表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第3部 大地の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/289

第62話 優柔不断な幼馴染み




 突然現れたフロースに、ティエラは驚かされる。


「フロース叔母様!? 一体どこから……?」


「ここは私の城なのじゃから、隠し通路の一つや二つはあるものぞ」


 優雅に扇をあおぐフロースは、ティエラの問いに淡々と答える。


(一体いつから見ていたんだろう……?)


 考えたら、ティエラは一気に恥ずかしくなってきた。

 顔を真っ赤にしている彼女とは違い、ソルはやれやれと言った表情でフロースの方を見ている。


「相変わらず悪趣味だな……」


 ぼそりとソルは呟いた。


「中途半端な行動しか取らぬ小僧に言われてものう」


 ソルの嫌みをしっかり拾ったフロースは、微笑を浮かべながら答えた。彼女の口は一応笑みの形を作っているものの、その瞳には剣呑な光が宿っている。



「とる行動、全て中途半端じゃ。ティエラへの想いは隠せない、剣の一族の決まりがあるから結ばれない、自分は他の女を娶るからそれまで。婚約者のいる女に手を出すのが楽しいだけにしか、私の眼には映らなんだ。ティエラがあれだけ散々悩んでおったというに……あの狐とさして変わらぬ」



 ソルは黙ってそれを聞いていた。

 フロースは彼へと畳み掛けるように続ける。


「ヘリオス殿のように、姫を連れて逃げることもしない。他に一緒になる方法があるやもしれぬというに……それすらも探そうとはしない。一度でも、お前は他の道を探したことがあるのか、小僧よ? やはり玉の狐の方が幾分かマシじゃ……」


 黙ったままのソルの表情からは、何を考えているのかティエラには分からなかった。


「小僧……お前はティエラのためとは言いながら、自分を守っていただけじゃ」


 ティエラが割って入る。


「叔母様! 確かに、私も悩んではいたけど……! アリスさんの事とか、叔母様に以前たずねたりしたけど……でも……」


 フロースが「おや?」と言った顔をした。


「ティエラは、アリスのことを覚えとらんように思っていたが、わりと最近のことも覚えておるようじゃな?」


 ティエラも言われて気づく。


(そう言えば、ソルへの気持ちだけじゃなくて、アリスさんのことも思い出している)


「あんた、記憶が……」


 ソルはティエラを見た。


(何だろう、いつも記憶を思い出す時、私は何か……何を……)


 考えているティエラに、フロースが声をかけた。


「して、ティエラは一体どこまで覚えておるのじゃ?」


 そう問いかけられたため、ティエラが返事をしようとした時――。



 唐突に、正面の扉が開かれた。


 女騎士アリスが慌てて部屋に入ってくる。



「大変です! フロース様!」



 その言葉で、三人の緊張は一気に高まる。



「どうしたのじゃ? アリス」



「それが、城に……!」




 その時――。



 扉の向こうから、誰かの叫び声が聞こえた。



「――何だお前たちは?!」



 フロースが叫ぶ。


 部屋の外からは、怒声と剣戟の音――。


(な、なに……?)


 ティエラの身体に緊張が走る。

 ソルが彼女の身体を抱き寄せた。



「話は後じゃ!」



 フロースとアリスが、部屋から飛び出ていく。

 ティエラをいつものように抱きかかえたソルが、神剣を手にとった。



(一体何が起こっているの…?!)



 ティエラはソルにしがみつくことしか出来なかった――。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ