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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第2部 太陽の章

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第53話 ウルブの都……怒らない?

 ソルが盗賊を倒した後、二人は寄り道などはせず、街道を南にまっすぐに歩いた。

 街道で二人が歩いていると、馬車や馬が駆け抜けていくこともあった。

 ニンブス山の麓の村で、二人も馬が借りれないか打診したが、生憎すべての馬が出払っていた。

 そのため二人は、村からウルブの都まで、徒歩の旅になったのだった。

 おかげで盗賊と再度出くわしたわけだが…。

 ソルにとっては良い運動になったらしく、結果は良好となった。


 太陽が南中に見える。

 二人が荒野を抜けると、遠くにウルブの都の城壁が見えてきた。


「……! ……大きいわね!」


 ティエラが感嘆の声をあげる。

 彼女の喜ぶ顔をみて、ソルも破顔する。


「首都ほどじゃないけどな。昔は、ウルブが首都だった頃があったそうだ」


 ソルの説明を聞き、ティエラはそれもそうだと納得した。

 ウルブの都は、とにかく大きかった。

 おそらく、村十個、いや二十個分の規模はあると推察された。


 さらに二人は歩いた。

 城壁に到着した頃には、南中にあった太陽が、すでに西に傾き始めていた。

 ティエラは、正門から離れた位置に立ち、ウルブの都の城壁を見上げる。

 壁は、まるで空に届くのではないかと錯覚してしまうほどの高さがある。


 門に近付くと、騎士二人が守りを固めているのが遠目で分かった。


「ソル、騎士がいるけど、知り合いだったりしない?」


「少なくとも俺は知らないな」


 ティエラは「それなら安心ね」と言おうとしたが……。


「もちろん、あいつらは俺のことを知ってるだろうな」


 そうソルに言われ「やっばりか」と、ティエラは肩を落とした。


 ソルは剣の守護者である。

 それに加え、剣の一族の次期当主、騎士団長の息子、次期騎士団長、王国最強の剣士、ティエラの護衛騎士……。


 とにかく称号が多い。


 この王国の騎士団の中で、ソルを知らない者を探す方が困難だと言っても過言ではない。

 むしろ、王女のティエラの方が、あまり顔を知られていないだろう。


 以前、城で御針子達が、「ティエラ様とソル様がお忍びで城下街に来ていた」話をしていた。

 きっとティエラとソルは、全く忍べていなかったに違いない……。


「おい、どうした? 何考えてる?」


「え?! いや、この前の……話を……」


 ティエラの声は段々小さくなっていく。

 この前、この話をソルにしたところ、やや不機嫌になったのを思い出したのだ。

 話が途切れたのが気になったのか、ソルがティエラに問いかける。


「言えよ、続き。気になるだろ」


「ええと、その、怒らない?」


 ティエラはおどおどしながら、ソルに返す。


「はあ? 何にだよ…」


 ソルは怪訝な顔をして、ため息をついた。


「怒るような話なのか?」


「この間は、ソル、機嫌が悪くなった」


 ティエラがしゅんとしながら、ソルに話す。


「なんだよそれ? いつの話だ?」


 ティエラは意を決して、話してみることにした。


「婚礼の儀で着るドレスを作りに来た御針子達の話をしたでしょ、彼女達が…」


 ソルがまたため息をつく。


「ああ、あれか…」


ソルはティエラから視線を外した。


「御針子達がね、私達がお忍びでよく城下街に行ってたって話してたから、それが気になってたの」


「ああ、あんたとよく行ってたな……あれ、やっぱり周りから気付かれてたのか……」


 そう言って、ソルが以前の話をしようかという時――。


「そこのお前たち! 止まれ!」


 

 後ろから来た騎士に呼び止められてしまったのだった。





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