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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第3部 大地の章

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第71話 地下水路にて

夜中眠れずに書いてみました。

ちょっと穏やかな回です。




 ウルブの城の地下水路にて――。


 フロースが教えてくれた後、ティエラとソル、グレーテルにアルクダの四人で、隠し扉を通った。


 そのはずだったのだが――。


「ソル、グレーテルとアルクダさんは無事かしら……?」


「は? ああ……あいつらなら、適当にやってるだろ」


 ――なぜか今、ティエラはソルと二人で、水路を歩いていた。



 地下水路の中は真っ暗だった。

 そのため、落ちていた松明にソルが魔術で火を点けて、周囲を照らしながら歩いていた。


 どうやら、この地下水路は昔からあるようだ。じめじめとしていて、ところどころ苔がむしている。汚水が流れているため、匂いもきつい。

 時々、ネズミなどの動物が肥大化し魔物になったものが出る。

 それらをソルが神剣で倒しながら進んでいっていた。




※※※




 ちなみに、二人になった経緯はこうだ――。


「いや~~ん、匂いがきついです~~。グレーテルの髪に匂いがついちゃいます~~。もう無理です~~」


 地下水路の匂いに圧倒されたグレーテルは嘆いていた。

 そのわりに、魔物などが出てくると、嬉々として彼女は敵に短剣を投げつける。

 ソルもそうだが、彼女も戦闘が好きなようだった。


 糸目の男アルクダはというと――。

 ソルとグレーテルが倒した魔物から、何か金目の物がないか、彼はごそごそと探っていた。


「アルクダさん、何をやっているんですか?」


 ティエラが問うと、気だるげな調子で答えてくれる。


「魔物は体内にいいものを時々持ってるんで、もったいないんですよ」


 どうもアルクダは、ちゃっかりした性格のようだった。


 しばらく四人で歩いていると、ひときわ大きな犬が変形した魔物が出現する。


「グレーテル、いきま~~す」


 魔物を見て気分が高揚したグレーテルが、勢いよく魔物に走りかかった。

 魔物の首を、彼女が短刀で切り裂く。

 その勢いのまま空中で回転したグレーテルが地面に着地しようとした――。


 その時――。


 地下道路の足場がガラガラと崩れた――。


「いや~~ん!!!」


 グレーテルの足場が崩れた事に気付いたアルクダが駆ける。


「グレーテルさん!」


 いつものアルクダからは想像がつかない程動きが速く、ティエラは驚化された。


 そして――。


「きゃ〜〜〜〜っ!」

「わ〜〜〜〜っ!」


 そのまま地下道路のさらに下の道へと、二人は落ちていったのだった。


「あいつらは……」


 ソルがぼやく。

 かろうじて下の階からグレーテルとアルクダの声は聞こえた。

 どうやら二人に怪我はなかったようだ。


 結局、二手に別れ、後から四人で合流することになったのだった――。




※※※




 ソルとティエラの二人はは、暗い足場を歩いていた。


 彼の松明を持っていない方の腕に、彼女はしがみつくようにして歩む。


「ねえ、ソル……あの二人、本当に大丈夫なの?」


 そう問うと、またため息をついたソルが返答した。


「いつもあんなんだから、大丈夫だって」


(いつものやれやれと言った調子ね……あまり気にしない方が良いのかもしれない)


 二人が歩いている途中、水路の脇に部屋のようなものがあった――。


 部屋の中に入ると、簡易的な寝台も備えてあるうえに、特殊な魔力が働いているのか魔物も近付かず、汚水から離れているため匂いも少ない。


(非常時のために確保された場所かしら?)


 部屋で二人は一旦休むことにした。


 松明をソルが壁にかけると、部屋全体がほんのりと明るくなる。


 二人して寝台に腰かけた。


「あんた、疲れたろ?」


「うん……ちょっと疲れちゃったかな?」


 今朝、村を出てから怒濤の連続だった。


 ティエラの疲労は限界に近い。


「ちょうど部屋があったし、俺が外の方見てるから、あんたは休んでろよ」


 そう言われたティエラは、少し甘えることにした。

 ソルの肩へと、彼女は頭を置いてもたれかかった。


「――あんた、横にならなくて良いか?」


「うん……こっちの方が落ち着くから」


「――そうか」


 そうして、ティエラはソルに寄りかかる。

 段々と、彼女はうとうとしはじめる。


「相変わらず、無防備だな」


 微睡みの中で、ソルの穏やかな声がティエラの耳に届いたのだった。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 出現する魔物の描写なのですが、あれだと動物と魔物別々にいる表現になると思います。 多分、ネズミなどの魔物が何らかの方法で肥大化して魔物になったという解釈だと思うので、誤字脱字報告させて…
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