第66話 国王暗殺の謎1
いつもみてくださっている皆様ありがとうございます。
いつも細切れ投稿で申し訳ありません。
ちょっと今回も区切りが悪いかも知れず、ご迷惑をお掛け致します。
どうぞよろしくお願いいたします。
国王が暗殺された日の夕暮れ時――。
ソルとティエラの二人は、彼女の部屋にある寝椅子に腰かけて会話をしていた。
「今日の夜、ルーナがあんたと二人で話があるって?」
ソルは、怪訝な顔を浮かべる。
「うん、そうなの……お父様の元で話をしたいって……」
ティエラは目を伏せる。
ここ数日、彼女はよく考え事をしているようだった。しばらく前から食事が入らないと言い、少しだけ頬もこけてきている。
「話ってなんだよ?」
「分からない。お父様の体調のことかしら……それとも、あと三月もしたら婚礼の儀をあげるから、そのことかな……お父様にも、彼との婚約について相談はしたんだけど……」
憂いを帯びた表情を、ティエラは浮かべるようになった。彼女を見ていると、ソルの心も軋むような気がする。
「もうすぐ、お父様もいなくなって……」
ティエラの瞳に陰が落ちる。
「このままじゃ、ソルも誰かと……」
思わずソルは、ティエラを抱き締めていた。
腕の中にある彼女の身体は、以前よりも痩せてしまっている。
彼女にどう言葉をかけて良いのか、ソルには分からない。
彼にはティエラを抱き締めることしか出来なかった。
※※※
どれだけの時間が経っただろうか――。
「ルーナとの約束の時間が近いから」
ティエラにそう言われるまで、ソルは時間を忘れてしまっていた。
部屋を出る前にティエラがねだってきたので、ソルは何時ものように口付ける。
ルーナへの罪悪感がないとは言えない。
けれども、恋する女性から求められて、ソルは拒むことが出来ずにいた。自己嫌悪に陥ることもある。
二人して部屋を出た後に、ルーナの元へ向かった。
「姫様を送り届けてくれてありがとう、ソル。行きましょう、姫様」
ソルの名を呼ぶことや、感謝をしてくることなど、ルーナはほとんどしない。妙な違和感はあった。
ティエラの肩を抱いて、国王と約束しているという玉座の間へとルーナは向かおうとする。
振り向いたティエラはソルに声を掛けた。
「ソル――また後から迎えに来てね」
忘れもしない。
今までの彼女ではない位、その声は弱いものだった。
この時、ルーナにティエラを預けたことを、ソルは大きく後悔することになる。
※※※
玉座の間へと向かう廊下で、ソルは待っていた。
二人が国王に会いに行ってしばらく経つ。だけど、なかなか玉座の間から帰っては来ない。
苛立ちながら、ソルはティエラの帰りを待っていた。
その時――。
玉座の間から、ティエラの叫び声が聞こえる。
「何があった?!」
慌ててソルは走った。
心臓が早鐘のように鳴る。
音を立てて、玉座の間へと続く扉を開いた。
部屋へとなだれ込むようにして入る。
まず彼の目に入ったのは、玉座に倒れる国王の姿だった。
血だまりの中に王が倒れている。
「国王様!」
ソルは叫びながら、神剣を構える。
(ルーナがいてどうして!? ティエラは――!?)
慌てて周囲を見る。
神鏡を安置している宝物庫へ向かう道――。
そこに――ルーナとティエラはいた。
ティエラは地面に倒れている。
彼女を見下ろすようにして、ルーナは立っていた。
「ルーナ!」
ソルの叫びと同時に、ティエラが魔術陣に囚われてしまう。
「ティエラ!」
そして――。
――ルーナがゆっくりと、ソルへと振り返る。
彼が手に持っていたのは――。
――血にまみれた細剣だった。




