第46話 ヘリオス・ソラーレ
5/9ソルがヘリオスに「あんた」呼びしていたので、「お前」に変えています。
7/16文章の見直しをしました。
扉の前に立つソルそっくりの青年の登場に、ベッドに座るティエラは叫んだ。
「ソルが二人!?」
「……そんなわけないだろ」
ティエラの隣に座るソルは、混乱する彼女に対し冷静に指摘した。
「いいから姫様から離れろ!」
ソルに似た男性が叫ぶ。
(礼儀正しい時のソルと、口調まで似てる……)
ティエラはますますわけが分からなくなった。
「姫様は姫様でも、お前の姫様とは別人だ」
ソルが大きなため息をついた。
そして、目の前の顔のよく似た男にこう言った。
「なあ、ヘリオスさんよ」
ティエラは驚愕した。
「ヘリオス、さんって……シルワ姫が言っていた?」
ティエラのその台詞を聞いて、ヘリオスと呼ばれた男が反応した。
「本当にシルワ姫様ではないのですか?」
ティエラはこくりと頷いた。
(シルワ姫とは違って、ヘリオスさんの姿はしっかり見えるわ……どうしてかしら?)
ティエラが悩んでいると、ソルが説明をはじめる。
「生前、魔力の類いが強い人間だと、霊魂になっても姿がはっきりと見えることがある」
今目の前にいるヘリオスは、生きている人間かと勘違いする程はっきり見えている。そのため、相当な力を持っていたのだろうと感心した。
「ヘリオス、俺はお前の兄貴の息子のソル。この女性は、シルワ姫の姪に当たる人物だ」
ヘリオスは肩を落とし、落ち込んでいた。
「それじゃあ、姫様は一体どこに……」
落ち込むヘリオスに、ティエラは叫ぶ。
「シルワ姫は、貴方を川でずっと待っています!」
ヘリオスはティエラを見た。
「姫様が……? そんな……私はずっと川を探していて……」
ヘリオスは絶望した表情をしていた。
ソルは何かを考えているようだ。しばらくしてから、彼は口を開いた。
「どちらも霊魂に変わりはない。だが、ヘリオスは姿がはっきりしているが、シルワ姫は誰かに憑依してしか姿がみえない。だから、お前がいくら探しても、姿のみえないシルワ姫を見つけられなかったんだろ」
「で、でも、じゃあ、シルワ姫はどうしてヘリオスさんが来ないって言ってたんですか? ヘリオスさん、こんなにくっきり見えてますよ」
ティエラは疑問を口にした。
「一応、神器持ちの俺とティエラは高い魔力を持つから、ヘリオスが見えている。だが、シルワ姫は違う。彼女には、ヘリオスが見えるほどの魔力がなかったんだろう」
(なんてこと……)
ヘリオスとシルワ姫の二人は、二十年近く、お互いを探してすれ違っていたのだ。
「王族の人間だったんだから、全く力がなかったわけじゃないだろうがな……」
「ああ、シルワ姫は王族特有の憑依されやすい体質であられた。だから剣の一族である私が、彼女の護衛騎士を勤めていたのだ」
ティエラはまた驚いてしまった。
(シルワ姫とヘリオスが、姫と護衛騎士だったなんて……!)
シルワ姫が『運命』という言葉を使っていたことをティエラは思いだし、胸が熱くなった。
「ヘリオス、俺達は明日シルワ姫と会う約束をしている、着いてくるだろ?」
ソルの問いかけに対して、ヘリオスは力強く頷いたのだった。




