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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第2部 太陽の章

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第55話 フロースとアリス




「そなたらは何をしている?」


 馬車の中から出てきた女性は、ティエラとソルに対してそう問いかけてきた。

 彼女は黒髪を高い位置で結い上げており、はらりと額に落ちる髪はゆるく波打っている。

 垂れ気味の目尻の彼女は、穏やかな表情をティエラに対して向けていた。

 女性が手に持つ扇。そちらから時折覗く唇は、ふっくらとして赤かった。


(この女性……)


 ティエラが覚えている記憶よりは年齢を重ねてはいる。


 だが、この美しい女性は――。


「フロース叔母様!」


 名を呼ばれた彼女は、口の端をゆるりと上げる。


「ティエラ、久しいな」


 フロースと呼ばれた彼女は、ゆっくりとした口調でティエラに返答した。


(相変わらず独特の話し方ね、フロース叔母様は)


 フロースはソルをちらりと一瞥すると、すぐにティエラに視線を戻した。


「――フロース様!」

 

 フロースの背後にいた女性騎士が叫ぶ。

 彼女は心配そうにフロースに近寄った。

 女性の騎士に髪を結い上げている者が多い中、その女騎士はさらりとした長い金の髪をそのまま腰まで下ろしていた。 


(美人な女騎士ね……)


 フロースが愉快げに、女騎士に話しかける。


「ほらアリス、やはりティエラ達だったぞ」


 アリスと呼ばれた女性騎士は、ティエラではなく、まずソルを見た。そうして、彼女は彼に大声で怒鳴りつける。


「ソル! ここ二月ほど、お前はいったい何をやっていた!?」


「は? さあな、教えねえよ」


 彼は面倒くさそうに、彼女に返した。


(あれ……?)


 ティエラは、ソルの言動に違和感があった。


(ソルは一応、人前では礼儀正しくて丁寧な騎士として通しているはず……)


 そんな彼は、ティエラのように近しい存在の前では、本来の無礼な言葉遣いになる。

 そのソルが、アリスに対してはわりと荒い切り返しをしたのだ。


(騎士団のお知合いかしら……?)


 ティエラは、胸の奥がもやもやとするのを感じた。

 アリスは、そんなティエラを見てはっとした様子となる。アリスはあわてて、ティエラに対して深々と頭を垂れた。


「姫様! 申し訳ございません!」


「大丈夫ですよ、顔をあげてください」


 頭を上げたアリスと、ティエラは目が合う。

 アリスは、猫のような蒼い眼の持ち主だった。

 その瞳の色を見て、ティエラはルーナのことを思い出してしまう。

 無意識にソルの手を握っていたことにも気づき、ティエラはぱっと手を離した。


「ティエラ、どうした?」


「なんでもない……」


 ティエラは顔を赤くして俯く。


 そんな二人のやりとりを、アリスは遠くからじっと眺めていた。



「さて……」



 そう切り出したのはフロースだ。

 彼女は扇をぱちんとたたむと、瞳に鋭い光が宿る。


「それで、行方不明になっているというティエラと、神器を持ち出して逃げたという剣の小僧がここにいるわけだが――」


 ティエラとソルを交互に見やる。


「さては、お前たちも私情を優先して、国の定めから逃げたのではあるまいな?」


 ティエラは息を呑んだ。

 彼女の体は、ソルに引き寄せられる。


「国から――というよりも狐から、お前たちを見つけ次第捕えよと言う通達が出ておる……」


(狐……?)


 フロースは目を眇めながら、ティエラとソルの二人を睨みつける。


「さて、どう対応したらよいものだろうか……? のう、我が愛しき姪御ティエラと、生意気な剣の小僧よ――」




 ティエラとソルは、どう答えれば彼女にとっての正解なのかが分からずに、その場に立ち尽くしたのだった――。




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