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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第3部 大地の章

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月に想いを馳せし者4※R15

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます。ブクマ等本当にありがとうございます♪励みになります。

引き続き、今回も人によっては苦手としたり、辛いことを想起させる内容になっております。

ご了承くださり、先に進んでいただければ幸いです。



「貴方は……」


 ヘンゼルは目を見開いた。

 娼館の玄関前に立つ男は――。

 以前、グレーテルを追いかけた時に出会った、白金色の髪と蒼い瞳をした青年だった。

 数瞬固まった後、ヘンゼルは女性陣の視線に気付き、慌てて主人に声をかける。客室へ行って良いと言われた。青年の手を引いて、急いで部屋の中に連れていく。



「なんでこんなところに? 貴方、絶対に女性に困る類いの男性には見えないのだけど?」


 特に青年からの返答はない。肯定といって差し支えはないだろう。亜麻色の髪の少女然り、老若男女問わずに魅了する美しさを持っている。

 店の玄関先で、女達が騒ぐのも分かる。ただでさえ、若い客は少なく喜ばれる。こんな美貌の持ち主なら尚更だ。


「ちょっと理由があってね」


 そう言って、青年はおもむろに、衣服の襟元を緩めだした。

 予想より展開が早くて、ヘンゼルは少しだけ驚く。まあ、そう言う店ではあるのだが、性急すぎはしないか。わりと若い男性だと、事に至る前に話しかけてくれる男達が多かったので、少しだけびっくりしてしまった。

 青年は上衣を脱いで、近くにあった椅子にかけた。

 そしてヘンゼルの居る寝台の近くまで歩いてくる。

 彼女に、少しだけだが生娘の頃のような緊張が走る。


と思いきや――。


 青年は、そのまま一人で寝台に突っ伏した。


 ヘンゼルは身構えていたため、呆気にとられる。


「疲れている。ここで休ませてほしい」


 そう言うと、彼はそのまま寝てしまった。


 彼女には他にも客の予定があったはずだ。料亭の主人の元へ、確認に向かう。

 青年は、明日の朝までの分、金を払っているらしい。

 主人はにやついていた。キャンセルになった客達の料金や、賠償金やらを差し引いても、余りある値段だったようだ。

 部屋に戻ると、寝息を立てながら青年は眠っていた。結局、翌朝まで、彼が起きることはなかった。




※※※




 それ以降、週に一度は青年がヘンゼルの元に訪れるようになった。

 だが、やはりただ訪れて朝まで休むだけだ。


 時々起きている日があり、そういう時は話をした。


 青年は頑なに名乗らなかった。が、年はヘンゼルと同い年位で十八~九だと言うことが分かった。

 彼女と同じように、読書がわりと好きな事も知った。少しずつだが、彼に関心がわいた。

 彼が来る日は、他の客を取らずにすむ。

 もう慣れてきていたと思っていたが、やはり見知らぬ男達に身体を預けるのに疲れていたようだ。

 彼女としては、彼がいる日は心身共に安らぐような気持ちになれる。

 ヘンゼルは次第に、青年が自分の元へいつ来るのかと期待するようになっていた。




※※※




 ある時、彼は仕えているティエラという令嬢の話をしてくれた。

 青年とは別に、彼女に仕えている少年がいるらしい。ティエラと少年はよく喧嘩をするらしいが仲が良く、少しだけ羨ましいと感じていると、彼は話していた。


「彼女のことは、もう家族だと思っている。とても大事な方なんだ」


(もう家族?)


 少しだけ引っ掛かりのある言い方だった。

 ぞっとするほど美しい表情で、青年は令嬢の話をしていた。

 仕える主に忠誠を誓っているのだろうと、その時のヘンゼルは思っていた。






すみません、ヘンゼル視点からみた過去編四部作にするつもりが、作者の見通しの甘さにより五部作になります。

次回で終わり次第、先に進みますので、どうぞよろしくお願いいたします♪

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