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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第3部 大地の章

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月に想いを馳せし者1



「どうもノワ様が、例の石を使って、何か企んでるみたいですね。あの方、分かりやすいですよね」


 執務室に座るルーナに向かい、ウムブラが報告を行う。

 彼の隣では、ヘンゼルが黙ったまま話を聞いていた。


「ルーナ様、わざとでしょう?」


「さあ、義兄上のことまでは、私には分かりかねる」


 視線をそらしながら、ルーナがウムブラに返答する。白金の睫毛が瞬いた。

 そんなルーナを見たウムブラは苦笑する。

 ヘンゼルは静かに二人のやりとりを眺めている。


「二人とも、報告はもう良い」


 「「分かりました」」


 口を揃え、ウムブラとヘンゼルは部屋を後にした。

 二人はそのまま、廊下を無言で歩く。

 ウムブラは、ヘンゼルをじろじろ見た後に、おもむろに口を開いた。


「ヘンゼル、今日はルーナ様からのお呼び出しがありませんでしたね」


 それを受けて、ヘンゼルがウムブラを睨み付けた。


「それが? 貴方、いつも私に何が言いたいの?」


「いえ、私も若い人達と話をしたいなと思いましてね」


「適当なことを言わないで」


 ヘンゼルは眉根を寄せる。

 ウムブラは嘆息して続けた。


「姫様が不在で、貴女が呼ばれる回数も多いでしょう。今が好機なんじゃないですか? 準備が出来次第、姫様をお迎えに行かれるようだし。そうなれば色々と難しくなりますよ」


 ヘンゼルはウムブラを無視して、そのまま歩きだした。


「まあ、貴女とは違って、私はあんなに重い愛は欲しくありませんがね。姫様も可哀想だ」


 ウムブラの軽口に、ヘンゼルは釘をさした。


「不敬ではなくて?」


 そう言って、ウムブラを置いて廊下を進んだ。


 ヘンゼルは、自分が城に仕えるようになった頃のことを思い出した――。




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