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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第3部 大地の章

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第69話 決断の時




「予定もないのに現れおって……! あのバカが……!」


 宰相ノワの突然の来訪に対して、女領主フロースは怒りを顕にする。


「すぐには対応出来んと言うて、しばらく待たせておけ!」


 応答した騎士は、すぐに部屋から出ていった。

 フロースは頭を抱える。


「またですか、ノワ様は……」


 女騎士アリスがぼやいた。


(そういえば……フロース叔母様のところにノワ・セレーネがよく訪ねているって、ニンブス村の麓のおばさんが言ってたわね……)


 村での会話をティエラは思い出す。


「やはり――山賊らに『力』を渡したのは――」


 フロースは、さらに悩んでいるようだ。


「は~~い、グレーテル! 壁の外で、ノワ様のとこの執事さんとさっきの山賊さん達が、お話してるの見ました~~! ね、アルクダさん」


「そうなんですよ……、その時、紅い髪の男がどうとかって言ってたから、僕たちそいつらの跡を追うことにしたんです。ですよね~~グレーテルさん」


「お前たち、それは本当か?」


 グレーテル、アルクダ、アリスが順に話した。


「は~~い。それで後をつけたら、お城の辺りをうろうろしてたので、グレーテル達はお城に入るために色々頑張ったんですよ~~」


「ね~~」


「そうか――情報感謝するぞえ、お前達」


 グレーテルとアルクダに対し、フロースは感謝を述べた。


(いまいち状況が理解できない……)



「今日の昼に、派手にやり過ぎたか?」



 ソルが呟く。

 フロースがそれに反応した。


「小僧、どうせお前のことじゃ、山賊達に絡まれてど派手にやったんじゃろ?」


「そうかもな」


 ソルの返答に、フロースが頭を横に振る。


「おそらく、狐の放った斥候か何かが、お前らと山賊達が闘うのを見ていたんじゃろう。それでバカ……ノワがそれを聞き、山賊達をけしかけたというところかの……」


 フロースの話に、ティエラは疑問を抱いた。


「いくら私達に気付いたからって、フロース叔母様のお城の中に賊を侵入させるなんて、やりすぎなんじゃ……」


 ティエラの疑問に、ソルが答えた。


「警告だろ」


 彼の答えを、フロースが拾う。


「小僧の言う通りじゃ。旦那様が亡くなって、わらわはこの領地をそのまま守らせてもらっておる。だが、玉の一族に支援を受けているからこそ、なんとかなっておるのじゃ」


「それじゃあ、フロース叔母様……」


「わらわがお前達を城の中に招き入れたのを知った上で、お前達を庇い立てするようなら、支援はしないぞ、という脅しじゃろうて」


 フロースがため息をついた。

 女性の身の上でありながら、ウルブの都の統治を、彼女は任されている。ただ、元々の王族でない上に女だと、フロースが領主であることを反対する者もいるのだろう。


「ティエラ、お前はどうしたい? 前向きに捉えればじゃが……ノワにお前を引き渡しさえすれば、お前は自分の城に戻れるとも言える……。お前に自由はないかもしれんが……」


 フロースから、ティエラは問いかけられる。


 また、後ろから扉を叩く音が聞こえた。


「フロース様、『まだか?』と城の外でノワ様が騒いでおりまして……」


 入室した騎士が、フロースに報告する。


 彼女はしばし思案する――。



「もう引き留めるのは無理か――分かった、ノワを城に入れろ」



 フロースは騎士に命じた。


 アルクダとグレーテルは顔を見合わせている。


 ソルの手を、ティエラはぎゅっと握った。



「どうするのじゃ、ティエラよ」




 ティエラに決断の時が迫っていた。




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