたかもしれない。

 愛人として貴族に引き取られる娼婦もいるにはいたが、幸せになった話を聞いたことがない。


 だが、この優しい彼がそう言ってくれるなら、信じて良いのかもしれない。


 今まで聞いてはいなかったが、彼に妻や恋人がいるのか気になり尋ねた。そうしたところ、青年からは「今は、妻や恋人はいない」という返答があった。

 そしてヘンゼルは、ルーナに何か御礼がしたいと言って身体を開いた。一度断りを入れられたが、懇願すると受け入れてくれた。口づけ合うことはなかった。だが、ヘンゼルは、彼と体が繋がれただけで満足だった。

 ヘンゼルは浮き足だった。まるで少女に戻ったような気持ちだ。

 ヘンゼルは、名も知らない青年の事を信頼しきっていた。

 彼女の期待も、どんどん高まっていく。

 出自が出自なので、正妻にはなれないかもしれない。けれども、愛妾にはなれるかもしれない。

 彼女は絶頂の中にいた。

 ヘンゼルは浮かれすぎて、状況を客観視出来なくなっていた。




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